ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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阿寒摩周国立公園 阿寒湖

88件の記事があります。

2011年12月23日外来魚の居場所

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

12月中旬に道路が冬季通行止めとなる前、今年最後のオンネトー湯の滝の巡視を行いました。



オンネトーはほぼ完全結氷です。

湯の滝では、池の水温や外来魚の状況確認などを行いました。
外来魚については、こちらをご覧ください。
http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2011/01/671.html

さて、前回巡視時にも見かけた鳥が、今回も同じ場所にいました。



カワガラスです。
前回巡視時には、池のグッピーを捕食していました。
餌場として利用しているのでしょうか?

このグッピー、先日立ち寄った熱帯魚ショップでは、雌雄合わせて1ペアで数百円から数千円の値段で売られていました。
もちろん野生種とは違い、色鮮やかで尾びれが特徴的な品種ばかりでしたが。

同じく、湯の滝外来魚のティラピア。
このティラピア、元々はマダイの代替魚として導入され養殖が始められましたが、その後マダイの養殖技術が進歩し、低価格でマダイが流通するようになったため、あまり広がりを見せませんでした。

しかし、今でも養殖を行っている方たちはおり、ティラピアを口にすることが出来ます。
後学のため、先日ティラピア料理を食べに行ってみました。
(湯の滝のティラピアは、マンガン等の重金属の影響が考えられるので食べていません。)



私が食べたのはティラピアの唐揚げでしたが、マダイの代替魚だけあって、白身の美味しい魚でした。
(私の舌では、マダイというよりもスズキのような風味でした。)

なかなか駆除できないくらい繁殖力や耐性の強いティラピア。
たまたま見ていた大学紹介のTV番組で、宇宙での生鮮食料として宇宙空間で魚を育てる研究に、このティラピアを使っている、と報じられていました。


カワガラスに食べられながら駆除にもお金を使われているグッピーと、お金を払って飼われるグッピー…。
駆除活動にお金を使われるティラピアと、繁殖研究にお金を使われるティラピア、お金を払って食べられるティラピア…。

人によって決められた居場所で、異なる扱いを受ける生き物たち。
生き物を飼うときには、最後まで看取る責任と覚悟について、良く考えてください。

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2011年12月01日乗り入れ規制標識

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

雌阿寒岳の初冠雪が、観測史上最も遅かった、この冬。
雪が積もる前に、ある物を確認する巡視を行いました。

その、ある物とは…。





「乗り入れ規制標識」です。

国立公園区域は、大きく「特別保護地区」「特別地域」「普通地域」に区分されますが、その中で、

『特別保護地区の道路及び広場以外』
『特別地域の環境大臣が指定する区域』

においては、

【「車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させること」は環境大臣の許可が必要】

となります。

下の図をご覧ください。



阿寒国立公園の阿寒湖事務所管轄区域図です。
特別保護地区と、特別地域の乗り入れ規制地区を合わせた区域を、赤線で示しました。
阿寒湖事務所管轄では、かなりの区域が乗り入れ規制されています。
(乗り入れ規制の対象となっていない区域でも、事前に土地所有者の確認をとる必要があります。)

この規制は、雪や氷に閉ざされた冬場でも、スノーモービル等対象になります。
そこで車で行ける今のうちに、倒れたり文字が消えていないか等の確認を行ってきました。
現在この区域内に、15か所22枚の乗り入れ規制標識が設置されていますが、問題はありませんでした。

この規制は、公園内の動植物や地形等の生態系に悪影響を与えないよう、行われているものです。
見えない雪の下でも生命は育まれています。
皆様のご理解とご協力をお願いします。

なお、上述の規制等、アクティブレンジャーの巡視で拠り所となる法令は、「自然公園法」と呼ばれるものです。
環境省のHPから全文を見ることができますので、興味のある方はどうぞ。
(http://www.env.go.jp/park/doc/law/index_lk020.html)

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2011年09月28日テントウムシ

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

昨日、窓を開けて車を運転中、何か昆虫が顔にぶつかりました。
落っこちた虫を見てみると、テントウムシ。
その時は特別気にも留めなかったのですが・・・。



本日の、保護官事務所近くの道路標識です。
標識についている小さな塊は、全てテントウムシ!
辺り一面、テントウムシが飛び交っています。



どうやら、「ナミテントウ」と呼ばれる最も良く見られるテントウムシのようです。
個体によって翅の色や「ホシ」の色、数が様々で、同じ種とは思えないほどバリエーション豊かな模様をしています。
先週から急激に気温が低くなったので、集団で越冬する為に集まって来たのでしょうか?

このナミテントウ、日本全国で普通に見られ、アブラムシを食べてくれる益虫となっています。
ところが国際自然保護連合(IUCN)では、生物の多様性を減少させる恐れのある侵入生物として「グローバル侵入種データベース」に記載されています。

実はこのナミテントウ、農薬にかわって農作物の害虫駆除をしてくれるということで、過去にアジアから欧米に持ち込まれました。
その結果、欧米各地でナミテントウが大きく勢力を広げ、競合する在来のテントウムシの数が減少している、との事のようです。

人間の都合で生息地を移され、ある国では「良い生き物」、別の国では「悪い生き物」となってしまっている動植物たち。
身近な小さな虫から、思いがけず考えさせられた一日でした。

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2011年06月24日子グマ騒動

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

先日、雄阿寒岳に設置してある登山者カウンターのチェックに行ってきました。
通常は一人で行きますが、この日は保護官に同行してもらいました。
理由は・・・。



6月初旬から、登山者や釣り人が「雄阿寒岳登山口付近で子グマを目撃した」との情報が、数回ありました。
雄阿寒岳の登山者カウンターは登山道を20分ほど入った箇所にあるので、念の為に保護官同行となりました。

カウンターのチェックは何事もなく終わったのですが、その日の午後「保護官事務所と登山口の中間付近の湖岸でヒグマ目撃」、の情報が入りました。
さらに翌日夕方、とうとう事務所裏の「ボッケ(遊歩道)付近で見た」との情報があり、ボッケ遊歩道を一時閉鎖することになりました。



閉鎖後、関係者により巡視を行った所、森の中を周回するコース沿いにヒグマの痕跡を見つけました。



切り株を掘り返した跡が数箇所見つかりました。やはりヒグマがいるようですね、おそらくアリを食べていたのでしょう。
目撃情報によると、複数頭の子グマではないかと言われています。

ボッケ遊歩道は阿寒湖温泉街の一番東端にあるため、この付近を餌場として留まられると、ヒグマと人間共に好ましくない結果になる可能性があります。
関係者による連絡会議で、温泉街付近に寄りつかないよう、暫くの間、猟友会の方による巡視(追い払い)を行ってもらう事になりました。

ヒグマがいなくなったと確認されるまでの間、ボッケ遊歩道の散策ができませんが、ご協力おねがいします。

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2011年06月08日飛んでます

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

下の画像は、事務所官用車のフロントガラスです。



ガラスに黄色い粉のような物が付着しているのが分かるでしょうか?
車が汚いわけではありません。
(あまり掃除はしていませんが…。)

これは、シラカバやダケカンバなどのカバノキ科の花粉です。

花粉症は、スギやヒノキによるものが一般的ですが、北海道ではカバノキ科の花粉で発症する方が多いそうです。

花粉を、事務所にある倍率20倍の実体顕微鏡で観察してみると…。



こんな風に見えました。

花粉情報は、天気予報と合わせて報道される事が多いのですが、実は気象庁ではなく、環境省が飛散予測や観測を行っています。
(HP: http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/

1時間毎の花粉飛散状況を見る事が出来るシステム、「はなこさん(愛称)」は5月31日に今シーズンの情報提供を終了していますが、まだカバノキ科の花粉が飛んでいる北海道のみ、6月30日まで情報提供されています。


タンポポが満開の事務所前の広場では、飛んでいるのは花粉だけではありません。


【ミヤマカラスアゲハ】

翅の光沢がとてもきれいな蝶です。
モンシロチョウと一緒に、10匹くらいが花から花へと渡っていました。

セミの鳴き声も聞こえ始めた阿寒湖、花粉症対策をして、おいで下さい。

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2011年06月07日標高のお話③ ~三角点~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

前々回、前回と、雌阿寒岳、雄阿寒岳の標高について記載しました。

【雌阿寒岳:1499m】
【雄阿寒岳1370.4m】
さらに雌阿寒岳の南側には、
【阿寒富士:1475.8m】

皆さんは、この標高の記載に何か違和感を覚えませんか?
そう、「なぜ雌阿寒岳が0.1m単位の記載ではないのか?」
実は、標高の測量方法の違いによるものなのです。

地形図等を作製する為に行う三角測量において、三角形の頂点位置に基準となる「三角点」というものが設置される事は、皆さんご存知かと思います。
この三角点には等級があり、現在では一辺が約40kmの三角形の頂点が一等、より細かくなるごとに二等、三等、四等と設置されています。

この三角点、阿寒富士山頂に一等、雄阿寒岳山頂に二等が設置されています。


【阿寒富士の一等三角点】
一辺が18cmの柱石です。
向こうに見える火口が雌阿寒岳。


【雄阿寒岳の二等三角点】
一辺が15cmの柱石。

このように三角点のある場所は、「現地測量による標高点」となり標高は0.1m単位で記載されます。
三角点の地図記号は分かりやすく「△の中に・」で、横に「1370.4m」等記載されています。

これに対し、雌阿寒岳の標高は「写真測量による標高点」と呼ばれるものです。
写真測量という空中写真を用いて求められた標高で、1m単位で記載されます。
地図記号は「・1499m」等と記載されます。

では、なぜ雌阿寒岳ではなく標高の低い阿寒富士に三角点を設けたのでしょうか?


【雌阿寒岳から見た阿寒富士】

5月13日掲載の【コバルトブルー】の画像でも分かる通り、阿寒富士は山頂が盛り上がった、独立峰のようなきれいな円錐の山容をしています。
雌阿寒岳は、上の一等三角点の画像のように山頂が大きな火口になっており、その周囲の一端が山頂となっています。阿寒富士にくらべ、(噴煙の影響もあり)山頂が分かりづらい山容です。

三角点は山の高さを測るのでなく、測量の為「周囲から見通しが良く作業しやすい所」が選ばれますので、どこからでも見通しの良い阿寒富士山頂が選ばれたのではないでしょうか(推測ですが)。

日本一高い富士山山頂の三角点が、一等ではなく二等三角点となっている理由も、「周辺の一等三角点から見えにくい」という事が、一因としてあるそうです。

このように、三角点は「見通しの良い=展望が良い」ということで、一等三角点ピークの山を選んで登山されている方がいます。
皆さんも参考にされてはいかがでしょうか?
ただし、一等三角点だけでも北海道に224箇所、全国で972箇所あるそうです。
(もちろん、全て山頂にある訳ではないですが・・・。)

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2011年06月01日標高のお話② ~雄阿寒岳~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

雌阿寒岳に引き続き、雄阿寒岳にも登山者カウンターの設置を行いました。

雄阿寒岳の登山道は、途中まで太郎湖、次郎湖の散策コースを兼ねています。
そのため、登山者のみのカウントを行うためには次郎湖の先に設置しなければなりません。
片道20分以上、機材や設置道具を担いで上がっての設置となりました。


【GPSマップ】
No.211の旗が登山者カウンターです。国道240号線近くの駐車場から歩いていきます。
今後も、メンテナンスはこの距離の往復となります・・・。

こちらもカウンター設置と合わせて、登山巡視を行いました。
雄阿寒岳山頂の画像です。



雄阿寒岳の標高は1371mになっています。
実は最新の標高は1370.4m、四捨五入すると1370mになってしまいます。

国土地理院発行の2万5千分の1地形図の標高データを調べたところ、

【~昭和47年修正版まで: 1371.2m】
【昭和59年修正~平成15年改測版まで:1370.5m】
【平成20年更新版 1370.4m】

となっており、0.1mの違いで平成20年から1371m→1370mとなりました。
傾向からみると雄阿寒岳は低くなっているのでしょうか?
なだらかな山容で火山活動が活発な雌阿寒岳と違い、近年の火山活動が無く急峻な雄阿寒岳は浸食の影響を受けやすいのかもしれませんが…。

この雄阿寒岳、1万年以内の火山活動の跡が見つかったとして、活火山として認定されるかもしれないという話題が、先日ある新聞で取り上げられていました。

ちなみに「アカン」には、アイヌ語で「動かない」という意味があるとも言われています。

雄阿寒岳山頂も雌阿寒岳同様に展望が良く、北東に位置するペンケトー(上の湖)・パンケトー(下の湖)も眼下に見下ろす事が出来ます。


【右がペンケトー、左がパンケトー】

雄阿寒岳の山開き登山は6月26日開催です。
詳細は、阿寒観光協会(HP: http://www.lake-akan.com/)まで。

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2011年05月30日標高のお話① ~雌阿寒岳~

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

6月の山開きシーズンに合わせて、登山者カウンターの設置を行いました。
まずは雌阿寒岳です。

登山道は、オンネトー、雌阿寒温泉、阿寒湖の3箇所あります。
画像は、雌阿寒温泉登山道に設置した登山者カウンターです。



このカウンター設置の前に、雌阿寒岳登山巡視を行いました。
雌阿寒岳山頂の画像です。



雌阿寒岳の標高は1499m。
誰もが、「あと1m」って思いますよね。

同じような山を調べたところ、百名山の中では
「八ヶ岳:2899m」
「剣岳:2999m」
というのがありました。

八ヶ岳と言えば、富士山と高さ比べをした昔話が有名ですね。
「昔々、富士山と八ヶ岳は自分の方が高いと言い争ってばかりいました。
そこでお釈迦さまが、お互いの山頂に長い樋を渡したところ、水は富士山に向かって流れました。
八ヶ岳のほうが高いことに怒った富士山は、八ヶ岳の頭を殴った(蹴った)ところ、八ヶ岳の山頂はバラバラに砕けてしまいました。
そのため、八ヶ岳は富士山より低くなり、山頂がガタガタの山になりました。」

アイヌの昔話では、
「雌阿寒岳は、夫の雄阿寒岳が周りの山に浮気ばかりした為、怒って頭から噴煙を上げている。」
というものがあります。

近年でも、時々火山活動が活発化し入山規制が出されることのある雌阿寒岳ですが、山頂からの眺めは格別です。
噴火口、火口沼、阿寒湖、広大な森林、雄阿寒岳、天気が良ければ斜里岳、大雪の山々なども望めます。



雌阿寒岳の山開き登山は6月1日開催です。

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2011年05月20日標高差

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

サクラはまだつぼみの阿寒湖畔ですが、キタコブシの開花が始まりました。


【阿寒湖畔、ボッケ遊歩道】

ところで、阿寒湖の標高は約420mあります。
同じ釧路市阿寒町内でも、公園区域外の標高の低い地域ではキタコブシは3分咲き位です。


【阿寒町、国道沿い】

こちらではサクラも開花していますので、白とピンクの花を同時に見ることもできます。


【阿寒町、国道沿い】

ちなみに4月の平均気温は、釧路市中心部にある釧路地方気象台で4.4℃、阿寒湖畔では2.5℃でした。
まだ、寒暖の差が激しい日が続いていますので、温度調整しやすい服装でお越し下さい。

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2011年05月13日コバルトブルー

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

皆さんは、北海道の三大秘湖をご存知でしょうか?
3つとも、国立公園内にあります。

1つ目は、支笏洞爺国立公園にある「オコタンペ湖」。
2つ目は、大雪山国立公園にある「東雲湖」。
そして3つ目は、阿寒国立公園にある「オンネトー」です。

オンネトーは雌阿寒岳の西麓にあり、気象条件によって湖水の色が様々に変化して見えることから「五色沼」とも呼ばれます。
今回の巡視では・・・?



一面コバルトブルー!



雌阿寒岳、阿寒富士、オンネトーの3点セットの景色です。


この景色を撮影した周辺では、エゾアカガエルが賑やかに鳴いていました。



卵塊のそばで、カエルとは思えない、かわいい声で鳴いています。
オンネトーは標高が600m以上あるため、今が産卵時期のようです。

湖周辺には温泉宿、キャンプ場もあり、雌阿寒岳登山でもよく利用されています。
週末は車で込み合う事もありますので、行かれるのでしたら平日がお勧めです。

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