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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

スノーモビルによる資材運搬と木道の設置 ~2023夏~

2024年03月06日
上川 忠鉢伸一
大雪山愛山渓、裾合平では2023年3月にスノーモビルを使用して資材の運搬が行われました。
資材は登山道を整備する材料として使用されています。
大雪山では2019年度の走行調査から始まり、実質3年目となりました。

スノーモビルによる資材運搬 ~裾合平~

今回は昨年のシーズンに運搬した資材を使って木道を設置した、登山道整備イベントの様子をお伝えします。
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【愛山渓での登山道整備イベント】
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【木道設置の様子】
朽ちた木道は撤去され、冬期にモビルで運んだ資材で新たな木道が敷かれていきます。
北海道山岳整備スタッフの指導のもとに、作業はボランティアの方々によって行われました。
登山道整備は楽な作業ではありませんが、参加した方々はとても楽しそうだったのが印象的でした。
登山道整備に携わることによって得た新しい視点は、自然をより深く知るきっかけになるはずです。
登山、トレラン等、山を楽しむアクティビティは沢山ありますが、「登山道整備」は新しい山の楽しみ方のひとつになりつつあると感じました。
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【裾合平での施工】
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【椰子マットを使った補修】
木道以外にグレーチング(金属でできた格子状の溝蓋)を使用している場所もあります。
木道は登山道を完全に覆ってしまうのに対し、グレーチングは構造上ある程度日光を通すため、グレーチングの床板の下の植生が生育可能であると考えられます。
もともと大きな植物群落であったのに、登山道を通すために分断され、登山道の右側と左側で植生の種類が変わってしまったという場所もあります。
グレーチングの歩道はそんな問題を解決できるかもしれません。
 
裾合平の木道は設置されてから20~30年の間に朽ちてしまいましたが、金属のグレーチングはそれ以上の年数を耐えてくれることを期待しています。
今回、登山道上の木道を新しく設置しただけではなく、登山道周辺の裸地化した場所には、ヤシネットや現地採取の石を使って植物が育ちやすい微地形を作っています。
植生はどのように復元していくのか?
こちらも引き続きモニタリングしていこうと思います。
 
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【グレーチングを使った施工】
スノーモビルでの資材運搬が可能になった為、人力だけでは何年もかかる規模の施工が単年で可能になり、まだまだ充分ではないですが、登山道の雰囲気も少しずつ変わってきたように思います。
2024年シーズンもスノーモビルを使った資材運搬は行われる予定です。

なぜ登山道に木道を敷設するのか?

登山道の荒廃する原因の一つに「登山者による踏圧」があります。
登山者が歩けば歩くほど、登山道は削られていきます。
特に大雪山の融雪期と登山シーズンが重なる時期は、削られた表土が水流によって流出する為登山道への影響が大きくなります。
また、登山道外への踏み込みによって踏み固められてしまった土壌は、植物が生育しづらい環境になり裸地化する可能性があります。
 
遊歩道や自然散策路とは違い、登山道にある木道は「歩きやすくするため」に設置しているわけではありません。
木道には踏板を歩くことによって路面への踏圧を減らし、歩くルートを木道上に固定することで登山道外を歩かれるのを防ぎ、登山道やその周辺の植生環境を守ることを目的としています。