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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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阿寒摩周国立公園 阿寒湖

88件の記事があります。

2012年08月01日北海道火山防災サミット

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

北海道火山防災サミットは、火山に携わる人たちが一堂に会し、北海道全体として、どのような姿勢で火山防災に臨むべきなのか、いま何ができるかを火山の麓の地方公共団体はもとより火山の専門家、住民や子供達も含め、日頃から火山に関わる人たちが話し合う場として2005年から開催されています。2006年のいぶり、2008年の十勝岳に続き、4回目となる今年は、雌阿寒岳での開催となります。

関連イベントとして、すでに、

7月21日:火の山のキッズ登山学習会
7月28日:めあかん自然塾シンポジウム

が開催されました。

現在、阿寒湖畔エコミュージアムセンターにて、
「企画巡回展~雌阿寒岳と共に~」の展示が行われています。



パネル展示のほかにも、



雌阿寒岳の火山岩、北海道火山の立体地図や関連書籍などの展示も行われています。

環境省の展示としては、



昨年度の雌阿寒岳登山者データを展示しています。

こちらでの展示は8月23日まで、その後、足寄道の駅→阿寒湖まりむ館→オンネトーキャンプ場と巡回展示されます。

その他イベントも含め、詳細はコチラ。
(北海道火山防災サミットHP→http://www.npo-cemi.com/summit/meakandakesummit.html

8月25日(日)には、「火の山を探るサミット登山会」が開催予定されています。
火山の専門家の方たちと、実際に雌阿寒岳に登って現地で解説を聞くことが出来ます。

皆さんも、ぜひ参加して、国立公園の景観と地形の生い立ちについて、話を伺ってみてはいかがでしょうか。

なお8月5日(日)には、全国一斉クリーンデーが開催され、雌阿寒岳の清掃登山もあります。
(ボッケ遊歩道の外来植物駆除も同時に行われます。詳しくは阿寒湖畔エコミュージアムセンターまで→http://business4.plala.or.jp/akan-eco/

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2012年07月12日身近にいる外来生物展

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

先日、千歳市にある「千歳サケのふるさと館」職員の方から電話があり、
「外来生物について企画展を行うので、湯の滝にいる外来魚を生体展示したいのですが…。」
との問い合わせがありました。
外来生物について皆さんにより広く知ってもらえる企画展です。
わざわざ千歳から捕獲に来られるので、菅野保護官と共に同行し、捕獲に協力しました。

初めて湯の滝の外来魚を目にした職員の方は、
「北海道の林道を1.4kmも入った山の中に熱帯魚がウジャウジャいる」
光景に驚かれていました。



まずはタモ網での捕獲です。
比較的捕まえやすい、池からの流出河川部で行います。
ウジャウジャいるのですが、動きの速いティラピアを捕まえるのは結構難しいです。
両手にタモ網をもって、追い込んで捕まえるのがコツです。

ここでは数は捕れるのですが、エサとなる藻が少ないせいか、あまり大型の個体がいません。
次は、池にいる大型の個体の捕獲です。



池での捕獲は、釣りが最も簡単です。
数が増えてエサ不足になっているため、食べれるものが落ちてきたら即座に群がってきます。

昨年、子供向けの啓蒙活動で実施されたセミナーで、「ティラピアはどのエサが一番好きか?」を調べるため、うどんやパン、ご飯やブドウ虫等で釣果の比較を行ったのですが、結果は…
「何でも食べる」(笑)。

この日はグッピーを餌にしましたが、いつも通り良く釣れました。
基本的にナイルティラピア成魚の食性は、植物質の餌なのですが…。

展示に十分な数が捕獲できたので、これから千歳までの長距離搬送です。
以前、冬場に袋詰めで持ち帰ってグッピー半数を死なせてしまった私ですが、やはり職員の方はプロ、携帯型のエアレーションと大型水槽を準備されていました。
気温も心配ない時期なので、翌日頂いた連絡では全個体無事との事でした。
これで、企画展で姿を見れますね。



詳細はコチラ。
(千歳サケのふるさと館HP→http://www.city.chitose.hokkaido.jp/tourist/salmon/

皆さんも、ぜひ見に行って、外来生物について考えてみて下さい。

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2012年06月08日雌阿寒岳登山巡視② ~生きもの編~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

雌阿寒岳の登山巡視ですが、雌阿寒温泉登山口から登りました。

まずは、10㎝程度の体のどこからあんな声が出せるのかと思うミソサザイ、控えめに「ルリビタキだよ」とさえずるルリビタキに送られながら森林帯を歩きます。

山頂近くでは、ブーメランのような姿で飛び回り、時おり見せる白い腰がアクセントのイワツバメの群れが舞っています。

昼食をとったお花畑のハイマツでは、クマよけ鈴と間違えそうなカヤクグリの声が聞こえます。

下山してオンネトーを眺めると、オシドリのつがいが訪れています。

数日前巡視した、オンネトー登山口から近い湯の滝ではキセキレイやウソが飛び回っていました。
(画像が撮れたのはオシドリとキセキレイだけですが…。)



昼食をとったオンネトーコース8合目のお花畑では、ミネズオウが見頃です。



メアカンキンバイとコマクサは、ポツポツと開花している程度でした。



これからメアカンフスマやイワブクロ、イワギキョウやイワウメなどといった、高山植物の開花ピークを迎えます。
次回予定している菅野保護官との登山巡視では、どんな出会いがあるでしょうか。

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2012年06月08日雌阿寒岳登山巡視① ~風景編~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

6月3日雌阿寒岳の安全祈願祭が執り行われ、合わせて足寄町主催の登山会が行われました。
この登山会に同行して山岳巡視を行いました。

まずは、雌阿寒温泉登山口で安全祈願祭です。



昨年は2件の遭難事故がありました。
今年は何も無いことを願って、登山開始です。
この日は天候に恵まれたこともあり、小学生の子供も参加して約50名の人数となりました。

登りは雌阿寒温泉コースです。4合目まではアカエゾマツの森林帯、そこからハイマツ帯となり、最後は火口外輪山の火山れきを登って、山頂到着です。
そこには絶景が広がっていました!!


阿寒湖方面。
画像では分かりにくいかもしれませんが、火口の向こうに阿寒湖、隣に雄阿寒岳、雄阿寒岳左手奥に斜里岳、その左奥に知床連山が見えています。


阿寒富士と青沼。
釧路方面は雲がかかっていました。

あと、遠く広すぎるため画像はありませんが、オンネトー方面はまだ雪をかぶった大雪山~十勝連峰まで見渡せていました。

景色を堪能した後、風を避けお花畑のあるオンネトーコース8合目へ下りて昼食、そのままオンネトーコースを下り、ほぼ予定通り下山となりました。

雪解け後、今回の登山前に登山道整備はされており、危険個所の規制ロープ張り直しや、ルートを示すペイントの塗り直しはされていました。
雌阿寒温泉コース、オンネトーコースとも、登り2時間半~3時間程度、今回小学生の子供たちも山頂まで自力で登れたように、難しい山ではありませんが、以下の点に気を付けてください。

・4合目あたりから上は日差しにさらされます。水場はありませんので、水分は十分用意して下さい。
・山頂は風が強く、一気にガスに覆われることもあります。快晴でも防寒着や雨具、地図は必ず用意して下さい。
・雌阿寒岳は今も噴煙を上げている火山です。火口付近では、強風・視界不良による滑落や、噴煙の向きに注意して下さい。
・阿寒富士は粒の小さな火山れき・火山灰の山です。足が埋まり、「2歩進んで1歩下がり」ながらの登りで疲れます。

昨年の遭難事故も、山頂の天候不良を原因とした道迷いや疲労により発生しました。
皆さんも、事前の準備・体調を整えて、楽しい登山にして下さい。

②~生きもの編~に続きます。

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2012年06月08日悪戦苦闘中⑤ ~初期トラブル編~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

久々のAR日記ですが、お約束のEMC水槽展示におけるトラブルです。

①水温上昇によるグッピー雌雄分離

保護官事務所で飼育している間は、オスメスを混泳させていました。
もともと水温の低い水槽で予定外に孵化したグッピーだったので、そのまま低水温で飼育し、孵化後数ヶ月の間、繁殖も病気もせず育っていました。
しかし、阿寒湖畔エコミュージアムセンター(EMC)の展示スペースは冬の間温泉暖房が入っており、24時間室内は暖か、水温も適温に保たれてしまいます。
繁殖してしまうのは間違いなさそうなので、止むを得ず水槽セパレーター(仕切り板)でオスメスを分けました。
(水槽が狭く感じられ、見栄えも悪くなるので使いたくなかったのですが…。)

②それでも稚魚生まれる

保護官事務所生まれとは別に、ティラピア捕獲時にオンネトー湯の滝育ちのグッピー数匹を持ち帰りました。
この中のメスがすでに受精していたようで、ある朝稚魚が数匹泳いでいました…。
グッピーメスは、一度受精すると数回稚魚を生むことが出来るそうです。
この先何匹生まれてくることやら…。



③病気

グッピー飼育で最も多い「白点病」と「カラムナリス病(尾グサレ病)」が発生しました。幸い、塩水の中に暫く入れてやる塩水浴で回復しました。

④藻発生

グッピー水槽に緑色の藻が、ティラピア水槽に茶色の藻が急激に発生。原因は、EMC展示開始の際に、照明タイマーを開館時間に合わせて再設定した時のミスでした。開館直前に点灯するはずが、深夜から点灯していました。魚たちも寝不足だったかもしれません。点灯時間を正常に戻したところ、藻の成長は鈍くなりました。



⑤ティラピアのいじめ

今まで小さな個体を無視してきたティラピア(大)ですが、ある日ティラピア(小)の隠れ家の石を突き倒して追っかけ回していました。ティラピア(小)は鱗がボロボロになり、隔離して治療を試みましたが残念ながら死亡してしまいました。

⑥産卵床

ティラピアオスは成熟すると、「産卵床」と呼ばれるすり鉢状の穴を水底に掘り、そこでメスの産卵を待ち受けます。水槽で単独の飼育をしていても、底砂を掘り返していました。待っても誰も来てくれませんが…。
エアーストーンやヒーターを埋めてしまいますが、大きな問題は無く、ティラピアの生態を見てもらうという事で、このままにします。



いろいろ大変な生体展示ですが、パークボランティアの方が館内ガイドで利用してくれたり、湯の滝記載のオンネトーパンフレットを持ち帰る方が増えたりするなど、有効利用はされているようです。

今回で「悪戦苦闘中」の連載は終わりますが、これからも外来魚問題について随時報告はしていきます。次の報告をお待ちください。

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2012年04月17日悪戦苦闘中④ ~EMC展示編~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

苦労して持ち帰ったティラピア、最初のうちは警戒心が強く、人が近付くとダッシュで水槽のすみっこに頭をうずめ、人工餌も口にしませんでした。



しかし、やはり空腹には勝てず、初めは餌を飲み込むとすぐに水槽のすみに戻って口をモグモグさせていましたが、次第にその場で食べ始めるようになり、やがて自動給餌器が動き出す音に反応して、真下で待ち受けるようになりました。

ちなみにティラピアを下から撮ると、こんな感じです。



金魚のようですね。
「魚眼」の視野の広さが良くわかります。

さて、人前に出しても大丈夫そうになったので、やっと阿寒湖畔エコミュージアムセンター(以下、EMC)で展示です。
保護官事務所から展示スペースまで数十mしかないのですが、総重量百数十kgの水槽一式をそのまま移動することは出来ません。
魚を取り出し水を抜き、接続機器を外して水槽をどかし、EMCスタッフに手伝ってもらって水槽台を動かし、再度水槽セッティングのやり直しです。

水槽セッティングが終わると、今度は掲示資料の用意です。
事前に作成しておいた、「オンネトー湯の滝」や「外来生物」についての説明資料を、水槽の周りに掲示していきます。
(ちなみに資料の一部はこちらから引用しました→http://www.env.go.jp/nature/intro/index.html

両サイドの掲示ボード以外にも、水槽上部のライトや自動給餌器を目隠しする役割も兼ねて、水槽の上にもラミネートした資料を載せてみました。



展示に必要な物品の調査からスタートすること4ヶ月近く、やっと展示にたどり着きました。
EMCの入口右手前方にある、「阿寒カレンダーサロン」コーナーに展示中です。
阿寒湖来訪時には、ぜひ「阿寒湖畔エコミュージアムセンター」にお立ち寄りください。

この「悪戦苦闘中」シリーズ、今回で一段落と思っていたのですが、展示開始後もいろいろと問題が…。
ということで、次回「⑤~初期トラブル編~」に続きます。

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2012年03月26日悪戦苦闘中③ ~ティラピア編~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

グッピーの水槽が一段落したので、続いてはティラピアです。

水槽のセッティングは2度目なので順調に完了、問題は中身の捕獲です。

外来魚のいるオンネトー湯の滝は、オンネトー手前の雌阿寒温泉で冬季通行止めとなっており、片道4km以上を雪上歩行となります。
過去の冬季調査ではクロスカントリースキーで往復したそうですが、今回は捕獲した魚を背負っての帰路となり、こける訳にもいかず、スキーに不慣れな私は帰路をスノーシューとしました。
どちらにしろ現地での行動時にスノーシューが必要なので、行きは皆スノーシューを背負って、スキーで出発です。



菅野保護官には捕獲用のタモ網を背負ってもらいました。
私は、釣り道具と胴長を背負っています。
阿寒湖畔エコミュージアムセンターのスタッフ1名と、パークボランティア1名の計4名で、ひたすら”秘湯”を目指して滑って(たまに転んで)行きます。

やっとの思いで着いた湯の滝、感動もそこそこに、まずは腹ごしらえ。
一息ついたところで、いよいよ捕獲開始です。
(なお湯の滝での調査・捕獲・駆除行為は、関係省庁への申請・許可が必要です。)



エコミュージアムセンタースタッフとパークボランティアの方には、釣りによる捕獲をお願いしました。
菅野保護官は水温計測や周辺状況の調査。
私は胴長を着けて、池内の生息状況確認と下流河川でのタモ網による捕獲を行いました。

水温は前回12月からそれほど変わっておらず、左滝の池にはティラピアとグッピーが着実に数を増やしています。
ところが、右滝の池には魚の姿が見当たりません。以前はグッピーが大量にいたのですが…。
全滅するほど水温が下がっている訳ではないので、冬季の一時的な状況かもしれません(事務所のグッピーの件もあるので…)。
雪解け時にもこの状況が続いていることを願いつつ、河川でのタモ網による捕獲に移ります。

池の出口に設置してある遡上防止ネットへ向けて、河川下流からタモ網で追い込んでいきます。
タモ網で小さな個体を捕獲するまでに、釣りグループが大型の個体を釣り上げていました。
今回は駆除が目的ではないので、これで引き上げることにします。
念のため、グッピーも数匹捕獲して終了です。

さて帰りも2時間近くかかるので、捕獲した魚が水温低下で全滅しないよう、保温袋が必要です。
食品を入れる保温バッグでは勿体ないし、クーラーボックスではザックに入れにくいので、自作です。



気泡緩衝材で作った断熱袋の中にビニール袋を入れて、その中に魚とお湯を入れて密封です。
魚が弱らないよう、できるだけ多めにお湯と空気を入れた重たい袋を2つザックに詰め、胴長がザックに入らないので身に着けたままスノーシューで帰りましたが、人間のほうが弱ってしまいました…。

急いで事務所に戻り水槽へ入れてから数日、ティラピアは何とか無事なようです。
(グッピーは翌日までに3匹死んでしまいました・・・。)

ティラピアの様子は、次回「④~EMC展示編~」にて。

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2012年03月13日悪戦苦闘中② ~セッティング編~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

さて、機材が揃ったところで、まず水槽台の用意です。もちろん、自分で組立品。耐荷重が300kg以上ある頑丈な造りのため、大きく重いです。ネジも太く固く、かなりの力仕事です。

次に水槽の加工。
干渉する部分を工作用ノコギリで切り落とします。



上が加工前、下が加工後の水槽です。

この水槽にバックスクリーンを取り付けるのですが、当初考えていたフィルム貼り付けタイプだと、背面にフィルターホースやケーブル類をいろいろ取り付けると、剥がれてしまう恐れがあるため、黒塗りの合板を貼り付けることにしました。
これも水槽サイズに合わせてカットし、水槽枠に貼り付けます。

続いて、底砂をきれいに洗います。60cm水槽分だとかなりの量があります。今回は各5kgの砂を用意しました。
水槽に底砂を敷き詰めたあと、ヒーター/エアストーン/レイアウト用品を設置、配線を整えて水道水を入れていきます。
底砂が舞い上がらないよう静かに注ぎ、一杯になったところでろ過フィルターを設置します。

この後フィルターとエアポンプを作動させて、数日たつと塩素が抜けた飼育水となります。本来はここで各種水質調整を行うようですが、前回の飼育実績から、何もしなくてもマンガン鉱泉育ちのツワモノ外来魚は問題なく飼育できることが分かっています。

同時にヒーターの電源を入れ水温調整、照明を設置しタイマーのプログラムセット。
水槽の蓋は、様々な機材に干渉しないよう加工が必要なため、プラスチックダンボールで作成しました。



これで、とりあえず魚を入れられる状態になりました。
このような水生生物を飼育、展示する人を「アクアリスト」と呼び、熱帯魚ファンだけでなく、専門学校などには水族館やアクアショップで働く人を養成する学科もあります。
この人達のような知識があれば、グッピー展示など基本中の基本なのでしょうが…。

まずは、昨年の試験生き残りのグッピーを入れてみます。
このグッピー、各種試験や水産試験場へのサンプル送付で、全ていなくなったと思った水槽の底に受精卵が落ちていたらしく、親魚がいなくなった数日後に孵化していた稚魚が育った個体です。
本来グッピーは、お腹の中で卵を孵化させ稚魚を生む、卵胎生のはずなのですが…。
湯の滝外来魚が、根絶できない様子が窺い知れます。
恐るべし、グッピー!



さて、新しい水槽に移ったグッピー、予想以上に元気に泳いでいます。今まで水流のほとんど無い水槽で育ったせいか、好んで流れの速い場所やエアの中に集まって遊んでいるように見えます。
新しく用意した人工餌もしっかり食べており、大丈夫そうですね。

最後に、食べ具合を見て自動給餌器の給餌量を調整し、給餌時刻をプログラムして取り付けてセッティング終了です。

この環境で暫くの間グッピーの様子を見ながら、ティラピア水槽セッティング、後日行う湯の滝冬季調査でのティラピア捕獲、展示用の説明パネルの作成など行って、やっとエコミュージアムセンター展示となります。

次回「③~ティラピア編~」は近日公開予定、乞うご期待。

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2012年03月13日悪戦苦闘中① ~準備編~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

以前よりこの日記でお伝えしてきた「オンネトー湯の滝」外来魚(グッピー&ティラピア)ですが、より多くの方に外来生物について知って頂こうと思い、阿寒湖畔エコミュージアムセンターで生態展示を行うことに決めました。

昨年、各種試験のために保護官事務所で外来魚を一時飼育していた時の水槽の状況です。



この時用意したものはエアレーション(いわゆるブクブク)兼用のスポンジろ過フィルターとヒーターだけでした。以前にマリモの試験用に使用されていたものです。
私は今まで熱帯魚を飼ったことは無く、あまり詳しく調べないで展示を行おうと提案したのですが、いざ飼育について勉強を始めたところ、かなり大変なことに…。



水槽機材一式です。
長期飼育、及び来館者向け展示用として管理するためには、最低この程度は必要だと分かりました。

手持ちの水槽/ヒーター/エアポンプに加え、

●水が汚れにくいよう強力な「外部ろ過フィルターセット」
●エアレーション用の「エアストーン」
●エアポンプを低い位置に置いても安全な「逆流防止弁」
●環境を整える役割と見た目にやさしい「底砂」
●屋内展示のための「照明」
●休館日でも生活リズムを乱さない「照明用タイマー」
●休館日でも餌を与えられる「自動給餌器」
●雌雄や大小隔離用の「セパレータ(仕切り板)」
●魚を目立たせ水槽裏を隠す「バックスクリーン」
●水流から逃れるシェルター兼用「レイアウト用品(水草&流木)」
●水濡れに強い「テーブルタップ」
●様々な配線の目隠しや固定のための「配線部材いろいろ」

さらに、
●60cm水槽2個だと100kg越えのため「専用水槽台」
●水替え&コケ落とし用の「清掃用具」

また、手持ちの水槽には蓋用の外枠がついているのですが、かなりの幅があるため他の機材が干渉し取り付けられないことが判明、接着されており外せないため切り取る必要がありました。



いろいろ大変そうです…。

「②~セッティング編~」に続きます。

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2012年02月15日冬のエゾシカ

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

この時期、雪のボッケ遊歩道を歩くと彼らに出会います。



エゾシカです。
地熱により暖かなボッケに出てきては、休息しています。

このボッケ、阿寒湖周辺にはいくつもあり、特に阿寒湖畔スキー場のある白湯山周辺に多く見られます。
果たしてこれら白湯山のボッケを、湖畔ボッケと同じようにエゾシカが冬季利用しているのか、菅野自然保護官と調査を行って来ました。

無雪期には林道から数分で行ける個所が多いのですが、この時期は深雪の森の中をスノーシューで歩いて山越えして行かなければなりません。

夏には雌阿寒岳山頂付近までエゾシカの痕跡が見られますが、スキー場より奥、山の中のボッケは、雪の中を1日歩き回った今回の調査では、エゾシカはほぼ使っていないことが確認されました。



上段が山中のボッケ、下段がスキー場近くのボッケです。

山中のボッケは、周囲がきれいに雪で覆われており、動物の痕跡はほとんど見られません。
ササの葉は地面から顔を出しており、エサはあるようです。

これに対し、スキー場近くのボッケはシカ牧場状態で、複数の群れが逃げ出し、雪の上は食痕やシカ糞で一面黒く染まっていました。
この違いは何なのでしょうか?

実は、山中のボッケで1頭だけエゾシカを目撃しました。
大人のオスジカが、私たちを見て逃げようとするも雪に阻まれ、なかなか前に進めず急斜面で危うく滑落しかかりました。
一方、スキー場近くのボッケは周囲に河川や除雪された林道があり、実際ボッケに行くまでの林道上で車の前を数頭が走って逃げていきました。



上の画像は、今回調査した白湯山林道の夏との比較です。
標識の埋まり具合から見ると、1m以上雪に覆われているようです。

阿寒湖畔周辺で山林管理を行い、エゾシカの生態にも詳しい前田一歩園財団によると、エゾシカは、積雪が50~60cmを超えると雪を掘ってササなどを食べることが出来なくなり、標高を下げ、雪を掘りやすい川岸などに集まってくるそうです。
エゾシカの肩までの高さは1m程度、50~60cmといえば脚がすっぽり埋まってしまう深さです。
オスジカであれだけ苦労しているので、体の小さなメスや子供では身動き取れないのでしょうね。

人間と同じように、(人の気配がなく)静かで暖かで食べ物があっても孤立しているボッケより、騒がしくて(エサの)競争が激しくても活動しやすい平地のほうが人気があるようですね。

きっと彼らも、我々道民と同じように、
「今年は雪が多くて大変だね~。」
と思っていることでしょう。

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