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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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利尻礼文サロベツ国立公園 稚内

268件の記事があります。

2009年10月05日秋の森の探検(その2:けったいなキノコ)

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

砂丘林の巡視では、形や色などがかなり風変わりなキノコたちに出会うことができました。

 私たちがキノコとして見ているのは、繁殖器官である子実体という部分であり、菌類が胞子を分散させるためのものです。
菌類は森の中で次のような役割を担っています。

・枯れた樹木などに取り付いて、これらを二酸化炭素とより元素に近いかたちにまで分解して森の物質循環を円滑にします。
・生きている樹木に寄生して時に枯死させ、樹木の間引きや森の更新を促しています。
・樹木の根と共生関係を結び、樹木が光合成でつくった養分を分けてもらうかわりに
 樹木が必要な養分と水を樹木単独の場合より効率よく取り入れる手助けをしています。
 
 上の役割によってキノコなど菌類は森を豊かで健全に保ちます。
この巡視で沢山の種類のキノコが見られたのは、稚咲内の砂丘林が豊かな証であるように思いました。沢山見られたキノコの中からいつくかご紹介します。
でも、砂丘林内は国立公園の特別保護地区に指定されていますのでキノコ採集はしないようお願いしますね。


 鮮やかな朱色が曲がりくねって細長く伸びた写真のこのキノコ、まるで蝋細工のよう。隣の針葉樹実生の艶のある濃い緑とのコントラストがとても美しいです。調べてみるとどうやらベニナギナタタケだと思われました。


ベニナギナタタケと思われるキノコ 


※しかし、ベニナギナタタケに似たキノコに猛毒のカエンタケというのがあって誤食をしないよう注意が必要です。カエンタケは北海道では特にまれなキノコで発生する場所も苫小牧市、恵庭市など限られているようですが
(五十嵐恒夫著:北海道のキノコ 北海道新聞社より)、
食べられるキノコ、食べられないキノコを見分ける際には、専門家に見てもらうなど確かな情報をもとに十分気をつけてください。「きっとこれは食べても大丈夫よ。」という思いこみは危険です。くれぐれもご注意を!

 また、鮮やかな緑に苔むした倒木の上にはかわいらしい白いキノコがちょんちょんと並んでいました。私にはこのキノコたちが「もののけ姫」に出てくる木霊みたいに見えました。この倒木はこれら白いキノコたちによって森の土に還っていく途中なのです。何キノコなのかは分かりませんでした。かわいらしいけれど毒かもしれませんね。


苔むした倒木に生える白いキノコ 倒木は白い水玉がついた緑の衣を着ているようです。


 そしてっ!最後に紹介するのは!なんと「ひげじい茸」!・・・と命名したくなるようなキノコです。
キノコの細長い針(胞子を飛ばす部分)の束が白くふさふさした立派なおひげのように垂れ下がっている様子は、NHKで放送している生き物番組「ダーウィンが来た」に登場するキャラクター、「ひげじい」にそっくりだと思いませんか?この「ひげじい茸」の正式名称はおそらくヤマブシタケであると思われました。このキノコの形が山伏が着る着物(結袈裟)についている丸い飾りに似ているためにつけられた名前だそうです。


「おおっ!こんなところにヒゲジイがっ!」 ヒゲジイにそっくりのこのキノコはヤマブシタケか・・・。


 人間とはかけ離れた生き物であるためかキノコにはどこか得体のしれないところがありますが、じっと観察しているうちに、人間やキノコに比べて人間により近い生き物には見られない色や形の斬新さ、ユニークさに魅せられました。

秋はキノコノコノコ・・・の季節。
皆さんも毒キノコには十分注意しながら、キノコを観察してみませんか。



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2009年10月05日秋の森の探検(その1:秋色づく)

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

9月の中旬に地元NPOのスタッフの方たちと一緒に稚咲内の海岸砂丘林の巡視に行ってきました。

 海岸砂丘林はサロベツ原野に隣接する日本海の海岸線と平行に延びた細長い森林です。昔、日本海の潮流や冬の強い北西風と波によって陸に打ち上げられた砂が、風の緩急によって海岸線と平行に帯状の巨大な風紋として堆積して海岸砂丘となり、さらにその上にわずかな土が溜まって森が育ちました。これが砂丘林です。

 砂丘林には、エゾモモンガやクマゲラが巣を作るのによい木がたくさんあります。さらに、砂丘の谷間には雨水や雪解け水、河川からの水が流れ込んで湿地や湖沼ができ、エゾシカが水を飲みに訪れたり、水鳥たちが身を潜めたり、エゾアカガエルが産卵する場所になったりと、多くの生き物にとって大切な棲みかになっています。ここは利尻礼文サロベツ国立公園の特別保護地区になっています。

 砂丘林の中はひんやりとしていて湿った落ち葉の匂い。

ほのかに黄色や赤に色づき始めた樹冠を通してやわらかな秋の陽差しが降り注いできます。

林床にはゴゼンタチバナの赤い可愛らしい実。

ラピスラズリの吸い込まれるような青に似たツバメオモトの実。

実を糸に通して首飾りにしてみたいと感じてしまいます。

そして、丸い葉にきっちりと細かく刻まれた葉脈が亀の甲のような

オオカメノキは鮮やかな赤い実をつけていました。

この他にもツルシキミ、オオバスノキの実を見ることができました。

砂丘林の草木たちは実を結ぶ季節を迎えていました。

今年精一杯咲いた花たちが結んだ実、来年の森のサイクルに繋がっていくのでしょう。


ゴゼンタチバナの赤い実 株によっては5,6個実をつけているものもあります。


ツバメオモトの実 


オオカメノキの実


※これら草木の中からゴゼンタチバナを少し詳しくご紹介。
 ゴゼンタチバナはミズキ科の多年草で、花(実)をつける株は6枚の葉を、つけない株は4枚の葉をつけています。6~7月に咲く花は確かにミズキ科の木本であるヤマボウシやハナミズキ(別名アメリカヤマボウシ:街路樹として植えられているものが多い)に似ています。ひと株に4弁花の白い花がひとつつくのだと思いきや、花びらに見える4枚の白いものは総苞といって葉が変化したものなんだそうで実際の花は4枚の総苞に囲まれた真ん中部分に多数つきます。ゴゼンタチバナがひと株ひとつではなく多数の花をつけることは、秋のこの時期、赤い実がひと株に複数個ついているのをみればすぐに納得できます。
 サロベツ原野では、砂丘林にはゴゼンタチバナが、湿原にはエゾゴゼンタチバナが生育しています。エゾゴゼンタチバナは葉や総苞、花が茎のほぼ同じ高さから集中して出ているゴゼンタチバナに比べると、少し伸び上がってこれらが出る高さがずれた感じで、総苞に囲まれた花の部分が黒っぽくなっています。(写真を載せられなくてごめんなさい。)

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2009年09月17日草海原に溺れる

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

少し前のことになりますが8月下旬、地元NPOのスタッフさんと一緒に豊富町落合地区の巡視に行ってきました。
ここは牧草地と湿原が隣接しており、サロベツ川の氾濫の影響を受けやすい場所でした。
そのため、60年代始め頃から放水路、水抜き水路を設ける工事が行われました。
その結果、牧草地はサロベツ川の氾濫の影響を受けなくなったものの、
乾燥化によって高層湿原の植生は失われて落合沼という沼も干上がってしまいました。
 現在は水抜き水路をせき止めたり、湿原と牧草地の境界に帯状に緩衝帯を設けて
地下水位を湿原側で高く、牧草地側で低く保つことで高層湿原の植生を回復させ、湿原の自然と農業を共存させる取り組みがなされています。

 久しぶりに湿原内に入ったところ、そこはもう人の背丈を超えるほどのヨシの海!
青いうねりがどこまでもどこまでも続く草海原。
ヨシの細長い葉と穂が風に吹かれて流れるようになびいています。





風の通り道 草の波


この中を悪戦苦闘しながらただひたすらかき分けかき分け進むうちに、私たちは本当に荒海を泳いで渡っているような気持ちになってきました。
溺れそうになりながら見上げた空は秋の始めの澄みきった青。
小さい雲がうろこのように無数に集まったいわし雲、マンボウやエイのように平べったくて、すーっとした雲も泳いでいます。
何とも穏やかで優しい雲のかたち。
しかし、空に見とれてぼんやり上を向いていたらヨシに足をとられて何度か海にダイブしました。
青い草海原は見た目の美しさとはうらはらに非常に手強い相手でした。


草の海にダイブして見えた秋の空

 この日の巡視の結果、緩衝帯や落合沼の状況を調査する場合に備えて
調査用木道沿いの草刈りをしておいた方がいいということになりました。
ヨシを刈った後はとても歩きやすくなるでしょうが、
人を寄せ付けないほど密生した草の力強さを体全体で感じて、
原野という環境が長い間人の侵入を拒みそれ故に貴重な自然が残ったことと
この地域を開拓するのは本当に大変だったということを改めて感じることができました。


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2009年09月14日利尻山にも白い便り

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

9月9日、大雪山系で昨年より2週間早い初雪があったそうですが、利尻山でも、その前日、あられが降りました!まだ、沢筋の雪渓も消えていないというのに、早いですねえ。

登山をされる方、本当に寒いですよ、ばっちり冬山装備でお願いしますね。
私が登ったのはあられの降った翌9日だったのですが、この日は、暑がりの私が、フリースにニット帽、その上にレインウェアという冬並みの装備で登っていたほどです。
利尻山は風が強いですからね。よける場所も限られていますし。まだ寒さに慣れていないせいもありますが、体感温度は真冬並みでした。

これから9月末にはシルバーウィークが控えていますが、北海道の山はもう冬ですよ!!
寒いだけではなく、これからは岩場も結露した水滴が凍結を始めます。北海道の冬の訪れは北アルプスよりも早いですから、間違えて夏山登山気分で来られぬよう、注意してください。

ちなみに、これからの季節は日に日に日の暮れる時間が早くなっていきます。(9月下旬で日の出5:30頃,日の入17:20頃です。)、早出早着はもちろん、ヘッドランプも必ず持つようにしましょう。「日帰りだからいいや・・」で、ライトを持たずに出かけて怪我をしても、9月中旬を過ぎると登山者数が1日に数人程度ですから、助けを呼べる可能性も少なくなります。こちらも充分ご注意ください。


登山道の侵食箇所に吹き溜まっていたあられの粒!
(利尻山山頂直下)


シマリスも忙しそうに木の皮か何かを運んでいました。

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2009年08月12日礼文の桃岩

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 サロベツの海岸線には砂浜がありますが、利尻島には砂浜がほとんどなく、礼文島にも少ない。
私は、砂浜を散策するのが好きですが、最近、礼文に行って南部の桃台・猫台周辺から桃岩を見上げたとき、
海に面する地形のおもしろさに惹かれました。
 礼文の桃岩の岩肌の荒々しさを言葉で表現できないかと頑張ってみました。でも、地質に関する事柄をほとんど知らないので、うまく書き表せませんでした。
生物や自然の風景を述べるとき、絵を描くにも文章を書くにも人に伝えるにも、科学的な知識や考え方を持っていれば、どんなに表現の幅が広がることだろう、とよく思います。
 今回も岩石や地質に関する図鑑を開いてみたのですが、地学に関することなど高校生以来。
ごちゃごちゃ調べて、ようやく、桃岩の構成地質が輝石ひん岩という鉱物で、
壁面はたまねぎの皮のように幾重にも岩が巻き、皮状に剥離しやすいものであるということ(これを球状節理(※)というそうです)、新第三紀という地質年代にできたものだということが分かりました。
地学は苦手だったけれど、この機会に鉱物のことをもっとよく知ってみようかと思いました。
勉強不足ですが、以下、桃台・猫台から見上げた桃岩の岩肌の様子をポエムにしてみました(笑)!

※1.節理 岩石中に見られる規則正しい割れ目のこと


桃岩展望台より見おろした桃岩斜面も絶景です!



礼文の桃岩・岩肌の詩

大地がうねりうねった何億年もの集積が、

めくれあがって荒々しく露出し、渦を巻くように刻み込まれた地層の文様が見える。

壁面には多数の柱状の岩石が突き刺さり、楔のように打ち込まれた大地の記憶。

桃岩を見上げ、最北の島の太古から現在を想う時、

迫ってくる圧倒的な地質的時間の積み重なりにもう押しつぶされそうだ。

 けれど荒々しさとは対照的に、人力を越えて創られたこのとてつもなく巨大な岩の上には、

土と水が溜まって草花の種がこぼれ、短い夏には、青草の間に白や桃色、紫、黄色の優しい花影が揺れる。

北に惹かれる人とは、何か切ないことがあって、心踊るものとは別の厳しいものを求めて訪れる人である、

と聞くことがある。

そのような人たちがいるとすれば、花壇や気候が温和な場所に咲く花ではなく、

風が吹き付け、冷涼なこの厳しい岩肌に咲く野生の草花に心を慰められるのだろうか。



 礼文は今、秋の花々の盛りです。
トウゲブキ、ツリガネニンジン、ミヤガワソウ、キタノコギリソウ、エゾノコギリソウなどが、
草紅葉が始まりかけた斜面に咲き、初夏とは違った彩りを楽しむことができます。

皆さんもぜひ、初秋の礼文を訪れて秋の花々の美しさと島の地形のおもしろさを満喫してみてはいかがでしょう。



秋の草花の彩り


見える花々は、ミヤガワソウ、エゾゴマナ、キンミズヒキ、オニシモツケ

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2009年08月03日利尻山最新登山情報(7月30日版)

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

■8月上旬の山頂気温めやす
 (最高気温)12~18℃、(最低気温)5~8℃

■最新ルート状況
 6月以降、雨が多いため、登山道の路肩崩落や落石の危険が高まっています。
 日本気象協会発表の長期予報によると、8月も例年より気温が低く、ぐずついた日が多い見込み。
特に荒天日の気温は低く、山頂付近では最高気温が10℃以下の日もあります。
 雨が多いため、両コースとも樹林帯ではぬかるみが多い状態です。
この夏、靴の汚れを嫌って草地に新しい道ができている所や、道幅が広がっている所が、急増していますが、登山道の荒廃につながりますので、ぬかるみでは、脇に避けずに道の真ん中を歩いてください。
※鴛泊コースの登山口には、水洗の靴洗い場とブラシを設置しています。

■自然情報
 東斜面には、まだ大きな雪渓が残っています。雪渓の周辺には利尻山固有のボタンキンバイが群落をつくっています。※登山道上の残雪はありません。


7月26日の様子(鴛泊コース8合目から見た山頂)

 花の種類が最も多い季節です!
今年は種類によって開花の遅いものと早いものがあり、面白いですよ。今なら、本来、夏の終わりを告げる花であるリシリブシやリシリリンドウが見られる一方、雪解け後、すぐに咲くエゾツツジやミヤマアズマギクなども同時に見ることができます♪


赤:エゾツツジ、青:リシリブシ、黄:ボタンキンバイ

■安全登山のために
 沓形コースは、避難小屋より下部で、水はけが悪く石がゴロゴロしている道が続きます。滑りやすいので、沓形コースを歩きたい方には、できるだけ「登り」に利用されることをお勧めします。


沓形コース6合目付近の滑りやすい道

 利尻山は強風が名物!悪天日はそもそも登らないのがベストですが、もし登り始めてしまった場合は、鴛泊コースの場合6合目、沓形コースの場合8合目付近から急に風が強くなるので、ここで帽子が飛ばされるような風が吹いている時は引き返しましょう! 

■利尻山を守るためのお願い
 3つの「利尻ルール」を守ってください!!
①携帯トイレを使う
②ストックにはキャップをつける(着脱の判断は自己責任でお願いします!)
③植物の上に踏み込まない、座らない
携帯トイレ(400円)とストックのキャップ(200円)は、島内の全宿泊施設、キャンプ場で販売しているほか、携帯トイレのみは各観光案内、コンビニなどでも販売しています。

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2009年07月22日【緊急】利尻山の安全登山に関する注意事項

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

「登山道の路肩崩落と、低温にご注意ください!!」

この夏の利尻は、例年とは違い雨が多く、悪天候になると9月並みの低温になる状態が続いています。また、雨が続いているため、地盤が緩み、地質の脆い利尻山上部では、登山道の路肩崩落も発生しています。以下の点に十分注意し、着替え、防寒、防雨対策をしっかりと整えたうえで入山するよう心がけてください。

【注意事項】
① 今年の利尻山は雨や曇り空の日が多く、悪天候日の気温は9月並みの低温になります。
→防寒対策、着替え、上下別の登山用雨具をしっかりと!ただし風雨の中の長時間行動は、どんなに高性能な装備を持っていても危険ですので、過信しないように。
② 利尻山は海上の独立峰で風が強く、上部に行けば行くほど風を避けるスペースも限られます。濡れた体を風に吹かれれば、体感温度は0度以下になるので注意。
→悪天日は登山を控えるか、途中下山の判断は“寒さを感じ始める前に”早めに!
③ 地盤が緩んでいることで、落石や路肩崩壊の危険性が高まっています。
→雨中・雨後の登山は路肩崩落や、上部からの落石の危険性が高まります。悪天日の登山は控えてください!

◆写真:沓形コース上部の路肩崩壊地(7月16日の状況)
場所は、鴛泊コースとの合流点へあと5分程度の所です。幅1m、深さ1.5m、登山道の欠落距離3m。
残された路肩は30cm程度ありますが、連日の雨で崩れやすい状態になっています。十分気をつけて通行し、悪天日の登山はお控えください。


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2009年07月21日さらわれたエゾスカシユリ

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 エゾスカシユリは花びらと花びらの付け根に隙間がある鮮やかなオレンジ色のユリで、
サロベツ原野では海岸砂丘に多く自生しています。
花全体を透かし細工の切り絵のように見せている花びらの付け根の隙間は、
真っ直ぐ上を向いて咲くときに花の中に雨水が溜まって腐ったり傷んだりしないようにするためのものです。



エゾスカシユリの真綿のような蕾・・・私は最初アワフキムシかと思いました。(5月下旬撮影)



オレンジ色が鮮やかなエゾスカシユリの花


 多くのユリが首を垂れ、うなだれて咲くのに対し、背は低いけれど真っ直ぐ上を向いて咲くこの野生のユリに
私は何か強くて凛とした印象を受けます。

 今年も多くの人たちがエゾスカシユリの咲く海岸線の風景を楽しんでいたに違いありません。
 
 ところが、7月始め、自然公園指導員の方から浜勇知にあるコウホネ沼周囲の木道沿い(利尻礼文サロベツ国立公園第2種特別地域)に
エゾスカシユリと思われる植物を盗掘した跡があるとの連絡を受けました。
現場に行ってみると木道から数メートル離れた場所にスコップで掘り取ったであろう穴が5つ。
穴の周囲は草が踏み倒されて無惨な状況です。


エゾスカシユリと思われる植物を無惨に掘り取った跡


 国立公園内で植物を採取することは法律で禁止されています。
特別地域内ではエゾスカシユリなどの指定植物(※)を盗掘するのは自然公園法違反!山野草は、自生の地に根付いいて意味があります。たとえ指定植物でなくても、採取するのは止めましょう。

 美しいものを手元に置きたいと願うのは人の心の常ですが、
皆のものであり、動植物が守られねばならない国立公園内からこっそり花を盗んで独り占めしても花は生き生きとは咲きませんよ?

 ルールを守って自然に優しい利用を心がけましょう。

※自然公園指導員
国立公園、国定公園内において、動植物の保護、美化清掃、事故の防止などについて利用者の指導や情報収集を行うため、環境省の委嘱により活動しているボランティアのこと

※指定植物
絶滅が危惧されているものや国立公園の景観の重要な構成要素として指定された植物。
詳しくは環境省HPをご覧下さい。 http://www.env.go.jp/park/doc/data/plant.html


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2009年07月14日利尻山登山情報(7月10日版)

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

7月9日、久々の晴天の下、鴛泊コースの登山道整備を行ってきました!
3班に分かれて行ったのは、次の作業です。
①補助ロープの点検及び交換
②立入禁止ロープの点検及び交換
③合流点付近の土留めの補修
④避難小屋の清掃とゴミの持ち下ろし
私たちは利尻山に訪れる皆さんが、安全に気持ち良く過ごせることを願って作業していますが、登山者の皆さんも植生には踏み込まないなどのルールを守って、やさしい気持ちで歩いて下さいね!
以下に、登山情報も掲載しますので、ご参考までに。


作業しているのは、地元利尻富士町や林野庁、環境省の職員です。

安全と植生保護のために、トラロープ(黄色と黒の縞)より外には出ないようにお願いします!


【登山情報】
■ルート状況
鴛泊コース、沓形コースともに登山道上の残雪はありません。アイゼン等の必要はなく一般夏山装備で通行可能です。ただし今年は6月以来雨が続いているため、土壌が緩んでいることが予想されます。沓形コース上部の崩壊地に隣接する区間では落石や路肩崩壊に十分ご注意ください。
また、鴛泊コースの3~4合目、沓形コースの登山口~避難小屋、7合目付近は、登山道が粘土質の土壌のため、ぬかるみや滑りやすい場所が多く、特に下りの際は通常のコースタイムより時間がかかることもあります。計画にゆとりを持ちましょう。

■利尻山の様子
山頂付近のお花畑が見頃を迎えていますよ~♪
特に目立つのはボタンキンバイの群落で、鴛泊コース8合目の長官山から山頂を見ると、東側斜面が黄色く染まって見えるほどです。また、立入禁止ロープの先の崩壊地には、ボタンキンバイと同じく利尻山特産種のリシリヒナゲシも少しずつ開花してきています。双眼鏡や望遠レンズで見つけてみましょう。他にもリシリゲンゲやリシリオウギなど花盛りですので、お楽しみに!!
ただ、今年は天候が不安定で、山頂付近では30m以上の強風が吹く日も多いので、無理をせず、予備日をつくるなど、ゆとりを持った旅行計画でお越しくださいね。


ボタンキンバイの花

■いま咲いている花
(白っぽい花)
マイヅルソウ、ゴゼンタチバナ、エゾノヨツバムグラ、カニコウモリ、ヨブスマソウ、オニシモツケ、シュムシュノコギリソウ、ヤマブキショウマ、エゾマルバシモツケ、タカネナナカマド、エゾノハクサンイチゲ、リシリゲンゲ、リシリオウギ、ミヤマタネツケバナ、ミヤマハタザオ、タカネグンバイ、チシマイワブキ、ヤマハナソウ、ミヤマダイモンジソウ、イワウメ、イワヒゲ、カラフトイチヤクソウ、オオハナウド、ミヤマセンキュウ、エゾヤマゼンコ、ムカゴトラノオ
(赤っぽい花)
コケモモ、チシマアザミ、ハクサンチドリ、チシマヒョウタンボク、エゾイブキトラノオ、エゾツガザクラ、エゾツツジ、ミヤマアズマギク
(青っぽい花)
チシマフウロ、シラゲキクバクワガタ、エゾヒメクワガタ、ミヤマオダマキ、ミソガワソウ、イワギキョウ
(黄色っぽい花)
ミヤマオグルマ、イワベンケイ、ミヤマアキノキリンソウ、キバナノコマノツメ、ウコンウツギ、リシリヒナゲシ、ヤマガラシ、エゾカンゾウ
(地味な色の花)
マルバギシギシ、タカネスイバ、バイケイソウ、ミネヤナギ、チシマヨモギ
※他にもたくさんの種類が咲いていますが、ひとまず目立つ花だけを挙げておきました。名前が間違っていたらごめんなさい。

■装備・計画のアドバイス
利尻山は海上の独立峰で天候が変わりやすく、9合目以上では強風が吹き荒れます。どんなに天気予報の良い日でも、必ずレインウェアをお忘れにならないよう気を付けてください。また登山の標高差1500m、標準コースタイム10時間は、北アルプスで言えば、新穂高発→槍沢経由で槍ヶ岳山頂に日帰りで登るのに相当します。しかも利尻山には途中に水場も売店もありませんので、安易に登れる山ではないことをしっかりと肝に銘じておいてください!
ちなみに、利尻にはクマがいませんので、鈴は不要です。

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2009年06月18日最新・利尻山登山情報(6月17日版)

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

いよいよ夏山シーズンが始まりました!!
最新情報をお届けしますので、みなさま、しっかりと準備して利尻山を楽しんでいただければと思います。
それと、利尻山は近年、登山者の増加などによって登山道の侵食・荒廃が進んでいます。
楽しむと同時に、利尻ルールなどのマナーを守り、山の弱さにも気を配って一歩一歩を重ねていただければと思います。

☆利尻ルール☆
1.携帯トイレを使う
2.ストックにキャップをつける
3.植物の上に座らない、踏み込まない


それでは登山情報を!

■鴛泊コース
・鴛泊コースのルート上に残雪はありません。
・6月に入り、雨が続いているため一部にぬかるみがあります。
・1日の平均気温が5℃程度(山頂)と、今年の6月は気温が低い状態が続いています。
・利尻山は風が強いので防寒着を必ずお持ちください。
・9合目以上でエゾノハクサンイチゲやキバナシャクバゲなどの高山植物が咲き始めています。見頃には少し早いのですが、可愛らしいつぼみをたくさん見ることができます。
・6月下旬~7月10日頃までは利用のピークで、ツアー登山など団体登山も多いため、時間帯によってはトイレや山頂部等が混み合います。自分のペースでゆっくりと歩きたい方には、時間をずらすか、登山計画を別の時期にずらすことをおすすめします。
《参考:「2009利尻山混雑日予想カレンダー」*「利尻山混雑日予想カレンダー」で検索すれば、国立公園HPからダウンロードすることができます。》

■沓形コース
・三眺山までは残雪ありません。一般夏山装備で通行可能です。
・沓形コースのトイレブース・オープンは6月19日の予定。
・雨が続いているため、登山口~避難小屋間の粘土質の土壌が大変滑りやすい状態になっています。利尻山は標高差が高く、下山時に疲れが溜まるため、沓形コースを利用される場合は、下りよりも登りに利用されることをお勧めします。

※三眺山より上部(合流点まで)について
利尻山登山道等維持管理連絡協議会では、三眺山より上部の夏山登山シーズンを7月1日から9月末日までとしています。
現在、親知らず子知らず、合流点付近には急斜面に雪渓が残っていますが、雪渓上のルート工作等は全く行っていません。
ここは西側斜面で、日中も雪が緩まないため、軽登山靴ではステップが刻めず危険です。必ずアイゼンをお持ちください。また、この時期はルートも不明瞭ですので初心者のみで立ち入らないようにしてください。
沓形コース三眺山~合流点間は、例年7月初旬までアイゼンが必要です。


■花の開花情報
[登山口~8合目] 
※7合目付近でオオバナノエンレイソウが満開です!
ミヤマスミレ、ウコンウツギ、クロツリバナ、コミヤマカタバミ、ツルシキミ、マイヅルソウ、ミヤマオグルマ、キバナノコマノツメ、チシマフウロ
*両コースとも、ほぼ同じ花を見ることができます。

[9合目~山頂]  
※山頂付近の高山植物は、まだ咲きはじめの段階です。
エゾノハクサンイチゲ、キバナシャクナゲ、ミヤマハタザオ、イワベンケイ




左:オオバナノエンレイソウ
右:エゾノハクサンイチゲ


■山頂の気温目安
6月下旬/最高気温9℃、最低気温3℃

■その他
・必ず登山計画書を提出してください。
・両コースとも避難小屋は周辺の環境保護のため原則宿泊禁止です。緊急時および休憩のための施設とお考えください。水場等の施設もありません。宿泊される場合も、食事の残り汁などはロールペーパー等でふき取り、小屋周辺に捨てないで下さい。
・鴛泊コース避難小屋付近と、山頂付近に登山者数カウンターを設置しました。登山者数カウンターの前は、立ち止まらずに通過するよう、ご協力をお願いいたします。


↑ 山頂付近に設置した登山者数カウンター

赤外線センサーの前を人が通過すると、登り方向と下り方向を分けて、人数を記録する機械です。ソーラーパワーで電源要らず。日時・時間・気温も記録することができるすぐれもの!
これにより、利尻山の詳細な利用状況を知ることができるようになります。

■姫沼ポン山ルート
・甘露泉水→ポン山経由→姫沼 (コースタイム目安:4時間)
・甘露泉水→姫沼 (コースタイム目安:3時間)
・沢沿いなどに滑りやすい場所があるので、スニーカーではなく、トレッキングシューズで歩くことをおすすめします。食料・水・雨具等の山歩きの装備もしっかりご用意ください。
・ルート中間地点には、携帯トイレ専用のトイレブースがあります。ご利用ください。

■2009年6月17日現在の残雪状況

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