ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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利尻礼文サロベツ国立公園 稚内

268件の記事があります。

2010年05月19日姫沼園地 トイレ工事のお知らせ

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

長く裾を引く利尻山の山麓には、周囲60キロの島とは思えないほど広大な森が広がっています。姫沼はそんな広い森の瞳のよう。穏やかな日には、湖面に逆さ富士が映ることもあります。

姫沼の周囲約800メートルには木道が敷かれていて、1周20~30分程度の散策を楽しむこともできます。現在は、ザゼンソウやナニワズなど早春の花が咲きはじめたところ。今年は4月以降も寒い日が多く、花の開花も遅れ気味ですが、来週になればオオバナノエンレイソウやツバメオモトなども咲きそうです。


姫沼(2010年5月14日撮影)


ナニワズの花

さて、この姫沼園地では、現在トイレの建て替え工事をしています。
6月末日までの工事期間中は、駐車場脇に設置された仮設トイレをご利用いただくことになります。また、工事に伴い駐車スペースも数台分少なくなっているので、時間帯によっては混雑することも予想されますが、路上駐車はご遠慮ください。ご不便をお掛けしますが、ご理解とご協力をお願いいたします。


姫沼駐車場の仮設トイレ(奥は建設中の新トイレ)

なお、姫沼から車で東に10分程度の野塚展望台に公衆トイレがあります。西に10分程度進めば、鴛泊フェリーターミナルにも公衆トイレがあります。利尻島一周観光の際は、別の場所のトイレ位置もご確認の上、対応いただければと思います。
※利尻島内公衆トイレの位置詳細は、フェリーターミナルの観光案内等に置いてあるパンフレット等をご参照ください。

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2010年04月28日まだまだ白い利尻山。雪崩に注意!!

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

4月25日に、プライベートで利尻山に登ってきました!
と言っても、当日は天候が悪く山頂までは行けず。北稜(鴛泊コース)から避難小屋までの往復ですが、そろそろゴールデンウィークを迎え、登山者も増えますから、参考までに山の状況をお伝えしておきます。


写真)4月25日の利尻山北西斜面


今年は雪解けが遅いですよ。
標高1000メートル以上では、新しい雪が20センチ位積もっていますが、最近の激しい気温変化によって、積雪は非常に不安定な状態。長官山下部の沢の源頭部には大規模なデブリも見られました。視界が悪く写真を撮れませんでしたが、この場所で、この日見たほど大規模なデブリを見たのは初めて。他の斜面でも結構雪崩が出ているようです。
利尻に来てたった5年目ですが、私が知る中では、この春は最も雪崩が多いと思います。

急峻な岸壁を持つ利尻山は、そもそもあまり雪がつかないため、落石が怖いという印象があっても、雪崩は起きにくい山、という印象を持っていたのですが、イメージだけで斜面に取り付いてはいけませんね。
当日は、湿雪が降る中、氷板の上に20センチ近くの新雪が積もった状態でしたが、私が登っている時にも、すぐ横の斜面で表層雪崩が起きました。パスっと表層部だけが剥がれるように。

写真は、この日、北陵標高約1000m地点の尾根から、北北西の斜面に少しだけ踏み込んだところで行った弱層テストの様子です。結果は見ての通りで、角柱を切り出す前に氷板と氷板の中間層がスライドしてしまう危険な状態。テスト実施地の結果が全てでは無いけれど、こんな日にこんな斜面に踏み込んではいけません。


写真)利尻山北稜 標高約1000m地点で行った弱層テスト

この時期の山スキーヤー・スノーボーダーは、一般的に沢沿いを奥まで詰めますが、ビーコン・スコップ・ゾンデを持つだけでなく、こまめに弱層テストなどを行って雪の状態を確かめましょう。晴れて暖かい日は、落石にも要注意。雪庇も大きく張り出したままの状態ですので、踏抜きにも要注意です。

雪山はきれいですが、きれいなものには気を付けなければいけませんね。

そうそう、話題は変わりますが、4月に入り登山者が急増したのと合わせるように、避難小屋の周辺にし尿の痕が目立つようになってきました。近年、スキー雑誌などに取り上げられる機会が増えて、訪れる人が増えたためか、マナーが低下しているのか…、これでは白い山が台無しです。
利尻山は、利尻島の大切な水瓶でもあります。汚物と悪臭を残さぬよう、夏同様に携帯トイレを使用されることをおすすめしますが、無い場合でも、せめて小屋から離れた場所で用便するなど配慮して下さい。皆で真っ白な利尻山を守りましょう!


写真)鴛泊・避難小屋の状況
2階のドアから出入り可能です。



以上、なんだか注意事項ばかりの情報になってしまいましたが、ゴールデンウィークの利尻島は、利尻山だけでなく、他にも見どころいっぱいです。お越しの方は、ゆっくりと楽しんでいって下さい。

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2010年03月17日冬の森を歩く②

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 円山の森を散策した後、私たちは稚咲内砂丘林に入りました。
夏場は沼地である場所も今は開けた雪原になっています。

 雪原を横切り森に入ってまもなく、サブレンジャーが早速おもしろいものを発見しました。落ちた枯れ枝についたモスグリーン色の小さな塊。細かく枝分かれした茎とも葉ともつかないような組織が集まってできており、苔のように見えます。まるで“愛・地球博”のマスコットキャラクター、“モリゾー&キッコロ”みたいです。
名前は分かりませんが“地衣類”の一種と思われました。
“地衣類”とは、菌類と藻類の共生体の総称であり、光合成もできるそうです。共生体とか菌類とか聞くと、生活様式も形態も人間とはかけ離れすぎてなかなかどんな生き物なのか想像がつきません。ひとまず、変わったやつはジ~ッと観察してみるに限ります。よ~く見ると、細かい枝の間から平べったいキノコの頭のような部位がちょんちょんと突き出ています。これは胞子をつくっている子実体だと思われました。
 地衣類は木の幹にもありました。幹の微妙な色合いや模様の変化は着生している地衣類の種類の変化によることが多い気がします。私たちはしばしば立ち止まって木の幹を観察しました。黒い地衣類、白い地衣類、オレンジ色の子実体を持つ地衣類、組織の枝分かれの具合も様々でした。虫眼鏡で覗くと子実体や菌糸が大きく見えて、“風の谷のナウシカ”に出てくる腐界の風景のよう。


枯れて落ちた小枝についていた地衣類(よくみると胞子をつくって飛ばすための子実体が見えます。)

 クマゲラが餌を探してトドマツの幹にあけた穴も見つけました。美味しい虫がたっぷりいそうな木だったのか、幹には機関銃で撃たれたように沢山の穴があいていました。クマゲラが盛んにつついた様子が目に浮かぶようです。
 そして、上部が折れてしまった木の上を覗き込んでみると、折れた部分は切り立った岩山のようになっており、苔に覆われて鮮やかな緑色をしていました。シダも生えていてまるで日本庭園のミニチュアような世界が創られていました。その他にも、エゾシカの糞塊や落ちているヤドリギの枝、サルノコシカケの仲間のキノコなどを観察しました。ヤドリギの枝は数列が書けそうなくらい規則正しい出方をしているのが分かりましたし、サルノコシカケの裏側の管孔と呼ばれる構造を虫眼鏡で拡大すると、胞子を飛ばすための小さな小さな穴が無数に空いているのを確認することができました。


左:クマゲラが餌を求めてつついた跡
右上:日本庭園のミニチュアのような切り株上 右下:サルノコシカケの裏側を虫眼鏡でのぞく

 今回の散策では、サブレンジャーたちと自然に対する素直な感性を分け合いながら冬の森を楽しめたような気がします。幾つになっても自然が創りだした美しいもの、おもしろいものを見いだす目を持ち続けていたいと感じた一日でした。



ヤドリギは数列を描く!2のN乗!?(ところどころ折れているものの枝の分岐点では2つずつ枝が伸びていく?)

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2010年03月17日冬の森を歩く①

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

3月上旬の週末のことになりますが、夏の間、国立公園の利用案内や自然解説のアルバイト(サブレンジャー)をしていた大学生たちが冬のサロベツを訪れました。彼らは、冬のサロベツの様子も是非知りたいとはるばる札幌からやって来たのです。私はサブレンジャーたちと冬の森の散策に出かけることにしました。

 散策先は、現在新しい園地(インフォメーションセンター)の建設が行われている敷地横の円山の森と稚咲内の砂丘林です。
私たちはスノーシューを履いて最初に円山の森に入りました。
初めて冬のサロベツの森に分け入って、サブレンジャーたちは興味津々。
雪上の足跡、木の洞、虫こぶ、木の幹に生えたキノコや地衣類など・・・もう何でもかんでも彼らの興味の対象でした。
これからサブレンジャーと一緒に冬の森で見つけたものをご紹介しようと思います。

 冬の自然を楽しむポイントの一つに「樹木の冬芽観察」があります。
私は学部生の頃に林学を学んでいたこともあり、樹木の形態を見るのが好きです。
 円山や砂丘林で多く見られる木々にはハンノキ、ヤチダモ、ホオノキ、ナナカマド、ヤマウルシ、ミズナラ、ノリウツギ、エゾニワトコ、コシアブラ、オオカメノキ、ハリギリ、キハダ、ツルアジサイなど・・・、今思いつく限りでも十種類以上の樹木が挙げられ、それぞれ個性的な形態をした冬芽が観察できます。今回の散策でサブレンジャーの印象に残った冬芽はホオノキとナナカマドだったようです。


サロベツ原野周辺の森で見られる木々の冬芽
※今回紹介するのはホオノキ(左上)とナナカマド(右上)
写真をクリックして拡大してみてください!

 ホオノキは3~5cmにもなる大きくて表面の滑らかな冬芽を持っています。この大きな冬芽を先端に頂いた枝をじっくり見ていくと、輪生状に生えていた葉が落ちた後に、年ごとに刻まれていく葉痕によってホオノキの生長の様子が分かります。
私はこの冬芽で頬や鼻の周辺をそっとなぞるのが大好きです。
「うわーっ!変な人だ!」なんて言わないでください。
この冬芽の大きさは、顔のかたちに沿って肌をなぞるのにちょうどよく、
すべすべした感触はとても気持ちがいいのです。
お肌のお手入れをしている気分になりますよ(笑)。
サブレンジャーたちはそんな私の様子を見て笑っていましたが、
みんな次々に試してホオノキによる肌お手入れの素晴らしさに納得していました。

 ナナカマドの冬芽は私にとって「セクシーな大人の女性の口紅」を思わせます。
写真のナナカマド冬芽は暗くてちょっと分かりづらいですが、
しっとりとした艶を持った深みのある赤い色をしています。
こんな色の口紅が似合うようになりたいな・・・、と思うことがありますが、
そんな風になるための修行は全く足りていない気がします(笑)。
冬芽で唇をなぞって気分だけを味わいます。

 円山の森では、冬芽の他にも変わった木の洞のでき方に思いを馳せ、枯れ木に密生するキノコの観察を楽しみました。
キノコは分厚さのない波縁状の縁を持ち、同心円状に変化する不思議な色合いを見せてくれました。サブレンジャーの一人は密生するキノコの様子を“蛾か蝶が集団で木の幹に止まっているようだ”と表現しました。このキノコの様子をとてもよく捉えた表現だと思います。


上:変わった木の洞を観察するサブレンジャーたち
下:蛾か蝶が集団でとまっているように密生するキノコ

 そして、雪がうっすら溶けかけた窪地では水芭蕉の新芽が頭を出しかけているのを発見しました!
宗谷の冬は厳しかったけれど、春はもうすぐ!
この森の林床も、白い水芭蕉や黄金色のエゾノリュウキンカで鮮やかに彩られることでしょう。


雪が溶けかけた窪地から頭をのぞかせている水芭蕉の新芽(みずみずしい黄緑は目にしみるよう)

 さあ!次は砂丘林の散策へ!



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2010年03月03日BEST15!!

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

お久しぶりです。
東京で春一番が吹いた頃、利尻島では雨が降り、今は、その後凍りついた雪がツルツルのアイスバーンを作っていて危険な状態です。この前、玄関を出たところで転んでしまい、危うくパソコンを壊すところでした・・。三寒四温と言うのでしょうか、とにかくこの時期は滑らないように、風邪をひかないようにと、色々と注意が必要な季節です。

さて、前回の日記(正月明け)で、利尻山の利用データに関してまとめ作業をしていることをお伝えしましたが、今回はその続報です。遅くなってすみません。

「利用集中日」という言葉をご存知でしょうか?
もっと普通の言葉で言えば、「とても混雑した日」のことです。今回は、昨夏最も人が多かった日の上位15日を紹介します!

すごい!BEST15に自分が登った日も含まれているかな?なんて、探してみるのも良いかもしれませ・ん?



どうです、このデータを見てある共通点に気付きませんか?この表の元になった数値は、6月から10月末までの5ヶ月間のデータなのに、人が多かった日は6月の後半から7月上旬に集中しているのです。

ちなみに第3位の8月25日は地元高校の学校登山があった日ですが、6月後半から7月後半にかけては、どんな人が登っていたのでしょう?
これを登山計画書の集計結果で調べてみると、さらに詳しいことがわかりました。







6月中旬から7月上旬にかけてツアー登山が集中していることや、60代の登山者が多いことが見えてきたのです。
ただし!!登山計画書は全員が提出しているものではないことに注意してデータを見てください。一般的に考えてツアー登山の計画書提出率は高いと思われるものの、それと比べると一般登山者の提出率は低いことが予想されるからです。年代による提出率の差もあるのかもしれません。この辺りは今後の調査課題です。
(でもその前に、なるべく登山計画書は提出するようにしましょう。)


今年の夏に利尻登山をお考えの皆様、是非、このデータを山行計画に生かして混雑を避けた登山を楽しんで下さい。
例年で言うと、6月末は残雪の白と新緑のコントラストが美しい季節。でも沓形コースは上部の急斜面に雪が残り前爪付きのアイゼンとピッケルが無いと厳しいです。7月は花の種類がもっとも多い季節。気象も安定しやすいでしょう。

8月は祭りの季節!って山とは関係ないじゃない・・とお思いかもしれませんがそこはこらえて。山だけではなく、利尻を丸ごと楽しみたい!という方には絶対オススメの季節です。漁師町をぶらりといかがですか。花は8月中旬までが見頃。お盆を過ぎると少し空気がひんやりしてきます。
9月上旬はやや渋めの黄葉(赤くはなりません)が見頃。ですがお彼岸を過ぎると初冠雪の可能性があり、これ以降は夏山登山の範疇ではありません。

さあ、どの季節に登ってみたくなりましたか?
次回は、「利用集中」も関係しているのか?登山道の土壌侵食に関する調査結果をお伝えできればと思います。
なるべく早めに・・・

注)登山計画書の集計方法のうち年齢判別について
1パーティーのうちに1人でも年齢不明者がいた場合は、パーティー全員を年齢不明として集計した。このため、8月25日の学校登山は年齢別データに含んでいない。

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2010年02月16日冬のカモ観察会

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

カモという鳥のグループは姿や仕草がどことなくユーモラスで、小鳥と比べると大きくて観察しやすいので野鳥観察を始めたいと思う人にはもってこいなのかもしれません。

 毎年恒例の「冬のカモ観察会」は、見通しのよい稚内港の海面上にいる海ガモやカモメたちを観察するもので、今年も20人近くの参加者の皆さんが集まりました。

 観察会前日の下見では、昨年と比べて港の岸近くに沢山のクロガモが寄ってきていました。よく見ているとクロガモたちは潜水し、クルミよりひとまわり小さいくらいの丸いものをくわえてきて、それを丸呑みにしていました。貝か甲殻類だったようです。何かを狙っていたのかふわりと空から舞い降りたオジロワシも見られました。

 観察会当日の1月23日は前日と比べると寒さが和らいだ波が穏やかな日でした。一般的に、外海がしけていたほうがカモたちは港の中へ避難してくるので数多く観察することができます。今日はあまり見られないかもしれないな・・・、と思いながら海面に目をやりました。けれども、毎年一番人気のコオリガモ、一番よく見られるシノリガモ、前日見たクロガモを始め、オオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメなどのお馴染みメンバーはいつも通り観察することができました。コオリガモを初めて見る人の中には、鳴き声がどうしても「アッアオナ、アッアオナ」には聞こえないという人もいました。鳥の声を人の言葉に置き換えることを「聞きなし」といいますが、確かに「この鳥はこのように鳴くのだよ」と教えられてもそのように聞こえるというものではありません。
聞きなしでは鳴き声の音の雰囲気は掴みづらいので、先ずは実際に鳴き声を聞いてから自分が覚えやすい言葉に直すのがいいのかもしれません。
また、普段全く見られないというわけではありませんが、そこまで数多く見かけるわけではないウミアイサも見られ、参加者は頭の羽がツンツンとたったおもしろい姿を楽しんでいました。さらに上空を舞うオジロワシの姿を捉えた人もいました。この観察会はリピーターが多いのですが、海ガモたちの姿には見ていて飽きないものがあるからに違いありません。


コオリガモ


シノリガモ

 屋外の野鳥観察から戻ってきた後は、稚内自然保護官事務所にて、
見られた鳥についてパークボランティアからさらに詳しい解説がありました。
そして、参加者ひとりひとりから感想をいただきました。

 さて、その後に用意していたのが「一番人気コオリガモの折り紙教室」です!
観察会で見た動物の特徴を思い出しながら折り、記念に持って帰ってもらおうと、賀勢の方で折り方を創作し、折り線と翼や目、嘴の色を塗った折り紙を用意しました。皆さんはワイワイ言いながら折り紙を楽しんでくれました。
最後にひとりひとりのコオリガモを中央に並べて記念写真を撮りました。

 今回の観察会は、リピーターさんからは今年もいつやるのかと楽しみにしていた、初めて参加した人からはカモの観察も懇談会も折り紙もとても楽しかった、などと非常に嬉しい感想をいただきました。
観察会を楽しんでもらうにはしっかりとした下見や様々な準備が必要で大変なこともあるのですが、これを励みにより楽しい観察会になるよう工夫していきたいと思いました。
参加してくださった皆さま、ありがとうございました。


折り紙コオリガモ(賀勢作成)

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2010年01月07日利尻山 今夏の入山者数

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

皆様、あけましておめでとうございます。
こちら利尻島は、風が強く雪はあまり積もらないのですが、それでも年明けの大雪でようやく山麓のササが埋まってきました。いよいよスキーが楽しい季節になってきた感じです。
さて、今日は平成21年度夏山シーズンの入山者数をまとめましたのでお知らせします!


※入山者数=赤外線式登山者カウンター・入山方向計測値

入山者数は表の通りなのですが、これを見ると昨シーズンと比べて大分人が減ったことがわかりますね。私はシーズン中、週に1回は利尻山に登っているのですが、そこで見た感じですと、登山ツアーの一団体あたりの人数が今年は特に少なかったという印象を持っています。それと、例年なら8月に増える学生など若い世代の登山者も今年は少なかった印象。この辺りについては、今後、登山計画書の集計データから実際の状況を確認してみようと思います。

月別に見ると6~7月の減少が目立ちますね。よく言われる今夏の北海道の悪天候の影響ですが、利尻の場合、飛行機などの予約を考えると来島自体にはあまり影響を与えていないのでは?と思います。フェリー入込数も月別にほぼ同じ減少幅を見せているのですが、これにはむしろ新型インフルエンザの流行や、高速道路値下げなどが影響しているのかもしれません。
ただ、島に来たものの、悪天候のため山に登らず一般観光に切り替えた人や、登り始めたものの途中で引き返してきた人も多数確認しており、やはり入山者数、特に登頂者数には悪天候の影響が響いているのかもしれません。


この夏はこんな日が続きました・・


次に8月は地元高校の学校登山があり、関係者を含めて200人近くの人数が登ったことが月間値に大きく反映されています。
そして9月はシルバーウィークがありました。この5連休中の入山者数は276人で、月間値の約25%。次に9月の大型連休があるのは6年後だそうですが、観光の視点から見れば、やはり大きな効果があったと言えそうです。しかし、例年この季節は北海道の山では初冠雪の季節。一般的な夏山登山の装備では登れない場合があるので、安全登山の観点からは十分注意しなければならないでしょう。

以上、入山者数データでしたが、冬の間は色々と夏に調べたもののデータ整理をすることが多いので、またこの場で、利尻山に関する色々な情報を発信していきたいと思います。
それでは今年もよろしくお願いします!!

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2010年01月06日冬の利尻山に入山される方へ

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

■ 冬の利尻登山の厳しさは国内屈指!!
 冬の利尻登山は、日本海からの強烈な季節風を受け続けることになり、その厳しさは国内屈指と言えます。また、利尻島内には山岳救助の専門組織がありません。関係機関等により救助隊が組織されても本州中部山岳並みの速度・技術は求められないため、登山者、または所属する組織等には、高いセルフレスキュー能力が求められます。これから冬の利尻山に向かおうと考えている人は、リスクの高さを認識し、様々な情報を分析したうえで、自分の体力・技術に見合った登山を計画してください。

※例年、夏山装備で登れる期間は、鴛泊コースで6月中旬~9月初旬、沓形コースで7月初旬~9月初旬です。

写真:(左)2月、麓から見た利尻山(右)4月、利尻山北陵 標高1200m付近


冬に山頂が見えることは極めて稀で、標高1000m以上は常に雲に覆われています。

■ 登山計画書を提出してください!!
登山計画書の提出は任意ですが、「緊急時に救助依頼を出す」ことが選択肢に含まれている山行であれば、必ず登山計画書を提出してください。また、登山計画書を提出した場合は、その提出先に必ず下山・山行中止の報告をしてください。

■ 登山計画書の提出先
稚内警察署 鴛泊駐在所
住所)〒097-0101
北海道利尻郡利尻富士町鴛泊字栄町156-11
電話)0163-82-2110

■ 登山計画書のダウンロード
 登山計画書は書式自由ですが、所属団体名、個人名、各自連絡先、各自緊急連絡先、予定ルート、エスケープルート、装備・食料、予備日等必要事項をもれなく記入してください。なお、下記ホームページからも登山計画書の様式をダウンロードすることができますが、夏山用の計画書様式のため、必ず上記の必要事項を追加記入してください。

⇒ 登山計画書のダウンロード
http://kankou.rishiri.jp/rishirisann7.html


その他利用情報

■ 避難小屋の利用について
 北稜(鴛泊コース)の避難小屋は標高1,225mの鞍部にあり冬季も使用可能です。ただし、通常4月末頃までは2階の屋根だけしか露出しておらず、雪氷に覆われて発見しづらいこともあります。
また使用時は入り口の開け方に注意しないとドアが破損し、雪が吹き込む原因になるので注意してください。
避難小屋入口は2階北東側(長官山方面)で、ドアパネルの左側に蝶番があり小屋の奥に向かって押し開ける開ける構造になっています。それ以外の方向に強い力をかけないでください。また、ドアパネル周辺に雪が詰まると閉めにくくなるので、使用後は雪を払い、確実にドアが閉まったことを確認してください。
 なお、小屋入口の反対側(南西側)には、夏季に利用するトイレブースにブルーシートを巻いて保管しています。入口と間違えてブルーシートを剥がさないようにご注意ください。

写真:避難小屋外観(左)夏期(右)冬期



■ スキー・スノーボードでの入山について
 一般的に12月~3月中頃まで、森林限界(標高500m)以上の斜面は降雪直後をのぞいてアイスバーン状態で天候は不安定です。雪が緩むのは例年4月中旬以降。また、森林限界以下の火山扇状地の地形は複雑で、特に植林地などの樹林の混み入った場所では、積雪があっても思うような道筋に進みにくい場合があります。コース選択には十分注意してください。

■ スノーモビル乗り入れ規制について
 利尻山の標高500m以上のほとんどは、利尻礼文サロベツ国立公園内の特別保護地区に指定されておりスノーモビル等の乗り入れが禁止されています。下記のウェブページで詳細を確認し利用規制に従ってください。
⇒ 環境省 利尻礼文サロベツ国立公園HP(利用規制情報)
http://www.env.go.jp/park/rishiri/guide/regulation.html

■ 島内の交通・宿泊・商店
 島内5箇所のキャンプ場は全て冬期間閉鎖されています。また宿泊施設、レンタカー会社も冬期の営業を行っていない会社もあるので事前に問い合わせてください。
 登山用品を扱っている店はありませんがホームセンターやコンビニがあります。ホームセンターでは、ガスカートリッジも扱っていますが、冬用タイプは扱っていませんので来島前にご用意ください。
⇒ 詳細お問い合わせ先
利尻町役場(産業建設課商工観光係)   0163-84-2345
利尻富士町役場(産業建設課商工観光係) 0163-82-1114

なお、上記情報は、平成21年12月28日に利尻山登山道等維持管理連絡協議会から発表されたものです。

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2009年12月07日オオワシが食べていたもの

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 天候や事務所内の仕事のために、しばらく外に出られない日々が続いていました。
11月の半ば過ぎ、そろそろオオワシがカムチャツカ半島から渡ってくる頃です。
久しぶりに海岸線に巡視に出かけました。

 風が強く雪がちらちらと舞う日でした。
寒々とした灰色の日本海が目の前に広がっています。
私は空を飛ぶ猛禽の影に注意しながら、海岸線を稚咲内に向かって車を走らせました。
と、突然、海岸線道路からすぐそばに見下ろせる海岸帯にいた大きな猛禽と目が合いました!

 オオワシです。美しい成鳥です。


悠然と飛び立つオオワシ

 車を止めようとするとオオワシは悠然と飛び立ち、海岸砂丘の向こう側へ行ってしまいました。
私は海岸に降りて見ることにしました。
砂丘を越えて目を懲らしてみると向こうの方にワシやカラスが複数かたまっているのが見えます。


砂浜につけられたオオワシの足跡。大きい!

「きっと動物の死骸があるんだ」、と思った私は彼らが食事をしている合間を縫って何を食べているのか調べることにしました。
ゆっくり近づいてみると1メートルくらいの尾びれのある生き物の死骸が横たわっていました。



「大きな魚だろうか?それともイルカや鯨の仲間だろうか?」



 サロベツ原野に隣接した海岸線には、3メートル数十センチもあるばかでかい鯨の下顎の骨がでんっと流れ着いたことがあります。でも、海棲哺乳類であるとしたら、こんなに小さなものを今までに見たことがなかったので、最初は魚だろうと思いました。けれど、肋骨らしき骨があることと、魚の鱗のようなものがなくイルカのように黒くて滑らか肌をしていることから、海棲哺乳類であると考え直しました。この生き物を記録としてカメラに収めると、ワシやカラスたちが食事を続けられるように急いで車に戻りました。
 帰ってきてから知り合いの学芸員さんにこの生き物の写真を送ってみました。学芸員さんによると「ネズミイルカ」の仲間ではないか、ということでした。ネズミイルカ科かどうかは頭部の形状と歯で分かるそうです。
頭部については他科のイルカと比べて口吻が短く丸みがあります。そして歯については他科のイルカが円錐形であるのに対し、ネズミイルカ科はスペード型(円錐形の歯よりは丸みがある)です。写した写真を見ると頭部に丸みがあるのは分かりましたが歯までは分からなかったので、次の日、調べ直してやろうと同じ場所に行ってみました。しかし、波にさらわれてしまったのか、死骸はもうありませんでした。残念!


オオワシとカラスが食べていた生き物はネズミイルカかっ?!


 生き物の死骸を見るのは一般的に気持ちのよいことではないと思います。
でも、死んだ生き物が何であるかを推理し、どんな動物がその生き物の体を食べているのかを調べていって、食物連鎖の一つの繋がりを確かめられた時、野生の世界でどんな最期を迎えたとしても一生懸命に生きた命が必ず還っていく場所があることを実感できます。
 以前も書きましたが“人”である私は、自分が食物連鎖の真ん中に入ることなど怖くて想像もしたくないです。けれど、現在サロベツ原野で見られる野生生物たちの生きる様子を通して、改めて様々な命に生かされていることを教えられています。

(注意!)
 生き物の死骸を調べることのおもしろさに触れましたが、北海道では、ヒグマなど人間を襲うこともある動物が食べているものに近づくこと、ヒグマがいなくてもヒグマが出没する場所で動物の死骸に近づくことは危険です!ヒグマは戻ってきて餌の続きを食べることが多い上に、自分のものに対する執着心が非常に強いです。餌を取られると思って襲ってくることがありますので、このような危険がある場所では絶対に死骸に近づかないようにしてください!







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2009年10月21日北からのお客様たち

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 9月から10月末頃までのこの時期、原野に出ていると高い空の上から「グワァ、グワァ」と声が降ってくることがあります。ユーラシア大陸北部からはるばる海を越えて渡ってきたオオヒシクイの声です。空を見上げてみると、群れがVの字型の鉤になったり、一列の棹になったりしながら、飛んでいく様子が見えたりします。彼らは越冬のために南へ渡っていく途中であり、サロベツ原野近辺の湖沼で翼を休め、そこからさらに南下するのです。

 原野に渡ってきたオオヒシクイについては、昨年のAR日記にも載せましたが、ガン類に属する鳥を見たのはその時が初めてでしたので、あまり知っていることがなく、ただただひとところに集まる数の多さに圧倒され、オオヒシクイを突き動かして渡り鳥たらしめている要因のようなものの不思議さを漠然と感じました。そして今年、再びブログを書こうと思って気づいたことですが、今もやっぱりオオヒシクイについて知らないことがすごく多いことを感じます。




 今年も幌延町下沼地区の牧草地に飛来したオオヒシクイたちを何回か観察しに行き、農道沿って見られる数のカウントを行いました。実際は農地の奥の草むらの向こうにもわんさかわんさかいたことでしょう。

○カウント数
9/5   11羽(国定鳥獣保護区管理員さんカウント)
9/11   800羽~1000羽(賀勢カウント)
9/12   1644羽(国定鳥獣保護区管理員さんカウント)
9/14   2000羽(賀勢カウント)
9/22   4437羽(国定鳥獣保護区管理員さんカウント)
9/28   5347羽(国定鳥獣保護区管理員さんカウント)
10/6   2200~2500羽(賀勢カウント)

※これを見ると9月の末が飛来数のピークだったことが分かります。

 観察しながら思ったことですが、彼らは外見(羽の色、模様)がみんな一緒です。
しかもひとところにウジャっと集まって沢山いる・・・。
当たり前のことを改めて実感したのですが、だからこそ観察が難しい・・・。
実際には個体ごとの特徴や個性があるのでしょうが、鳥を見るのにあまり慣れていないと画一的に見えてしまいがちかもしれません。

 同じガンカモ科でも、カモの仲間は雄の羽の色や模様が鮮やかで雌は地味ですから、少なくとも雄雌の区別はつきます。区別がつくということで観察はかなりしやすくなります。
「カモの雄たちはお嫁さんをもらうためにオシャレを競っていて、雌たちは強くてハンサムな雄に憧れるんだ」という風に彼らの行動や形が持つ意味に対するイメージも湧きやすい気がします。

 だから、カモの観察には親しみが持ちやすいけれど、オオヒシクイなどガンの観察にはとっつきにくい印象を持つ人が多いかも!?

 けれど、同じように見えるオオヒシクイの群れでは沢山の家族が集まって構成されているということ、個々の家族は渡りの間は常に一緒に行動し、お互いを確認し合っているのだということ、ヒナは親鳥の鳴き声と顔を他と区別して覚えているのだということ、雄と雌はどちらか片方が死なない限り一生同じ相手とつがうこと(これは年ごとにつがう相手を変えるカモとは対照的です)、など実に豊かな「個」の姿がそこにはあるようです。
これだけ明確に「個」を認識できる鳥だからこそ、わざわざ外見の違いに凝ることはしなかったのかもしれません。


群れから外れて農道から近い場所で採餌していたオオヒシクイ5羽。
彼らは家族なのでしょうか。私を見て変な奴が来たぞ!というふうにお尻をふりふり遠ざかっていきました。


 
人間がオオヒシクイの個々を区別できるようになるには、かなりじっくり腰を据えた観察が必要でしょうが、来年はオオヒシクイの「個」にもう少し注目した観察をしてみたいと思いました。
「あそこにいる何羽かは家族だ!」くらいは分かるようになりたいな、と思うこの頃です。

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