北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

羅臼岳近自然工法イベント

2023年11月22日
ウトロ 森下南美
山の上の雪も少しずつ下に降りてきていて、どんどん冬に近づいているウトロです。雲が開けた日には、真っ白に雪化粧した知床連山の姿を見ることができます。

そんなウトロから、今回は10月19日に行った羅臼岳登山道整備イベントの様子をお伝えします。

2020年秋の大雨によって登山道が壊れたことがきっかけで始まったこのイベントも今回で3回目。今回も「近自然工法」を用いて整備を行いました。

近自然工法とは?

近自然工法では、自然にあるものを使って、より自然に近い状態に登山道を修復することを目指します。それによって、登山道だけでなく周囲の植生も回復するので土壌も安定し、施工したものがより長持ちする効果も期待できます。
 
ただ、そのためには知識と経験が不可欠。今回も、地元で山岳ガイドをされている知床山考舎の滝澤さんを講師にお迎えして、まずは座学からスタートです。
当日は天気の悪い中、関係行政機関・地元のガイドさん・企業の方にご参加いただきました。
 

はじめに、どうして登山道が壊れるのかを考えます。登山利用者の踏み出しによって植生が変化すること、近年の気候変動によって季節の変わり目も変化していること、などなど登山道が壊れるきっかけは多々あり、そしてその傷みは水の流れによって広がっていきます。
そのため、水の流れを理解して、土砂が流れ出てしまわないよう水の流れをコントロールするように木や石を組んでいくことが重要になってきます。

いざ現地へ

座学の後は、羅臼岳登山口へ。経験者と未経験者をミックスして3名ずつのグループに分かれます。
そして出発!今まで近自然工法で直されてきた場所を見ながら登っていきます。うまくいった所もあれば、反省点のある所も…。座学で聞いてはいたものの、実際現場に行って実物を見てみると、考慮しなければならないことが沢山あることに改めて気づきます。
 
代替テキスト
いざ出発!
代替テキスト
実物を見てイメージを膨らませます
そして現場に到着。ですが、すぐに作業開始とはなりません。どこに・どういうふうに木材を入れていくか、各グループ頭を悩ませて設計を考えていきます。その後は、木材と石を選んで、せっせと運んでいきます。ちょうど良い長さや大きさになるように木材を切ったり、石を砕いたりして調整をしていきます。
代替テキスト
河原で石を調達
代替テキスト
ロープワークも駆使!
準備ができたら、いよいよ施工です。ですが、思っていたようにはうまくいきません。
 
地面が柔らかすぎて木材がうまく埋め込めなかったり、逆に硬すぎて穴が掘れなかったり、かと思ったら穴を掘りすぎてしまったり…。想像以上に難しい!間違った施工をすると、逆に登山道や植生を壊してしまいます。そうならないように、水の流れを想像しながら作業を進めます。

 
 

完成!

講師の滝澤さんの手助けも受けながら、各班なんとか形にすることができました。
代替テキスト
施工前
代替テキスト
施工後
代替テキスト
施工前
代替テキスト
施工後
作業が終了した後は、各班それぞれが施工した場所を報告し合います。

今回は天気が崩れたこともあって、予定していたよりも短い半日だけの作業でした。普からの観察と経験が必要になってくる近自然工法の、触りを経験しただけに過ぎませんが、登山道を見る目が変わりそうです。
 
自分が施工した場所に愛着がわくのはもちろんですが、他の班の方たちが施工した場所も、次通る時にはその班の方たちの顔が浮かんできそうです。もちろん、直して終わりという訳ではありません。今後、施工した場所が壊れてしまっていないか、注意して見ていく必要がありますが、自分たちが手を入れた登山道が待ってくれていると思うと、来シーズン山に向かうのがより楽しみです。