北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
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アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、利尻礼文サロベツ、知床、阿寒摩周、釧路湿原、大雪山、支笏洞爺国立公園があります。
ここ支笏洞爺国立公園でも、湖や火山、田園地帯、川、市街地などさまざまな自然があり、その自然環境によってさまざまな種の生きものが生活しています。今までのAR日記でも、2000年噴火の際に出来た金比羅山麓火口と、1910年にできた四十三山の火口の植生の違いを取り上げてきましたが、やはり植生が違うということは、そこにすむ鳥や昆虫などの生きものにも違いがあります。
北海道の在来種、エゾアカガエル。地域固有の動植物が日本各地に生息している。
金比羅山麓火口では主にヨシ(一部ススキ)、イタドリなどが生え、ヒバリやホオジロ、ノスリなど草原性の鳥や、火口壁に育つコケにいる虫や沼に発生するユスリカを食べるアマツバメやハクセキレイ、また、噴石などによって枯れた木を巣に使うアカゲラなどが生息しています。
四十三山の火口周辺は今や森となり、アカゲラやシジュウカラ、ゴジュウカラなど、森林性の鳥が生息しています。“環境”が違う、金比羅山麓火口と四十三山はわずか2kmほど離れているだけですが“鳥”という“種”だけをみても違いがあります。環境が多様であればあるほど、種も多様であることがわかります。(ある1つの場所にたくさんの種がいれば“生物が多様”であるという意味ではありません。)
テントウムシの仲間(カメノコテントウ?)。
日本人にもなじみの深いテントウムシだが、同じテントウムシでもそれぞれ背中の模様に違いがある。人間も顔や性格が違うように、同じ種の中でも形や模様、生態などに多様な個性がある。
また、生物が多様であることで私たちにはたくさんの恵みを享受しながら生活しています。例えば洞爺湖なら、火山による地形の景観や、火山が生み出す温泉、また有珠山の岩なだれ(※1)による岩礁にはタコやカレイなどが生息し、また火山灰や軽石が生み出す土壌によって水はけが良いため、メロンや豆、キャベツなどの農作物が取れます。また地熱を利用したトマト栽培などが行われています。わたしたち人間もその生きものの一部ですが、自分が日頃どのような生きものとつながり、どのような恩恵を受けているのかについて考えてみませんか。
洞爺湖ビジターセンターでは、今年5月の“地球のいのち、えがいてみよう”企画で洞爺湖の生きものを描いた模造紙を 10月末日まで展示中です。
(※1)
約7千~8千年前に羊蹄山のような形をした円錐形の有珠山山頂から南西方向に岩なだれをおこして噴火湾(海)に流れ込み、岩礁の多い地形が生まれました。