ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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苫小牧

66件の記事があります。

2012年08月30日人工飼育のシマフクロウ森へかえる 第2章

苫小牧 平 尚恵

第2章の始まりです。

再捕獲されてからはケージの中で、順調に馴化をしていったシマフクロウのオスですが、すっかり体重も元に戻り、羽の生え替わりも済ませました。(一時は抜け掛かった羽がぼさぼさでとっても可愛らしかったです 笑)

そして迎えた2回目の放鳥

試行錯誤はしましたが、数日後にオスが給餌池に来たときには嬉しさ半分、ほっとしたのが本音です。
また、捕まえることになったら可愛そうですもんね。

その後オスとメスは2羽で魚を捕るようになり、その様子が設置しているビデオカメラでも確認できるようになったことで、いよいよ繁殖も期待出来るところまで来ました。

ここから情報収集は、ビデオの映像に託されることになりました。
夕方から次の日の朝まで給餌池を録画し、映像を確認しました。
すると2月を最後にメスが給餌池に来なくなったのです。

このことが意味するのは、メスが卵を温めている可能性が高いと言うことです。
ここからは、一気に事態が動き出します。

オスが、今まで池の縁で食べていた魚を、持ち去るようになったのです。
私たちはこの持ち去りという行動を頼りに、メスの様子を推理していきました。

オスが魚をメスに運んでいる=メスは卵を抱いていて魚を捕りに来られない

そして約2ヶ月半後、メスが再度給餌池に現れました。
この段階ではまだヒナが孵ったのかは分かりません。

するとメスも魚を持ち去り、どこかへ運んでいるではないですか。
つまり巣にはヒナが誕生していて、エサを待ちわびているということになります。

これほどの朗報はありません。
ビデオの映像ごしとはいえ、魚を捕る姿を自然に応援している自分がいました。

そしてついに、ヒナに脚環を付ける日を迎えました。
この日まで本当にヒナが居るかどうかの確認は出来ていませんでした。

そして・・・ いました!

元気なヒナが2羽。 後の遺伝子検査でメスと判明。
無事に脚環を付けることができました。

獣医さんによるヒナの健康診断の様子

これは大変なことです!!
人工飼育下で育ったシマフクロウが野生個体のメスと、繁殖に成功したということは記録が残っている中では初めてのことなのです。

それから今、親子4羽は毎日元気にエサを捕りにきていますよ!!
これから、幼鳥は少しずつ魚の取り方を覚えて親元から巣立つ日に向けて訓練を積んでいきます。


彼らを驚かせないように、赤外線フラッシュのセンサーカメラで撮影しています。

ここで皆さんにお願いです。
体の大きな彼らの子育てには、太くて大きな木の巣穴が必要です。
食欲旺盛なヒナには、魚が沢山いる豊かな川が必要です。
そして、人が近寄らず静かで安心して子育てが出来る環境が必要です。

近年は特に野生動物との関わり方について、色々と問題になっています。
ごく一部の方の行為ではありますが、興味本位で写真を撮ろうとしたり、軽い気持ちで彼らを追い回すようなことだけはしないで下さい。

人間が近くにいるだけで、警戒して魚を捕りに来られなくなったり、巣で子育てが出来なくなってしまいます。

「いやいや俺の知っているシマフクロウは、人間なんか気にせず魚を捕りに来ているよ。」
と言う方もいますが、それは違います。

彼らは、そこがどんなに嫌な場所でも魚を捕りに来るしかないのです。
そこにしか食べ物がないのですから。
どうかお願いします。彼らの自由を尊重してあげて下さい。


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2012年08月28日人工飼育のシマフクロウ森へかえる 第1章

苫小牧 平 尚恵

こんにちは

さてさて、今日はシマフクロウのお話をしようと思います。

今年の6月22日に、「人工飼育していたシマフクロウが野生復帰をして、繁殖に成功した!!」と新聞各紙やテレビでも放映されましたね。

そこで今回は、新聞やテレビにはのっていないような、裏話を中心に書きたいと思います。

そう。あれは昨年の春のことでした。

上川管内の森で、放鳥したオスのシマフクロウが行方不明になっていたのです。

と、その前に
元々この森には野生のシマフクロウのメス(シマフクロウとしてはかなりのおばぁちゃん24歳)が、たった1羽生息していたのですが、近くに他のシマフクロウはおらず、最も近い生息地からシマフクロウのオスが飛んでくるには遠くて、繁殖することは困難な状況でした。
そもそもシマフクロウは、日本には北海道にのみ生息し、しかも140羽しかおらず、環境省のレッドリストでは絶滅危惧ⅠA類ですので、このメスも大変貴重な1羽なのです。

そこで、このメスに繁殖をしてシマフクロウの生息地の拡大をして欲しいと考え、環境省で保護しているオスを連れてきては、メスとのお見合いを試みましたが、それはとてつもなく難しいことで5羽目となる今回でようやく成功に至ったのでした。

ここからが、人工飼育のシマフクロウ野生復帰への第1章の物語になります。

まず第1に行ったことは、メスとお見合いをするために、馴化といってその周辺の環境に慣れるよう、オスを野外のケージの中で飼育しました。


ケージの中のシマフクロウのオス(3歳)

馴化を始めてすぐにメスが、ケージの近くに飛んできてオスに興味を示すようになりました。そしてお互いの相性も良いだろうと判断されたため、オスをケージから外に出す(放鳥)ことになりました。


が、しかし・・・


オスの尾羽には小さな発信器が付けてあったのですが、居所が分からなくなってしまったのです。


電波を受信するアンテナや、追跡に使用した機材


そこで、オスがいそうな森の近くで、専門家や職員が連日電波を追い続けました。
そのかいあってオスは発見されたのですが、健康が心配されたため、再捕獲をすることになりました。

捕獲されたオスは痩せていて、回復にもう少し時間を必要としました。
そのため再度ケージの中で、馴化を行うことになったのです。

シマフクロウは、魚を主食としているため豊かな川が残っている場所でしか生きることが出来ないのです。
私たちの豊かな生活を支えている裏側で、様々な生き物に影響を与えていることを忘れてはいけません。

ここから、オスの野生復帰の物語、第2章が始まるのですが、それはまた次回ということで。
楽しみにしていて下さいね。


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2012年08月17日イベントが無事に終了しました。

苫小牧 平 尚恵

こんにちは!!

7月28日にウトナイ湖野生鳥獣保護センター10週年記念イベントを行いました。
当日は雨も降らず、かといって猛暑でもなく、参加者の皆さんと元気よく10週年をお祝い出来ました。
センターに来館して下さったみなさま、ありがとうございました。

さて、当日は午前中に私や先輩レンジャーがガイドとして、ウトナイ湖の木道や湖岸、林の中を散策したのですが、子供から大人までが一緒になって、花や虫、鳥などを発見してウトナイ湖の生き物たちの賑わいを感じて歩きました。


左上:ホザキシモツケ  右上:ノコギリソウ
左下:ヒシの実     右下:フタスジチョウ



何がみつかるかな??発見した生き物の写真をパシャリ!
子供達ともパシャリ!



みんなで撮った写真をパネルにまとめました。
こんなに生き物がいるんだなぁ~



午後からはセンターの獣医師である、山田先生から野生動物の救護の現場について、おはなしと現場見学を行いました。
参加者の皆さんは真剣な表情で救護の話に聞き入っていました。

最後に、ミニコンサートも開かれて、イベントは無事に終了。
皆さん楽しんで頂けたでしょうか??

通常のセンターのイベントとして、観察会はあと3回予定していますし、動物救護のボランティア講座も開かれますので、興味を持って頂けた方は、ぜひ参加してみて下さいね!!


我々一同、ウトナイ湖の素晴らしさを守り伝えて行けるよう頑張りますので、これからもウトナイ湖と野生鳥獣保護センターを、どうぞ宜しくお願いします。

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2012年08月01日ペットの適正飼育シンポジウムのご案内

苫小牧 平 尚恵

皆さんこんにちは

今日は、ウトナイ湖とは関係はないのですが、シンポジウムのご案内をさせて頂きます。

時:9月7日 14時15分~17時15分
場所:酪農学園大学C1館3階
題名:「ペットの適正飼育シンポジウム」
内容:野猫が希少な鳥を補食していることで、希少な鳥が減っているとうい現状をいかに解決すべきか。実際に、ノネコを保護し新しい飼い主を探して希少な鳥を守ったという、沖縄の事例を紹介し、これから取り組もうとしている、羽幌町天売島について、パネルディスカッション形式で話し合います。

議題に上がっている羽幌町は、中学まで住んでいた私の故郷でもあります。
天売島は羽幌町から船で約1時間半、人と海鳥が住む自然豊かな漁師町です。
天売島は有人島でありながら、大規模なの海鳥のコロニー(繁殖地)が存在する世界有数の島なのです。
ついこの間も、ウミガラスのヒナが10羽巣立ったことが大きく新聞にのりましたね。
しかし、天売島ではノネコが増えすぎたことで、海鳥が食べられているかもしれないのです。
これ以上海鳥を減らさないためにも、ノネコを保護し、新しい飼い主を探そうという試みが本格的に動き出しました。

今回のシンポジウムでは、北海道獣医師会の協力を得て皆さんに理解を深めて頂くことを目的としています。

是非、会場でお会いしましょう。




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2012年07月09日お知らせ!  ウトナイ湖野生鳥獣保護センターでのイベントの開催

苫小牧 平 尚恵

皆さんこんにちは。
だんだん夏本番になってきましたね!

さて、今年は苫小牧市のウトナイ湖にあります、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターが7月28日で開館10週年を向かえることになりました。 

そこで、日頃からウトナイ湖鳥獣保護区を利用して下さっている方から、初めてウトナイ湖の存在を知った方まで楽しめるセンター開館10週年記念イベントを行います!!

10年間の感謝を込めて、センター職員が企画する鳥獣保護区散策やセンターの裏側見学ツアーを行うなど、盛りだくさんの内容でおおくりいたします。

イベント詳細
1.イベントスケジュール  
 日時:平成24年7月28日
 場所:ウトナイ湖野生鳥獣保護センター(苫小牧市字植苗156番地26)
① 夏の水辺で自然ウォッチング!:午前9時30分~12時(雨天決行)
内容:湖岸や林の自然観察路を散策しながら草花や野鳥などを五感で楽しみ、生きものたちのにぎわいやウトナイ湖の夏を感じます。
用意:飲み物、雨具(カッパ)、あれば双眼鏡(貸出しあり)、歩きやすい靴と服装
② 野生動物救護の現場見学とおはなし:午後13時~14時
内容:ウトナイ湖野生鳥獣保護センターの野生動物救護活動を知ってもらい、人間と野生動物のよりよい共生のために、私たちになにができるのかを一緒に考えます。
③ 開設10周年記念ミニコンサート:午後14時30分~15時
内容:鳥と自然をテーマにした琴とシンセサイザーの演奏会。

2.募集要領
 ① 夏の水辺で自然ウォッチング!, ② 野生動物救護の現場見学とおはなし
申し込み:先着30名
対象:どなたでも(小学生以下は保護者同伴)
③ 開設10周年記念ミニコンサート
どなたでも参加可能。
  ※本日より募集開始、すべてのイベントは無料です。
  ※昼食が必要な方は、各自ご用意ください。

3.その他
  申し込み、お問い合わせはウトナイ湖野生鳥獣保護センターにお願いします。
TEL:0144-58-2231(月曜日を除く9:00~17:00)


たくさんの方と、ウトナイ湖でお会い出来ることを楽しみにしていますね。

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2012年05月22日ウトナイ湖野生鳥獣保護センターでアフリカゾウについて学ぶ

苫小牧 平 尚恵

こんにちは。 先日の日食はなかなか迫力がありましたね。日食中は本当に肌寒くなり改めて太陽のありがたさを実感しました。

さて、先週の19日(土)にウトナイ湖野生鳥獣保護センターでアフリカゾウの研究者、中村千秋さんによる講演会が有り参加してきました。
講師:中村千秋さん(アフリカ在住)
略歴:アメリカのミシガン州立大学院を卒業後、アフリカのケニヤ ツァボ・イースト国立公園にて、アフリカゾウ国際保護基金(AEF –I)の客員研究員として勤務。また、ケニヤに住む地域住民のお母さん達の生活自立プロジェクト(識字教室、洋裁教室を開催。洋裁を習得しシャツやエプロンを作って売っている。)や、現地の子供達に対してのエコツアーの開催(自分達の住んでいる環境の素晴らしさを知ってもらう。)を通し、現地でのボランティア活動を行っている。2008年にNPOサラマンドフの会を発足し日本でも普及啓発に精力的に活動中。


力強さと繊細さが共存する“アフリカ”を納めたポストカード。3枚で500円で購入しました。収益はすべて、中村千秋さんがそのままケニヤに届けます。


現在、アフリカではアフリカゾウの個体数が1980年代からの乱獲により激減し、国際的な絶滅危惧種とされています。
一見アフリカと聞くと野生動物の宝庫や楽園といったイメージですが、言い換えるなら地球上ではもうそこにしか野生動物が住めないと言えるのではないでしょうか。しかし悲しい事に、そんな貴重なアフリカの大地でも未だに密猟者が後を絶たず、多くの野生動物が命を奪われています。アフリカゾウもそんな悲しい被害者なのです。密猟者達は毒矢や銃でアフリカゾウを殺し、牙を切り取って密輸会社に売り渡すのです。

では、ここで皆さんに質問です。
ゾウは一体誰に殺されているのでしょうか?


その答えの前に、密猟者の背景を考えてみましょう。
第一に、密猟者の多くは隣の国のソマリアからやって来ると言われています。
「ソマリア」 その名前を聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
紛争、貧困、女性差別。その中でも貧困が密猟者を作っている要因なのです。
彼らは貧困から抜け出すために、命がけでお金を得ようとします。
象牙(ゾウゲ)は格好の標的というわけです。
貧困に陥った人が絶滅の危機にいるゾウを殺し、その牙を仲介屋(密輸会社)に売り渡し生活費を得る。ケニアの国立公園では、密猟者を見つけた場合その場でレンジャーが射殺しても良いということになっており、密猟者は生死をかけてゾウの牙を捕るのです。

さて、その牙はどこへ行くのかというと最も大口の輸入先は私たちの国、日本や中国などです。
象牙では様々な商品が作られ、高級品として一部の人の手に高値で渡っています。

もう先ほどの質問の答えが分かったかもしれません。

ゾウを殺しているのは誰か。



私が伝えたいことは、何気ない私たちの生活が思わぬ場所で大きな影響を与えていること、私たちみんながその影響を自覚し責任を持って生きていくべきではないかということです。象牙商品を手に取った人が、自らゾウを殺したわけではもちろんありません。それに誰もアフリカゾウが絶滅すれば良いなんて思ってはいません。
しかし、私たちが普通に生活すること自体が=他の生き物の命を頂いて成り立っているのだ。ということを忘れて欲しく無いのです。
そして、可能ならばこのアフリカゾウのように不幸な、一方的で理不尽な命の犠牲を少しでも減らせる選択を皆さんにして頂きたいと強く願っています。
もちろん私にも足りないことは沢山あります。

まずは日本から遠くの、でも同じ地球という家に住んでいる仲間の事を知って下さい。
知ることから、すべては始まります。

知った後には、考えてみて下さい。

今あなたが何気なく使っている物、食べているものは、いったいどこから来たのだろうかということを。


サラマンドフの会:スワヒリ語でサラマは平和、ンドフはゾウを意味します。
ゾウの平和を願ってネーミングされました。
少しでも興味のあるかたはウトナイ湖野生鳥獣保護センターの山田獣師氏へお問い合わせ頂くか、またはhttp://www.salamandovusociety.org のホームページをご覧下さい。

また、今年の8月20日~8月27日、8月27日~9月3日にケニヤ・エコツアーと題して、ケニヤの野生動物や地域住民の支援活動などについて学べるツアーも開催されることになっておりますので、そちらも合わせてチェックしてみて下さい。




ウトナイ湖は国指定鳥獣保護区であるというだけではなく、世界的にも貴重な渡り鳥の中継地であり、ラムサール条約に登録された国際的に重要な湿地でもあります。当センターではウトナイ湖のみならず、世界の自然環境にも目を向けていただけるようなこうした勉強会をこれからも続けていきたいと考えています。

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2012年05月10日迷子のアザラシさん

苫小牧 平 尚恵

どうもお久しぶりです。
GWの桜もあっという間に飛んで行き、もうすぐそこに夏がやって来ていますね。
さて、実はこの時期はある生き物の出産期なのです。
ある生き物とは・・・そう! ゼニガタアザラシです!

胆振地方の沿岸部では、ゼニガタアザラシの大群が今まさに出産ピークを迎えているのですが、明るい話題の裏には悲しい現実もあるもので・・・
なんと5月7日~9日にかけて毎日1頭、計3頭の子アザラシが保護されてしまいました。(9日の子は残念ながら搬送途中で死んでしまいました。)
この子達は皆、周辺に親がおらず漁港の陸地でぐったりと衰弱しているところを発見され通報されました。

…….5月7日…午前9時……電話が鳴り保護の一報が入る………..
さぁ、ここでアクティブレンジャーの出番です!!
鳥類や陸生ほ乳類には多少の経験がありましたが、海獣はまったくの初めて!!
さすがに緊張します。
事務所の本棚にあった、ゼニガタアザラシの本をつかみ取り車に乗り込んで気がつきました、運転してたら本が読めない・・・。

いろいろな状況を想像し対処法を考えながら現地に到着。
受け取った赤ちゃんは、ぐったりと寝そべっていて辛そうに呼吸をしていました。

「スー、フー、スー、フー」と荒い呼吸が続き「フーッ」と大きく息を吐きます。
体がぶるぶると震え、私には寒そうに見え自分のジャンパーをかけてみました。
水に濡らしたティッシュを口元に近づけて水を飲ませようとしますが口を開けてくれません。 
とにかく急いで水族館へ搬送しなければ! 赤ちゃんに負担をかけないように慎重に運転しながら、たまに様子をうかがいます。やはり辛そうに息をして震えている。
ハンドルを握る手が汗ばみます。

ようやく小樽市 小樽水族館へ到着し、獣医さんに強心剤や抗生物質の注射を受け、飼育員の方がミルクに浸した魚を与えます。しかし、魚を口の中に押し込んで飲ませようとしますが飲み込んでくれません。体力を回復させるためにはなんとか食べて欲しいのですが・・・。それでもお母さんのミルクには何も敵わないそうです。
どうしても食べてくれないので、次の日からゴムチューブを胃の中まで挿入してミルクを直接流し込み与える事になりました。


オス・体重14.46kg・体温36.8度


「どうか宜しくお願いします。」 獣医さんに今後の治療をお願いし帰路に付きました。

しかし、嫌な出来事は続くもので・・・

…….5月8日…午前9時……またしても電話が鳴り保護の一報が………..

昨日の隣町、同じ状況でへその緒の付いたゼニガタアザラシの赤ちゃんが保護されました。
やはりぐったりしていますが、車に移動すると「コォー、コォー」とお母さんを呼んでいるかのように何度か鳴きました。
よかった、声を出す元気はあるようだ。

体温を素手で確認すると明らかに体が熱く発熱していることがわかりました。
アザラシの平熱は36.8度程度と人間の赤ちゃんくらい、私たち人間の大人としては少し高めな温度です。
(※36度を下回ると低体温で危険だそうです。)
水を与えますが、やはり飲もうとはせず、「フー、フー」と荒く早く呼吸をしています。

搬送途中、今まで静かに寝ていた赤ちゃんがいきなり騒ぎ始め、「コォー、コォー」と鳴きながらごそごそと動き出しました。
一体どうしたのかとバックミラーで覗いたその時!! 
車の中に何とも言えない甘い香りが立ちこめてきました。
そう、う○こをしたようです。 
鳴いて知らせるなんて、やっぱり人間と一緒だなぁと感動していましたが、さすがに密室では厳しい。 
高速のパーキングに止めて様子をみると、まさにお尻がう○こまみれ、さらにオシッコもしたようで体がぐっしょり濡れてしまっていました。
体が濡れたままだと体温が下がるので、オシッコなどを拭き取り乾かしてあげるとすっきりしたのかあくびをしてゴロンと寝返りを打っていました。

しかし呼吸は依然として荒く、あくびは酸欠の症状かもしれないので窓を開け空気を入れ換えて再度水族館に向けて走り出しました。

やっと水族館に到着し、昨日のように注射や採血を受けます。
獣医さんが言うには、昨日の子よりもさらに危険な状態だそうで、体全体がむくんでおり、左の顔が全体的に腫れていて化膿していることが気になるとの事でした。



オス・体重12.72kg・体温39.5度(発熱しています) 前足には犬のような爪が。 体温を確かめようとした私の指をギュっと握りました。
 


帰りに昨日の子の様子を見てきましたが、顔を起こせるようになり少し回復してきているとの事でした。しかし、いつ様態が急変してもおかしくないとのことで予断は許さないとの事でした。

環境の仕事をしていると、種単位や群れ単位で生き物を見なければなりません。そうしなければ自然環境という大きなフィールドでのシステムを理解出来ないからです。
しかし、種や群れはたった1つの個体(1匹、1羽など)から成り立っているものであり、個体とは学問では計り知れない生命の原点である存在なのです。

目の前の命に向き合いながら、地球規模で自然環境、生物多様性を考えていかなければと再確認した2日間でした。

3匹のゼニガタアザラシから、忘れかけていた大切な事を思い出させてもらった出来事でした。毎日の生活に流されず、信念を持って生きてゆこうと再決心したのでした。





9日に保護された子は、残念ながら搬送中に死亡してしまいました。

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2012年03月30日救命救急パート2

苫小牧 平 尚恵

みなさんこんにちは。

ウトナイ湖では氷が溶けている面積が多くなり、それに伴って鳥たちの姿もちらほらから、いつの間にか湖の辺り一面にマガンを中心に鳥の群れ群れ群れ!!
といっても昼間は餌場に行っているので、早朝と夕方にしかこの様子は見れないのですが、現在は約5万羽のマガンがウトナイ湖をねぐらにしています。
しかし4月上旬のピーク時には9万羽を超えることでしょう。


さて、今回もまたまた傷病鳥のお話です。
出来れば新しい命の誕生なんて、暖かいお話を伝えたいのですが、それはもう少し待ってくださいね。

先週の3月21日午後に、空知振興局管内でオジロワシが飛べずに道路をウロウロしているところが発見されました。
また時を同じくして、留萌振興局管内でもオジロワシが保護されました。
なぜか傷病鳥の発見は重なることが多いのです。天候の影響か、ただの偶然なのか、統計を取って行くうちに何か見えてくるかもしれません。

今回は同時進行で事が起こりましたので、混乱しないように空知個体をS1、留萌個体をR2と呼ぶことにしましょう。

【S1】
経緯:21日、発見の通報・夕方に捕獲
        ↓
   22日、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターへ収容。その日の内にレントゲン写真撮影・血液検査・鳥インフルエンザ検査(陰性)を実施
容体:左翼のとう骨と尺骨を複雑骨折していた
処置:ピンニング手術という骨にピンを挿入し骨折箇所を固定する術式で手術を行い、創外固定術という方法で外側からも骨を固定した。
現在は骨がつくまで、絶対安静とする。


骨折部位の診察の様子。


鳥類はとう骨の方が尺骨よりも細く人間とは正反対である。


【R2】
経緯:21日、カラスの足をくわえた状態で発見
      ↓
   21日、一晩、羽幌海鳥センターで収容
      ↓
   22日、翌日、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターへ収容。その日の内にレントゲン写真撮影・血液検査・鳥インフルエンザ検査(陰性)を実施
容体:自分の足では立つことが出来ず、羽を広げて体を支えることで起き上がっている状態。(かなり痛々しい姿です)まず考えられる要因は、腰周辺の骨のトラブルや何かしらの中毒症状。
処置:血液検査による鉛中毒の検査を行うも、結果は正常値。何が原因なのか不明。
しかし、25日から自力で立てるようになりケージに移すと、飛べました!!
現在は経過観察中。



羽を広げて尻もちをついたような姿勢でやっと状態を起こしている。


せめてR2 だけでも渡りに間に合わせてあげたい!!
S1については、骨折の具合からリハビリの長期化が予測されますが最善を尽くして野生復帰につなげられたらと思います。

野生動物の救護には賛否両論はありますが、私はこう考えます。
目の前に消えそうな命があったなら、考えるよりも先に体が動いてしまうもの!! 
命にはそれくらいの力強さがあるのだと思います。


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2012年03月16日オオワシのその後。

苫小牧 平 尚恵

みなさんこんにちは。
いかがお過ごしでしょうか?


さて、今日は前回登場したオオワシについて動きがありましたので、ご報告致します。

なんと!

オオワシちゃん (多分メスです) が釧路のワイルドライフセンターへ旅立ちました。


今回の移送は個体の野生復帰を第一優先に考えた結果でした。
理由その1:骨に異常があり、リハビリが長引く可能性がある。
リハビリが長引くと飛翔能力がどんどん低下していくため、ワイルドライフセンターの広いリハビリケージで長距離の飛翔訓練が必要。
理由その2:個体は約2歳と若いので精神的に多少落ち込みぎみである。
そのため大勢の仲間がいるワイルドライフセンターが環境としてはより良い。 

このような理由から、この度2月25日に無事釧路へ移送されました。
しかし、骨折の具合があまりよくないので今後飛べるようになるかは不明です。


なお、こちらがしょんぼりと落ち込んでいる様子の写真です。
人が近づくと、みるみるうちに姿勢を低くして、こんな姿になってしまいます。




オオワシは本来、状態が悪くても人が近くにいるとシャキッとしていて人が立ち去るとクタっとなるのですが、この個体はまったくの逆です。
予測ですが、人に対してトラウマのようなもので、メンタル的に弱っているのかと思われます。

しかし、これは悪いことばかりではありません。
なぜなら、野生復帰の可能性のある個体は絶対に人に慣れてはいけないからです!!

人に慣れてしまうと野生に戻しても、また人間の生活圏内に必要以上に接近してしまい人由来の事故(交通事故、建物との衝突など)にあう可能性が高くなってしまいます。
ですので、保護された野生動物にはなるべく人間に対して嫌な記憶を残してもらい二度と人間には近寄りたくないと思ってもらって野生に返すことが重要になってきます。

野生動物にとっては、我々レンジャーであろうとも、優しい気持ちで助けてあげようとするみなさんでも関係なく、全員敵!!!  なのです。

保護された個体は、きっとこう思っているでしょう。
「いったいこいつらは、私に何をする気なのだろう。きっと殺されて食べられてしまうのだろう。ならばいっそ楽に死なせてくれ。」※私の勝手な想像によるコメントです。

保護されること、治療を受けること、私たちの好意からくるすべての行動が怖くて怖くてたまらないのです。

そして、それほどの恐怖を与えているんだな。と思うと捕獲時や搬送、治療の時には必要最低限に接触を押さえ、収容中も心配ですがなるべく見て見ぬふりをしてあげたいなと思うのです。

そんなことで、話が少しずれましたがオオワシがワイルドライフセンターでしっかりとリハビリをして、春の渡りの時期に仲間達とロシアの大地へ帰って行くことを願っておわりにしたいとおもいます。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

PS:ハヤブサは今のところ、元気にごはん(ヒヨコ)を食べていますよ!
   骨折していた骨には、手術でピンを入れ骨がうまくつくように安静にしながら様子を見ています。

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2012年02月16日救命救急の現場から~

苫小牧 平 尚恵

こんにちは
今日は、保護された野生動物がどのようにセンターへ収容され、治療を受け、自然界に帰って行くのか、あるいは残念ながら死んでしまうのか、そのような生死を扱う現場からの1ページをご紹介します。

速報!
2012・2・10 午後
野生生物課の電話が鳴った!

上川総合振興局管内にてオオワシが、渡島総合振興局管内にてハヤブサが保護されたとのこと。
※以下、出血を伴う写真がありますのでご注意居下さい。

以下が発見から治療までの流れだ!!

保護個体:オオワシ
1、衰弱しているところを地元のハンターさんが発見・保護収容
2、環境省職員による受け取り・搬送
3、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターへ収容
4、診察:鳥インフルエンザの検査、血液検査、呼吸状態の確認、触診、体重測定等
5、内服薬を投薬し、呼吸管理を行いながら様子を見る
6、自発採餌(自分からエサを食べている)有り
今後は、内服薬の投薬を続けながら、リハビリケージ内にて経過観察とする。



※写真をクリックすると大きくなります。


保護個体:ハヤブサ
1、飛べずに居るところを発見・通報(左翼から出血あり)
2、北海道職員による一時収容
3、環境省職員による受け取り・搬送
4、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターへ収容
5、診察:血液検査、呼吸状態の確認、触診、体重測定 (気管より出血あり)
※明らかな外傷として左翼の骨折があったので鳥インフルエンザの検査は行わず。
6、安静の保持
7、動物病院にて、レントゲン写真による骨折部分の確認、場合によっては骨にピンを通して骨を着ける手術を行う。
今後は、安静を保ち経過観察とする。






と、このように我々が日常の生活を送っている中で、
かたや命の危機に瀕している生き物がいる。
そしてその命を脅かしている要因が、我々の日常生活の中に潜んでいる場合があることも心に留めておいて下さい。
沢山の命の死の上に我々の生があることを忘れてはなりません。

もちろんそれは人間にも同じく言えることで、世界中には我々が普段なら気にもとめないような些細な出来事でさえ、夢のような幸せであるとうい現実の中に生きている人々もいます。
そんな、当たり前のこと「命の大切さ・尊さ」についてこの日記を見て思い出してもらえればと思います。


両個体の今後については、状況が変わり次第みなさんにお伝えしていこうと思います。
元いた自然に帰れるその日まで!!





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