大雪山国立公園 東川
156件の記事があります。
2009年06月12日夏に向かって
大雪山国立公園 東川 宮崎 浩
北海道では6月に入ってから、雨が多く梅雨のような日が続いていますが、本日の天人峡巡視の時はよく晴れて、視界も良く気持のよい散策日和です。皆さん、雪解け時期で水量の多い羽衣の滝を写真に収めたりと、まだシーズン前の静かな天人峡を楽しんでいるようでした。
周辺の植物で目立ってきたのは、オオカメノキやツバメオモト。これが咲き始めると初夏が近付いてきてきたかな?と感じます。また、新緑の季節独特のにおいを感じながらの散策は何とも言えないものがあります。

昨日の雨に濡れて生き生きとしているツバメオモト。数はまだ少ないですが、これからが本番。

ひとつだけ残っていました。天人峡、今年のラストのエゾエンゴサク?
ただ、この時期の天人峡周辺はクマの出没情報が頻繁にあるので、散策の際も十分に注意を払って入山してください。早朝や夕方などは特に注意が必要です。過去にも羽衣の滝の遊歩道で熊が出没したケースがあります。
クマ対策としては。
① 単独での散策はなるべく避ける
② クマ鈴をもつ、
③ 沢の近くなどで音が聞こえにくい箇所などでは、ホイッスルや大声を出して熊にこちらの存在を知らせるなど。
本日、遊歩道ではありませんが、天人峡までの道路上にクマ糞が落ちていました。この周辺には間違いなくクマがうろちょろしていますので、我々がクマのエリアに足を踏み入れていることを忘れずに散策を楽しんでください。

天人峡途中の道路上にあったクマの糞
周辺の植物で目立ってきたのは、オオカメノキやツバメオモト。これが咲き始めると初夏が近付いてきてきたかな?と感じます。また、新緑の季節独特のにおいを感じながらの散策は何とも言えないものがあります。
昨日の雨に濡れて生き生きとしているツバメオモト。数はまだ少ないですが、これからが本番。
ひとつだけ残っていました。天人峡、今年のラストのエゾエンゴサク?
ただ、この時期の天人峡周辺はクマの出没情報が頻繁にあるので、散策の際も十分に注意を払って入山してください。早朝や夕方などは特に注意が必要です。過去にも羽衣の滝の遊歩道で熊が出没したケースがあります。
クマ対策としては。
① 単独での散策はなるべく避ける
② クマ鈴をもつ、
③ 沢の近くなどで音が聞こえにくい箇所などでは、ホイッスルや大声を出して熊にこちらの存在を知らせるなど。
本日、遊歩道ではありませんが、天人峡までの道路上にクマ糞が落ちていました。この周辺には間違いなくクマがうろちょろしていますので、我々がクマのエリアに足を踏み入れていることを忘れずに散策を楽しんでください。
天人峡途中の道路上にあったクマの糞
2009年06月09日パークボランティア研修会
大雪山国立公園 東川 宮崎 浩
先週の土・日の2日間、層雲峡ビジターセンターにて今年度最初のパークボランティア(PV)研修会が行われました。
小雨の降るあいにくの天気でしたが、2日目に行われた自然解説研修会では、総勢約50名のボランティアの方たちがそれぞれ班ごとに分かれ、新緑の森の中での講習を皆さん熱心に受けていました。
私の参加した班は河川敷コース。雪解け水でまだ水量の多い石狩川を横に見ながらの研修会でした。まだまだ花は少ないこの時期ですが、その中でもさすがは皆さん、普通の人なら見逃してしまうような花でもめざとく見つけ、熱心に図鑑とにらめっこ?したり、班のリーダーの方からの説明を受けたりと、あっという間の2時間でした。

講師の説明を熱心に受けるパークボランティアの皆さん。
図鑑とも格闘?
最後に、全員が一人ひとりみんなの前で自然解説を行うというのが、全員に課せられた本日のメインテーマ。皆さん色々とネタを探してそれぞれが緊張しながら?も初ガイドとなった方も。
今後、フィールドに出れば嫌でも自然のことや登山道のことなど、一般の利用者から聞かれる機会が多いと思いますので、腕章をしている責任感というものを実感した一日だったのではないでしょうか?
それと併せて、皆さんが興味津々だったのが、近自然工法による登山道整備を大雪山各地でこれまで手掛けてきた岡崎哲三講師による石組み講習会でした。
近自然工法とは、その場にある材料を使い道の整備をしていくというもの。大雪では、5年ほど前から行われています。用意された石をパズルのように組み合わせ、講師にアドバイスをもらいながら皆さんはじめての石組み体験をしていたようです。

まずは、大まかな説明から。

一つひとつていねいに組み合わせていきます。
ですが、見るのとやるのとは大違い、なかなかうまくいかず悪戦苦闘の連続のようでした。これだけ皆さんが石組みに興味を示すとは正直ちょっと驚きました。やはり、登山道の荒廃の問題は全員が感じていることなのでしょうね。必死になって組み方を習っている姿は、山をみな愛しているのだなと改めて実感した今回の研修会でした。
皆様2日間、本当にお疲れ様でした。
小雨の降るあいにくの天気でしたが、2日目に行われた自然解説研修会では、総勢約50名のボランティアの方たちがそれぞれ班ごとに分かれ、新緑の森の中での講習を皆さん熱心に受けていました。
私の参加した班は河川敷コース。雪解け水でまだ水量の多い石狩川を横に見ながらの研修会でした。まだまだ花は少ないこの時期ですが、その中でもさすがは皆さん、普通の人なら見逃してしまうような花でもめざとく見つけ、熱心に図鑑とにらめっこ?したり、班のリーダーの方からの説明を受けたりと、あっという間の2時間でした。
講師の説明を熱心に受けるパークボランティアの皆さん。
図鑑とも格闘?
最後に、全員が一人ひとりみんなの前で自然解説を行うというのが、全員に課せられた本日のメインテーマ。皆さん色々とネタを探してそれぞれが緊張しながら?も初ガイドとなった方も。
今後、フィールドに出れば嫌でも自然のことや登山道のことなど、一般の利用者から聞かれる機会が多いと思いますので、腕章をしている責任感というものを実感した一日だったのではないでしょうか?
それと併せて、皆さんが興味津々だったのが、近自然工法による登山道整備を大雪山各地でこれまで手掛けてきた岡崎哲三講師による石組み講習会でした。
近自然工法とは、その場にある材料を使い道の整備をしていくというもの。大雪では、5年ほど前から行われています。用意された石をパズルのように組み合わせ、講師にアドバイスをもらいながら皆さんはじめての石組み体験をしていたようです。
まずは、大まかな説明から。
一つひとつていねいに組み合わせていきます。
ですが、見るのとやるのとは大違い、なかなかうまくいかず悪戦苦闘の連続のようでした。これだけ皆さんが石組みに興味を示すとは正直ちょっと驚きました。やはり、登山道の荒廃の問題は全員が感じていることなのでしょうね。必死になって組み方を習っている姿は、山をみな愛しているのだなと改めて実感した今回の研修会でした。
皆様2日間、本当にお疲れ様でした。
2009年06月04日十勝岳望岳台コース
大雪山国立公園 東川 宮崎 浩
大雪の魅力の一つに「夏でも雪が見られる」というのがあると思います。
場所によっては万年雪があり、夏山で汗をかいた後に雪の上を歩くというのは何とも言えない気分を味わえると思います。
そんな大雪の中でも比較的雪解けの早い(と思われる)十勝岳望岳台コースの情報です。
6月3日現在、避難小屋までの道では雪渓はほとんどなく、夏道が完全に出ているのでマーキングと看板を目印にして歩いてください。
避難小屋から一か所雪渓のトラバースがありますが、比較的短い雪渓なのでコースを外れることはないと思います。そこからは、十勝岳名物?のカラガラした岩場登り(頑張って!)。看板もしっかり立っているので目印にして歩いてください。
避難小屋上の雪渓部分
そこから先は夏道がでていました
前十勝の噴煙を右に見て荒涼とした砂漠のような登山道を歩いて行くと(意外とここの砂が深く歩きにくい)、山頂前の最後の急登部分ですが、ここの部分は雪渓歩きとなり最大の難所です。
本日は、気温も比較的高く雪も緩んでいたため通常の登山靴だけで登って行けましたが、気温の低い早朝などは凍っている可能性もあるため、時間帯によってはアイゼンの携帯もお勧めします。
雪渓をこえて、最後のガレ場をぜいぜい言いながら登り切ると十勝岳山頂です。
山頂直下の大雪渓(左のとがった部分が山頂)
ここから、疲労も風速もMAXへ・・・
この時期は日によって気温差が大きいため、ひとたび悪天候に見舞われれば冬山となります。本日も稜線部分は風が非常に強く、ニット帽をかぶるほどでした。(ちなみに今日の旭川の最高気温は25℃くらいまで上がったそうですが山では全くそれを感じさせない一日でした)
ただ、今日は雪が緩んでいたため、頑張って登った後の雪渓を滑り降りる気持ちよさは何とも言えない気分でした。
日帰りで登るには比較的メジャーな十勝岳。雪が少なくなったとはいえまだまだ夏山まではもう少し先といった姿を見せてくれた今日の十勝岳でした。
2009年05月29日富良野岳・美瑛方面の雪解けは・・・
大雪山国立公園 東川 宮崎 浩
まだまだ残雪の大雪山。山登りまたは観光で訪れる人も少ないこの時期は、夏山の混雑時期しか知らない方には信じられないくらいの静けさです。
本日の雪解け情報は富良野岳方面です。
凌雲閣側からの登山道入り口付近はまだまだ積雪1メートル近く、知らない方にはここが入り口ということすら分からない状態。駐車場から上るのに一苦労。
その先の登山道は、夏道と冬道が交互にあらわれてちょっとした迷路状態となっているところが多い感じです。途中積雪深は平均50cm~60cmくらい。雪上の踏み跡は全くなく、しばらくは非常にわかりにくい状態が続き一般向けではないと思われます。

途中の登山道の様子(三段山方面)

三段山分岐部分の様子(看板が出てきました)
「雪の上は歩けないけどいい時期になってきたので歩きに行ってみたい」という方には、白金温泉方面の散策をお勧めします。温泉街周辺の散策路の雪は既にありません。野鳥の活動が活発になるこの時期は、バードウオッチングにも良い時期です。
天気の良い暖かい日には、お弁当などを持って軽くハイキングなんていうのはいかがですか?新緑の時期、森のにおいを感じて是非初夏の(まだ春のところもありますが・・・)大雪を満喫してください。
ただ、雪解け時期はヒグマの動きが活発になる時期でもあります。散策前には地元での情報収集とヒグマ対策をして散策されることをお勧めします。

白金の「青い池」(すみません、天気がイマイチであまりきれいに写っていませんが・・・)
本日の雪解け情報は富良野岳方面です。
凌雲閣側からの登山道入り口付近はまだまだ積雪1メートル近く、知らない方にはここが入り口ということすら分からない状態。駐車場から上るのに一苦労。
その先の登山道は、夏道と冬道が交互にあらわれてちょっとした迷路状態となっているところが多い感じです。途中積雪深は平均50cm~60cmくらい。雪上の踏み跡は全くなく、しばらくは非常にわかりにくい状態が続き一般向けではないと思われます。
途中の登山道の様子(三段山方面)
三段山分岐部分の様子(看板が出てきました)
「雪の上は歩けないけどいい時期になってきたので歩きに行ってみたい」という方には、白金温泉方面の散策をお勧めします。温泉街周辺の散策路の雪は既にありません。野鳥の活動が活発になるこの時期は、バードウオッチングにも良い時期です。
天気の良い暖かい日には、お弁当などを持って軽くハイキングなんていうのはいかがですか?新緑の時期、森のにおいを感じて是非初夏の(まだ春のところもありますが・・・)大雪を満喫してください。
ただ、雪解け時期はヒグマの動きが活発になる時期でもあります。散策前には地元での情報収集とヒグマ対策をして散策されることをお勧めします。

白金の「青い池」(すみません、天気がイマイチであまりきれいに写っていませんが・・・)
2009年05月27日大雪はまだまだ冬でした
大雪山国立公園 東川 宮崎 浩
皆さん、はじめまして。
今年の5月より東川のアクティブレンジャーとして活動している
宮崎と申します。おもに、旭岳から十勝岳、富良野岳方面の情報を
皆 さんに少しでも早く、分かりやすく伝えていきたいと考えてますので
どうぞ、よろしくお願いします。
私の最初の登山道巡視は、旭岳から。
今日はロープウェイを使わず姿見まで登ってみました。町ではすっかり初夏の陽気が続いているこの頃ですが、山のほうはまだまだ残雪時期、ロープウェイの入口から姿見までの登山道は積雪状態のままでした。今日のところはコース上をそのまま歩いて行けましたが、雪解け時期はあっと言うまに状況が変わってしまうので、冬のスキーコースと夏道とを熟知した方と歩くことをお勧めします。

現在の天女が原登山道

スキーコースの途中の積雪計はまだ1m50cmでした
それにしても、姿見の高山帯に出ると寒い!!
風が今日は北風に変わったせいでロープウェイ姿見駅の温度計はたったの2度でした。しかも15メートル以上の強風。
やはりこの時期はまだまだ冬装備での登山をお勧めします。日陰部分はまだ時間帯によってはアイゼンが必要な箇所もあるので冬山経験のない方は、もう少し待ったほうがよいでしょう。
ただ、雪解けの進んだところにはエゾノリュウキンカが目立ってきていました。これから6月の中旬まで楽しめる花です。ぜひ、見つけてみてください。

やはり、毎年思うことですがシーズン初めは体が思うように動かず息がすぐに上がってしまい「これではいかん」と思う時期でもあります。
早く体を夏山モードにしていかねばと改めて思いなおした一日でもありました。
今年の5月より東川のアクティブレンジャーとして活動している
宮崎と申します。おもに、旭岳から十勝岳、富良野岳方面の情報を
皆 さんに少しでも早く、分かりやすく伝えていきたいと考えてますので
どうぞ、よろしくお願いします。
私の最初の登山道巡視は、旭岳から。
今日はロープウェイを使わず姿見まで登ってみました。町ではすっかり初夏の陽気が続いているこの頃ですが、山のほうはまだまだ残雪時期、ロープウェイの入口から姿見までの登山道は積雪状態のままでした。今日のところはコース上をそのまま歩いて行けましたが、雪解け時期はあっと言うまに状況が変わってしまうので、冬のスキーコースと夏道とを熟知した方と歩くことをお勧めします。
現在の天女が原登山道
スキーコースの途中の積雪計はまだ1m50cmでした
それにしても、姿見の高山帯に出ると寒い!!
風が今日は北風に変わったせいでロープウェイ姿見駅の温度計はたったの2度でした。しかも15メートル以上の強風。
やはりこの時期はまだまだ冬装備での登山をお勧めします。日陰部分はまだ時間帯によってはアイゼンが必要な箇所もあるので冬山経験のない方は、もう少し待ったほうがよいでしょう。
ただ、雪解けの進んだところにはエゾノリュウキンカが目立ってきていました。これから6月の中旬まで楽しめる花です。ぜひ、見つけてみてください。
やはり、毎年思うことですがシーズン初めは体が思うように動かず息がすぐに上がってしまい「これではいかん」と思う時期でもあります。
早く体を夏山モードにしていかねばと改めて思いなおした一日でもありました。
2008年12月03日想像力
大雪山国立公園 東川 山下 なつ絵
12月1日、快晴。望岳台から望む十勝岳連峰はすっかり雪化粧をし、真っ青な空をバックにデコボコの山容がくっきりと浮かび上がっていました。夏山を彩っていた高山植物もすっかり雪の中。替わりに現れたのは雪面に点々と続く動物達の足跡です。

雪面にぽつんと立ったハイマツの稚樹の根元に向かって、エゾユキウサギの足跡が残っていました。白く輝く雄大な景色にただ見とれる人間をよそに、厳しい環境の中、彼らが冷たい樹の根元に顔をつっこんで食べ物を探したような痕がくっきりと残っていました。(写真手前中央が足跡、中央の山は美瑛岳、左は美瑛富士)
足跡とはすごいのもで、姿を直接目で確認するよりも、その生物がいつ頃、何のために、ここで何をしたのか・・・と想像力を大いにかき立ててくれます。それは人間にとって都合のいい勝手な想像かも知れませんが、皆さんも雪の上に点々と続く足跡を見つけたら、それが何の足跡かだけでなく、その生物の姿と行動を想像してみませんか?

樹の根元を探った後、来た方向とは反対に足跡は伸びていました。仲間に呼ばれたのか、食べ物が見つからなくて他に移動したのか?(奥の山は富良野岳)

美瑛町から見た十勝岳連峰。今の時期、午後3時半過ぎには薄暗くなり始める。

雪面にぽつんと立ったハイマツの稚樹の根元に向かって、エゾユキウサギの足跡が残っていました。白く輝く雄大な景色にただ見とれる人間をよそに、厳しい環境の中、彼らが冷たい樹の根元に顔をつっこんで食べ物を探したような痕がくっきりと残っていました。(写真手前中央が足跡、中央の山は美瑛岳、左は美瑛富士)
足跡とはすごいのもで、姿を直接目で確認するよりも、その生物がいつ頃、何のために、ここで何をしたのか・・・と想像力を大いにかき立ててくれます。それは人間にとって都合のいい勝手な想像かも知れませんが、皆さんも雪の上に点々と続く足跡を見つけたら、それが何の足跡かだけでなく、その生物の姿と行動を想像してみませんか?

樹の根元を探った後、来た方向とは反対に足跡は伸びていました。仲間に呼ばれたのか、食べ物が見つからなくて他に移動したのか?(奥の山は富良野岳)

美瑛町から見た十勝岳連峰。今の時期、午後3時半過ぎには薄暗くなり始める。
2008年10月09日換毛の時期
大雪山国立公園 東川 山下 なつ絵
9月24日に大雪山系で初冠雪を記録してから2週間ほど経ちましたが、例年ならば初冠雪後に一度は溶けてしまう雪が、今年は完全に消える事がないまま、積雪量は一進一退を繰り返しながら少しずつ冬に近づいています。
10月上旬、姿見の池園地で見かけたエゾユキウサギは、いつもより早い根雪に換毛が間に合わず雪の上で茶色の夏毛が目立っていました。人間は年中勝手に?毛が抜けかわりますが、意識しないと普段の生活ではあまり気がつかない出来事です。一方、ほ乳類は毎年一定の時期に身体全体の毛が抜けかわります。ほ乳類の中でも毛の色があまり変わらないタヌキなどと違って、エゾユキウサギやオコジョ、本州の雷鳥などは冬毛が真っ白になるので換毛が目立ちます。換毛には保温と敵から身を守る保護色の働きがあります。
白く染まった姿見の池園地で、身を隠す術を失ったエゾユキウサギがとても臆病に見え、「ウサギさん、何を基準に換毛が始まるの?今年は予想より積雪が早くて換毛が間に合わなかったの?」と聞いてみたかったのですが、聞いたところで返事が返ってくるはずはありません。帰ってからエゾユキウサギの換毛の仕組みを図鑑で調べてみると、褐色の夏毛が抜け白い毛が生えてくるのではなく、夏毛が白くなるのは白化(はっか)と言われる現象で、一定の温度の低下によりホルモンか酵素などが働き、それによって毛の色素が無くなり白くなるようです。(新たに生えてくる下毛は白なので冬は白く、春には褐色の毛が新たに生え夏毛に換わる)
単純に雪が降れば保護色の白に換毛すると思っていた私ですが、そう簡単に変われない複雑な仕組みがDNAに組み込まれていたようです。
冬、真っ白なユキウサギが悠々と雪の上をかけている姿を見つけてみたいと思いました。

エゾユキウサギの姿は写真に納められませんでしたが、旭岳周辺ではこんな冬の風物詩も。10月2日、キバナシャクナゲに出来たミニエビの尻尾。(後ろは旭岳)

10月6日の旭岳。姿見の池に白い旭岳の姿が映し出されてとても綺麗でした。
天人峡では紅葉が見頃を迎えています。秋と冬の風景を同時期に味わえるのも広い大雪山ならではです。

10月上旬、姿見の池園地で見かけたエゾユキウサギは、いつもより早い根雪に換毛が間に合わず雪の上で茶色の夏毛が目立っていました。人間は年中勝手に?毛が抜けかわりますが、意識しないと普段の生活ではあまり気がつかない出来事です。一方、ほ乳類は毎年一定の時期に身体全体の毛が抜けかわります。ほ乳類の中でも毛の色があまり変わらないタヌキなどと違って、エゾユキウサギやオコジョ、本州の雷鳥などは冬毛が真っ白になるので換毛が目立ちます。換毛には保温と敵から身を守る保護色の働きがあります。
白く染まった姿見の池園地で、身を隠す術を失ったエゾユキウサギがとても臆病に見え、「ウサギさん、何を基準に換毛が始まるの?今年は予想より積雪が早くて換毛が間に合わなかったの?」と聞いてみたかったのですが、聞いたところで返事が返ってくるはずはありません。帰ってからエゾユキウサギの換毛の仕組みを図鑑で調べてみると、褐色の夏毛が抜け白い毛が生えてくるのではなく、夏毛が白くなるのは白化(はっか)と言われる現象で、一定の温度の低下によりホルモンか酵素などが働き、それによって毛の色素が無くなり白くなるようです。(新たに生えてくる下毛は白なので冬は白く、春には褐色の毛が新たに生え夏毛に換わる)
単純に雪が降れば保護色の白に換毛すると思っていた私ですが、そう簡単に変われない複雑な仕組みがDNAに組み込まれていたようです。
冬、真っ白なユキウサギが悠々と雪の上をかけている姿を見つけてみたいと思いました。
エゾユキウサギの姿は写真に納められませんでしたが、旭岳周辺ではこんな冬の風物詩も。10月2日、キバナシャクナゲに出来たミニエビの尻尾。(後ろは旭岳)
10月6日の旭岳。姿見の池に白い旭岳の姿が映し出されてとても綺麗でした。
天人峡では紅葉が見頃を迎えています。秋と冬の風景を同時期に味わえるのも広い大雪山ならではです。
2008年09月03日アピールの仕方
大雪山国立公園 東川 山下 なつ絵
大雪山は今、色とりどりの高山植物が咲き乱れていた夏から、紅葉の秋へと季節が移行しています。高山植物が花から実や種に変わる時期、夏の賑わいから一転して公園を訪れる人や野鳥の姿が少なくなり、巡視に出かけた十勝岳連峰の三段山は歩き始めから静寂に包まれていました。
時々後ろから感じる人の気配に、時々咳払いなどで自分の存在をアピールしつつも、静かな山を楽しみに来た人の邪魔にならないようにと、一定の距離を保ってそっと静かに歩きながら山頂まで行きました。山頂に着いて初めてその人の姿を確認しようという気になり、自分が今来た道をじっと見ていましたが、すぐそこまで迫っていた足音はいつしかハイマツの海に移動し次第に遠ざかって行き、その人はとうとう山頂に現れる事はありませんでした。色々な事が頭をよぎりましたが、結局その人の正体が明らかになったのは下山を始めてすぐの事でした。

登る時には無かったヒグマの糞が黒々と光り、強烈にその存在をアピールしていました。山の中ではクロウスゴやナナカマドの実が色づいていますが、真新しい糞の中身を拝見すると、植物の葉や茎など繊維質の物がほとんどを占めていました。
登山者に「大雪山を歩きたいのですがヒグマは居ますか?」とよく聞かれますが、私は実際にその姿を見た事はありません。しかし、はっきりと「はい、大雪山にヒグマは居ます。ヒグマ対策を忘れずにお出かけ下さい」と言えるのは、巡視中に何度も糞や植物の掘り返し跡などを見ているからです。
大雪山ではその姿を見る事は滅多にないヒグマですが、普段私たちが歩き回っている場所はヒグマのテリトリーであり、そこにお邪魔しているという気持ちを忘れないようにしなくてはと、改めて感じた初秋の三段山での出来事でした。

ヒグマの掘り返し跡。先日、美瑛岳付近でも見かけました。

こちらは9月2日に行った十勝岳連峰の三峰山。紅葉が4割くらい色づいていました。
時々後ろから感じる人の気配に、時々咳払いなどで自分の存在をアピールしつつも、静かな山を楽しみに来た人の邪魔にならないようにと、一定の距離を保ってそっと静かに歩きながら山頂まで行きました。山頂に着いて初めてその人の姿を確認しようという気になり、自分が今来た道をじっと見ていましたが、すぐそこまで迫っていた足音はいつしかハイマツの海に移動し次第に遠ざかって行き、その人はとうとう山頂に現れる事はありませんでした。色々な事が頭をよぎりましたが、結局その人の正体が明らかになったのは下山を始めてすぐの事でした。
登る時には無かったヒグマの糞が黒々と光り、強烈にその存在をアピールしていました。山の中ではクロウスゴやナナカマドの実が色づいていますが、真新しい糞の中身を拝見すると、植物の葉や茎など繊維質の物がほとんどを占めていました。
登山者に「大雪山を歩きたいのですがヒグマは居ますか?」とよく聞かれますが、私は実際にその姿を見た事はありません。しかし、はっきりと「はい、大雪山にヒグマは居ます。ヒグマ対策を忘れずにお出かけ下さい」と言えるのは、巡視中に何度も糞や植物の掘り返し跡などを見ているからです。
大雪山ではその姿を見る事は滅多にないヒグマですが、普段私たちが歩き回っている場所はヒグマのテリトリーであり、そこにお邪魔しているという気持ちを忘れないようにしなくてはと、改めて感じた初秋の三段山での出来事でした。
ヒグマの掘り返し跡。先日、美瑛岳付近でも見かけました。
こちらは9月2日に行った十勝岳連峰の三峰山。紅葉が4割くらい色づいていました。
2008年08月06日飽きない顔
大雪山国立公園 東川 山下 なつ絵
7月30日、美瑛岳~十勝岳間の道迷い防止マーキングのペンキ塗りを行いました。
望岳台から歩き始めると、足下はごろごろの岩だらけです。でも良く見ると岩の間にはマルバシモツケやウラジロタデの白い花も見られます。
岩場の斜面を登り雲の平に入ると植物が増え、エゾオヤマノリンドウ・ミヤマアキノキリンソウ・ミヤマリンドウ・イワギキョウといった秋の花が次々と咲き始めていました。

遠目に見ると濃い緑色の美瑛岳中腹を通り、美瑛岳の山頂に着くと目の前には荒々しい山容の十勝岳連峰が連なっています。美瑛岳から十勝岳へと続く登山道は岩場や砂礫地が多く、特に平ヶ岳周辺は草木も生えない砂礫地が広がり、「砂漠に迷い込んだのでは」と錯覚を起こすような光景が広がります。

岩場から高山植物帯、砂礫地と、わずか数時間歩く間にこれだけの景色・環境の変化を味わえるのはすごい事です。これは大雪山を歩いているといつも感じる事ですが、同じ大雪山の中でも少し場所が変わっただけで生えている植物が違い、同じ植物でも場所が変わると色が微妙に違っていたり、生息する動物の種類や数が違ったり、景観も、なだらかで広がりのある景観、爆裂火口を目前に望む荒々しい景観と、大雪山は変化に富んだ様々な顔を持っています。多様な自然が織りなす素晴らしい景色や新しい発見、知れば知るほどもっと知りたくなる、この奥深さが大雪山の魅力だと思います。

ペンキ塗りの作業中に出会った人達に「大変な仕事ですね。でも楽しそう」と言われました。そう、楽しい仕事なんです。アクティブレンジャーって。
望岳台から歩き始めると、足下はごろごろの岩だらけです。でも良く見ると岩の間にはマルバシモツケやウラジロタデの白い花も見られます。
岩場の斜面を登り雲の平に入ると植物が増え、エゾオヤマノリンドウ・ミヤマアキノキリンソウ・ミヤマリンドウ・イワギキョウといった秋の花が次々と咲き始めていました。
遠目に見ると濃い緑色の美瑛岳中腹を通り、美瑛岳の山頂に着くと目の前には荒々しい山容の十勝岳連峰が連なっています。美瑛岳から十勝岳へと続く登山道は岩場や砂礫地が多く、特に平ヶ岳周辺は草木も生えない砂礫地が広がり、「砂漠に迷い込んだのでは」と錯覚を起こすような光景が広がります。
岩場から高山植物帯、砂礫地と、わずか数時間歩く間にこれだけの景色・環境の変化を味わえるのはすごい事です。これは大雪山を歩いているといつも感じる事ですが、同じ大雪山の中でも少し場所が変わっただけで生えている植物が違い、同じ植物でも場所が変わると色が微妙に違っていたり、生息する動物の種類や数が違ったり、景観も、なだらかで広がりのある景観、爆裂火口を目前に望む荒々しい景観と、大雪山は変化に富んだ様々な顔を持っています。多様な自然が織りなす素晴らしい景色や新しい発見、知れば知るほどもっと知りたくなる、この奥深さが大雪山の魅力だと思います。
ペンキ塗りの作業中に出会った人達に「大変な仕事ですね。でも楽しそう」と言われました。そう、楽しい仕事なんです。アクティブレンジャーって。
さて、本日は旭岳の情報です。一般的には、旭岳といえばロープウェイを利用しての山頂往復。もしくは体力のある方なら山頂から裏旭を抜けて中岳温泉で足湯を楽しんで、裾合平でチングルマの花畑を堪能(秋はチングルマの紅葉も見事です)して、姿見に戻ってくるというパターンが多いのではないでしょうか?
夏の裾合名物の白鳥の雪渓(例年7月初~中旬にみられます)
ただ、今年は旭岳山頂までの雪は無くなりましたが、裾合平の雪解けがここ数年の間ではかなり遅いようなので、まだまだ夏山とはいえない状況がしばらく続きそうです。6月15日現在では、中岳温泉~姿見駅までの登山道は7~8割が雪の下、といった感じでした。
今後は、夏道と積雪路とが入り混じり非常に道が不明瞭になり、遭難事故が多発する時期となります。裾合平方面を熟知した方でもルートファインディングには大変苦労するこれからの時期の裾合平、これまで夏または秋の積雪のない状態でしか歩いたことのない方は、旭岳山頂の往復コースが妥当かと思われます。
今後の雪解け状況によって、いつ頃からは夏道が完全に出てくるかということは何とも言えませんが、場合によっては7月の中旬くらいでも雪の多い時期は積雪路で苦労する年もありますので、今年の夏に裾合平コースを考えている方は最新の情報を仕入れてから登山されることをお勧めします。
登山道情報については
旭岳ビジターセンター TEL 0166-97-2153
http://www.welcome-higashikawa.jp/vc/index.htm
また、毎日9:00~17:00までは姿見駅に旭岳監視員が常駐していますので、そこで情報を仕入れるのもよいかと思います。
今年の北海道の冬、平地では記録的な少雪でしたが、山のほうでは記録的な豪雪となりました。くれぐれも大雪山の夏を甘く見ないで、楽しい登山にしてください。
中岳温泉付近から見た裾合平の様子。積雪は平均で60~70cm、多いところでは1m近くありました。
ガスにまかれるとこの状態、この状況であなたはどっちに進路をとりますか?