アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
The World Wetlands Day 2013.Feb.2
2013年02月15日
稚内
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2月2日は、ラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(The world wetlands day)」に定められています。そのため世界各地では、2月2日の前後に湿地にちなんだ様々なイベントが開催されています。
そこで、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・サロベツ原野など、日本の代表的な湿地を含む国立公園等を所管する北海道地方環境事務所では、平成24年9月24日に北海道の新たなラムサール条約登録湿地に道南の大沼(七飯町)が登録されたことを記念して、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・利尻礼文サロベツのアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行うことにしました。
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さて、サロベツ原野を皮切りに洞爺湖、支笏湖とリレーされてきたAR日記、第4弾Part2では再びサロベツ原野についてお伝えします。先日の山上ARの記事では湿原の保全と農業の共生という「ワイズユース」を取り上げましたが、今回の記事では人々の交流、情報交換、教育、参加、啓蒙活動などの観点からの「ワイズユース」について、先日2月10日(日)に開催された「サロベツ森のスノーシューハイク」を例にお伝えします。
「サロベツ森のスノーシューハイク(主催:NPO法人サロベツ・エコ・ネットワーク 共催:環境省稚内自然保護官事務所)」は2月2日の世界湿地の日(The world wetlands day)にちなみ、サロベツ原野北部円山の森をスノーシューで散策し、雪上の野生動物の足跡や木々の冬芽、樹間を飛び交う小鳥などの自然観察を楽しむとともに多くの生物を育むかけがえのない湿原や私たちの暮らしとのつながりについて考えてもらうきっかけづくりを目的とした観察会です。
円山の森は現在のサロベツ原野のほとんどが海とつながっていた時代から陸地だった場所で、見渡す限りの平原が広がる原野南側とは対照的にマツ科の針葉樹やカバノキ科をはじめとする広葉樹など多くの樹種が見られるほか、平地、高山、湿地などそれぞれの立地を好む樹木が狭いエリアに混生しながらも一定の棲み分けをしているという特徴を持っています。また、このエリアは夏の間ササや灌木が生い茂って立ち入ることができないのですが、冬にはスノーシューを履いて歩いて立ち入ることができます。今回の観察会はサロベツ湿原センター北側から森に入り、反時計回りに東側のマツの針葉樹林→西側のカバノキ等の広葉樹林→サロベツ原野→サロベツ湿原センターという周回コースで行われました。
観察会のコースマップ(写真上側が北)
観察会当日の天気は快晴、しかも一年をとおして吹き荒れる強風もなく、絶好の観察会日和でした。サロベツ湿原センターに集合した後、この日の参加者13名とともに円山の森に向かいました。森を入ってすぐのところでまずは自然の中での五感を研ぎ澄ますためのネイチャーゲーム「カモフラージュ」を行いました。このゲームは決められたエリアの中にあらかじめ仕掛けておいた人工物を見つけ出すのですが、なかなか難しかったようで全問正解者はおひとりだけでした。続いて松林の中で目を閉じて聞こえた音を皆さんに報告してもらいました。ただ、残念ながら皆さんが耳を澄ませている間、野鳥の気配はなく、風がなかったことも災いして遠くのカラスの鳴き声しか聞こえませんでした…
上段左:この日のメインガイド、サロベツ・エコ・ネットワーク職員による解説
上段右:自然の中から人工物を見つけ出すネイチャーゲーム「カモフラージュ」
下段左:エゾユキウサギの足跡(この日は姿を見せてくれませんでした…)
下段右:トドマツ(左)とエゾマツ(右) エゾマツは樹皮がうろこ状に割れることで見分けます
コース前半のマツ林で円山の森を代表する樹木であるトドマツ(マツ科モミ属)とエゾマツ・アカエゾマツ(マツ科トウヒ属)の違いなどを解説し、続いて巨木の森と呼ばれるエリアではサロベツ原野が国立公園に指定される前の入植が始まったころ、円山地区の森では多くの巨木が木材として利用されたこと、今ある巨木はその時代にたまたま利用されなかったものであることなど円山の森と人の暮らしとのつながりについて解説しました。
巨木の森から原野へ向かう途中、樹種がマツ科の常緑針葉樹からカバノキ科のハンノキ・シラカバ・ダケカンバ、ブナ科のミズナラ、モクセイ科のヤチダモなど落葉広葉樹へと徐々に変わっていきます。それとともに森の中が明るくなっていき、原野に出た瞬間目に飛び込んできたのはこの時期あまり目にすることができない利尻山の雄大な姿でした。利尻山に見とれながらしばし休憩し、全員で記念撮影を行った後、原野で目にする、雪の上にちょっとだけ頭を出しているハンノキが湿原の乾燥化の指標となっていることについて解説しました。
上段左:巨大な天然かまくら(通称ジャイアンハウス)
上段右:巨木の森のミズナラ(通称森の主)
下段左:原野で記念撮影
下段右:原野から利尻山を望む
その後、原野から再び森に入り、それまで姿を見せてくれなかったハシブトガラ(スズメ目シジュウカラ科)やコゲラ(キツツキ目キツツキ科)の姿を観察しながらサロベツ湿原センターへ戻りました。
天気が良かったこともあり、参加いただいた方はみなさん非常に楽しんでいただけたようでした。そしてサロベツの自然の素晴らしさを感じていただけたと思います。今回のような観察会を通じて自然の素晴らしさを知っていただくことに加え、参加者同士の交流や情報交換の場ができることによって、多くの人が湿地の素晴らしさとその重要性を共有することができるようになれば素晴らしいことだと思います。それによってラムサール条約の基本理念である守りながら利用する「ワイズユース」につながっていけばうれしい限りです。湿地の重要性をより多くの方々に伝えるため、今後もこのような観察会を実施していきたいと思います。
最後に…
今回は紹介できませんでしたが、利尻礼文サロベツ国立公園にはサロベツ原野のほかにも稚咲内砂丘林の湖沼群、利尻島の姫沼やオタドマリ沼、礼文島の久種湖などそれぞれに形成過程や特徴が異なった多くの湿地があります。湿地の宝庫利尻礼文サロベツ国立公園へお越しの際は多種多様な湿地巡りをするというのも楽しいと思いますよ。
【関連リンク】
http://www.sarobetsu.or.jp/center/
サロベツ湿原センター
http://hokkaido.env.go.jp/blog/2013/01/1026.html
平成25年1月25日 AR日記(山上AR)
AR日記リレー企画も来週がいよいよ最終回!
それでは、苫小牧の平ARよろしくお願いします!
2月2日は、ラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(The world wetlands day)」に定められています。そのため世界各地では、2月2日の前後に湿地にちなんだ様々なイベントが開催されています。
そこで、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・サロベツ原野など、日本の代表的な湿地を含む国立公園等を所管する北海道地方環境事務所では、平成24年9月24日に北海道の新たなラムサール条約登録湿地に道南の大沼(七飯町)が登録されたことを記念して、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・利尻礼文サロベツのアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行うことにしました。
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さて、サロベツ原野を皮切りに洞爺湖、支笏湖とリレーされてきたAR日記、第4弾Part2では再びサロベツ原野についてお伝えします。先日の山上ARの記事では湿原の保全と農業の共生という「ワイズユース」を取り上げましたが、今回の記事では人々の交流、情報交換、教育、参加、啓蒙活動などの観点からの「ワイズユース」について、先日2月10日(日)に開催された「サロベツ森のスノーシューハイク」を例にお伝えします。
「サロベツ森のスノーシューハイク(主催:NPO法人サロベツ・エコ・ネットワーク 共催:環境省稚内自然保護官事務所)」は2月2日の世界湿地の日(The world wetlands day)にちなみ、サロベツ原野北部円山の森をスノーシューで散策し、雪上の野生動物の足跡や木々の冬芽、樹間を飛び交う小鳥などの自然観察を楽しむとともに多くの生物を育むかけがえのない湿原や私たちの暮らしとのつながりについて考えてもらうきっかけづくりを目的とした観察会です。
円山の森は現在のサロベツ原野のほとんどが海とつながっていた時代から陸地だった場所で、見渡す限りの平原が広がる原野南側とは対照的にマツ科の針葉樹やカバノキ科をはじめとする広葉樹など多くの樹種が見られるほか、平地、高山、湿地などそれぞれの立地を好む樹木が狭いエリアに混生しながらも一定の棲み分けをしているという特徴を持っています。また、このエリアは夏の間ササや灌木が生い茂って立ち入ることができないのですが、冬にはスノーシューを履いて歩いて立ち入ることができます。今回の観察会はサロベツ湿原センター北側から森に入り、反時計回りに東側のマツの針葉樹林→西側のカバノキ等の広葉樹林→サロベツ原野→サロベツ湿原センターという周回コースで行われました。
観察会のコースマップ(写真上側が北)
観察会当日の天気は快晴、しかも一年をとおして吹き荒れる強風もなく、絶好の観察会日和でした。サロベツ湿原センターに集合した後、この日の参加者13名とともに円山の森に向かいました。森を入ってすぐのところでまずは自然の中での五感を研ぎ澄ますためのネイチャーゲーム「カモフラージュ」を行いました。このゲームは決められたエリアの中にあらかじめ仕掛けておいた人工物を見つけ出すのですが、なかなか難しかったようで全問正解者はおひとりだけでした。続いて松林の中で目を閉じて聞こえた音を皆さんに報告してもらいました。ただ、残念ながら皆さんが耳を澄ませている間、野鳥の気配はなく、風がなかったことも災いして遠くのカラスの鳴き声しか聞こえませんでした…
上段左:この日のメインガイド、サロベツ・エコ・ネットワーク職員による解説
上段右:自然の中から人工物を見つけ出すネイチャーゲーム「カモフラージュ」
下段左:エゾユキウサギの足跡(この日は姿を見せてくれませんでした…)
下段右:トドマツ(左)とエゾマツ(右) エゾマツは樹皮がうろこ状に割れることで見分けます
コース前半のマツ林で円山の森を代表する樹木であるトドマツ(マツ科モミ属)とエゾマツ・アカエゾマツ(マツ科トウヒ属)の違いなどを解説し、続いて巨木の森と呼ばれるエリアではサロベツ原野が国立公園に指定される前の入植が始まったころ、円山地区の森では多くの巨木が木材として利用されたこと、今ある巨木はその時代にたまたま利用されなかったものであることなど円山の森と人の暮らしとのつながりについて解説しました。
巨木の森から原野へ向かう途中、樹種がマツ科の常緑針葉樹からカバノキ科のハンノキ・シラカバ・ダケカンバ、ブナ科のミズナラ、モクセイ科のヤチダモなど落葉広葉樹へと徐々に変わっていきます。それとともに森の中が明るくなっていき、原野に出た瞬間目に飛び込んできたのはこの時期あまり目にすることができない利尻山の雄大な姿でした。利尻山に見とれながらしばし休憩し、全員で記念撮影を行った後、原野で目にする、雪の上にちょっとだけ頭を出しているハンノキが湿原の乾燥化の指標となっていることについて解説しました。
上段左:巨大な天然かまくら(通称ジャイアンハウス)
上段右:巨木の森のミズナラ(通称森の主)
下段左:原野で記念撮影
下段右:原野から利尻山を望む
その後、原野から再び森に入り、それまで姿を見せてくれなかったハシブトガラ(スズメ目シジュウカラ科)やコゲラ(キツツキ目キツツキ科)の姿を観察しながらサロベツ湿原センターへ戻りました。
天気が良かったこともあり、参加いただいた方はみなさん非常に楽しんでいただけたようでした。そしてサロベツの自然の素晴らしさを感じていただけたと思います。今回のような観察会を通じて自然の素晴らしさを知っていただくことに加え、参加者同士の交流や情報交換の場ができることによって、多くの人が湿地の素晴らしさとその重要性を共有することができるようになれば素晴らしいことだと思います。それによってラムサール条約の基本理念である守りながら利用する「ワイズユース」につながっていけばうれしい限りです。湿地の重要性をより多くの方々に伝えるため、今後もこのような観察会を実施していきたいと思います。
最後に…
今回は紹介できませんでしたが、利尻礼文サロベツ国立公園にはサロベツ原野のほかにも稚咲内砂丘林の湖沼群、利尻島の姫沼やオタドマリ沼、礼文島の久種湖などそれぞれに形成過程や特徴が異なった多くの湿地があります。湿地の宝庫利尻礼文サロベツ国立公園へお越しの際は多種多様な湿地巡りをするというのも楽しいと思いますよ。
【関連リンク】
http://www.sarobetsu.or.jp/center/
サロベツ湿原センター
http://hokkaido.env.go.jp/blog/2013/01/1026.html
平成25年1月25日 AR日記(山上AR)
AR日記リレー企画も来週がいよいよ最終回!
それでは、苫小牧の平ARよろしくお願いします!