ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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阿寒摩周国立公園 阿寒湖

88件の記事があります。

2011年05月13日ねぐら?

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

ミズバショウの花が見頃となった、阿寒湖畔エコミュージアムセンター。
ゴールデンウィーク頃から、ある夫婦が暮らし始めました。



つがいのマガモです。
小さな湿地ですが、木道を歩く観光客には目もくれず、一心不乱に採餌しています。


こちらは、道路沿いの風景。



雪国では良く見かける矢羽根付きポールです。
積雪時に、道路境界(路側帯)を指し示す標識です。
役に立つのは積雪時ですが・・・。




雪が無い時期でも役立っているようです(笑)。

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2011年05月11日けあらし

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

朝刊がお休みで、いつもより早く事務所に着いたある朝、ボッケ遊歩道を巡視しました。
青空の覗く木立の間をぬけて阿寒湖岸まで行ってみると・・・。



幽玄の世界が広がっていました・・・。

分かりにくいですが、画像右上に雄阿寒岳のシルエットが、左上に青空が見えています。
温かい水面に冷たい空気が流れ込んできた時に発生する霧による現象で、北海道では「気嵐(けあらし)」、気象用語では、「蒸気霧」といいます。

画像中央に2つの点で写っている人影は、フライフィッシングを楽しんでいる釣り人です。

水墨画の風景を見ているような、ひと時でした。

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2011年04月27日春の声

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

前回のAR日記でお伝えしたボッケ遊歩道ですが、阿寒湖畔エコミュージアムセンター裏手部分は、湿地帯の中を通る木道になっています。
その湿地帯で、待ちわびていたミズバショウの花が咲き始めました。



遊歩道から見える阿寒湖も、氷は無くなりました。



遊歩道では、様々な野鳥のさえずりが聞こえています。
シジュウカラ・ゴジュウカラ・ヒガラ・コガラ・ハシブトガラなどのカラ類。
オオアカゲラ・コゲラ・クマゲラなどのキツツキ類。
そして春の訪れを告げる、ハクセキレイ・センダイムシクイ・シメなどの夏鳥の声も聞こえ始めました。

残念ながら私の腕とコンパクトカメラでは、遠くを飛び回る小鳥の写真は上手く撮れません。
代わりに珍しい風景を載せてみます。



地上で採餌するオオアカゲラ(♀)です。
なにか、おいしそうな虫がいたのでしょうか?

皆さんも春の声を聞きに、阿寒湖を訪ねてみて下さい。

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2011年04月11日生命の営み

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

春です。先日、久々に雪ではなく雨が降りました。
フキノトウも芽を出しています。



そんな陽気の中、エコミュージアムセンターのスタッフから、ボッケ遊歩道に来てほしいとの連絡がありました。

「ボッケ」とは、アイヌ語の「煮え立つ」という言葉から名付けられた泥火山の事です。地底から火山ガスと共に泥が吹き上げられ、沼が煮え立っているような景観を生み出しています。

そのボッケが見られる柵の中で、エゾタヌキが死んでいました。



怪我もなく、やせている風でもありませんでした。暖を求めてやってきて、火山ガスにやられたのでしょうか?
観光スポットで人目にさらされる場所なので、回収し森の中に埋葬しました。

私たちの目に付かない所では、数多くのいきものが土に還り、また新たないきものの糧となって生命の輪を繋げています。
が、やはり冷たい体を抱きかかえると心が痛みます。
実は先日も、野鳥の死亡個体を収容しました。また、最近道路に出てくるエゾシカが増え、車に轢かれるロードキルも見かけるようになってきました。

もちろん、新たないきものを見かける事もあります。
エゾモモンガです。



エゾモモンガは北海道ではそれほど珍しくなく、特に雪の上の痕跡を見つけやすい冬場は発見しやすいのですが、夜行性のためこれまで勤務時間中に姿を見かける事はありませんでした。
かわいいですね。

今日も阿寒湖では、多くの生命の営みが行われている事でしょう。

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2011年03月04日バルーンカメラ

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

雪と風が舞う3月2日の朝、屈斜路湖の釧路川源流部付近で奇妙な物体が上空に浮かんでいました。



実は、空中からの写真を撮影するバルーンカメラというものです。
ヘリウムガスを充てんしたバルーンの下に、無線操作の撮影ユニットが付いています。



今回は、釧路川の源流部付近の撮影を行うために浮かべました。
この地域は、お隣の川湯自然保護官事務所の管轄ですが、川湯地区にはアクティブレンジャーがいない為、お手伝いに行きました。
寒い中、鼻水をこらえながらの作業でしたが、お昼近くになるにつれ天候も回復し、撮影も順調に行えました。

撮影中、周辺にいたオジロワシやオオワシ、カラスが、空に浮かんだ奇妙な物体を警戒し、バルーンの周囲を旋回飛行する光景も目撃されました。



バルーンに爪をたてないでね…(幸い、攻撃はされませんでした)。

今回撮影した画像は、定点観察の資料やエコミュージアムセンターでの展示資料等に利用される予定です。

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2011年01月06日天然記念物と外来魚

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 北川 栄司

みなさん、明けましておめでとうございます。昨年から阿寒湖自然保護官事務所でアクティブレンジャーをしている北川栄司です。はじめての雪国暮らしで右往左往しながらの活動ですが、今後とも宜しくお願いします。

さて、阿寒国立公園内の雌阿寒岳の麓、林道を20分程歩いた森の中にオンネトー湯の滝と呼ばれる観光スポットがあります。
ここでは、雌阿寒岳から湧出している温泉が滝となって流れている光景が見られますが、この温泉の中に生息しているマンガン酸化細菌によって、天然のマンガン生成現象が地表面で見られる希少な個所として、国の天然記念物に指定されている所でもあります。
ところがこの湯の滝に、近年外来魚が生息しており問題となっています。
外来種の問題はいろいろありますが、ここでは彼らが餌として温泉内の藻類を食べていることが挙げられます。
実は、マンガン酸化細菌は藻類上に共生しており、藻類が食べられてしまうとマンガン生成現象が行われなくなってしまうのです。
数年前から、地元の足寄町と環境省がこの外来魚駆除に取り組んでいますが、根絶には至っていません。



生息池の水抜き駆除が効果的ですが、滝からの流入に加え池内からも温泉が湧出しており、電気も通っていない山の中にあるため、長期間干し上げる事ができません。
また、冬場は林道までの道路も冬季閉鎖となるため駆除活動が行えず、夏場の駆除を生き延びた個体が冬から春にかけて数を増やし、数千匹以上の駆除を毎年行っても、根絶できない結果となっています。

そこで今後の対策調査の一環として、先日駆除を行った際、外来魚の生体捕獲を行いました。
湯の滝に生息する外来魚は2種類、グッピーとナイルティラピアです。





グッピーはご存知の方が多いと思いますが、ティラピアはアフリカ・中近東原産の淡水魚で、大きなものでは30cmを超える個体もいます。
水温による活動状況の違い等を観察する為、暫くは保護官事務所でお付き合いです。

ですが、マンガン酸化細菌を守る為に魚を駆除していくということは、つまり多くの魚の命を奪う、ということになります。
ティラピアは本来食用利用できますが、マンガン類の重金属を取り込んでいる湯の滝の魚は、それもできません。
湯の滝の外来魚は人為的に持ち込まれたと思われますが、本来の生息地や水槽の中にいれば駆除される必要のない命が、毎年失われています。
外来種を野外に放した少数の方たちの行いによって、現在多くの方たちが、労力・資金を使って命を奪う駆除活動に取り組まなければなりません。
みなさん、命を飼い育てることについて、もう一度考えてみてください。

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2010年02月17日旧釧北峠

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 阿部 恭子

 皆さんこんにちは。

 今回の日記は、先日出かけた阿寒湖の西に位置する『旧釧北峠』周辺の自然の様子を紹介したいと思います。

 その日は、雲一つない晴天…とまではいきませんでしたが、青空のもと、保護官事務所2名、パークボランティア2名の合計4名で山行しました。
 まず、国道241号線沿いの釧北峠に一番近い駐車場から、スノーシューを履いて阿寒湖方面へ向けて出発。林の中に入ると、エゾマツやトドマツ主体の針広混交林が広がっていて、足下には、雪の上にテンやエゾリス、ネズミの小さな足跡があちこちにあり、『彼らの生活圏にお邪魔しているのだなあ』と感じさせられました。東へしばらく進んだ辺りで、
「あれ、違うか?見間違いか?」
と、神妙な面持ちで呼び止められ、その視線の先を見てみると、そこにはエゾフクロウがいました。身動きひとつせず、傾いた古木の樹洞の中から眠たそうな目でこちらを見ています。半分目が閉じているので、もしかしたら居眠りの真っ最中だったのかもしれません。いずれにせよ、寝ぼけ顔のエゾフクロウは、私たちに驚きと感動を与えてくれました。
 

『エゾフクロウ』

 それからまたしばらく進むと、穴だらけのエゾマツを発見。アカゲラかクマゲラが餌を捕るために開けたものですが、これほど綺麗に並んでいる食痕はなかなか珍しいのではないでしょうか。これはお見事です。できた穴は、エゾモモンガの休憩所など他の生き物にも利用されることでしょう。



『穴だらけのエゾマツ』


 尾根沿いを更に進むと、送電線のルートにぶつかります。そこで今度は、今まで見た物とは遙かに異なる大きな足跡を発見。足跡が、周りの雪面よりも盛り上がっているのがわかりますか?聞くところに因ると、柔らかい雪の上を動物が歩いて雪が硬く押し固められたあと、その周りの雪が強風に吹き飛ばされると、踏み固められた雪が表面に現れて写真のようになるそうです。手の平程の大きさもあるこの足跡を残していったのは、きっとヒグマでしょうね。。雪が降り始めたら、ヒグマはみんな冬眠する……とは限らず、冬でも餌が豊富にあるうちは冬眠しないヒグマもいますので、注意しましょう。



『盛り上がっているヒグマの足跡』


 ヒグマの足跡から少し離れたところで昼食をとり、その後無事に帰路に着きました。

 阿寒湖の冬は、スノーシューハイキングやアニマルトラッキングなど、雪国ならではの楽しみ方がたくさんあります。みなさんもぜひ、足を運んでみて下さい。呉々も、防寒着や暖かい飲み物など、寒さ対策はしっかりとしましょう。また、土地勘のない場所では、必ず地図を用意しましょう。

注意:森の中に入るときは、野生動物を驚かしたり、ゴミを捨てたりするようなルール違反はやめましょう。特に、阿寒に棲むフクロウの仲間の中で、1月頃から繁殖期に入る種類がいます。その大事な時期に営巣木の周りで騒ぐと、その場所に居着かなくなってしまいます。マナーを守り、怪我のないよう、楽しく自然を満喫しましょう。


(写真撮影日:2010年2月11日)

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2010年02月03日「野生動物たちの生活感 IN ボッケの森」(最高気温:-3.3℃、

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 阿部 恭子


これらの写真は、阿寒湖の南岸にあるボッケの森で見た光景を撮影したものです。

まずはこの写真を見て下さい。






こんなに木の欠片を散らかしたのは、誰かというと…。






その犯人は、エゾオオアカゲラです。
木の表面を突っついて、木の中にいる虫を食べます。
頭部が赤くないのでメスのようです。
周囲に見事なドラミングの音を響かせていました。

さて、お次はこの写真、






樹皮が剥がされています。これはいったい誰の仕業でしょう?






その通り、エゾシカです。

冬の間は食べるものが乏しく樹皮を剥いで食べてしまうため、エゾシカの食害問題が生じています。その対策として、エゾシカが好む樹種を選定し、予めネットを巻いておくことで、被害を広げない活動が行われています。ネット巻きされた樹木は、ボッケの森のいたる所で見ることができます。
上の写真のエゾシカ達は、地熱により温められて積雪の少ない場所を探し、僅かにある草を食べています。



そして、これが最後の写真です。




何だかわかりますか?

雪の奥へと伸びた穴と半分に割られ食べられたクルミ、それからその隣にはコロコロの茶色いウンチ。周囲には、近くの木から木へとジャンプした足跡が、たくさん見られました。

さて、こんなにインパクトのある痕跡を残してくれた野生動物は、何者でしょう。

冬の間冬眠せず、秋のあいだに地面に隠しておいた木の実を掘り起こして食べる、木登りの上手な生き物といえば…、

そう、エゾリスですね。

これらの生き物の他にも、キタキツネの足跡やエゾモモンガの食痕など、冬の間雪の上で生活する様々な生き物の暮らしを垣間見ることができます。

この時期ならではの阿寒湖の自然を、ぜひ見に来て下さい。


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2009年10月06日雌阿寒岳(2009年9月29日)

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 阿部 恭子

 雌阿寒岳(1499m)への登山道は、オンネトー側、野中温泉側、阿寒湖側からの合計3つのルートがあります。この日は、そのうちで最も距離の長い阿寒湖側から登山道巡視を行いました。阿寒湖畔から車で20分ほどの所に登山口があり、そこから山頂までは徒歩で約3時間のコースです。

 登山口からはしばらくは、トドマツやアカエゾマツなどの針葉樹林が広がるなだらかな登山道が続きます。




『5合目周辺からの景色』

 5合目付近からは展望がよくなり、上の写真のような紅葉を望むことが出来ます。針葉樹に混じって赤く紅葉している樹の多くはナナカマドですね。


『マルバシモツケ』

 マルバシモツケも秋らしく色づいていました。葉先から根の辺りへ、赤から黄色のグラデーションになっているところがとても美しく感じられました。因みに、マルバシモツケは高山帯の荒原や岩礫地で見られる低木です。7月から8月にかけて白い花を咲かせます。

 7合目辺りからは、溶岩の尾根を進みます。そこから頂上まではあとわずか。


『山頂からの眺望』

 山頂では風を遮るものが全くないため、体感温度はかなり低く、冬用の帽子と手袋を持って行かなかったことを後悔しました…。

 雌阿寒岳ではまだ初雪の観測はされていませんが、今後登山される方は特に、低体温症には充分注意しましょう。また、今時期は冬眠前のヒグマが食料を求めて活発に移動する時期でもあります。実際、登山道沿いにヒグマのフン(ガンコウランの実が主)が発見されていますので、ヒグマ対策も万全に整えて出かけましょう。

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2009年09月28日可愛いお客様

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 阿部 恭子


 毎朝一番に、阿寒湖自然保護官事務所のお隣(同施設内)にある阿寒湖畔エコミュージアムセンターへ新聞を取りに行くのが私の日課なのですが、この日は嬉しいサプライズがありました。

エゾモモンガです!





 阿寒湖畔エコミュージアムセンター内の図書コーナー「憩いのサロン」に、黒くて大きな目をした可愛らしいエゾモモンガが、本棚の上段からこちらの様子をうかがっているのです。おそらく暖炉の煙突から入ったのでしょう。職員の方曰く、年に何度か迷い込んでしまうそうです。驚くことに、過去にエゾフクロウが入ってしまったこともあるとか!




 突然知らない所に来てしまった上、大勢の人間に注目されて居心地が悪いのでしょうか。小さなそのエゾモモンガは、せわしなく床を走り回ったりイスの上へ上ったり。少しの間様子を見ていると、本棚の上に置かれらステレオから飛び降りるその瞬間、超短距離ではありますが、両手脚に張られた飛膜を広げ、滑空する姿を見せてくれました。森の中でも、きっとそんなふうに木と木の間を上手に飛び回っているのでしょうね。写真を撮らせてもらった後、そっと、エコミュージアムセンターの裏にある「ボッケの森」へと帰しました。




 さてここで、せっかくなのでエゾモモンガについて少し紹介したいと思います。

 エゾモモンガは、ネズミ(げっ歯)目リス科モモンガ亜目モモンガ属の小型哺乳類で、ユーラシア大陸に生息するタイリクモモンガの亜種です。頭から尾までは20cm程。体の背面はネズミ色、腹側は白色をしています。前脚から後脚にかけて飛膜をもち、それを広げて滑空する特徴があります。分布は北海道の主に森林。夜行性のため、日中は樹洞の中の巣で過ごしますが、夜になると、エサである木の芽や葉、昆虫や果物などを求めて木から木へ空中移動します。生活の場を全て木の上にすることで、キツネなどの危険な肉食動物から身を守っているのです。ただし、木の上にはフクロウ等かなりの天敵がいますが…。得意の飛び技とすばしっこさ、それから暗闇でも良く見えるキュートな大きな目を駆使して、強く生きてほしいと思います!笑

 野生のエゾモモンガを間近で見られるのは、阿寒湖の自然が豊かである証拠ですね。皆さんもぜひ遊びに来て下さい。運が良ければ、森の中を自由に飛び回っているエゾモモンガに出会えるかもしれません。

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