北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

山のトイレに取り組む人たち

2023年03月22日
上川 忠鉢伸一
3月12日(日)山のトイレを考える会主催による、第24回山のトイレを考えるフォーラムが札幌で開催されました。
 
山岳地の殆どは水や電気が無く、当然道路も無く汲み取り車が入れないため、避難小屋や野営指定地などで発生するし尿をその場で適切に処理することが、環境保全上の課題となっています。
フォーラムでは黒岳石室トイレのメンテナンスを行っているNPOかむいの濱田氏の講演が行われました。
これからの山岳トイレの維持管理について、参加した方々と意見交換や情報共有が行われました。
 
ALTテキスト
【フォーラムの様子】
ALTテキスト
【参加者との意見交換】
山岳地でのトイレの問題は大雪山だけでなく、多くの山岳国立公園でも問題となっています。水も電気もない山岳地で、トイレのし尿がどのように処理されているか、皆さんはご存知でしょうか?
今回は大雪山でも多くの登山者が訪れる黒岳石室のトイレの現状を紹介します。


 
ALTテキスト
【黒岳石室トイレ】
黒岳トイレはコンポスト式バイオトイレと謳っていますが、電力供給源の風力発電、太陽光発電ともに稼働しておらず、電力によって便槽を暖めることができないため菌を働かせることができていません。現状は「人力汲み取りトイレ」となっています。
年に数回汲み取りを行い、使用者から集めた協力金を使って(1回使用につき500円)足りない分は行政で負担し、数年に一度ヘリで荷下げをしています。
ALTテキスト
【人力による汲み取り作業】
ALTテキスト
【ヘリでし尿を運ぶ様子】
ヘリを飛ばす為の費用は約250万円ほどかかりますが、協力金で得られる金額はかかる費用の半額にも満たない額です。
とても持続可能とは言えない現状ですが、便槽の水分を分離させて現地処理したり、
4室あった個室トイレのうち2室を携帯トイレブースに改造し、携帯トイレブースの使用を推奨するなど、現場の努力でなんとか維持できている状態です。
ALTテキスト
【黒岳携帯トイレ普及キャンペーンの様子】
ポリ袋に排泄すること、それを持って歩き回ることに抵抗があるのはとてもよく分かります(自分もそうでした)。ですが実際使ってみると、携帯トイレは案外快適で、取り扱いが難しいことはないということが分かると思います。
すべての登山者が「自分で出した排泄物やゴミは自分で持ち帰り、適切に処理する」これができれば、山岳環境におけるし尿問題の殆どは解決するのではないかと思います。
 
携帯トイレを安心して使用するには場所が必要です。
大雪山国立公園全域に、携帯トイレブースが設置されている場所は数カ所ありますが、
そのうちの一部を紹介したいと思います。
 

高原温泉沼めぐり登山コース

これまで値段が高く、簡単には設置できなかった携帯トイレブースですが、2020年に簡単に手に入る材料で、
安価かつ人力で運べるトイレブースを高原温泉沼めぐり登山コース内に、
コースを管理する(同)北海道山岳整備が作成・設置しました。画期的なオリジナル携帯トイレブースの誕生でした。
ALTテキスト
【エゾ沼の携帯トイレブース】
ALTテキスト
【緑沼の携帯トイレブース(2021年に設置)】

赤岳コマクサ平

2022年にNPOかむいが赤岳コマクサ平に設置したトイレブースです。
下界のトイレと違って「すべて持ち帰る」スタイルのトイレですが、特に女性の登山者にとっては個室があることはとても安心感があるのではないかと思います。
どんなに良い景色に出会うことができても、綺麗な花を見ても、便意を我慢したままでは感動も薄れてしまいますし、焦りが事故にも繋がりかねません。
ALTテキスト
【赤岳コマクサ平の携帯トイレブース】

旭岳9合目

2022年は旭岳9合目でもAsahidake Trail Keeperによる試験的なトイレブースの設置が行われました。
排泄物やティッシュの残置が多い場所でのトイレブース設置による効果の検証を行っています。
とても風が強い場所なので、風の影響を受けにくい形ということでこのような形のトイレになったようです。特に旭岳は身を隠せる場所が殆ど無く、「携帯トイレを持っていてもする場所がない」という登山者はかなり多かったのではないでしょうか?
ALTテキスト
【旭岳9合目の携帯トイレブース】



「自分の排泄物は自分で持ち帰る」という意識を持った登山者は、ここ数年確実に増えてきたと感じます。野外し尿痕も完全に無くなってはいませんが、数は減ってきていると実感しています。そこには山のトイレ問題に取り組む人たちの努力の成果が現れているのだと思います。
 
今後も更なる携帯トイレ普及にはトイレブース、使用済み携帯トイレ回収ボックスの増設が必要なのかもしれません。
トイレブースについては耐久性、景観への配慮、維持管理、色々と考えていくべきことは多いのですが、登山道や野営指定地に排泄物やティッシュやトイレ道をなくす為には、今後も適切な設置と、登山者への普及活動が必要だと感じました。
 
【山のトイレ情報へのリンク】