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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

パークボランティア冬期研修会 後編【脱水・熱中症】

2022年02月23日
東川 渡邉 あゆみ

こんにちは、東川管理官事務所の渡邉です。

今回は前回に引き続き2月12日(土)に行ったパークボランティア冬期研修会の後編【脱水・熱中症】についてレポートします。

前編【低体温症】はこちら

人間は運動をすると、体温上昇を抑えるため発汗をします。汗には塩分が含まれるので水の補給だけではなく、"水分+塩分"補給が重要な鍵となります。市販のスポーツドリンクは糖分が多く吸収が遅いため、吸収速度の速い"飲む点滴"と呼ばれる「経口補水液」が脱水時の補給には最も適しているそうです。

また、自分の排尿の回数と飲んだ水分量をチェックしてみることも脱水・熱中症予防になります。

登山前に500ml以上の水分を取り、出発までにトイレには2回以上行きましょう。起きてから水分が体を循環したサインになります。

登山中は20分おきに100~250mlの水分を取りましょう。人間は平均3時間毎にトイレに行っているので、登山中も日常と同じトイレの回数を心がけます。パーティの場合はリーダーが3時間毎にトイレ休憩を作り、メンバーにトイレに行くことをうながしましょう。その中でトイレに行かない人は隠れ脱水になっている可能性があります。

下山後は500ml以上の水分を補い、老廃物を流し、翌日に疲れを残さないようにしましょう。

登山中、トイレに行きたくないために水分補給をガマンするのは、危険なことだともわかっていただけたでしょうか。

登山中に摂取する水分の目安は【体重✕行動時間✕5(係数)】だそうです。

例えば65kgの人が、8時間の登山をする場合、65 ✕ 8 ✕ 5=2,600ccの水分補給が必要ということになります。みなさん、クリアできていますか?

脱水・熱中症【軽度】の症状は"足が痙る"。塩分が足りていないので、すぐに塩分を含む水分を2ℓ飲みましょう。500mlや1ℓではそれ以上回復はしないそうです。2ℓが大事!とのこと。

【中等度】は吐き気・頭痛・めまい・立ちくらみ等の症状。こちらも塩分を含む水分2ℓを飲み、日陰に行き、あおいだりして休憩しましょう。脱水時は脳や内臓に血液がいかなくなるため、足をあげて血流が内臓にいくようにしましょう。ザックを足に敷くのが良いですね。雪渓や沢があればクーリングで体温を下げるのも効果があります。

【重度】は、意識が朦朧としたり、体温が39℃以上になります。山では体温計はないと思いますが、意識に異常がある場合は、重症なのですぐに救助を呼びましょう。

「今日は、誰と来ましたか?」「今日は、どこに登りに行くんですか?」と具体的に質問をするのが良く、中等度以上だと、答えられなくなるそうです。名前や住まいなどは記憶の中から出てくることがあるため、そういった質問は避けた方が良いそうです。

行動食は炭水化物・甘い物だけではなく、塩分を含む物、塩辛い物も加えると、脱水に効きます。水分補給には経口補水液は必須ですね!

本研修を受けて改めて、普段の装備、補給する水分の種類や量、行動食を見直し、日頃からの心がけ、自助努力で減らせる山岳遭難はたくさんあると感じました。

また、登山時には正しい水分補給ができているか、低体温症が防げているか、パーティの仲間同士でコミュニケーションをはかっていくこともとても大切だと思います。

本研修に参加されたみなさんはぜひ学んだことを活かして、ベストパフォーマンスを自ら引き出して登山をしていきましょう。

大城先生、村上先生、とても貴重な研修をありがとうございました!

また、コロナ禍での開催にご協力いただいた役員の皆様もありがとうございました。