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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

続くフィールドサイン探し

2022年10月17日
羅臼 高林紗弥香
こんにちは。
羅臼自然保護官事務所の高林です。
あっという間に夏が過ぎ、ドングリ※実る時期がやってきました。
※羅臼では主にミズナラの堅果
 
先日、縄文ドングリクッキーというものをいただいたので、羅臼で縄文遺跡を眺めることができる場所へいき、ミズナラの木に登ってドングリクッキーを食べてきました。
 
縄文時代は遙か遠い出来事のようでありますが、羅臼においては身近なことでもあります。
 
休日、毎年確認している洞窟まで登ってみることにしました。登る途中、土のような塊を発見し、羅臼町郷土資料館へ報告したところ、およそ2000年前の続縄文時代のものとのことでした。


        洞窟周辺で発見した土器片

羅臼における洞窟遺跡のほとんどは、出土品からおよそ1400年前のオホーツク文化期のものとされてきました。発見箇所での土器の発見は初めてであり、今まで年代不明となっていた遺跡の新たな知見に繋がるとのことでした。
 指の先に黒く光るのは黒曜石
        指の先に黒く光るのは黒曜石

知床半島先端部での巡視時、エゾシカの影響を受けた植生を観察するために歩いていると、土の一部が黒く光りました。光ったのは黒曜石の欠片でした。
こちらも郷土資料館に報告したところ、過去の調査の詳細が不明となっているため、今回、黒曜石片を発見したことを今後の調査の課題にするとのことでした。
 
またある日は巡視中に黒曜石片を発見しました。そのため、巡視の休憩中に周辺を確認してみると、安山岩のような欠片を発見しました。

巡視中に発見した土器片
        巡視中に発見した土器片

安山岩なのか違和感があったので郷土資料館の学芸員さんに確認してもらったところ、土器片でした。これに関しても、確認箇所では土器の発見は初めてだったようです。
時代は縄文時代の中期後半から後期初頭とのことでした。
 
巡視中もプライベートの時も引き続きフィールドサイン探しをしているのですが、土器や黒曜石等、人が暮らした痕跡を発見することもあるのです。
過去のAR日記その1 その2
 
私たちが巡視している場所は数千年前にも人が歩いていたという場所だったようです。
数千年前に生きた人たちは知床でどのように生きていたのでしょう?
知床連山の山並みも今とは違ったことでしょう。
植生はどうだったのか?
野生動物の暮らしはどうだったのか?
現代で数を減らしてしまった生物もたくさんいたのか?
石ころのような1つの欠片から、たくさんのことを想像してしまいます。

散歩中に見つけた羽
        散歩中に見つけた羽

かつて人が暮らしていた痕跡がある場所は、現代においても豊かでたくさんの生物の暮らしを支えている場所が多いです。そのため、現代の野生生物の痕跡を確認することもあります。

知床岬周辺から国後島を望む
        知床岬周辺から国後島を望む

知床の自然がこれからも豊かで未来へ続くことを願い、今日も知床を歩きます。
 
※以前もお伝えしましたが埋蔵文化財ですので、掘り起こさないでくださいね。
発見したときには、その街の博物館や郷土資料館へ連絡しましょう。