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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

樽前山と外来コマクサ2022

2022年11月28日
支笏湖 阿部万純

支笏湖のほとりにそびえる樽前山。
独特な形をした溶岩ドーム周辺から、現在も噴煙を上げている活火山です。 

標高は1041mと比較的登りやすい山である一方で、イワブクロやイソツツジ、シラタマノキといった高山植物の宝庫でもあります。 

    ↓樽前山を代表する植物であり、タルマイソウという別名を持つイワブクロ
テキスト#あああ
その景観と生態系を維持するために行っている活動が、今回紹介する外来種の調査と除去です。
外来種とは、人が連れてきてしまった、その場所に本来いないはずの生きもののこと。
樽前山では元々なかったはずのコマクサが人の手によって持ち込まれ増えてしまったことが問題視されています。


高山植物の女王と呼ばれるコマクサですが、そのたくましい繁殖力によってイワブクロなどの他の植物の生育場所をうばってしまいます。
そこで平成16年から継続して取り組んでいるのが除去活動です。
ここからは、2022年に行った3回の活動を紹介していきます。
 

6月

まずは今年の生育状況を調査するところからスタート。
イソツツジの白い花が満開の樽前山をボランティアと一緒に登ります。


つぼみを付けた小さなコマクサを発見しました。


この大きさでも芽が出てから2~3年経っています。
土がほとんどない斜面で成長するその生命力には思わず心を打たれてしまいました。

 

7月

この日もボランティアと一緒に山を登ります。

 
燦々と降り注ぐ夏の太陽の下、斜面に這いつくばってコマクサを除去していきます。
 

花を咲かせるイワブクロのすぐ隣にも、薄緑色の葉を広げた新しい株が!
 

他の植物を傷つけないように慎重に除去します。

 

9月

秋の晴れ間を利用して、2022年最後の除去活動を実施。
 

最も傾斜のきつい場所で、怪我や落石に注意しながら作業をします。
 

ここは国立公園内で一番重要な特別保護地区(原生的な景観を守るべき場所)に近い地点。
技術と体力が必要になりますが、手は抜けません。



今年の活動で除去されたコマクサの合計は、推定1361株。
2020年は推定2529株、2021年は推定2077株だったため、少しずつ数が減ってきているように見えます。
しかしコマクサの繁殖力は非常に強く、一旦手を止めてしまえば元の木阿弥という事態になりかねません。
これからも樽前山本来の風景を取り戻すため、活動を続けていこうと思います。
 


※作業にあたっては登山道以外の場所に踏み入りコマクサを除去する許可を取って活動しています。
 個人的にコマクサを抜くことはできませんのでご注意ください。


(支笏洞爺国立公園管理事務所/阿部)
 

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