大雪山国立公園 東川
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2018年02月21日アクティブレンジャー写真展2017終わりました
大雪山国立公園 東川 渡邉 あゆみ
去年の6月から12会場を駆け抜けたアクティブレンジャー写真展2017が終了しました。
ご来場頂いた皆さん、どうもありがとうございました。
お気に入りの場所の写真はありましたか?
行ってみたい、見てみたいと思った写真はありましたか?
自然環境保護の関心と国立公園のPR、アクティブレンジャーの仕事を広く知ってもらうために今年からはじまった写真展。
各会場で工夫をしながら見やすく、伝わりやすい展示を心がけました。
【札幌チカホ写真展の様子。アクティブレンジャーが写真の解説をしました。】
ところが・・・先日行ったアクティブレンジャー会議(アクティブレンジャーが毎年に1~2回集結し、業務について情報交換や意見交換を行っています。)では、写真展の反省も多く出されました。会場の大きさや光の加減で写真や解説が見にくかったことや、来場者アンケートの結果を見るとアクティブレンジャー自体どういった仕事をしているのか今回の写真展では伝えきれていないように思われました。
なので、来年度は解説の方法を変えたり、展示写真をよりアクティブレンジャーの仕事を知ってもらうことをメインとしたものにしようと、みんなでアイディアを出し合い、春に向けて「アクティブレンジャー写真展2018」が始動しました。
【アクティブレンジャー集合 上川町ニセイチャロマップにて。】
私たちには守りたいものがあります。
好きなもの、得意分野はそれぞれですが、私たちは自然や野生動植物から多くのことを学びました。
心が揺さぶられる素晴らしい場面や景色に出会い感動し、畏怖の念を抱き、その環境で暮らす動植物を尊敬し愛おしむ気持ちが芽生えました。
自然界と動植物がバランスを取りながら長い間続いてきた営みは、犯しがたい崇高なサイクルとして私たちの目に映り、このまま次の世代に引き継がなければならない、といつしか自然と思い願うようになりました。
大切なものを与え教えてくれたそれらを守るために、取り組んでいる私たちを知ってもらう次の写真展は6月からスタートです。
厳冬から春へ、季節は変わっていきます。
今頃、ヒグマの赤ちゃんは巣穴で生まれているのでしょう。子グマがはじめて巣穴から出たときのことを想像します・・・まぶしくて、色々なにおいを嗅いでワクワクし、雪の冷たさに驚くのでしょう。その後ろには大きく、強くて優しい母グマが見守っているのでしょう。
ヒグマが暮らしていける北海道の豊かな大自然があること、それを実感を持って想像出来ること。私にとってのそれらは何よりも価値が高く、豊かで、かけがえのない宝物です。
2017年12月18日パークボランティア30周年にむけて
大雪山国立公園 渡邉 あゆみ
大雪山国立公園パークボランティア連絡会は来年度、創立30周年を迎えます。
記念すべき年を迎えるため、何をしよう?とこの数年、役員会で議論を続けてきた結果、
「20周年で発行した「パークボランティアのための大雪山自然解説マニュアル」を再編集し、改訂版を発行しよう!」ということになりました。
このマニュアルは、大雪山でパークボランティアが活動するための必要な知識・・・大雪山の地質・気象・動植物・由来・国立公園の仕組みなど全120ページ!新規会員が入会するときはこれを配布し、研修会を行っています。
たくさんのガイドブックや本が出版される中、大雪山に関してここまで多くの分野を網羅した本は他にはないでしょう。しかも驚くのが、このページのほとんどが、パークボランティア自身によって執筆されたものです。愛ですね~。
私も、ときどき開いて勉強させてもらっています。
改訂版の発行も費用はかかりますが、パークボランティア会長が昨年度「一般社団法人セブンイレブン記念財団」の助成基金に応募し、見事当選!出版にかかる費用を得ることが出来ました。(その他、市町村からの助成金の積み立てもあります。)
改訂版は必要な目次を増やし、動植物の解説をよりわかり易く・使い易くし、ページを約30ページ増量して発行予定です。
次の春の完成を目指すべくパークボランティアが中心となり、これまで5回の編集会議を開き、各担当が原稿を持ち寄り、作業をしています。
基本的にこのマニュアルはパークボランティアのためのものですが、ビジターセンター等パークボランティアが活動する場所にも置かせてもらう予定ですので、会員外の方にも見てもらえる機会があると思います。
大雪山マニアが作った、大雪山マニアのための本。見つけたときは、是非手にとって開いてみてください。
春に改訂版のマニュアルを開く日を楽しみにしています。
編集委員の皆さん、完成まで頑張ってください。
アクティブレンジャー写真展2017をモンベル大雪ひがしかわ店で開催中です♪
行かれた際は是非、アンケートに御記入を頂き、記念ポストカードをお持ち帰りください。
12月25日(月)まで行っています。たくさんの御来場、お待ちしています。
2017年06月22日旭岳、山開きです。
大雪山国立公園 渡邉 あゆみ
いよいよ、大雪山でも山開きとなりました。
今年は例年よりも雪が多いと言われている表大雪。
6月18日(日)、安全に旭岳で登山をするため旭岳~中岳のロープ張りやゴミ拾い、薄くなった標識のペンキの塗り直し、雪のカッティングをパークボランティアと総勢14名で行いました。
当日は快晴微風の整備日和。
旭岳の山頂に至るには左手に地獄谷の荒々しい噴火口、右手には原生林の樹海と残雪の十勝岳連峰を見ながら上を目指します。
パークボランティアの皆さんや私にとっては馴染みある道や風景やお花たち。それは何度登っても飽きることはなく、登るたびに自分自身の心の中にある大雪山と、実際に目の前に広がる大雪山とを山座同定することで、大雪山から安らぎや力をもらっているのだと思います。
いつもは咲いているイワウメが今年はまだ固いツボミでした。「今年はお花の開花が遅いね」「イワウメ見たかった~」など言いながらも、お楽しみが先になったことも嬉しく、毎年少しずつ違う雪形やお花の開花など山の醍醐味を存分に感じながら、ナイスチームワークで整備が出来ました。
今回、整備に参加してくださったパークボランティアの皆さん、お疲れさまでした。
山男、山女の皆さんに元気に引張っていって頂けたこと、とても励みになりました。
高山蝶パトロール、植生復元モニタリング、外来種駆除など、今シーズンもパークボランティア活動、目白押しです。パークボランティア活動はFacebookでも随時更新しています。是非、「いいね!」お願いします。
*裾合平の残雪*
裾合平は例年7月中旬まで目印もほとんどない平らな雪原が広がり、ガスがかかると道がわからなくなります。地図とコンパス、GPSでのナビゲーションが出来る方でないと、複雑な地形で迷いやすく、とても危険です。ナビゲーションすることに自信がない方は7月中旬の木道が出るまでは待ちましょう。そのときはチングルマの大きなお花畑が広がっています。
2017年05月25日アクティブ・レンジャー写真展 開催のお知らせ!
大雪山国立公園 渡邉 あゆみ
環境省 北海道地方環境事務所には12名のアクティブ・レンジャー、希少種保護増殖等専門官が在職しています。
山・海・森・川・動植物、自然を愛する私たちは、美しく希少な北海道の自然環境を大切に活用し、そしてその自然を次世代へ繋いでいくため、国立公園や日本有数の渡り鳥の渡来地である鳥獣保護区の維持管理や現地調査、動植物との共存方法を考えながら保護・増殖をしたり、地域の関係者と現地で汗を流しながら、日々様々な業務に励んでいます。
そんな私たちの活動を知ってもらい、北海道の自然の素晴らしさを伝え、自然環境保護への理解を深めてもらうため、今年度「アクティブ・レンジャー写真展」を開催することとなりました!
写真は、私たちが業務中に撮影したもので、各地域の特性・魅力が伝わりやすい作品になっています。
写真の他、アクティブ・レンジャー紹介パネルや撮影地パネル等も展示します。
道内各地で展示をしますので、スケジュールをご覧になって頂き、お近くの方は是非ご来場ください。
また、会場にはアンケートを設置します。写真展の感想など、アンケートに回答してくださった方には記念ポストカードをお渡ししますので、是非アンケート記入のご協力をよろしくお願いします。
アクティブ・レンジャー写真展はいよいよ6月1日(木)サロベツ湿原センターからスタート!
是非、私たちの写真展にご来場頂き、北海道の雄大な自然・動植物の魅力を見に来てください。また、アクティブ・レンジャーの活動を知ってもらえたら嬉しいです。
【北海道アクティブ・レンジャー写真展のお知らせ】
http://hokkaido.env.go.jp/to_2017/29.html
先日、パークボランティアの皆さんと春山研修のため、スキーで三段山に登りました。
ピークから見た十勝岳連峰は、春山から夏山へと季節が大急ぎで移っていくのを感じました。
稜線の向こう側では鈴なりのツボミが待ち受けていること、響き渡るウグイスの鳴き声、雪解け水の音...ただ季節が巡ることがどうしてこんなにも心を温めてくれるのでしょう。まばゆい白銀の山に後ろ髪を引かれつつも、生き物の息づかいがする緑色の山や靴の底から伝わる土の感触も愛おしく、いつの季節も何度でもこの景色に励まされ、自分にとっての楽園はここであると、山からまた生きる糧をもらいました。
2016年12月26日100年後も守り続けていくために
大雪山国立公園 渡邉 あゆみ
皆さん、原始が原湿原をご存知ですか?
原始が原湿原は大雪山国立公園の最南端に位置している1000ha(東京ドーム210個分)の広大な湿原です。
湿原には木道が敷いてある、もしくは展望台から眺める等が一般的ですが、原始ヶ原には木道や展望台、明瞭な登山道さえなく、湿原の好きな場所を歩ける日本の国立公園では大変珍しい場所です。今までそれが出来ていたのは、原始ヶ原の入山者が少なく踏圧によるインパクトが最小限で済んでいたからですが、最近その湿原も裸地化・複線化が進み、何らかの対策が必要だと地元や環境省で考えはじめ、調査や植生復元を始動しました。
そんな原始ヶ原について考えるため12月4日(日)、シンポジウムを富良野市で開催しました。
シンポジウムのプログラム①の特別講演は、株式会社モンベル代表取締役会長兼CEOの辰野勇氏から「地域活性を考えるアウトドアスポーツ7つのミッション」というタイトルでモンベル社が取り組んでいる事業の紹介をして頂きました。
7つのミッションには、青少年や子供への野外活動プログラムや、自然災害への対応、エコツーリズムによる地域経済の活性などがあるのですが、ご紹介頂いた様々な事業の中で特に印象的だったことは、冒険を応援する「チャレンジアワード」や「チャレンジ支援プログラム」事業でした。オモシロイのが、成功したものに対して賞を出すのではなく、チャレンジしている現在進行形のものに対して賞(軍資金)を贈っているのだそうで、何もないものを1から創り上げていくにはエネルギーやリスクが要るけれど、それを冒した先にある達成感や満足感を味わうことが人間にはとても大切だと辰野会長は考えており、大小様々な冒険の応援をしているのだそうです。
次に自然災害への対応です。1995年に起こった阪神大震災のとき、まだ大企業ではなかったモンベル社は全国各地のアウトドア協会等の支援を得て「アウトドア義援隊」を立ち上げ、テントや寝袋等の救援物資を寄付したそうです。それは2011年東日本大震災でも再発足し支援活動を行いました。大津波の被害で、遺体の収容に大変な時間がかかったと捜索隊から聞いた辰野会長は被災地から本社に戻ってすぐに、失神しても気道が確保できる枕や救助を求めるための笛が付属しているライフジャケット「浮くっしょん」を製作したそうです。「大きな津波が来たとき、浮くっしょんで命は助けられないかもしれないけど、沈むことはないから遺体の収容は早くできる」という現地の痛切なる声を聞いたからこそ開発できた活きた商品だと思いました。
辰野会長の柔軟なアイディアや若々しいエネルギー、フットワークの軽さは、自然から多くことを学び実体験を重ねた知恵と経験からみなぎってくるものなのでしょう。バイタリティーに溢れた貴重なお話を聞くことが出来、大変光栄でした。また大らかなお人柄もとても素敵でした。
プログラム②は、富良野市役所と原始ヶ原のルート調査や整備を行った北海道山岳整備岡崎哲三氏から原始ヶ原コースの紹介や、市民登山会で行ったヤシネットによる植生復元活動、原始ヶ原の重要性についての報告がありました。
そして最後のプログラム③は原始が原に関わる行政や山岳会等7名+辰野会長による「原始ヶ原の利用と保全の在り方」についてのパネルディスカッション。
貴重な原始ヶ原を色んな人に知ってもらいたいが、来る人が増えれば湿原は痛んでしまう。それを今後どうしていくのか。
「人を入れる前に保全の重要性を認知してもらうことが必要」、「ガイド付きで利用を制限しつつ、保全の重要性や原始性の楽しさ・素晴らしさを知ってもらう」...等、辰野会長からは海外のいくつかの入山制限の事例をご紹介頂き、白熱した議論となりました。
人を受け入れるにしても、ただ単に重要性を唱えても登山者に響くことは少ないでしょう。登山者の質を求めるのにしても、それは受け入れる側の体制作り、伝え方の工夫、発信の仕方等にもかかっているのだと思いました。
私の中に思い浮かぶ原始ヶ原・・・
若草色の湿原が一面に広がり、人工物は何もなく、正面には「独立峰」と化した富良野岳が大きく聳えています。ワタスゲがポンポン綿毛をつけ、足元をよく見るとトキソウやヒメシャクナゲが咲いています。エゾマツ林からはカッコウの声が聞こえ、時に湿原のぬかるみにはまりながら歩きます。派手さや飾り気はないですが、まさに原始的で素朴な印象です。私にとってはこれが原始ヶ原の当たり前の風景でしたが、もしかするとこれからは当たり前じゃなくなるかも知れない・・・。
100年後も、その先も、この湿原を歩く人たちがどうかこの素朴で原始な自然に出会えていますように。
良いお年をお迎えください。
2016年11月24日今、富良野・原始ヶ原がアツイ
大雪山国立公園 渡邉 あゆみ
こんにちは、東川の渡邉です。
今年はいつになく早い冬の訪れとなりました。
東川町も11月と思えない軽い雪が舞い、自然から冬山へのいざないを受けているかのようです。
これから半年間、モノクロの世界となる大雪山、十勝岳連峰。
アイゼンをきしませ雪稜を一歩ずつ確かに登っていく、吐く息は凍りフェイスマスクも段々固くなっていくー。
困難と知りつつも無限に湧いてくる山への情熱。それは岳人を引きつける冬山の力なのでしょう。
また今年も白い頂きの旅へー。
さて、今年から8月11日が新たに「山の日」として国民の祝日に加わりました。
これを記念して、富良野市において12月4日(日)にシンポジウムを開催することとなりました。
急なご案内となりますが、モンベル辰野会長のご講演や、今年山の日に原始ヶ原湿原で植生復元のために設置したヤシネットの報告、原始ヶ原の今後についてのパネルディスカッションなど、原始ヶ原にスポットを当てた一日となります。
皆様のご来場、是非お待ちしております!!!
山の日制定記念シンポジウム 富良野で国立公園を考える
~世界に通用するナショナルパーク・大雪山の隠れた魅力「原始ヶ原」の保全と利用について~
2016年08月31日3年目のテンサ-
大雪山国立公園 渡邉 あゆみ
ご無沙汰していました、東川の渡邉です。
短期間に凝縮された大雪山の四季。この夏はタイミングを逃し高山植物の大群落には出会えず...気づけば9月を目前となっていました。
赤・黄・橙・茶になるモザイク色の山の斜面や、陽に当たる美しい黄金色の穂、冬眠の準備に忙しそうな動物たちの残した食べ殻や足跡。淡々と、着々と、長い冬を受け入れる前のいつもより静寂を増した秋の大雪山は一段と美しく、山の稜線に立ち、乾いた透き通った風に吹かれると、このまま風になり山肌を撫でたり、稲穂を揺らす風になりたい、と願ってしまいます。
山が白くなる前に、まだまだたくさん大雪山を歩かなければ。
先日、パークボランティアと裾合平で登山道補修をしました。
流水で洗掘が進む登山道に、河川の土留めとして使われるテンサーを使い、土留め補修をするようになり3年目。
今年も北海道山岳整備の岡崎講師に来て頂き、頭の体操をしながら土木作業の開始です。
つくづく、登山道整備は体力はもちろん必要ですが、相手は山。
その場しのぎの整備では誤魔化しが効かず、中途半端な施工をするとすぐにひっくり返され、前より状態が悪化してしまうこともあり、そこで何が起こっているのかよくよく観察することが重要なのだと感じます。次にこれに対応するためにはどうすれば良いのか考える柔軟な頭、その次が技術...と登山道整備に関わるようになり駆け出しですが、毎回新たな発見と感動を覚えつつ、作業をしています。
2年前に置いたテンサーには土砂が満タンまで溜まり、予想よりもうまく機能していることに一安心。
しかし去年置いたテンサーに土砂はあまり溜まっていない・・・流速が早いところでは土砂が水と一緒に勢いをつけてテンサーを乗り越えて流れ出していってしまうようです。なので、昨年度の検証を生かし、大きな水たまりが出来易い、流速の弱まる部分にテンサーを設置することにしました。
3年連続参加してくださる方もいるので安心して作業をお任せでき、ARは石運搬係に徹します。(ときどき口うるさく監督します。)
そして設置したテンサーは10基。水たたき石代わりにササをはさみ石運搬は最小限にし労力を削減、ヤシロールで土砂を誘導しテンサーに土砂を溜まり易くするなど、確実に進化している3年目のパークボランティアでの登山道整備!!
嬉しく、燃えますね。
作業中、当麻岳の斜面には食事中のヒグマを見ることが出来ました。
100年後、200年後...山にはヒグマが悠々と草を食み、裾合平にはチングルマの大群落が咲き、毎年そこを訪れることを楽しみにしている人がいること、そしてその人たちが大自然から無限の癒しと力をもらい続けていること、それがいつまでも続くことを心から願い、今年も登山道整備をしました。
参加された皆さん、岡崎講師、楽しい作業でした。お疲れさまでした。
2016年01月29日崇高なる山々
大雪山国立公園 渡邉 あゆみ
北海道の冬は長いと言いますが、一口に冬と言っても初冬・厳冬・晩冬・初春など様々な表情があり、今は厳冬期。
一年の中で最も寒い今が、最も胸が躍るシーズンという人も多いでしょう。私もその一人です。
住民の方から「スノーモビル乗り入れがあるようだ」と情報が寄せられたため、週末に乗り入れがあったか走行跡を確認しに月曜の朝、とある場所に向かいました。
大雪山国立公園の一部の地域でスノーモビルの乗り入れは禁止・規制されており、スノーモビルが発する騒音は野生動物の営巣を妨げることとなります。実際に、大雪山には貴重な動物たちが暮らしていて、その暮らしが脅かされるのは見逃せません。
-20℃まで冷え込んだ朝。子供の頃は通学中にダイアモンドダストはよく見ていましたが、最近は暖冬でそれも見ることもめっきり減りました。寒いを通り越して、シバレル、と北海道弁が飛び出します。(シバレル=北海道の方言で厳しく冷え込むの意)
車から降りると低温で顔もヒリヒリと痛みますが、スキーシューで歩き始めると徐々に体に暖かい血が巡り、手足が順調に前に出ます。
目的の場所へ辿り着き、野ウサギやキタキツネ、スキーを履いた2名のトレースだけがあるのを確認し、別の場所へ向かいました。
この日、そこではスノーモビルの走行跡はありませんでしたが、今後もパトロールを強化し、今シーズンはもう少し深いところまで調査が出来そうです。
夏は高山蝶がヒラヒラと舞い、残雪のすぐ横には広大なお花畑が広がり、楽園を感じさせてくれる大雪山。
そのお花畑には気持ちよさそうにキタキツネが日向ぼっこをしていたり、運が良ければ遠くの斜面で草を食んでいるヒグマを見ることも出来るでしょう。雄大な山並みと野生動物たちが長い間同じサイクルで営みを続け、共存してきた大自然は、人々を癒やし、励まし、それが心の深いところまで届くと自然に対して敬いの心が芽生えてくることでしょう。
一方、冬は装いを変え、山で暮らす動物たちは眠りにつき、そこに入るものに対し過酷な環境を突きつけます。ラッセルに喘ぎ、風雪に叩かれ、吹雪が途切れたとき一瞬見れる山の輪郭や猛烈に舞い上がる雪煙。
無言の山と響く風雪だけがあり、人間の小ささを知り、太刀打ち出来ない偉大なものへの畏怖の念と、聖域とも思える場所に足を踏み入れる歓喜の念が岳人を奮い立たせ、白い山へ向かわせるのでしょう。
どうかこの聖域にエンジン音や騒音が駆けまわることがありませんように。
白銀の富良野岳を眺望
2015年08月18日山を想う日
大雪山国立公園 渡邉 あゆみ
7月28日の日記で紹介した山の日制定記念イベントの講演会とトレッキングツアーを8月9,10日に東川町で開催しました。
初日の講演会のゲストは登山家 山野井泰史さん、モデル KIKIさん。お二人の講演を聞きに、遠方は釧路市や倶知安町など北海道内各地より150名ほどの来場がありました。
講演会の第一部はゲストのこれまで印象的だった登山のお話、山のどういったことが魅力なのか、山への臨み方、山への想いなどをお話頂きました。
KIKIさんは講演会の前日に十勝岳連峰をテント泊で縦走をしてきたフレッシュなお話や、ヒマラヤのメラピーク(6500m)を仲間とキャラバンを組んで登ったときのエピソードを美しい写真を交えて紹介して頂きました。
透明感の代名詞とも言えるKIKIさんですが、実際にお会いしたらこんがり日焼けしていて、ワイルドな印象。気さくに色々お話して頂き、「仕事のことより山に行くことばかり考えている」と仰っていて、誠実に山が好きなことが伝わり、美しくも、笑顔がとっても可愛い素敵な方でした。
山野井さんはヒマラヤや南米パタゴニア、グリーンランドの山に登ったときのエピソードや、次に登る山を決めるときの選別の仕方、出来るだけ「カッコよく登るため」の登るライン、登り方、装備についての説明など、具体的にお話して頂きました。
世界最強と呼ばれる山野井さんは寡黙な方だと思っていましたが、実際は目がキラキラした物腰の柔らかい雰囲気の方で、時にはジョークも飛び出し、とても人柄がいい、素晴らしい方でした。
第二部は大雪山ガイドMountainFlow青木倫子さんを交えて3人のトークセッション。
山好きな3人の和やかな雰囲気の中、この会場でしか聞くことが出来ないゲストの秘話や本音なども聞くことができ、共感したり、感動したり、とても贅沢な講演会となりました。
山野井さん、KIKIさんに山のお話をして頂くとき、お二人とも表情が生き生きとしていて、今、まぶたにはきっと大好きな山の景色が浮かんでいるんだろうなあ、と想像でき、こちらまでワクワクし、KIKIさんは「登山のない人生は考えられない」、山野井さんは「山に登るために生きているに近い」と山の日ゲストにぴったりなことを仰っいました。
講演会中、切々とゲストの方々の山が本当に好きな気持ちが伝わってきて、ご来場頂いた方々にも素敵な時間を過ごして頂けたのではないでしょうか。私は今後の山行の励みになるお言葉もたくさん聞くことができ、もっと山に登りたいと思いました。岸田自然保護官と二人で春からゲストを考案し、準備をしてきましたが、このお二人に来て頂いて良かった、と心から思えた講演会となりました。
翌日は東川エコツーリズム推進協議会主催の旭岳~裾合平一周トレッキングツアー。登山が初体験という方もいましたが、大塚友記憲さんのガイドで旭岳の成り立ち、植物や登山道についての解説などをして頂き、中岳温泉では天然温泉の足湯も体験でき、全員無事に行程通りを歩くことが出来ました。
当日は曇空でしたが、少しの晴れ間に表大雪の山々が一望できたとき、参加者のみなさん、とてもイイ表情をしていました。
きっと「この先に行ってみたい、向こうに見えるあの山に登ってみたい」と思っているんじゃないかなあ、と思うと、スタッフ側としてこんなに嬉しいことはありません。これを機に、美しい大雪山に、たくさん登ってもらいたいなぁと思います。
思い出深く、色々経験させてもらえた二日間となりました。ご来場&ご参加して頂いた皆さん、ありがとうございました。
大雪山国立公園のパークボランティアは今年度、創立30周年を迎えました。
今年度の大雪山のパークボランティアは88名、そのうち初代から活躍されている方は現在も11名おられます。
創立30周年を記念し、5月12日(土)十勝岳温泉凌雲閣にて、登山家 久末眞紀子さんをお迎えし「いまを、生きる」というタイトルで、これまでの登山や歩んでこられた半生についてご講演いただきました。
久末さんは40代のときに大雪山の白雲岳に登ったのがきっかけで登山にハマり、50代でデナリ、エベレスト、南極ビンソンマシフと登られ、日本人女性として3人目の7大陸最高峰登頂者となりました。
その後、老後はお金のかからないアジア圏で生活をしよう!と思いつき、50代半ばから大学へ入学し、日本語教師の資格を取得後、平成28年までタイで日本語教師として働き、今春からは美術大学へ通われています。
いち主婦が山にハマり、子育て、仕事とトレーニングとの両立、高額な海外登山の資金貯蓄と日々の生活、生死をかけた登山、還暦前に大学へ入学・・・リラックスした雰囲気で、赤裸々にお話をして頂き、興味深く聞き入りました。
久末さんは冒頭に『「年だから・・・お金がないから・・・」の逆接の接続詞ばかり繋げると自分の限界を自分で決めることになるので、「行くために何をすれば良いか」を考えて一つ一つクリアしていった』と仰っていました。
有言実行で着実に夢を叶えていく姿は、とても潔く、なのに肩の力が抜けていて、久末さんの楽観的な発想や考え方は参考にしたい部分がたくさんありました。
また、私たちの身近な大雪山のお話もして頂き、健気に咲く高山植物を愛おしむ気持ちや、山や自然には敵わないといった謙虚な気持ちは共感することばかりで、嬉しくもなりました。
講演会のあとはパークボランティアの総会を行い、13日(日)は雨の中、久末さんにも御同行頂き、春山研修へ出発しました。
★お知らせ★
30周年記念として、パークボランティアは9月に新規会員を30名募集する予定です。
パークボランティア活動に興味がある方、詳細が決まり次第、情報をここや大雪山パークボランティアのFacebookにアップしていきますので、是非チェックしてください!