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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園 東川

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2012年12月10日情報を共有するという事

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 12月4日、美瑛町四季の情報館において「大雪山国立公園山岳関係者による情報交換会及び屋内講習会」を実施しました。これは以前にも触れた協働による登山道をはじめとした山岳地域の維持管理の推進だけでなく、関係者同士の情報共有を図っていこうというものです。

会場の様子。今回参加して頂いた関係者は大雪山全域の合計28団体、47名(環境省スタッフ含む)でした。年末の忙しい時期にもかかわらず参加して頂いた方、有難うございました。

 今回の目的は、
①協働型関係者同士の情報共有
②夏に参加出来なかった方々も含めての登山道の維持管理講習会
③来年度以降、協働型作業を進めるにあたっての方針


各団体から今年度の活動報告が行われました。
オフシーズンに入り、久々に顔を合わせた方々も多かったのではないでしょうか?


こちらは屋内講習会の様子。今回も講師を務めていただいたのは北海道山岳整備の岡崎哲三氏。夏に行った講習会の振り返りに加えて、維持管理(メンテナンス)の重要性について述べてくださいました。

 岡崎氏から特に強調されていたのは、登山道を整備するにあたって、

「施工した物がしっかりと機能しているか?」
「施工物自体が崩れていないか?」
「施工物によって新たな浸食が始まっていないか?」

この3つの重要性に触れ、施工するにあたっては作ったらそれで終わりではなく、

「施工前はどうであったか?」
「施工後はどうなったか?」

 これらの事を長期的に記録して、施工後の現場を観察し続けていく事が重要である、そして最終的には施工した物が現地の景観に溶け込むことで、初めて作業の完成であるという事を強調されていました。
 確かにここ大雪山は広大で、その地域によっても景観は様々です。その場に見合った施工を行う事が重要だと言えます。

 協働による維持管理を行うには何と言ってもマンパワーが必要です。今回皆さんに協力していただいた協働型維持管理に関するアンケートの内容を見る限りは多くの方が、協働作業に積極的である事が分かりました。その一方で、もう少し手軽に参加出来る部分を大事にすることや作業においての計画性を持つことの重要性なども指摘がありました。
 そしてなんといっても「関係者間における情報共有」という意見が圧倒的に多く、関係者同士で情報を交換することの重要性を改めて考えさせられた今回の情報交換会でした。

 今後もこのように定期的な交換会の実施を続けていく事で横のつながりを密にし、協働型維持管理につなげていきたいと考えております。

 関係者の皆様、来年度もどうぞよろしくお願いします。

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2012年11月06日来ました。

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

遅い紅葉のお知らせをこの日記でお知らせしたのがちょうど一か月前。
11月に入り、山は早くも冬の姿に変わってきました。


ご覧の通り、旭岳はもうすっかり冬景色です。(11/5撮影)
雪をかぶった旭岳は何度見ても素晴らしい。
この日は久々の晴天。散策・登山に来られていた方も多かったようです。

クロスカントリーの選手が全国から集まってくるこれからの時期、旭岳温泉周辺はひときわ賑わいを増す時期でもあります。


11/5(月)、昨年度に完成した勇駒別木道の自然解説標識の雪囲いを行ってきました。積雪は30cm以上ありましたが、まだまだ木道周辺は踏み抜きやすく、非常に歩きにくい時期です。


①木道の分岐に建ててある誘導標識。
②まずは掘り起し作業から。
③ボルトを緩め取り外して、来春まで保管します。
④自然解説看板も雪の下から掘り起し。
⑤こちらはシートをかぶせて。
⑥来春を待ちます。

①の誘導標識をなぜわざわざ取り外すかというと。

実はここは旭岳スキーコースになる場所です。
圧雪車の通り道という事もあり、誘導標識は来春まで取り外しです。
昨年のスキーコースオープンは12月17日でした。さてさて今年はどうなるでしょうか?
コースオープンを心待ちにしている方々、もうしばらくお待ちください。


【お知らせ】
11月11日~12月10日まで旭岳ロープウェイは定期点検の為運休となります。
12月11日より運行再開されますが、スキーコースオープンまではスキー、スノーボードなどのゴンドラ内への持ち込みは出来ませんのでご注意ください。





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2012年10月12日徐々に降りてきてます

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

例年であれば積雪の写真をお見せできる時期ですが、今年はまだまだ紅葉の話題が続いています。9月は例年にない残暑に見舞われたことによって心配された紅葉でしたが、ここ数年では一番綺麗に色付いているという声も。
好天に恵まれた先週末の3連休などは最後の無積雪期登山を楽しむ方も多かったのではないでしょうか?
が、今週末に向けてはあいにくの雨予報。気温も下がり、いよいよ雪に覆われた山の風景が拝そうです。紅葉は徐々に下に降りてきており、それを追いかけるように冬はすぐそこまで来ています。

毎年PV会員の方と9月下旬に行っている恒例の登山道のロープ外し作業は悪天候の為1週間ほど遅れて10/5に行いました。稜線上ではガスと強風に見舞われた中、作業に携わっていただいた皆さんには改めてお礼を申し上げます。


今年度最後の作業です(旭岳裾合平)。皆様お疲れ様でした。
6月が「山開き」とすればこの時期は「山閉まい?」といった所でしょうか。
ですが、このように時折ガスの中から顔を見せてくれた紅葉はまだまだ見事でしたね。(10/5撮影)


風の強い旭岳山頂付近では手もかじかみ、思うようにロープを緩める事すらできない時もありましたね。震えながらの作業、皆さん有難うございました。

6月中旬のロープ張りに始まり、10月のロープ外しの期間までわずか3ヶ月半。
今年は花の当たり年と言われた夏のシーズンから山が燃える秋の紅葉まであっという間でしたが、今年もここ大雪山は素晴らしい姿を我々に見せてくれました。


作業を終えての帰りのロープウェイ車窓からは「お疲れ様」と言わんばかりに赤や黄色の風景が迎えてくれました。
あと数週間もすればこの風景もすっかり白一色となる事でしょう。


確実に紅葉前線は下へ下へと降りて来ています。これからは車からも気軽に紅葉を楽しむことが出来る時期ですが、景色が良いからといっての急停車やカーブの途中での駐車などは危険ですので十分ご注意ください。
また、道路でのキタキツネへの餌やりもまだまだ見られるようです。野生動物本来の姿を失わないようにするためには我々一人一人が出来る事を考えてみる事も必要ですね。

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2012年09月10日登山道保全技術講習会を開催しました(その2)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

登山道の補修を行うにはまず現場を知ることが重要です。その箇所がどのような原因で崩壊しているか、これを知るためにはまず「様々な条件で現場を見る」事です。晴れの日だけでなく雨の日、特に大雨の時などは水の流れを見る絶好の機会にもなります。

写真上が普段の道、写真下が雨の日の様子。まさに登山道が川になっているのがよく分かります。さらなる豪雨になると右側の青いラインまで水が走ってしまい、次第に登山道の崩壊が始まっていきます。※写真提供 北海道山岳整備

元々ここは落差工(ステップ&プール)によって水の勢いを弱めるための施工箇所なのですが、大雨の時は想定以上の量の水が流れてしまったため、道の両脇の浸食が始まってくると同時に組んだ石も崩壊しやすくなるという事例です。

これ以上の浸食を止める為にはどうするか・・・・。
その原因は水量の多さにあるのですから、それを抑えればいいのですよね。であれば、施工箇所の上流で水を登山道外に逃がしてやるという方法があります。
この施工はいわゆる「導流水制工」と呼ばれるもので、分かりやすく言うと「水切り」です。

「水切り」というとどのようなものを思い描くでしょうか?
土を削って水を流す道を作るというのも立派な水切りですね。が、簡単に土砂が詰まってしまうことが多く、頻繁にメンテナンスを行う必要があります。
下の写真を見て下さい。これまでに施工された近自然登山道工法での導流水制工の一例です。※こちらも北海道山岳整備からの写真提供


写真上は石を組んで作った導流水制工。写真下は現場に残っている木を利用しながら石を組んだもの。青色の線が水の流れのイメージです。このようなものを何カ所かに作り、少しずつ水を登山道外に排出するのが狙いです。うまく機能すればこれらは基本的にメンテナンスを必要としません。

施工にあたっての資材は全て現地にあるものを使っています。この後、木や石に苔が生えてくればこの箇所を工事したと気付く方もいなくなるでしょう。
現場の景観に馴染ませるというのはこの事です。

そして今回参加者で施工したものは。

写真上の赤○部分に導流水制工を一基作りました。写真下は皆さんで力を合わせて作ったもの。初めて石を使った作業をした方もいたかと思いますが、パズルをやり始めると大人も子供もやめられなくなるのと同じで、石を組み始めると止まらなくなる方がほとんどでした。
試行錯誤を繰り返して作ったこの導流水制工。さてさて、矢印のイメージ通りうまく機能してくれるでしょうか?はたまた現場の景観に馴染んでいくのでしょうか?

現在様々な形で行われている近自然登山道工法ですが、まだ完成された形になっているわけではありません。定期的にこれまで施工された箇所の検証会などを行い、成功例や失敗例などを踏まえ、今後大雪山にふさわしい登山道を作っていく事が我々に課せられた使命と言えるでしょう。

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2012年09月06日登山道保全技術講習会を開催しました(その1)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 まだまだ暑さが残る8月29日(水)、北海道内において近自然登山道工法で登山道整備を数多く手掛けている合同会社北海道山岳整備の岡崎哲三氏を招いて「登山道保全技術講習会」を開催しました。これは過去に手掛けた登山道の整備事例や手法などを登山道に関わる方たちに実際に見てもらい、維持管理の参考にしてもらおうというものです。
 当日は関係行政機関や地元山岳会、山岳ガイドなど幅広い方々に参加していただきました。ご多忙中にもかかわらず参加していただいた皆様、有難うございました。参加者の中には過去にこの場所の工事を手掛けた方などもおられ、久々に自分の施工した場所を見るのは非常に感慨深いものがあったかもしれません。

「近自然登山道工法」という言葉はこのAR日記でもよく挙げていますが、今一つピンとこない方のために一言で言うと。
「出来るだけ現地にある資材を使い、自然景観に溶け込むような登山道整備」
とでも言ったら何となく分かるでしょうか?
 この手法は元々河川工事に用いられていた工事で、この技術を「登山道は川である」という考えのもと、それを応用し登山道の整備に用いるようにし、平成17年度より大雪山でも環境省直轄整備事業の手法の一つとして取り入れられるようになりました。

 これまでの登山道整備においてはまず「登山者の歩きやすさ」という事を第一に考え、単純にぬかるみに木道を設置したり、土留め階段を作るなどが多く取り入れられて事が多かったのですが、根本的な登山道浸食の原因を解決しない限りは、これらのものは時間と共に崩壊していってしまう→それらの補修をまた行うという事の繰り返しでした。
 これらの過去の事例を踏まえて、近自然登山道工法においては
「登山道の浸食原因を理解し、なおかつ生態系復元のための環境を整える」
事をコンセプトにし、施工物は自然の構造から学び、作業機械を使わず伝統技術を用い、併せて登山者の行動にも配慮するという事が重要になってくるのです。

例えばこのように浸食が進んでしまっている登山道。単純にこの部分に木柵階段などを設置して歩きやすくするのは簡単な事ですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。どのような原因でこれだけ浸食が進んでいるのかを考えることが重要です。


 当日の様子。

現場に出る前にまずは座学から。これまでの整備事例などを用いて近自然登山道工法について参加者に詳しく説明しています。


こちらは石組みによる水流抑制のための施工箇所の説明ですが、大雨の際などは予想以上の大水が流れる(青いライン)ことによって、両脇の部分の浸食が進んで行ってしまっているという事例の紹介。

 これらを実際に現地で見てもらい、その原因を考え、対処方法を考えて行こうというのが今回の狙い。現場において皆さんどのように考え、施工することが出来たのでしょうか?

 現地での様子についてはその2において紹介したいと思います。

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2012年08月09日立秋を過ぎる時期になると

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

「残暑お見舞い申し上げます」という時期になりました。早いもので暦の上では立秋も過ぎ、大雪の山々では白や赤の花から段々と黄色や紫色の花が目立つ時期となりました。

これからの時期に特に目立ってくる花がこちら。

エゾオヤマリンドウです。鮮やかな紫色が特徴ですが、まれに白花が見られることもあります。
 高山帯で咲く最後の花ですね。この花が終わるころには山頂から初雪の便りが聞こえる、もうそんな花の咲く時期となりました。


 花をよく観察していると、何やら中からモゾモゾしたものが・・・。

「ヨッコイショ」と中から出てきたのはマルハナバチ。こちらは在来種のエゾオオマルハナバチのようです。
 彼らも花の蜜を吸うのに必死のようで、カメラを近くで構えても「人間なんて構っちゃいられない、あたしゃ忙しいんだよ」と言われそう。


 大雪山の高山帯へも侵入が懸念され、問題となっているセイヨウオオマルハナバチが初めて大雪山で確認されたのが2006年。その後、東川自然保護官事務所では在来バチも含めたモニタリングを行っており、これまでに高山帯で捕獲されたセイヨウオオマルハナバチは合計8頭(ハチは1匹、2匹ではなく、1頭、2頭と数えるようです)。その全てが立秋を過ぎた8月上旬~下旬にかけて捕獲されています(旭岳周辺)。

 訪花していた花の主な内訳としては
・エゾオヤマリンドウ→4頭 ※2008年:3頭 2010年:1頭
・コガネギク(ミヤマアキノキリンソウ)→4頭 ※2008年:3頭 2009年:1頭
 というようにどうやらセイヨウはこの2つの花を好むようです。
2008年をピークに捕獲されたセイヨウの数は減ってきていますが、今後も引き続きモニタリングを行っていく事が必要でしょう。


「外来種」というと誰もが良いイメージはお持ちでないでしょう。が、元々は我々人間が持ち込んだもの。自分たちの後の世代に今ある日本の姿をどのようにして残していけるか。限りある自然をいかに守るか、1人1人で出来る事はごくわずかかもしれませんが、これまで守られてきた生態系をこれからも引き継げるように努力していきたいものです。

ここ数年では久々の「当たり年」と言われた旭岳裾合平の花畑。
この花畑で在来のマルハナバチが駆逐され、セイヨウオオマルハナバチが支配してしまうという事は絶対にあって欲しくありません。

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2012年07月20日協働作業

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 広大な面積を誇る大雪山国立公園。維持管理作業等に関わっている方々は多方面にわたります。地区ごとに、「どのような人たちがどのような作業を行っているのか」、これらを共有していこうという事で現在大雪山では協働による登山道維持管理の仕組み作りを行っています。山岳会、関係市町村、北海道、森林管理署、それにパークボランティアも含め一体となって大雪山の保全活動に携わり、お互いの作業状況を共有することで、ロープ張りやマーキングなどに関しても各地域バラバラでなく、統一感を図り、またお互いの長所を取り入れることによって、今後大雪におけるより良い維持管理の仕組みが整っていく事を目的としています。

 旭岳周辺において、地元関係者が「協働」で作業を行おうという趣旨で昨年から始めた行事の一つが登山道のササ刈りです。
 7/18に北海道(上川総合振興局環境生活課・南部森林室)、東川町産業振興課、ひがしかわ観光協会、旭岳自然保護監視員(NPO法人ねおす大雪山自然学校)、個人参加の方、そしてパークボランティアも集まり、旭岳天女ヶ原登山道においてササ刈り作業を行いました。多忙中にもかかわらず参加していただいた関係者の皆様へは深く感謝いたします。中には夏休みとして参加して下さった方もいました。
 ここ天女ヶ原登山道はロープウェイを利用する人たちが大半を占める中で、利用者が比較的少ない登山道です。しかしながら維持管理が行われなければ荒廃が進む→さらに登山者が減るという悪循環にもなりかねません。
「地元の登山道維持に貢献したい」と集まってくれた有志はこの日合計16名。時折雨のぱらつくあいにくの天気となりましたが、普段はなかなか顔を合わせることも少ない面々ながら参加者一体となって作業に携わっていただくことが出来ました。


作業前に参加者へ本日の注意事項並びに作業手順の説明。

作業の様子。単なるササ刈りとあなどるなかれ。険しい登山道を登りながら太く丈夫なササを刈る作業を半日もしていると腕がパンパンなってくることもあるのだ。

登山道上におけるササ刈り一つをとっても、刈幅や刈り方、刈ったササの処理方法などを共有していこうという趣旨で昨年から始めたこのイベント。今後も地元有志で継続して協働作業を行っていく事により、維持管理の方法の統一化が図られていくことが望まれます。
 この日は旭岳温泉登山口から旭岳4合目上(姿見の池園地)手前までの作業。実は初めてこのルートを歩いたという方もいたようです。
 これからの時期はタチギボウシなどの湿原植物、秋は紅葉が素晴らしいルートでもあるので皆さんにもその良さを知っていただくいい機会になったかもしれません。


 ササ刈り作業も無事終わり事務所への帰路の際、何気なく旭岳への国立公園入り口のエントランス看板を見ると、こちらも周りに草が生い茂り大変なことに・・・。
 使い終えたと思っていた剪定バサミを再度取出し、再び作業開始。
 いやいや、やはり下界は暑かった。旭岳山麓とはいえ、やはり標高が1000mもある旭岳温泉と下界とは別世界ですね。山は涼しくて快適だったと改めて実感しました。
 登山道ももちろんですが、こちらの看板も国立公園入り口の大事な「サイン」ですからね、あまりにもみすぼらしい姿では・・・。
 このような雑務も我々の大事な作業です。

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2012年07月20日天人峡~トムラウシ山ルート その2(作業編)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 今回ベースとしたヒサゴ沼野営指定地からトムラウシ山までのルートは大雪山を縦走するにあたっての大動脈ルートの一つですが、「道が分かりにくい」という声が多いのもこちらのルートの特徴です。
 大雪山の象徴ともいえる強い風が吹きつける稜線部分は過去に付けられたマーキングや道標の文字等も年と共に消えて行ってしまう箇所が多いため定期的な作業が望まれるところですが、なんといってもここは大雪山の核心部であるためなかなかその手が入りにくいのが現状です。
 今回の山行中は天候もまずまずで、マーキング作業には絶好の一日。これまでしばらくの間出来なかった作業をようやく行うことが出来ました。


天沼~北沼間の登山ルートの中でも特にルートを見失いやすいと言われるところが、通称「ロックガーデン」付近。マーキングが色褪せてしまっている箇所への塗り直し作業を行いましたが、それでも視界不良時は要注意箇所であることは間違いありません。じっくりとルートファインディングが出来るよう、時間に余裕を持って行動したいものです。

 ただ、マーキングや道標だけを頼りにするのは非常に危険な行為です。常に地図を見ながら自分の現在位置を確認する。これは大雪山縦走にあたっては最低限必要な技術といえるでしょう。あくまでもマーキングは補助的なものと捉えて下さい。
 何といってもここ大雪山の奥座敷は数少ない「原始的な山岳風景」が残された場所です。

 そして今回の最も大きな仕事といえばこちらかもしれません。


すっかり色褪せてしまっていたトムラウシ山山頂標識が見事にお色直しされました。我々の作業後に到着された方は、塗り立てホヤホヤの標柱での記念撮影が出来たことでしょう。

 以前のAR日記において上士幌三浦ARが「見た目って大事ですね」とコメントしていましたが(平成24年5月23日の「公園看板破損 before after」より)、全く同感です。きれいに手直しされたものは何とも気持ちの良いものです。
 誰もが憧れる大雪山の代表的な「トムラウシ山」の山頂があまりにもみすぼらしいというのは何とも恥ずかしいことですから。

 最後に残雪の状況です。(7月8日撮影)

このように、大きな雪渓を登行する箇所はヒサゴ沼周辺のみとなりましたが、雪渓歩きに慣れていない方などはやはり軽アイゼンなどがあった方が安心できるかもしれません。気温の低い早朝などに出発される際は特に滑りやすくなっているので十分注意してください。(写真はヒサゴ沼からの登り始めの箇所)
また、雪渓の端では踏み抜きに注意です。

 この日も全行程は10時間近くにわたりました、作業に同行していただいたパークボランティアの皆様、大変お疲れ様でした。

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2012年07月13日天人峡~トムラウシ山ルート その1(登山道編)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 多くの岳人が憧れるトムラウシ山。新得町側からの短縮登山道を利用しての日帰り登山という方が多いかと思いますが、今回は比較的マイナーなルートである天人峡温泉登山口からのルートを紹介したいと思います。
 現在上川町側の入り口である沼の原登山口が林道崩壊の為通行出来ない状態である事から、しばしばこちらのルート状況などを聞かれることも多くなってきました。
 7月6日から3日間、パークボランティア作業の為、ヒサゴ沼野営指定地をベースに同ルートでの山行を行いました。情報があまり多くないルートですので、こちらのルートを考えている方は参考にして頂ければと思います。
 しかしながらトムラウシ山までの歩行距離は約17㎞。日程には十分に余裕を持って行動したいところです。

 まずは最初からの難所、通称「三十三曲がり」(余裕のある方は数えてみて下さい、本当に33の曲り道があります)。ここをクリアするとほどなく北海道の2つの「NO.1」を見ることが出来る「滝見台」に到着です。

NO.1の1つは言わずと知れた北海道の最高峰「旭岳」(2,291m)。もう1つは北海道一の落差(270m)を誇る「羽衣の滝」。この2つを一度に見ることが出来るのはここだけでしょう。ここから見た羽衣の滝の様子はこちらのAR日記から見ることが出来ます。http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2012/05/891.html

 ここから先は大雪山のいわゆる「奥座敷」への入り口です。この時期、ニッコウキスゲやワタスゲが咲き誇る「第1公園」「第2公園」を過ぎるとようやく視界が開け、稜線を伝わる心地よい風を感じることが出来ます。しかし、ここまでは倒木、笹藪、泥道など難所が連続し、まさに「原始的な」道です。距離以上に時間を取られると思った方が良いでしょう。

雨の日だけでなく、晴れていても水はけの悪い箇所では水溜まりが多くあります。今回は長靴だったため安心して歩くことが出来ましたが、登山靴では躊躇してしまいそうな所も多くあります。登山道の複線化も目立ってきていました。足元はしっかりとした靴で。くれぐれも登山道からは外れないようにして下さい。

 
 小(ポン)化雲岳を過ぎるとようやく「これぞ大雪山」といえるようなお花畑が迎えてくれ、ここを過ぎると化雲岳山頂に到着。この日は雨の中の登山であったため、ここまで出発から8時間を要しました。大雪山の奥座敷への道のりは遠いことを実感させてくれます。

化雲岳を過ぎ、今がまさに旬といえるお花畑を抜け、長い雪渓を下り終えるとヒサゴ沼野営指定地がようやく見えてきます。本日の歩行時間約9時間。皆さん大変お疲れ様でした。明日はトムラウシ山目指して作業共々頑張りましょう。

 この先、ヒサゴ沼~トムラウシ山までは近日中にその2(作業編)でお知らせする予定です。

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2012年07月03日目を凝らしてみれば

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 花真っ盛りの大雪山、この時期によく尋ねられるのは当然のことながら花の名前。まがりなりにも腕章をつけて山に入っている身分としては「分かりません」というのは何とも頼りない・・・。
 とはいえ、「花の百名山」とも言われる富良野岳に代表されるような花の種類の多い山などでは「これ何だっけ?」としばらく昨年までの記憶を辿る(たどる)時もしばしば。今の時期の山行には花図鑑は欠かせません。

 富良野地方の最高気温が32℃と記録的な暑さを記録した6月の最終土曜日(6/30)に高山蝶パトロールで富良野岳を訪れた際、同行したパークボランティアの方によるとこの日見られた花の数はなんと52種類あったそうです。さすがは花の山、富良野岳です。(それを数えられる方も凄い)

 同じ色、形でもよく見ると違う花というのは多々あります。よく尋ねられるのが

例えばこちらミヤマキンバイ(左)とメアカンキンバイ(右)。※どちらも「バラ科」
遠目で見るだけでは一見「同じものですか?」と尋ねられることがしばしば。
しかし、目を凝らしてよく見ると花弁の形や付き方が違うのがよく分かります。


そしてこちらはご存じエゾノツガザクラ(左)。※ツツジ科
ズームアップしてみると表面に細かい毛が生えているのが分かります。
良く似たコエゾツガザクラ(右)にはこのような毛がほとんど生えないのが特徴です。

「淡い白色がコエゾツガザクラ?」とよく言われることがありますが、一概にそうではないようです。エゾノツガザクラでも白花が付く事もあるようなので、そうなると花冠の形状や毛の付き方等で見分けなければなりません。じっくりと観察することが大事ですね。
 ちなみにコエゾツガザクラはエゾノツガザクラとアオノツガザクラとの雑種といわれています。そしてアオノツガザクラの変種としてさらにニシキツガザクラもあります。本当にツガザクラは奥が深い。

 この2~3年で大雪山を訪れる人達にも徐々に変化が見られ、とにかく山に登る、山頂に立つことを目的に来られる方が増えて来ているような気がします。
 もちろん人によって目的はそれぞれでしょう。が、たまにはゆっくり花を眺めながらののんびり登山なんていうのもいかがですか?何か別の新しい発見があるかもしれません。
 なんと言っても大雪山にはここでしか見られない固有種の花が多くありますから。

 ただし、花を見るのも写真を撮るのも登山道上で。くれぐれも花畑に踏み込む事の無いように。また狭い登山道の上では写真を撮る時など、くれぐれも譲り合いの精神でお願い致します。


富良野岳山頂付近ではエゾノハクサンイチゲ(写真)が稜線を渡って来る心地よい風を受けて気持ち良さそうに揺らめいていました。雲上の花畑という言葉がぴったりくるのが現在の富良野岳でしょう。

 お知らせ。
6/30未明から始まった十勝岳火口の燃焼現象により、周辺では入山の規制が行われております。詳細につきましてはこちらのHPをご覧ください。
http://cgi.eolas-net.ne.jp/eolas-lab/daisetsu/news/view.php?line=25

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