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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
支笏洞爺国立公園 洞爺湖地区(羊蹄山・洞爺湖・登別)の情報を、アクティブ・レンジャー幸村が発信しています。

有珠山パトロール

2025年05月29日
洞爺湖 幸村 和実
 環境省では毎年この時季に、パークボランティアさんにご協力いただき、国立公園特別保護地区で植物の採取、損傷(山菜採り等)をしないよう啓発活動を行っています。
パークボランティア | 自然環境・生物多様性 | 環境省
 
 今回は、有珠山登山道を登り、パトロールしてきた状況をお伝えします。
昨年のパトロールの様子はこちら有珠山パトロール | 北海道地方環境事務所 | 環境省
 
 

有珠山登山道

 有珠山登山道は、有珠山の南側、伊達市北有珠に登山口があり、外輪山展望台までは往復6km2時間ほどの行程となります。
 今回は、南外輪全体をパトロールするため、往復8kmの山行となりました。
 有珠山登山道は、外輪まで樹林帯が続き、多くのお花を見ることができます。
 有珠山を含め西胆振の山には、エンレイソウの亜種コジマエンレイソウを見られるところがあります。この日は、エンレイソウ、ミヤマエンレイソウ、コジマエンレイソウと3種のエンレイソウを確認することができました。その他にも多くの花や菌類がありましたのであとでご紹介しますね。
 おもしろいのが、登山道の脇にある「木りん」さんです。倒木なのですが、キリンそっくりです。つけられたピンクテープがリボンのようです。ちょうど疲れが出てきて、いっぷくしたい時に現れるので、ここで休憩するのもいいですね。
倒木
どうですか?「木りん」さん
倒木別角度
別角度から見ても

エンレイソウ

 コジマエンレイソウ目当てに有珠山に来る人も多いと聞きますが、エンレイソウの群落もなかなかの規模で見応えがあります。ミヤマエンレイソウは、薄紫の筋が入っていて、ムラサキエンレイソウと同定を迷います。コジマエンレイソウは鮮やかな紫色が目を引きますね。 
 
  エンレイソウの群落                            ミヤマエンレイソウ
                   コジマエンレイソウ

お花

クルマバソウ
クルマバソウ 含まれるクマリンという香気成分は、香り付けとして使われることもあるそうです
マイヅルソウ
 スミレは同定が難しいです。距(花弁の後ろに伸びるテングの鼻のような部分)の色と、葉の形、花弁の中に毛が無いことから、タチツボスミレとオオタチツボスミレとしました。どうでしょうか。
タチツボスミレ
タチツボスミレ(距が淡紫色で葉が心形)
オオタチツボスミレ
オオタチツボスミレ(距が白色で葉が円心形)
 昨年とは1日違い、ほぼ同時期に行きましたが、昨年終わりかけていたコジマエンレイソウがきれいに見られた一方、多かったフデリンドウがまだ花を付けていませんでした。
ニシキゴロモ
フデリンドウ花なし
フデリンドウはまだ早かった

菌類とドングリ

 ツチグリとホコリタケは昨年のものと思われます。両者とも雨が当たって菌の胞子を放出するそうですが、雨が上がっていて放出は見られませんでした。ホコリタケは、小さいうちは食用にできるそうです。
 雨上がりだからでしょうか、カタツムリを多く見かけて、アミガサタケもありました。アミガサタケは日本ではあまりなじみがないですが、海外では高級食材として食べられているところがあるようです。
 昨年、ドングリが豊作だというニュースは、見た方も多いのではないでしょうか。今年は、発芽しているドングリをよく見かけました。触ってみるとドングリの芽は、堅くて枝のようでした。
 
  ツチグリとサッポロマイマイ                       ホコリタケ

 
  アミガサタケ 海外では高級食材だとか                  発芽したドングリ(ミズナラの堅果)

 自然の中での活動は、いろいろな発見があって楽しいですね。面白いのは、有珠山の北側(湖側)では、コジマエンレイソウは見られないのです。コジマエンレイソウを見るには、海側と覚えましょう。

有珠山

 有珠山は火山です。実際に山に登ってみるとそれを体感することができます。火口から今も噴煙を上げているところもあれば、火口ではない山の斜面からも煙があがっているところがあり、まさに生きている山だということを実感します。
 100年で4度の噴火した火山を間近に見られるという価値に加え、災害遺構の保存、減災教育、火山マイスター制度など、多くの取組が評価され「洞爺湖有珠山ジオパーク」として、ユネスコ世界ジオパークに認定されています。
ユネスコ世界ジオパーク:文部科学省
ユネスコ世界ジオパーク|日本ジオパーク委員会
 
   火口からは今も煙が                           火口の反対、海側の斜面からも煙が立ちのぼる
 有珠山の火口の多くは、国立公園の「特別保護地区」に指定されていて、動植物の捕獲・採取などが禁止されています。そのため、うっかり山菜採りなどをされている人がいれば、自然公園法違反となってしまいます。今日は、雨あがりのせいか山菜採りの方はいませんでしたが、引き続き啓発をしていきたいと思います。

 ご覧いただきありがとうございました。

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