ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園 上士幌

92件の記事があります。

2012年05月23日公園看板破損 before after

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

3月まで全面結氷していた然別湖も今月すべての氷がなくなり春の風景になってまいりました。
雪解けとともに姿を現した国立公園看板が無残な姿をさらしているというので早速現地へ。
なんとまあ残念な姿。昨年の春にもすこしずれが生じていたので修復したのですが一冬でこのありさま。



雪の重みってすごいのね~と感心している場合じゃない。24日には然別湖湖水開きで関係機関の長が参加する式典をこのすぐ脇で開催するので無残な看板を見せるわけにはいかないのであります。
しかし、業者発注はすでに間に合わない。ではどうする?
ARがやればいい!

木槌で下から打ってもすぐに落ちてしまう。何度やっても同じ。なのでジャッキを使ってみることにしました。1台だと高さが足りないのでジャッキを2台投入。

(ツインジャッキ工法)

するとどうでしょう。ミシミシ音を立てながらみるみる持ち上げてくれます。キャプテン翼に出てきた立花兄弟の必殺技「スカイラブハリケーン」のごとく強力です。

(なんということでしょう 無残な醜態が匠の手によって素敵な公園看板に)

ちょうど良い高さまで戻したところで釘打ちして固定しさらに角材をかませて補強します。ありあわせのもので応急処置しただけですが、なかなか良い感じじゃないですか。やはり「見た目」って大事ですねえ。ええ、ほんと。
なんとか然別湖湖水開きに間に合いました。

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2012年03月12日自然観察会in西ヌプカウシヌプリ

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

3月3日(土)に自然観察会を開催しました。場所は鹿追町の西ヌプカウシヌプリ(1251m)。講師は然別湖ネイチャーセンターの石川昇司チーフマネージャー。
一般参加者は13名でスタッフと当日取材に訪れた新聞社を入れると総勢17名でのスノーシュートレッキングとなりました。
標高900mのスタートですので標高差は約300m。登り約2時間、下り約30分の行程です。
今回は積雪もあって笹藪が隠れているため、通常の登山道ではない別の尾根から最短コースで山頂付近を目指します。
トドマツとダケカンバの疎林を登っていきます。所々で講師によるエビの尻尾(霧氷の一種)やアカゲラの巣の解説をしながら休憩を挟んで1200mを越えたあたりで少し岩が露出した箇所を発見。これが風穴の出口です。


然別火山群の一つである西ヌプカウシヌプリは岩礫が積み重なってできていて風穴が地下を縦横無尽に通っています。冬は標高の高い出口から温風が出ていてなぜか1200mを超える地点で氷柱が観察できます。ときに-30℃を下回ることが多いこの地域でなぜ雪が融けているのか不思議な感じがします。さらにこの地下には日本最古の永久凍土が眠っていることも最近わかってきました。専門的な説明は省きますが、永久凍土の発達にも風穴が深く関係しています。
風穴エリアを抜けるとゴール地点まではもうすぐ。山頂手前20mの開けた場所が折り返し地点で大休憩。



登りはじめは視界が悪く雪も降っていましたが徐々に雲が晴れて時折然別湖も見えます。下山開始から快晴に変わり十勝平野が一面に広がり向かいの東ヌプカウシヌプリも山容を現しました。下見では猛吹雪のなか心が折れそうになる雪中行軍のラッセルをしましたが、本番当日の天候回復に安堵です。


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2011年05月09日オオワシまとめ

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

上士幌自然保護官事務所は大雪山国立公園内の業務が本来の仕事ではあるが、それ以外の緊急出動も突発的に行わなければならない。
その一例がオオワシやオジロワシ、タンチョウなど天然記念物・国内希少種の保護搬送である。今期の渡りは終了と見られるので三度の回収・搬送をまとめてみた。

1月14日午前11時過ぎ。道東道の浦幌IC付近でオオワシ(オジロワシとの連絡であったがオオワシの若い個体)が怪我をして飛べないところを道路パトロールの業者が保護してあるという連絡が入る。
古いシカ柵に挟まり抜けられなくなっていたようだ。
搬送先が決定したので保護されている会社の事務所へ走り、詳しい場所と状況は復路再び訊くことにして、オオワシを車に乗せ目的地の釧路湿原野生生物センターへ向かう。雪道を安全走行しながら時間短縮するために自分の昼食時間を無視して走り到着時間は午後2時頃であった。
野生生物センターでは鳥インフル、鉛中毒ともに陰性。怪我の治療と栄養不足による感染症治療を行い回復を待つことになった。空腹に耐えて帰路につく。※後日このオオワシは回復してHTBの番組で放鳥シーンがラストに放送された。

保護直前のオオワシ:道路パトロール会社提供


4月21日午前11時。鹿追町の林道でオオワシが死んでいるとの連絡が林道管理者から入る。
昼1時に現地の森林官と合流し回収作業を行う。目立った外傷無し。森林官によると近くに骨だけになったエゾシカの死骸があるとのこと。鉛中毒が疑われる。鳥インフルの可能性もゼロではないため死亡個体は強度抜群のビニールパックで3重にし、さらに専用プラスチックボックスに入れガムテープで封印する。既に死んでいるので釧路までは緊急搬送する必要もなく郵送で良いことになった。郵便局でかなり長い時間待たされたが無事配送してもらい、野生生物センターで死因を調べると胃の中に金属片があり、鉛中毒で間違いなさそうだ。

鹿追町のオオワシ死亡個体


4月27日午後4時。北海道新聞本別支局の記者から連絡が入る。
本別町の道道脇で昨日見かけたオオワシが至近距離でも飛んで逃げないのを不審に思い、帯広畜産大の教授に連絡したところ鉛中毒の疑いがあり通報すべきと助言を受けての連絡だった。外傷はないとのこと。
周囲が暗くなりオオワシを視認できなくなる前に保護する必要があるので急ぎ用具類や段ボールを用意して現地へ向かう。
途中の公園で記者と合流し目撃場所へ案内してもらうと道路脇の畑にいた。近づくと威嚇はするが飛び立てない。隙を見て頭に布をかぶせて目隠しをするとおとなしくなり、段ボールへ入れて車に乗せることが容易になった。この日は釧路湿原野生生物センターで治療に当たっている獣医が偶然にも十勝方面へ出張していたので近くの道の駅で合流しオオワシを受け渡すことができた。夜の8時を過ぎて治療を行った同センターのスタッフお疲れ様である。血中鉛濃度は「高濃度」であった。
※治療の甲斐無く収容先で死亡した。

威嚇する本別町のオオワシ



鉛中毒:エゾシカ残滓に残された鉛弾が鳥の体内に取り込まれ、胃酸によって有毒化し、神経障害、運動機能障害、貧血をもたらす。運動能力が徐々に下がっていき餌を獲ることができずにやがて衰弱死する。鉛弾は2001年に北海道の条例で禁止されている。

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2011年02月10日第14回大雪山国立公園フォーラムのお知らせ

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

2月26、27日の2日間、上士幌町と大雪山国立公園連絡協議会の主催で大雪山国立公園フォーラムを開催します。今回のテーマは「ひがし大雪の永久凍土と産業遺産」。

初日は「ひがし大雪で発見された永久凍土が語ること」と題し、長年永久凍土を研究している澤田結基さん(産業総研地質標本館サイエンスコミュニケーター)による講演と、「大雪山国立公園における産業遺産の活用」と題し北海道遺産にもなっているアーチ橋群について、ひがし大雪アーチ橋友の会の角田久和事務局長が講演する2本立て。

自然造形物と産業遺産が同居しているひがし大雪地域ということで、これらに興味のある方のご参加をお待ちしております。

そして2日目には糠平湖北東に徐々に姿が現れてきたタウシュベツ橋梁(国鉄旧士幌線)への湖上スノーシューツアーを開催します(積雪状況によりスノーシューを使わない場合もあり)。ひがし大雪博物館の須田修学芸員のガイドで糠平湖五の沢から氷結した湖上を歩いてタウシュベツ橋梁まで行きます。運が良ければオジロワシが出迎えてくれるかもしれません。その他キノコ氷と呼ばれる不思議な物体を見ることができます。

申し込みは専用チラシに記入しFAXで上士幌町商工観光課(01564-2-3355)まで。
参加費は無料。下の画像をクリックして印刷して申し込みも可能。



さて、現在のタウシュベツ橋ですが、この高さまで姿を現しました。毎年結氷してから水位が下がり始めるので氷に肌を削られながらの仕事です。まさに身を削りながらといった言葉がふさわしい。





※タイムリーなことに現在yahooの映像ニュースで道新ニュースのタウシュベツ橋梁の動画を見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=mOhAgcBYcRg&feature=youtube_gdata_player


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2010年10月15日日本のいのちつないでいこうCOP10まであと3日

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

というわけでタイトルにもある日本の名を冠した生き物です。
それは、二ホンザリガニ〔絶滅危惧II類(VU)〕:アメリカザリガニ科アジアザリガニ亜科アジアザリガニ属ザリガニ (学名Cambaroides japonicus)。学名にも日本を意味するものが付けられています。
明示の頃シーボルトとハーンによって世界に紹介された二ホンザリガニですが、北海道から天皇家にも献上されていて、ザリガニポタージュとして調理された記録があります。本州に持ち込まれた二ホンザリガニは一部、栃木県日光にも移植されて代を重ねています。

さて、道東を中心にすっかり在来種を駆逐してしまっているウチダザリガニの秋防除in然別湖(今年最後)がいよいよ始まります。見慣れてしまってうんざりするウチダザリガニですが、本来棲んでいた二ホンザリガニが周辺に生息しているのか確かめたく、ひとりで調べてみました。

結果。探索開始から2分であっさり確認。足元の石を持ち上げるといました。近くの別の石をひっくり返すと今度はものすごく小さな個体。しっかり繁殖しています。調査終了。

この大きさで相当な年数を生きています

ずんぐりと丸みを帯びたザリガニ。明らかにウチダの体型とは異なる姿に愛嬌を感じます。なにしろウチダの場合はどんなに小型でも人間への攻撃性は凄まじく、挟む力も尋常ではありません。



いることが分かったので長居は無用。石を元の状態に戻してザリガニを水に戻しこの場から立ち去りました。
このまま二ホンザリガニにとって良い環境が残ることを祈りつつ、週明けから始まるウチダザリガニ防除の準備をするのであった。

落ち葉を主食とする二ホンザリガニの生息環境

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2010年10月04日紅葉最前線

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武



道内各地で山々が冠雪していますが、まだ紅葉が見頃の穴場を歩いてきました。
十勝岳新得コースです。地元山岳会が付けた迷い防止の表示を確認しに今月1日に登りましたが色づきはこの秋最高といったところ。
このコースはほとんどの登山ガイドブックで迷いやすいと書かれています。ハイマツ帯を抜けてから火山灰の上を歩いて2時間ほどで十勝岳と美瑛岳を結ぶ縦走路に出ますが、そこが従来から迷いやすく道という道がありませんでした。地元山岳会でペンキとピンクテープを巻いた鉄杭を取り付けたので多少のガスでも迷い防止になるかと思います。
この日は我々以外の登山客はゼロ。このすばらしい景色は私を含めてたった4人のものでありました。



新得コースは標高1400mあたりまでがハイマツトンネル。トンネルを抜けて開けた岩場を登るとかつての噴火の爪跡である炭化したハイマツの樹木を踏みながら歩きます。その後火山灰エリアをしばらく歩きますが足がとられてやや体力を消耗する斜面が続きますが稜線に到達すればあとは300mで十勝岳山頂です。
 噴火後から少しずつ植生も回復しつつあります。そして振り返れば背後にニペソツ、石狩連峰、右手に下ホロカメットクと、どの方向でも個性が異なる表情を見せてくれるのがこのコースの特徴です。


迷い防止の表示と雪と十勝岳(左)

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2010年08月04日囓られた男

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

ウペペサンケ山菅野温泉コースのササ刈りを行いました。ササによって登山道が覆われて視認性が悪い一帯があります。

ビフォーアフター

放置しておくと来シーズンはさらにひどくなることが予想されるのでササのみを刈り取り、だいぶ歩きやすくなりました。たとえ晴れていても朝露が残っている場合は雨にたたられた状況と変わりなく濡れてしまうので登山道のササ藪は利用者にとってやっかいです。

稜線までのルートは水が湧きだしており岩が濡れて滑りやすい状況です。流されるような危険性は少ないものの転倒には十分注意して下さい。本来最終水場となっている滝からさらに標高100m程上でも水が流れています。この時期としてはかつて無いほど山全体が保水しています。

川と化した登山道


ウペペサンケ山の高山植物は現在コマクサが最終段階。ゴゼンタチバナが麓で最盛期。イワブクロが終わりかけ。ウメバチソウ、イワギキョウが最盛期。ツツジ科の果実が見頃(食べないでね)という状況です。

ウペペサンケ山への稜線 山の向こう側にはトムラウシ山他表大雪の山々、ニペソツ山が待っている

つづき
仕事を終えて町内の銭湯へ行くと、右ふくらはぎに血豆が。痛みはなかったので不思議であったがよくよく見ると血豆ではない。ダニが皮膚を囓ったまま絶命しているのであった。ぎょえー。
これがなかなかしぶとくて取れない。体をつぶさないように引っ張って、何とか抜けた。現在三浦の右ふくらはぎには内出血と痛み。それにしてもどうやって入り込んだのか。作業中履いていたのはベンチレーション付きのボトムであった。高機能があだとなり、まんまとダニにしてやれました。皆様もお気を付け下さい。

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2010年08月02日国立公園クリーン大作戦

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

8月第1日曜日は自然公園クリーンデー。全国の自然公園で一斉に清掃活動が行われています。



大雪山国立公園でも5カ所で一斉清掃活動が行われました。
上士幌事務所管内では、ぬかびら源泉郷で旅館組合や地方自治体、大雪山国立公園パークボランティアの方々と温泉街周辺のゴミ拾いを行いました。

大雪山国立公園で活躍するパークボランティア なんとAKB48の倍の人数がいます

全国的に豪雨が多いこの季節ですが、北海道も例外ではなく突然のスコールが懸念されましたがなんとか小雨だけで済んで無事清掃活動終了。
昨年は捨てられた自転車などゴミの量もかなり多かったのですが、今年は7kg程の量でした。利用者のマナーが向上していると地元旅館組合の方の反応。
ごみの中身は空き缶やペットボトルが目立ちましたが中には国道トンネル内で自損事故を起こしたのか自動車の破損部品が目に付きました。ドライバーの皆さん、安全運転を心がけましょう。毎年エゾシカの衝突事故も多い地区です。
来年も同様に第1日曜日にクリーンデーが行われます。
来年はさらに少なく、年々ゴミが減っていくのが理想的です。

集められたゴミ

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2010年07月29日空気の指標

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

ある程度標高の高い山を歩いていると、樹の枝から垂れ下がった不思議な浮遊物のようなものが目に付きます。
これはサルオガセという地衣類の仲間。これが生きているということは、空気がきれいな証拠。


藻類と菌類の共生体という地衣類ですが、サルオガセは樹木から栄養を横取りする寄生で生きているわけではなく、一切の水分を大気中の霧などから得て生存しています。このため木を枯らしてしまうキノコのような菌類とは性質を異にするんですね。
菌類は藻類に安定した生育環境を提供し、藻類は光合成で得た栄養を菌類に与えるという共生関係により、地上から離れた場所でも生育できることになったわけです。
日本では古くから修験者の薬や食料として用いられてきました。効能の程は証明されていませんが、あく抜きして食べると海草のような味がするそうです。
山深い幽谷でまさに霞を食って生きている仙人のような生き物です。
幻想的というか怪しいというか、少し怖い雰囲気の見た目ですが、空気がきれいなお墨付きのようなもの。思い切り深呼吸してみてはいかがでしょうか。この季節なのでヤブ蚊やブヨを吸い込んでも責任は持てませんが。

トムラウシ自然休養林にて

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2010年07月15日自然界の不思議(雑種)

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

初夏の山を歩いていると大雪山では良く目にするのがエゾノツガザクラでしょう。
このエゾノツガザクラ、ピンク色で球形に近いものを多くの人はそう思っているかと思いますが、実はコエゾツガザクラという雑種なのです。



画像左が原種のエゾノツガザクラ。赤紫色で色が濃く、形も細い。
これにアオノツガザクラが交配すると右のピンク色のコエゾツガザクラが誕生するわけです。


アオノツガザクラ群落と奥に原種のエゾノツガザクラ

さらに、非常に低い確率ですが、コエゾツガザクラとアオノツガザクラが交配すると(戻し交雑という)ニシキツガザクラという雑種が誕生するのです。
ニシキツガザクラは黄色だったり薄いピンクだったり白に近いベージュだったり多様な色彩が誕生するのでよくよく注意して観察してみましょう。
今月上旬に発見したニシキツガザクラはこんなタイプでした。



どうしてこのような交雑種が自然界でごく普通に起こるように進化したのか不思議でなりませんが、あまり考えると猛暑の夏に脳が疲れてしまうので、このようなものだと認識しておくことにします。

交雑種が増えると原種が駆逐されるのではないかと考えてしまいますが、原種は原種でしっかりと根付くたくましさを持っています。
それにしても大雪山の自然は不思議なことでいっぱいです。

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