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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

えりもの漁業とゼニガタアザラシ

2017年07月28日
えりも自然保護官事務所 近藤武

報告が遅れてしまいましたが、今年の春も乗船調査を行いました。

毎年、5月から7月に実施される春定置網漁では、えりも名物の「トキ(トキシラズ、春鮭、時鮭)」が獲れます。脂がのったトキは、焼き魚やルイベに絶品。しかし、特産品のトキを狙うのは漁師だけではありません。

襟裳岬の岩場で寝そべる「ゼニガタアザラシ」もまた、トキを狙っているのです。町のシンボルでもあるアザラシですが、漁師が仕掛けた定置網に忍び込み、トキを食い散らかして逃げていきます。かつて、ゼニガタアザラシが少なかった頃は、このような被害は目立つものではありませんでした。しかし、生息数の回復に伴い、トキの被害も目に見えて増え、漁師にとって深刻な問題となってしまいました。

環境省では、漁業被害の調査や防除実験、ゼニガタアザラシの個体群管理などの事業を通じ、漁業とゼニガタアザラシの問題解決を図っています。冒頭で紹介した乗船調査も、その一つとして続けられています。

これらの事業は、漁業やアザラシの専門家で組織された「ゼニガタアザラシ科学委員会」での議論を通じて、具体的なアイデアやアドバイスを得ながら進められています。これまで、委員会は札幌で開催されていましたが、今年の6月は、えりも町で開催することができました。

委員会の前には、実際の定置網漁を見学する機会があり、漁師さんの苦労や現場感覚などを、直接体験していただきました。充実した議論のために、こうした工夫は欠かせません。

苦労は絶えませんが、一歩ずつ、漁業とゼニガタアザラシの共存に向けて進んでいるはず。

その日まで、暗中模索の毎日です。

▼環境省の事業や科学委員会の資料は、こちらで公開しております。

ゼニガタアザラシの保護管理(環境省北海道地方環境事務所HP)