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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

モノクロの光景

2011年12月22日
稚内
 今年の礼文は雪が多いです。
 昨年は年末まで積もっては解けてを繰り返し、新年を迎えるころにようやく根雪(春まで解けない雪)になりましたが、今年はすでに多いところで腰の高さほどの雪が積もっています。地元の方によると数十年前に比べれば雪の量は少なくなったとのことですが、それでも近年ではまれにみる雪の多さだということです。気温も全体的に低い日が続き、島は早くも真冬の様相です。
 礼文島の北限スコトン岬では冬になると強い北西の季節風が吹くことが多く、遮るもののない岬の先端では肌に突き刺さるような凍てつく寒さを体感できます。気温がマイナス10℃を下回ることはあまり多くない礼文島ですが、スコトン岬ではひとたび風が吹くと体感気温がかなり低くなることに加えて、空からの吹雪と地吹雪が合わさりしばしばホワイトアウト状態になります。一面白の世界に囲まれ、前後すらわからなくなることがあります。



左:スコトン岬へ続く歩道背後にうっすらと見えるのがトド島(12/16)
右:礼文島最北限の標識(12/16)

 礼文島屈指の景勝地、澄海岬は現在深い雪に覆われています。展望台へ続く歩道は所によって腰の高さまで積雪があり、展望台までたどり着くのは一苦労です。通常、このような雪道を歩く場合、スノーシュー(西洋かんじき)を使用するのですが、先日巡視を行ったときは降りたての雪で柔らかかったこともありスノーシューは使わず雪をかき分けながら20分ほどかけて展望台に登りました。そこで目にしたのは荒々しい海とあたり一面モノトーンの光景でまるで白黒映画の中に迷い込んだかのようでした。夏は色彩あふれる風光明媚な澄海岬ですが、冬、雪化粧をした山肌の白色とグレーがかった海面の黒色が織りなす光景は夏とは一味違った魅力にあふれています。



左列:モノクロカラーの現在の澄海岬(12/16)
右列:色彩あふれる春・夏の澄海岬(上:7/21 下:4/25)

 以前の記事で礼文島の高山植物の発達には冬の強い風と雪の独特の関係があることを取り上げましたが、それは言い換えれば、夏の色彩豊かなお花畑はモノクロの冬によってはぐくまれているということではないでしょうか。夏と冬で好対照をなすこの二つの色彩は礼文島固有の景観を形作ることに一役買っているように私は思うのです。



礼文島南部の奇岩地蔵岩もモノクロカラーに溶け込んでいます(12/16)

【参考記事】
http://hokkaido.env.go.jp/blog/2011/01/680.html
http://hokkaido.env.go.jp/blog/2011/02/694.html