ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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利尻礼文サロベツ国立公園 稚内

243件の記事があります。

2009年04月23日春の利尻山登山情報

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

4月20日時点での利尻山の状況をお知らせします。
意外に思う方もいるかもしれませんが、雪は例年並みに残っています。
アメダスの記録を調べても、累加降雪量・最大積雪深ともに平年以上とのこと。
この冬、1月までは、雨で道路のアスファルトが顔を出してしまったこともあり、雪の少ない印象が強かったのですが、下記の通り、やはり2月後半の大雪が、この冬全体の雪の量にも影響を与えたようです。


アメダス(稚内)の記録
■ 累加降雪量
【2月2日16時】
昨年:391cm
今年:299cm
【3月31日24時】
昨年:539cm
今年:612cm
【2月のみ】
昨年:107cm
今年:254cm
※利尻町沓形のアメダスでは、積雪に関するデータを扱っていないため、最寄りの稚内のデータを用いています。
※上記データは、(社)雪センターからの引用です。


まだまだ雪山の利尻山。
アイゼン・ピッケル等の装備と、利尻山名物の強風に耐えられる服装を準備するのはもちろんのこと、登山の際は、沢沿いの落石や、尾根上での樹林の踏み抜きによる転倒にもご注意ください。

この時期、過去には、連休で浮かれ気分になってしまったためか、スニーカーに手提げカバンで利尻山に登り始めた若い観光客が、途中で怖くなり引き返そうと思ったものの、雪の急斜面を下りるに下りられなくなってしまった例(何とか自力で下りましたが)もありました。決して観光気分で登れる山ではありません!

また、この春すでにスキー・スノーボードでの怪我人も出ています。近年のバックカントリーブームは、利尻山も例外ではありませんが、利尻の場合、山の急峻さと、島という立地条件から大けがをした場合など救急時の搬送の点で、本土の山岳地よりも困難が伴います。「ケガは自己責任」というのは、どの山でも当然のことですが、自分の実力以上の斜面を滑らないなど、気を引き締めてお楽しみください。


山の状況、積雪深は、以下の通りです。

■ 利尻山の積雪深(4月20日時点)
鴛泊コース登山口(標高約200m):30cm
森林限界付近(標高約500m):80cm
避難小屋前(標高約1200m):70cm
山頂(標高1719m):110cm


標高550m 森林限界付近
奥に見えるのが、長官山付近。

鴛泊コース避難小屋(09.04.20)
出入りは2階の入り口から。ドアの閉め忘れに注意!

南峰とローソク岩
山頂付近は山稜が切り立っており、風も強い。

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2009年04月10日サロベツの冬を振り返って(冬の活動報告)②

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 前回に引き続き遅い活動報告ですが、春に続く生き物話もありますのでどうぞ最後までお読みください。

 稚咲内砂丘林は、サロベツ原野の海岸砂丘帯のわずかな土壌の上にできた森林で、森林と沼が帯状に交互に連なり、湿原とはまた違った環境を持っています。夏の間は草木が密生して迷いやすい上、蚊やブヨのような人を刺す生き物が沢山いたり、ヒグマ出没の痕跡もあったりして、なかなか入りづらい場所となっていますが、冬ある程度森の中に入りやすくなります。

 普段は見られない稚咲内砂丘林の自然を見て感じてもらい、その大切さを知ってもらおうと、宗谷支庁、豊富町役場、稚内自然保護官事務所との共催で2月28日土曜日に稚咲内砂丘林でスノーシューハイクを開催しました。
参加した皆さんは二十名ほど。現地の自然に詳しいパークボランティアさんに講師をお願いし、大人中心のクマゲラ班、子ども中心のモモンガ班に分かれて砂丘林を散策しました。
 森の中に入ると、ふんわり雪をまとったツルアジサイのドライフラワーがどこか優雅な感じを漂わせていました。そして、耳が長めのキツネのようにユニークな形をしたオオカメノキの冬芽はみんなの人気者でした!


雪衣をまとったツルアジサイのドライフラワー


植物の他には、そこかしこにクマゲラのつつきあとを見ることができました。幹に穴が開けられた木の根元周辺にはクマゲラがつついた時に出た木っ端が飛び散っており、クマゲラが餌を探して意欲的に木をつついた様子が想像されました。
ユキウサギがカンバ類の木の枝先をかじった跡を見つけて、子どもたちと一緒に同じ枝先を折らないように注意しながら歯の間に挟んで見ました。繊維の固さが伝わってきて、ユキウサギの歯がいかに鋭く丈夫かを実感することができました。


ユキウサギのぬいぐるみを使ってウサギの生活を説明


その他には、モモンガの巣穴、そして、数頭のエゾシカの群れに出会うこともできました。私が個人的に見つけて嬉しかったのは写真の虫の卵です。シラカンバ(ダケカンバ?)の梢に丁寧に二列に産み付けられたマーブル模様の卵。
どうやらカメムシの卵のようです!さて、春にはどんなカメムシくんが孵化することでしょう! 楽しみです。


カンバ類の梢に規則正しく2列に産み付けられたカメムシ(?)の卵 春が楽しみ!

         
 冬の稚咲内砂丘林をたっぷり楽しんだ一日でした。
沢山の人数で頻繁に入ることは砂丘林の自然にとって好ましいことではないので、入る時期や回数には十分配慮しなければなりません。しかし、こうして年に一回みんなでじっくり砂丘林の自然を観察する機会を持つことで、生き物たちの棲みかであるこの場所をずっと先まで残していこうという気持ちを多くの人たちと共有していきたいと感じました。


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2009年04月10日サロベツの冬を振り返って(冬の活動報告)① 

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 長い冬がようやく終わろうとしています。原野の雪も大半が溶け、温かそうな地面が見えるようになってきました。ARブログには大変ご無沙汰してしまいました。ごめんなさい(反省)。
2ヶ月以上も前のことになってしまい怒られそうですが、一年後の冬のイベントの宣伝という意味でこの冬実施したふれあい行事をご報告します。

 皆さん、2月2日が何の日かご存じでしょうか?
節分?は2月3日。猫の日?は2月22日らしいですよ。
えっ? 彼氏彼女の誕生日?それはあまりにも個人的ですよ~。

実は2月2日は「世界湿地の日」です。
そんなの初耳だという方が多いと思います。
「特に水鳥の生息地等として国際的に重要な湿地に関する条約」
として知られるラムサール条約がイランのラムサールで
1971年2月2日に採択されたことを記念して定められました。
「世界湿地の日」には毎年テーマが設けられ、この日の前後は世界各地で湿地に関する様々なイベントが開催されています。今年のテーマは「上流から下流。湿地がみんなをつなげている。」
このテーマには、湿地を介した上流から下流までの水の流れとその流域に生活する動植物、そして私たち人間とのつながりを実感してもらおうという思いが込められています。
少し難しくいえば、ある川の上流から下流までの地域において湿地が果たしている役割、例えば、水を蓄えることで洪水を防いだり、水質を改善したり、動植物の生息地となったりというような役割の様々な恵みをもらって、動植物や人は生かされ、互いに繋がっているということを知ってもらおうというものです。
 ここサロベツ原野でもより多くの人に湿地の環境について知っていただくため、サロベツネイチャーゲームの会と稚内自然保護官事務所の共催でこのテーマに沿ったイベントを企画しました。
イベント名は、「下エベコロベツ川を歩こう!~つながる!湿地と川と私たち」です!

 イベントでは、サロベツ湿原に流れ込んでいる河川の一つで、過去に切り替えが行われた下エベコロベツ川河畔を皆でスノーシューを履いて散策し、魚道などを観察しました。「エベコロベツ」とは、アイヌ語で「魚(サケ)の豊富な川」を意味し、一説によるとこれが豊富町の名前の由来となったそうです。


下エベコロベツ河畔から見た青空

 そして、サロベツの現状について巨大航空写真を見ながらサロベツ仙人(豊富在住のパークボランティアさん)のお話を聴き、河川切り替えとその後湿原が変化した歴史について勉強しました。サロベツでは、人々の生活を豊かにするために湿地をよい農地に造りかえることが必要でした。そこで河川の切り替え工事を行って原野の水の状態を農地に適するように調節してきました。けれども、湿原ではそれが原因と思われる様々な環境変化も起きています。湿原の生き物たちは困っているのかもしれません。


サロベツ原野の巨大地図を使ったサロベツ仙人の説明の様子


さて、みんなでやったネイチャーゲームは次のとおり。
●カモフラージュゲーム(雪の中で自然の風景に溶け込んでいる人工物を探すゲーム)

隠した人工物の数が間違っていると何度もやり直しになります。普段、自然の中のものに注意を向けることが少ないので目が慣れなくてムズカシイ!

●サロベツ名前あてゲーム(クイズ形式でサロベツの動植物の名前を当てるゲーム)。

選ばれて前に出た人が、背後に掲げられているサロベツの生き物の写真を見た他の人たちからヒントをもらって、背後の写真の生き物をあてます。


ネイチャーゲームの一場面(サロベツ名前当てゲーム) 


●つながる!サロベツの運命の赤い糸(赤い毛糸を使ってサロベツの生き物たちの繋がりを体験するゲーム)

このゲームの名付け親は私です! サロベツに棲む動植物たち、キタキツネ、エゾシカ、ヒシクイ、モモンガ、サロベツの草花、アカエゾマツ、ヒシクイ、ヤチネズミ、サケなどなど・・・。みんな一人一人何かの生き物になり、生き物の間に「食べる、食べられる」、「お世話をしている、お世話になっている」などの関係があれば運命の赤い毛糸で次々に参加者の皆さんを繋いでいきます。全員が誰かと繋がりを持った後、湿原には様々な事件が起こります。「沼がなくなった」、「川に高いダムができた」、「アカエゾマツの森が切られた」、「水が干上がった」・・・。そして、皆で目をつむり、各事件で自分は直接影響を受けると思われる生き物役の人に糸を引っ張ってもらいます。すると、不思議。ピンッ、ピンッと糸の震動や張り詰めた感じが、他の生き物たちにも波及して伝わってくるのが分かります。みんな、互いに深く繋がっているのが実感できました。

 イベントをとおして、参加者の皆さんからは河川切り替えの歴史を詳しく知ることができてよかった、人の生活と湿原の環境の調和を保ちたいという想いを共有できる人達と知り合えてよかったなどの感想が寄せられました。私たち人間の暮らしと湿原の環境。両方が近接するサロベツで共存はとても難しい課題です。 でも、この課題を考える続けることを諦めないように、このようなイベントを来年も企画したいと思っています。


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2009年03月10日春よ、来い

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也


今日3月5日は、今年になって初めて1日中の青空でした。
この冬、12月から2月までの間に、利尻の山麓から利尻山の山頂が見えたことが何回あったと思いますか?

たったの6回ですよ!!ひと月に2回ずつ、それもほんの僅かの間だけ。
それが、今日は大サービスで、日の出から日の入りまで1日中見えていたのです。

嬉しくて空を見上げると・・・、おや?
道路脇の視線誘導柱にスズメが2羽。
なんとなく警戒している様子。
おやおや、と思い、後ろに回ってみると、矢印の基柱になっている鋼管の穴からスズメが出入りしていました。


「いい青空だなあ」、と空を見上げると、矢印のところに何かいる・・・



近付いて見ると、スズメが2羽とまっていました。


鋼管のオーバーハング部分を巣にしているのでしょうか?矢印部分が風除けになりそうです。


久しぶりのポカポカ陽気に、スズメもひなたぼっこをしていたのでしょうか。
・・そんなに呑気じゃないかな?
でも、空を見上げるのって、ずいぶん久しぶりだなあと思いました。
視線誘導柱のお世話になるのも、あと何回あるのだろう。


***
ただし3月の天気は、冬と春とを行ったり来たりです。これを書いている3月6日は雨。利尻山に登山される方は、積雪・気象状況等に十分ご注意ください。


※視線誘導柱とは
道路沿いに設置されている、赤白の矢印のついた背の高い柱のこと。固定式視線誘導柱とも呼ばれるようです。除雪車の除雪作業や、吹雪で見通しが悪くなった時などに、赤白の下向き矢印によって道路の路肩位置をドライバーに伝えることなどを目的とするもので、雪国によく設置されています。



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2009年03月10日冬の利尻登山

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也


3月になると、利尻山にも島外からの登山者・スキーヤーも増えます。
以下、参考程度に、私が歩いた2月末時点での利尻山北稜ルートの状況をお知らせします。

◆ ルート状況
[標高200m付近の樹林帯]
・ 積雪1m50cm程度(笹藪が埋まった程度)。山スキーならラッセルなし。
[標高600m森林限界付近]
・ 稜線で積雪1m50cm程度。雪質は、靴のつま先がちょうど良く刺さる程度。
・ 沢沿いルートなら、つぼ足の場合で膝上のラッセル。
・ 沢の中にデブリは見られないが、東側斜面の雪質はゆるそう。
[標高1200m付近(長官山~避難小屋付近)]
・ 稜線の東側斜面は吹き溜まり。1m程度の雪庇あり。
・ 稜線の雪質はアイゼンの爪がよく効く程度。


第2見晴台(標高1150m付近)から鴛泊市街を見下ろす。


[避難小屋~山頂(北峰)]
・ 稜線沿いは西側のトビウシナイ沢からの吹き上げ風が強い。雪質はアイゼンの爪がよく効く程度。
・ 山頂は風が弱く、積雪2m程度あり。(夏と同じで、北東、南西どちらの風でもあまり強くはないので、雪が溜まりやすい。)

◆ 避難小屋の状況
・ 出入りは北側に付けられた2階ドアから。積雪は3m程度。
・ ドアは押し開きタイプで、掛け金を外して開ける。ドアの位置は下写真の通り。
・ 位置は、ほぼ稜線上の最低鞍部で周囲の雪は固い。視界の悪い時(特に北稜を下降路として利用する場合)は、東側の吹き溜まり斜面に踏み込みやすく、見つけにくいこともありますが、雪質と風の強さも発見のヒントになるかと思います。
【避難小屋利用の注意】
・ ドア掛け金のかかりが渋くなっているので、使用後の閉め忘れに注意してください。


避難小屋概況。裏側(9合目側)からは発見しづらいので要注意。


◆ 利尻山の気象
・ この冬は降雪が少なく、山麓部では笹藪が出ていましたが、2月中旬~末までの連日の降雪で、現在は、ほぼ例年通りの積雪量(上記参考)になっています。
・ 北海道中央部と比べると、気温は高い(厳冬期でも山頂でマイナス20度を下回ることは少ない)のですが、日本海上の離島にあるため、季節風は強烈です。
・ 3月に入り、山頂部まで見える晴天と降雪を交互に繰り返しているので、積雪状況は上記の情報と大きく異なっていることが予想されます。

◆ その他
・ 利尻山には、スノーモビル等の乗り入れが禁止されている地区があります。詳しくは下記のURLをご覧下さい。
(利尻礼文サロベツ国立公園・利用規制情報URL)
http://www.env.go.jp/park/rishiri/guide/files/regu01.pdf
・ 上記は、あくまで2月末時点での概況に過ぎません。安易な登山は控え、登られる際には、状況判断に十分ご注意ください。
 

3月5日に撮影した、利尻山の全容(北面)。

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2009年02月16日樹木のかたち

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

青々と茂らせた葉を落としてしまったら死んだようにみえる、というわけではなく、冬の樹木には張り詰められた緊張感を感じることがあります。
刺さるような寒さに奪われぬよう、裸の樹木たちが「伸びる、花を咲かせる、実を結ぶ」という生命力の源を冬芽に凝縮させ、しっかり握りしめているようにみえるからです。
冬芽、葉や実がついていた痕、そして枝ぶり。
これらを見ることは花や葉のつき方、枝の伸び方など、樹木がどういう構造をしているのか知るヒントになってくれます。
今回は原野の樹木の冬の様子をいくつか紹介してみたいと思います。


春を待つハルニレの大木

 原野に多いハンノキたちは、冬のこの時期、枝先にえんじ色の粗挽ソーセージのようなものを何個も垂らしています。
そして枝の途中にはマツカサ状の球体を上向きにつけています。これらは一体なんでしょうか? 
実はソーセージみたいなものはハンノキの今年の雄花が集まって房になったもの、マツカサ状の球体は去年の雌花の集まりが受粉後に種子となったときに種子を入れる容器の役割をしていた果穂と呼ばれるものです。
今年の雌花は小さく地味で目立ちませんが、雄花から少し離れた枝の途中にひっそりとついています。
私は、ハンノキやシラカバといったカバノキ科樹木が持つ房状の雄花が開花した様子が好きです。
寒さが緩んだ4月頃、堅く閉ざした房の表面が徐々にほどけて、つづりあわされた多数の鱗片となって長く垂れ、それぞれの鱗片の下から細かい雄しべがのぞくと、まるで精巧な細工をほどこしたかんざしのように見えます。


ハンノキの雄花(枝先)、雌花(雄花の位置から少し下ったところ)、去年の果穂


 次はヤチダモをご紹介しましょう。こちらも原野でよく見かける樹木です。
冬芽の出っ張りと葉痕の窪みが積み重なってできたでこぼこの枝はふしくれだった指のようで、私はこの木に男性的な印象を受けました。また、このでこぼこ模様は縄文時代の土偶にも見えるのですが、皆さんはいかがでしょう? 
ヤチダモには雄の木と雌の木があり、雌の木には冬の時期、秋に翼のある種を沢山つけていた軸の部分が残っていることが多くあります。


ヤチダモの枝先(でこぼこ模様が土偶に見える?)

 ところで、雄しべと雌しべを同じ木につける植物を雌雄同株(しゆうどうしゅ)といいます。
そのうちの多くは雄しべと雌しべが一緒になった花(両性花)をつけますが、
ハンノキのように同じ木に雄しべを持つ花(雄花)と雌しべを持つ花(雌花)を別々につけるものもあります。
一方、ヤチダモのように雄花と雌花を持つ個体が分かれている植物を雌雄異株(しゆういしゅ)といいます。
植物たちがそういった様々な雄と雌のかたちをとるのは自ら動くことのできない彼らがいかに効率よく子孫を残すかという問題と深く関わっています。 一般に、雌雄同株の樹木は相手がいなくとも同じ木の中で受粉を行い、種子をつくることができます。
反面、新たな遺伝子が取り入れられず繁殖力や生存力が低下してしまうという危険にもさらされています。
同じ木の中で受粉を行うことの報酬より損失が大きくなる場合があり、それが雄の木と雌の木を別々に出現させた主な理由と考えられているようです。

 ハンノキとヤチダモについて、これから花になる冬芽、去年の実の痕、葉が落ちた後の枝ぶりなどについて紹介しました。
樹木の持つ美しくおもしろいかたちにはいろいろな意味がかくされています。
特に、冬の樹木からは夏とは違って樹木のつくりの原型のようなものが見られるのではないでしょうか。
皆さんも冬の樹木を観察してみてはいかがでしょう。


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2008年12月22日稚内港の野鳥たち~冬のカモ観察会を行いました~

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

「家に籠もってしまいがちな季節だけど、真冬の道北には豊かな自然があるのだよ。」
今回、特別な場所ではなく、私たちのごく近くで見られる生き物たちのおもしろさを知ってもらう目的で「冬のカモ観察会」という題目で観察会を行いました。

 厳冬の稚内港。寒い中集まった約20名の参加者の皆さんは、野鳥の会の方や私(賀勢)、そして小関自然保護官(Ranger:R)から野鳥の説明を受けながら双眼鏡を覗き、今まで知らなかったカモたちのユーモラスな姿を楽しんでいました。


稚内港でフィールドスコープを覗く小関R


 ここには現在、コオリガモ、シノリガモ、クロガモなどのカモたちが越冬のために渡ってきています。
海ガモ、または潜水ガモと呼ばれている彼らは沼や河川を主な生息場所とするカモたち(淡水ガモと呼ばれています)がお尻を水面に突き出して餌を採るのとは違い、水にすっぽり潜り、深いところまでいって餌を探すことができます。さあ、一度潜ったらどこに顔を出すのでしょう?


コオリガモの♂たち ぴょーんと伸びた尾っぽがオシャレです♪


連なって泳ぐシノリガモたち 大ぶりな白斑模様が斬新です。


 そして、冬のカモメたち。稚内市周辺では夏の間では、ウミネコやオオセグロカモメが多く見られるのですが、冬期には主にオオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメ、ミツユビカモメが見られるようになります。体の配色パターンが似通っていて識別しづらいからか、港周辺ではあまりに普通に見られるためか、
一緒くたに「ゴメ」と呼ばれているカモメ類はちょっとかわいそうです。
普段はあまり注意を払わないようなこの鳥たちにも目を向けてみましょう。

 その他には、ヒメウを観察することができました。
ここではヒメウは泳いでいる姿や防波堤の壁などにびっしり並んでいる様子がごく普通に観察できますが、実は環境省の2006年版レッドリストで絶滅危惧種に指定されています。それだけ、稚内周辺の海はまだ自然豊かだということでしょうか。

 屋外での観察を終えた後、全員で室内に移動し、観察会のふりかえりを行いました。ふりかえりでは野鳥の会の方のお話、そして賀勢が作成した海ガモ類・カモメ類の生態を紹介したチラシを配った後、参加者ひとりひとりが印象に残った野鳥を題材にオリジナル俳句を一句ずつ披露しました!
一番人気はコオリガモでした。♂のコオリガモのつんっと伸びた尾っぽやカラフルな色合いを気に入った方が多かったようです。皆さんの俳句から身近な場所でこんなにおもしろく、美しい鳥たちが見られるということの新鮮な驚きが伝わってきました。
最後に、俳句を書いた紙に題材にした野鳥の写真を貼って、ラミネート加工後、綺麗なリボンをつけました。これはしおりとして参加者のお土産になりました。

 私はシノリガモで一句詠んでみました。下手くそで恥ずかしいですが・・・

   白斑に隠れて目はどこ? シノリガモ

 (シノリガモには白い斑点が沢山あって目がどこだか分かりづらいよ。)

海はもとより、冬は葉が落ちて樹林の中も見通しが良くなり、野鳥観察にはもってこいです。
皆さんも身の回りの野鳥たちを探してみてはいかがでしょう。



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2008年12月11日カパッチリカムイとオンネウのお出まし

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 真っ青な空に、真っ白な肩と尾羽、黒い翼、嘴の黄色のコントラストが鮮やかなオオワシ。しぶい色合いで老練な狩人を思わせるオジロワシ。その姿には思わず見とれてしまいます。


オオワシ


 11月下旬、宗谷地方でオオワシ、オジロワシの渡り状況を観察しているパークボランティアさんに同行して稚内市増幌に調査に出かけました。稚内など宗谷岬付近は11月に入るとサハリンやオホーツク海沿岸からワシたちが北海道に渡ってくるときの玄関口となります。パークボランティアさんによると増幌川では産卵のために登ってきたサケのホッチャレを狙ってワシたちがやってくるそうです。
 増幌川沿いに車を走らせながら河畔林や土手などに目を懲らしてみると、針葉樹の木立の中に枝に降り積もった雪と見間違いそうなほど白い肩をしたオオワシの成鳥がとまっているのに気がつきました。さらに探すのに慣れてくると木立の間や見晴らしがよさそうな木の枝、土手の斜面などに褐色や黒みがかった色のかたまりもいくつか見つけることができました。オジロワシの成鳥やオオワシ、オジロワシの幼鳥たちです。私は去年の冬に道東で道のオオワシ・オジロワシ調査を補助していましたが、遠目にオオワシ幼鳥、オジロワシ幼鳥を識別するのがあまり得意ではありません。この冬は彼らの姿をよくよく見て今度こそしっかり識別できるようになりたいと思っています。この日の調査では川沿い道路6kmを30分ほどかけて走ってオオワシ(Haliaeetus pelagicus)成鳥16羽、幼鳥9羽、オジロワシ(Haliaeetus albicilla)成鳥7羽、幼鳥2羽、遠くで見分けられなったワシ4羽の計42羽をカウントすることができました。




 
 次に調査に出かけたのは11月末日、今度は一人で出かけました。オオワシの成鳥が空高く舞っています。が、その後を追いかけているずっと小さな黒い影。カラスです。ワシがカラスに追われている場面はこの日何回か見かけました。普段、市街地周辺でもトビがカラスにモビング(*)されているのを見かけることがありますが、カラスって本当にいじめっ子だと思いました。王者が追われていることころはちょっと痛々しいです。


この日は識別が難しかったワシはできるだけ写真に撮っておくようにしていたので、後から動物カメラマンをしているパークボランティアさんの生態解説写真集「原野の鷲鷹」でオオワシ・オジロワシの成鳥の様子を写した写真と比較して何羽かは後から判別することができました。特に、褐色の体に混じった白い羽毛が目立ち、嘴の上部が黒い個体がオジロワシの2年目の幼鳥ではないかと見当がついた時は嬉しかったです。オジロワシはオオワシより嘴が小さめだという特徴もこの時しっかり学習しました。全体的に、オオワシは頭の羽毛がワックスで固めたようにごわごわでたっており、オジロワシの頭はどちらかというと櫛でなでつけたように滑らかな印象も受けました。


左側の枝の3羽のうち、上2羽はオオワシ幼鳥、下はオオワシ成鳥。右はオジロワシ幼鳥か・・・。


前と同じルートを35分かけて走ってオオワシ 成鳥5羽、幼鳥7羽、オジロワシ 成鳥7羽、幼鳥4羽、見分けられなかったワシ4羽の計27羽をカウントすることができました。

 最近、私は動物のアイヌ語名を調べるのが好きなのですが、ワシについても調べてみると、オオワシはアイヌ語で「カパッチリカムイ」、オジロワシは「オンネウ」というのだと知りました。それぞれは「ワシ神」「老大なるもの」という意味であるそうです。このような名称をつけられるほどワシたちには人を惹きつける風格があるのでしょう。私はまだ彼らの姿をほんの少ししか知りませんが、その魅力のひとつは彼らの表情や人に気を許すことのない姿勢から感じられる「野性」ではないかと思っています。増幌川にかかる橋の上で、すぐ近くの木にとまっていたオジロワシに気づいて車を停めたとき、即座に飛び立つポーズをとって様子をうかがう姿にそれを見たように思いました。

*モビング 小さな動物が大きな動物を追い払うために行う嫌がらせ的な行動



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2008年11月07日求む!活動プロジェクトニックネーム

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

サロベツに芽生えた活動プロジェクトに素敵な名前を贈ってください!

 ご存じの方はまだ少ないと思いますが、サロベツ原野の北に位置する上サロベツ地区では、自然再生事業が行われています。「サロベツの自然再生事業ってどんなことをやっているの?」という方に経緯と内容を簡単にお話すると次のようになります。

 サロベツ原野では、かつて酪農に適した土地をつくるために湿原の水を抜く工事を行い、開拓を進めてきました。最北の厳しい土地で生きていくために人々は湿原の環境を改良して、利用していかなければならなかったのです。しかし、サロベツの自然の豊かさ、貴重さが認識され始め、昭和49年に利尻礼文サロベツ国立公園に指定された頃から、地元の方々の間からも自然との共生を目指し、サロベツの素晴らしさを未来に受け継いでいこうという気運が高まってきました。そして平成17年には、「上サロベツ自然再生協議会」が設置され、乾燥化が進行する湿原の再生と農地と湿原の水位バランスをよりよく保つことで「湿原と農業との共生」を目指す自然再生事業が動き出しました。


サロベツの牧草ロールと利尻山


 けれどこの自然再生事業は環境省を始めとする国の機関や道、市町村の機関のみで進むものではありません。「人の生活と自然との共生」を目指す限り、サロベツに実際住んでいる地域の人たちやサロベツを訪れる人たちが主役になってサロベツをよりよくしていかなければ始まりません。自然再生に対する理解と協力を広く得るために、湿原の自然に興味を持ってもらい、地域の歴史や文化の魅力を知ってもらえるような環境教育を活発にしていくことが必要となってきます。そのために、「上サロベツ自然再生普及行動計画」が立ち上がり、その一環として昨年度から「サロベツを楽しむ活動プロジェクト」が誕生しました! 
 
 この活動プロジェクトの内容は主に7つに分けられ、明確な区切りはありませんが今年集まった活動アイデアや現在実施に向けて準備されている活動には次のようなものがあります。

① サロベツを見つけよう        サロベツ宝探しゲーム、アイヌ語地名の景色を探そう
② サロベツの話をしよう        サロベツの昔話を聞いてみようサロベツ宝探しゲーム
③ サロベツを楽しもう         サロベツ星空観察会、夏のポニーの馬車と冬の馬橇
④ サロベツのことをまとめよう     サロベツマップ作り、サロベツ自然環境体験学習会
⑤ サロベツを発信しよう        サロベツを熱く語る会、サロベツ学び隊
⑥ サロベツの利用ルールを作ろう    サロベツカントリーコードを作ろう
⑦ サロベツでつなげよう        サロベツガイドを育成しよう、サロベツ学会




 さて、今回募集するのはこの活動プロジェクトのニックネームです。正式名称は「上サロベツ自然再生普及行動計画」ですが、さきほど書いたように自然再生事業には多くの人たちの理解と協力が必要で、それを得るためにはこの活動プロジェクトには親しみを持ってもらいたいという思いがあります。「上サロベツ自然再生普及行動計画」では子どもにも大人にもお年寄りにも親しみを持ってもらえる名前にはなりません。難しくて取っつきにくいイメージがどうしても出てしまいます。
 
 そこで求む!サロベツに贈る素敵な名前!

 サロベツファンの方、名前をつけるのは任せておけ!という方、そして初めてサロベツの自然再生を知ったという方、どなたからも応募大歓迎です!
応募締め切りは12月1日。詳しくは以下のホームページをご覧ください。

http://c-hokkaido.env.go.jp/  北海道地方環境事務所ホームページ

http://sarobetsu.env.gr.jp/  サロベツ自然再生事業ホームページ



サロベツから望む夕焼けの利尻山

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2008年11月07日食われるという掟

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 人を見かけることがなくなった10月末の幌延の木道。冬の訪れが目の前といっても、よく晴れた日にはお日様に温められて木道はほのかなぬくもりを持っています。木道に触れてみると指先に暖かさを感じ、日増しに強まる寒さに張り詰めていた気持ちが少し緩みます。ふと足下を見るとジュウジナガカメムシがひとところに集まっています。この虫は赤と黒のコントラストがとても美しい虫ですが、数多く群れると多くの昆虫に対して私たちが感じるようにグロテスクな雰囲気を放っています。彼らは何かにたかっているようです。
彼らを追い散らしてみると毛虫の死骸が横たわっていました。それは春先にも沢山木道上で見かけたヨシカレハの幼虫でした。辺りをみまわしてみると何匹かの幼虫が木道上を這っているのを見つけました。夏に見た終齢幼虫と比べるとどれも小さく、若い幼虫だと思われました。おそらく春に幼虫時代を過ごし夏に羽化したものの子どもたちで、そろそろ幼虫のまま越冬に入ろうとしていたのでしょう。それにしてもヨシカレハにとってカメムシは恐ろしい天敵なんだと実感しました。本州にいた頃、越冬を終え、エノキの樹幹を登るゴマダラチョウの幼虫が途中でサシガメ(肉食性カメムシ)に補食されるのを観察したことがあります。その時、小さい昆虫の世界の出来事であれ体液を吸われて捕食されている様子に恐ろしさを感じ、こんな死に方はしたくないと思いました。ヨシカレハ幼虫は冬ごもり場所を探しているうちにジュウジカメムシに捕まってしまったのでしょうか。ジュウジナガカメムシはこれから集団で越冬します。ヨシカレハの体液は彼らに冬を乗り切るエネルギーを与えたのでしょう。


ヨシカレハの体液を吸うジュウジナガカメムシ


 原生花園の木道には両側から垂れるヨシの穂のアーチが続いています。ここではトガリネズミが死んでいました。しゃがみこんでよくよく見ようとしていたとき、黒い体に赤い斑点、先端に三つのひだがついた立派なアンテナのような触角を持った甲虫がシャカシャカと歩いてきて自分の体の何倍もあるトガリネズミの体を持ち上げてひっくり返したり、体の下に潜り込んだりしました。この怪力昆虫はツノグロモンシデムシ(?)と思われました。しばらくの間、トガリネズミの体と格闘し、吟味した後、気に入った部位を見つけたのか食事を始めました。トガリネズミもまたツノグロモンシデムシに生きるエネルギーを与えたのです。


トガリネズミの体を調べ、美味しい部分を探すツノグロモンシデムシ


 そして、海岸近くの草地ではこの日の巡視だけで3頭のエゾシカが死んでいました。いずれも若いシカでした。近づいてみるとカラスが飛び立ちました。一週間後に通りかかったときにはもうすでに骨と皮になっていました。カラスの他にもトビやキツネが来て食べたのでしょうか。


エゾシカの死体をあさりにきたカラス

 この日は死んでいったものたちに多く出会った一日でした。そしてそれらを食うことで生き残るものたちにも。野に棲む生き物たちは生きている途中であれ、死んでからであれ、必ず他の生き物にその体を食われていく運命です。食われることなど想像さえしたことのない私。人間であるなら拒否するその運命を受けいれて生きている野生の生き物たちに潔さと生き残ることの大変さを教えられたような気がしました。
早く沈むようになった太陽が長い夜に押されるように最後の光を放ちながら水平線の彼方に消えていきました。



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