アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、利尻礼文サロベツ、知床、阿寒摩周、釧路湿原、大雪山、支笏洞爺、日高山脈襟裳十勝国立公園があります。
環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏
2022年06月01日
帯広自然保護官事務所
アクティブ・レンジャー 丸岡 梨紗
「露寒し孤高の峰」
コイカクシュサツナイ岳の夏尾根の頭付近 10月
1839m峰は、旧標高(新標高1842m)から山名がついた山です。沢歩きから北海道三大急登の1つであるコイカクシュサツナイ岳の夏尾根を登り、ハイマツの藪漕ぎを含む長い縦走路を経て、山頂直下の壁を越えて辿り着くピークは、登山道のある山では北海道最難関と呼ばれており、岳人憧れの原始性のある奥深い山です。
周囲の北の無名沢、南のサッシビチャリ沢はどちらも日高屈指の険谷であり、主稜線から離れた存在感のある独特な山容は遠くからでもよく目立ちます。夕暮れには初雪が舞い、早朝の霜を踏みしめて歩いた晩秋の荒涼とした山は、空気が澄み渡り、遠方の稜線まで良く見渡せました。
北海道の背骨とも呼ばれる北の日勝峠から南の襟裳岬まで100km以上にもおよぶ脊梁山脈の壮大で急峻な日高の稜線を、思わず山旅したくなります。
「カール壁とブロッケン」
エサオマントッタベツ岳にて 10月
エサオマントッタベツ岳は、水の湧き出る美しい北東カールをもつ中日高の山です。
カールは緯度と標高による雪線の影響から北側と、冬の季節風と吹きだまりの影響から尾根直下の東斜面に多くなっています。晴れていて稜線は遠くまで見渡せるのですが、谷方向には湿った空気が流れ込んでいて、山の斜面に沿って上昇するときに霧がわきやすく、一面の雲海が広がっていました。その中で、壁の山肌に沿って霧がゆっくり這い上がり、稜線で日光にあたって消える条件で発生しやすい、ブロッケン現象が見られました。
ブロッケン現象は、霧がスクリーンの役割をして自分の背後から差し込む光を投影することで発生しているのですが、霧の中の水の粒子により光が散乱されることで、自分の影の周りに虹のような光の輪ができています。雄大な切り立ったカール壁をもつエサオマントッタベツ岳は、雲海やブロッケン現象を観察しやすい場所です。