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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

知床五湖スイレンバスターズ!2024

2024年09月27日
ウトロ 森下南美
近年、知床五湖で問題となっている園芸スイレン。
2023年に試行的な除去作業が行われ、今年から本格的な除去がスタートしました。

今年のスイレンバスター

昨年度の知見から、一湖に繁茂するスイレンを一度に除去するのは現実的には不可能だろうということで、一湖を区画分けして、今年は「区画1」を除去することとしました。
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一湖の園芸スイレン除去区画
除去の期間は、スイレンの葉が養分を蓄える前に叩くべし!という専門家の先生の助言を基に、浮葉の展開が始まる5月から最盛期である7月に設定。期間中は2週間ごとに除去を行い、関係機関の職員を中心に少数精鋭で行う回と、地域の方々にも裾野を広げて大人数で行う回を設定しました。

いざ!スイレンバスター

作業初日は5月14日。周囲を林や湿地帯に囲まれ、車や動力船が入ることができない知床五湖では、道具を運ぶのももちろん人力。昨年検討した、湖岸でも比較的平らな場所まで、背負子や手で持って移動します。
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ゴムボート1艇でおよそ10kg
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協力してボートを組み立て
準備が済んだら、いざ出発!ソリを引いてボートで漕ぎ出します。
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湖面に出たスイレンの葉を引き抜き
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ソリに乗せて湖岸に搬出
第2回目の5月28日には、地元のガイドさんにもご協力いただき、総勢26名での作業になりました。
普段アクティビティに親しんでいるガイドさんのご協力によって、この日除去したスイレンはおよそ1,200kg!!より機動力のあるカヤックやサップもお持ちいただき、みるみるうちにスイレン除去が進みます。
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小回りの効くゴムボートは風に流されやすい
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カヤックとサップという新たな武器も登場
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一湖でのスイレン除去作業
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湖面から眺める知床連山

6月に入って

季節は6月。爽やかな気候の散策シーズンが五湖にもやってきました!
そしてスイレンも迎える成長期。5月よりも葉が格段に大きくなっています。
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時にはシカが作業を覗きにくることも
これまでは、水上での作業のため安全を優先して、ハサミや鎌などの刃物は使わず、葉柄ごと葉を引き抜くという方法を採っていました。葉を引っ張ると簡単に引っ張り抜くことができ、とても簡単なのです。逆に葉だけを取るのが意外と難しい…。
しかし、水生植物の先生から「葉柄を取っても意味がない。葉だけ取るように」とのご助言があり、葉柄は含まずに葉だけを除去する方法に切り替えることになりました。
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葉から伸びている部分が葉柄
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土中には根茎
安全性も保ちつつ、葉だけを取りたい…。そこで加倉井レンジャーが発見したのが、葉の切り込みに向かって葉を折ると簡単に折れるということ!
この「加倉井方式」はすぐさま広まり、長いものでは2mほどあった葉柄がなくなると、一度にソリに乗せられる量が増え、そうなると搬出の回数も減り、除去にかける時間が増えるという好循環が発生しました。
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葉だけになると乗せられる量は倍近くに!

スイレン除去イベント

新たな除去方法を編み出したところで、6月26日と27日に地域のみなさんを対象にした園芸スイレン除去イベントを実施しました。
2日間の参加者は36名!外来種の除去に関心のあるみなさんは、さすが意欲十分。みるみるうちにスイレンの除去が進みます。計4時間の作業で、およそ400キロのスイレンを除去することができました。
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「加倉井方式」を実践
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遠くは札幌から参加いただきました
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一湖で作業されるみなさん
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ノベルティのネムロコウホネの手ぬぐいと集合写真

その後・・・

今年度のスイレン除去が終わった後、久々に一湖に足を運んでみると、スイレンに覆いつくされる一湖の姿が。改めて外来種除去の道のりの長さを感じます。
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2024年5月15日の作業後
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2024年8月22日
近年除去対象として見られている園芸スイレンですが、五湖に持ち込まれた始まりは、観光名所になることを願っての「善意」によるもの。そして開拓の歴史の1ページでもあります。
人の手によって持ち込まれたものが、時代の変化によって、根絶を願われて除去対象に変化することには少し悲しさも感じます。ですが、スイレンが持ち込まれたことによって、元の植生が急激に変化しているのもまた事実。人の手によって変わったものは、人の手で戻す努力をしなければいけないと実感しました。
 
そして2024年度のスイレン除去はまだまだ続きます。除去と同時進行で行っていたモニタリング結果のまとめと考察、来シーズンに向けての計画づくり・・・。今後のスイレン除去をどう進めていくのかを検討する大事な作業が待っています。
引き続きレポートしていきますので、乞うご期待ください。