知床国立公園 羅臼
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2016年11月09日温泉につかりたい
知床国立公園 高橋法人
日に日に寒くなってきておりますが、寒い季節には温泉の話題でもいかがでしょう。
知床半島中央部を流れる羅臼川沿いには温水が湧出している箇所が点在しており、周辺地域は「湯ノ沢」と名付けられています。
羅臼ビジターセンターも湯ノ沢にありますが、センター裏には北海道指定天然記念物の間欠泉があり温泉水が吹き出す様子を観察することができます。
温泉水が噴き出す様は圧巻です。
(噴出時は周辺に熱湯が飛散するので柵から間欠泉側への立ち入りはご遠慮ください)
実は小型の"ボッケ"※1も羅臼岳登山道上で見ることができます。
羅臼町では湯ノ沢付近でのみオオシオカラトンボの成虫が飛んでおり、ヤゴはどこにいるのだろうと思っていたらこのボッケの周りの泥にいました。温泉?につかっているのは人間だけではないのですね。
さて、記事を書いていたら実際に温泉に入りたくなってきました。
ビジターセンター近くにある熊の湯※2につかって温まりたいと思います。
それでは皆様もお身体にお気をつけ下さい。
※1
アイヌ語で煮え立つという意味で、硫黄が混ざった泥が吹き上げている環境を指す。
※2
羅臼町内の有志により管理されている温泉で、無料で利用が可能。男性は露天、女性は室内風呂となっている。利用の際は周辺に掲示されている利用のルールを遵守のこと。
2016年09月30日ルサカフェ オープン中(9/28−10/3)
知床国立公園 羅臼 高橋法人
ルサフィールドハウスでは9月28日から10月3日までの期間限定で今年もルサカフェをオープンしています。
インフォメーションではドリンクの他に、羅臼町で作られたお菓子や総菜パンも販売されており館内でいただくことが可能です。
根室海峡や国後島を見ながらゆっくりくつろぐことができます。
羅臼町にお越しの際はぜひお立ち寄りください。
おまけ
ルサフィールドハウス近くのルサ川ではサケ・マスが多く遡上してきています。
体長1m以上の魚群は圧巻です。こちらの観察も併せていかがでしょうか。
熊には注意してください。
近くでサケを食べているかもしれません。
2016年08月03日夏の知床峠、目に映るのは外来種
知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎
ついにやってきました8月!夏真っ盛り!
皆さん、夏休みのご予定はしっかりと組まれているでしょうか?
暑苦しい都会の夏とは異なり、知床・羅臼の夏は晴れていても薄らと雲がかかっていることが多く、涼しさを感じる日々が続いております。
観光目的で沢山の方が訪れるこの時期、ほとんどの方が知床峠に足を運びます。知床峠からは知床最高峰である羅臼岳を目前にすることができ、日によっては大雲海や国後島を一望することができます。さらに、夜は手軽に星空を味わえる絶好の観光スポットとなっています。
羅臼岳と雲海
夜の知床峠
この知床峠へ向かう道、知床横断道路では意外と沢山の花が咲いています。エゾノリュウキンカやチシマノキンバイソウ、チシマフウロ、ミヤマキンポゲ、ミズバショウなどです。ウトロ側では湿地が道路沿いにあり、ミズバショウの群落が見られる箇所もあります。
しかし、それらの花々より多く目にするのが外来種です。フランスギクをはじめ、セイヨウノコギリソウ、コウリンタンポポ、ヒトフサニワゼキショウなどが花の季節になると道路沿いや法面一面に花を咲かせます。
法面を覆うフランスギク
今年はヒトフサニワゼキショウの防除を実施しましたが、個体数が非常に多く、根絶が難しい状況です。
左)ヒトフサニワゼキショウの花 右)防除した袋いっぱいのヒトフサニワゼキショウ
アクティブレンジャー2人では人員不足と思いますが、知床横断道路は歩行者用の道が非常に狭いため、安全を確保することが難しいだけでなく、最近では知床横断道でヒグマが頻繁に確認されていることもあり、人を集めて防除活動を行うことが難しい状況です。できる範囲で地道に優先順位をつけながら防除を続けていくしかありません。
防除活動中に現れたヒグマ
注意)大変危険ですので、写真の様にヒグマと遭遇しても車両を停車しないでください。
羅臼岳や知床連山の登山道等に外来種が大量に入り込む様な事態は生じていませんが、海岸線など、人の利用が多い場所では外来種の侵入が多数、確認されています。
知床の自然が次世代に受け継がれていくためにも、一人一人の行動が自然にどれだけ影響を与えるのか、考え、責任をもって利用していただけたらと思います。
靴の裏をきちんと洗うことで、外来種の拡散、侵入の予防になります。できるところから心掛けていただければ幸いです。
※余談ですが、知床横断道路の知床峠から羅臼湖入口間においてスミレやシロスミレ、ヒオウギアヤメ、
ホザキシモツケ等の在来種が確認されています。本来、この周辺はハイマツ、ダケカンバが群落を形成して
おり、林床はササが繁茂している地帯であることから、彼らが生育するにはあまり好ましい環境とは思えま
せん。もしかすると、彼らも外来種(地域移入種)なのかもしれません。
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生態系被害防止外来種リスト(環境省)↓
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/files/gairai_panf_a4.pdf
環境省が実施している防除活動↓
2016年07月19日これからどうなる?野付の花々
知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎
7月を迎え、いよいよ夏本番。知床の山々でも花が美しく咲き乱れております。今回は、道東でも一二を争うほどのお花畑、野付半島の状況をご紹介します。
野付半島は長さ28km、日本最大の砂嘴であり、ラムサール条約湿地の一つです。コクガンやオオハクチョウ、沢山のカモ類などが見られる場所として有名ですが、エゾカンゾウやセンダイハギ、ハマナスが咲き乱れるお花畑としても名高い場所です。
例えば、エゾカンゾウ。およそ6月の中旬頃から7月前半にかけて、エゾカンゾウが砂丘一面を覆いつくし、黄色い絨毯が敷かれた様な景色を作り出してくれます。
毎年私たちを楽しませてくれる花々ですが、近付いてよく見てみると・・・
ぽっきりと花をつけていた茎(花茎)の先が無くなっているものがありました。こんなことをするのは誰でしょう。それは北海道ではお馴染みの生きもの、そう、エゾシカです!
エゾカンゾウは昔からエゾシカに食べられていたと思われますが、近年、急激にエゾシカが増えたことにより、影響が懸念されるようになりました。羅臼羅自然保護官事務所では、その影響を見るために、毎年被食状況(食べられているエゾカンゾウの状況)を調べています。調査地点を幾つか定めて実施しているのですが、場所によって花が咲く前にほとんどが食べられてしまっていたり、そもそも花茎がほとんど確認されなかったという状況が確認されています。
調査地点
- 左)2016年6月撮影 右)2016年7月撮影
通常だと、このようにエゾカンゾウガ咲き乱れるのですが・・・
調査地点
左)2016年6月撮影 右)2016年7月撮影
場所によってはほとんど花が確認されませんでした。
※どちらもエゾカンゾウの群落に調査地点を設置しています。
まだ、野付半島では目に見えて大きな影響が出ていない状況かもしれません。しかし、なんらかの手立てをしないと、今後、貴重な植生がなくなるかもしれません。また、植物が影響を大きく受けると、それを食べていた昆虫などの他の生きもの、ノサップマルハナバチ等の希少野生生物が姿を消すことにつながることも考えられます。
人にとっても、野生生物にとっても憩いの場であるお花畑を、今後も注意して観察していきたいと思います。
2016年06月01日ダニにご注意を
知床国立公園 高橋法人
最近はここ羅臼町でも気温が20度を上回るようになりました。
屋外に出て、自然散策や登山ができる機会が増え素晴らしいことではあるのですが、野外には多くの危険があります。
その一つがヒグマです。知床ではヒグマとの接触が多く、巡視中でもたびたび目にします。
ヒグマは大きいもので体重300kg以上もあり、また時速50km以上で走行が可能と言われており、確かに、その身体能力は人間にとって脅威です。できるだけ野外では接触したくないものです。
しかし、それ以上に接触する機会があるのが、
こちらのマダニです。
北海道の山野ではヤマビルに咬まれたということは聞きませんが、ダニに咬まれたということはよく耳にします。ダニは疾病を感染(ライム病など)させるおそれもあり、微小な生物ですが侮ることはできません。
通常、マダニは茂みの中にひそみシカやクマなどの哺乳類が通過した際にとびうつり吸血します。
(エゾシカの目のまわりの赤い点やできものが、「マダニ」です。目の周りの柔らかいところに
寄生する傾向があります。)
しかし、そうした環境を人が利用するとダニが付いてしまうことがあります。それはマダニが哺乳類の二酸化炭素や熱を感知して宿主を探りあてるためです。
個人的な経験では、素肌をさらして野外を歩かない、特に笹などの植物に触れたらすぐに接触した箇所を調べたりはたいたりする、といったことでダニに咬まれる確率を減らせていると感じています。
ちなみにダニは水中にもいます。
(アカミズダニ属の一種)
(ヨロイミズダニ属の一種)
こちらも水生のダニです。
いずれにしても「ダニ」なので、生物に寄生し体液を吸入することで栄養を摂取します。
こうした水中のダニは主に水生昆虫等に寄生しているようです。
(水生ダニに寄生されるクロカワゲラ)
ダニも色々な種類があり興味がつきませんが、皮膚の上をマダニが歩いているとどうしても慌てて取り除いてしまいます。
昆虫や動物と異なり、細かな作業ができる手をもつ人間は、ダニがついても取り払える余地があるといえます。
皆様も外出の際はお気をつけ下さい。
2016年04月04日春の足跡が聞こえる羅臼にやってきた流氷
知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎
知床でも、雪溶けが進み、フキノトウ(アキタブキ)が溶けた雪の隙間から顔を出し始めました。ここにも春が訪れようとしています。
暖かな日差しが雪をゆっくりと溶かしており、春を待っていた生きものたちの声が聞こえてくるようです。
※ 知床ではすでにヒグマが活動をはじめていますので、ご注意を!(詳細後述)
雪原や冬山をお散歩できる日も残りわずかだなぁと考えていた時にふと、羅臼沖を眺めていると...
んん? 国後島周辺に何かあるような...
あれ?知床で流氷ってそんなに珍しかったっけ?これだけで記事にするほどのものか?と思われた方もおられるかもしれません。
確かに、知床では厳冬期を迎えると毎年、海一面を流氷が覆います。
そして、流氷の上でオオワシやゴマフアザラシなどが息づく姿を見ることができます(写真は過去に撮影したものです)。
そんな光景を毎年多くの方が見に来てくださるのですが、昨年(平成27年)はなんと流氷が全く羅臼にやってきませんでした...
流氷初日は3月25日(海上保安庁「海氷情報センター」より)。
昨年よりも1ヶ月以上遅い到来となりました(昨年の流氷初日は2月17日)。
やっときた!というよりも、今さら...と思ってしまうほど、遅い到来です。(しかも量が少ない...)
何が原因でこのような状況となったのでしょうか。
また、生態系にはどのような影響があるのでしょうか。
今年の知床は例年と異なる状況があるかもしれません。
心新たに、巡視等の情報収集に身を引き締めて取り組んでいきたいと思います。
※ 知床の冬山等を利用される方は、現地情報を収集し、ヒグマ対策を万全に行ってください。
知床ヒグマ対策情報↓
環境省「シレココ」:https://www.env.go.jp/park/shiretoko/guide/sirecoco/bear02/
知床財団「ヒグマ対処法」:http://www.shiretoko.or.jp/library/bear/
2016年02月01日ワレカラの姿は見えぬ
知床国立公園 高橋法人
ワレカラというのは、軟甲綱端脚目に分類される生物で、海中の藻の中に生息しており、世界中に様々な種類がいます。
名前の由来は、食用の藻を乾燥させると表面にワレカラの死骸が残ることがあり、それが割れた殻に見えたので、ワレカラと呼ばれるようになりました。
また、古くから和歌の題材とされ「我から」という言葉にかけて秋の季語として詠まれていたそうです。
ワレカラの 姿は見えぬ 冬の海
と一句詠んでみましたが、海中の藻の中にいるわけですからどんな季節だろうとその姿を地上から見ることはできません。
ただ先日海中から引き上げられたロープを見る機会があり、そこにはおびただしい量のワレカラがくっついていました。
(ロープの中でうごめく無数のワレカラ。海藻と同系色)
おそらくはこの無数の命が支えとなり海洋の生態系が保たれているのでしょう。
こうした微生物から魚類へ、魚類からそれらを餌とする海洋性哺乳類や海鳥に命のリレーはつながれていきます。豊かな漁場であり、また希少なワシ類や鯨類が訪れる羅臼の海においてもそれは変わることはありません。
(ワレカラをつつくカモメ)
(鷲も海産物をよく食べます)
ここで締めの一句
我知らず うみを育む われたから
2015年12月04日知床・羅臼の海岸線ゴミ回収調査報告
知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎
11月24日(火)に全道で記録的な雪が舞い降りた日を境に、知床・羅臼でも雪を目にしない日が、終わりを告げました。今回のアクティブレンジャー日記は、そんな羅臼にやってきて1年目、降り積もる雪にめげまいと奮闘中の宮奈がお送りいたします。
私が勤めております羅臼自然保護官事務所では、毎年10月から11月にかけて、1週間に1回の頻度で羅臼から知床岬方面へ向かう海岸線において、ゴミ回収調査を実施しています。知床の陸と海をつなぐ海岸線がどのような状況にあるのか、今年度の調査状況とその結果を紹介させていただきます。
調査は大きく分けて2区間で行っています。両区間とも世界自然遺産地域に含まれています。
1区間目は、国立公園の境目、ルサフィールドハウスから道路が途切れる相泊までの国道沿いです。ここは羅臼昆布を浜で干しているなど、漁業活動が活発に行われており、瀬石温泉や相泊温泉といった観光スポットもあるため、シーズン中は人の出入りが多い場所です。
2区間目は、相泊から海岸線を歩いて2時間ほどで到着する観音岩までの区間です。知床岬へ続くトレッキングコースの一部で、道路はなく、年間を通して漁業関係者以外の出入りが少ない場所です。ただ、サケ・マスのシーズンには釣り人が多く訪れる場所であり、昆布番屋も数多く残っていることから、漁業利用も活発に行われいます。
今回は、1区間目の調査について紹介していきます。
調査地の様子(左手に見えるのがルサフィールドハウス)
世界自然遺産地域。その名に恥じぬよう、ゴミはほとんど見られないはず。しかし、実際に調査をしてみると...
あ・・・
うーん・・・
おお・・・
思っていたよりもかなりのゴミが放置されていました。
どのくらいかといいますと・・・
このぐらいです。
多い時で200ℓを越えるゴミが一度の調査で回収されました。
(実際、1度で回収できるゴミの量は限りがあるため、回収しきれないゴミも多々あります。)
最も多く回収されたゴミは缶やペットボトルでした。そのほとんどが清涼飲料水の入っていたものです。次いで多かったのが発砲スチロールでした。これは主に漁業由来のゴミではないかと思われます。また量こそ少ないのですが、数が多かったのが煙草の吸殻です。道路脇に放置されていることが多く、缶に詰めて放置されていることもありました。
ゴミを回収していて気が付いたことは、多く回収されるゴミのほとんどが、持ち帰ることのできるゴミだということです。また、ゴミの量や劣化の状態から、誤って落としてしまったというより、特に気にもせずゴミを放置している様子が伺えました。
私たちから出るゴミは、現代においてそのほとんどが自然に発生しえないものです。自然の中に放置してしまえば、それを壊す原因になるのも当然と言ってもよいものです。
知床の陸と海、自然の営みをつなぐ海岸線が、これ以上ゴミで溢れないように、ゴミが減っていくように、知床を利用する全ての方々に今一度、ゴミに対して正しい認識をもつことが求められていると思います。
ゴミも人が作り出したものですから、人が責任をもって扱う必要があることを、私たちが意識して自然と向き合うことが大切なのではないでしょうか。
2015年10月01日Shiretoko Planarians(シレトコプラナリアンズ)
知床国立公園 羅臼 高橋法人
皆さん、突然ですがプラナリア(ウズムシ)という生き物はご存じでしょうか。
口が頭部ではなく体の中心にあり、腸が体全体に広がっている原始的な動物です。
再生能力があり、その実験を耳にしたことのある方もいるのではないでしょうか。
(ナミウズムシ:日本全土に生息。中流~下流の比較的水温が高いところでもよく見られます。
知床ではほとんど見られません。再生実験で有名?な種)
ところで、知床の川は年間を通して冷たく、また川の長さが短く傾斜が急なため、砂や泥を含んだ状態になる前に海に注いでしまうことから、河口付近であっても他地域の上流の礫河川に近い環境です。
淡水性のプラナリアの多くは、上流の水が冷たく清澄な環境で生息することとされていますが、上記の理由で、知床では海抜が低いところでも見ることができます。
その① ミヤマウズムシ
つぶらな瞳が魅力的なプラナリアです。
その名前の通り、山奥の渓流でしか見ることができないのですが、知床では海抜5m位の河口でも見ることができます。
その② キタカズメウズムシ
矢尻型の頭部が特徴的なプラナリアです。
写真ではわかりにくいのですが、眼点という小さな眼が頭部周辺に100個前後あります。
北海道中部から本州ではカズメウズムシという同じ属のプラナリアが河川上流部に見られます。
その③ キタシロカズメウズムシ or アッケシカズメウズムシ
透き通る白が特徴のプラナリアで、こちらも頭部周辺に眼点が複数あります。
プラナリア特有の石を滑るように移動する動きと相まって、優雅に見えのは私だけでしょうか...。
なお、キタシロカズメウズムシとアッケシカズメウズムシの違いを見分けるのは非常に難しいです。
現在、知床の川にはカラフトマスが遡上しておりにぎわいを見せております。
カラフトマスと一緒にウズムシ観察はいかがでしょうか。
今年も最後の月を迎えました!
早いものですね。
今回は今年1年知床で出会った生きものの中でも、一際奇妙な生きものをご紹介させていただきます。
こちらの写真の生きものをご存知でしょうか。オカモノアライガイと呼ばれる水辺周辺に生息する陸生の巻貝です。知床・羅臼でも水辺周辺の植物を観察していると、よく見かける生きものですが、皆さん、この生きものに寄生する奇妙な生きものを見たことがあるでしょうか。
それがこちら↓(ちょっと閲覧注意)!
ロイコクロリディウム(Leucochloridium:属)と呼ばれる寄生虫です。
どこにいるの?と思われたかもしれません。よくよく触覚を見てください。
奇妙なしましま模様になっていませんか?
拡大すると...↓
写真奥が正常な触覚です。写真手前の触覚にはあきらかに他の生きものが入り込んでいます。これがロイコクロリディウム(属)です。
ロイコクロリディウム(属)は終宿主(寄生虫が成体になったときに寄生している生きもの)を鳥とする寄生虫です。鳥の体内で卵を産み、卵は糞に混ざって外に出ます。卵入りの糞を食べたオカモノアライガイが寄生されてしまうというわけです。オカモノアライガイはロイコクロリディウム(属)にとって中間宿主、終宿主である鳥にたどり着くための中継地点となります。
さて、どうやってロイコクロリディウム(属)はオカモノアライガイから鳥にたどり着くのでしょうか。結論から言えば、オカモノアライガイごと鳥に食べてもらうことで、たどり着きます。オカモノアライガイに食べられたロイコクロリディウム(属)は、体内で成長すると1、2枚目の様に触手に移動し、上下(?)に脈動することで触手をイモムシに似せ、鳥に餌だと思わせます。ただし、オカモノアライガイは日光を好まないので、そのままだと暗い場所に移動してしまい、鳥に見つけてもらえません。そこで、脳に影響を与え、明るいところにオカモノアライガイを移動させます。
こうして、オカモノアライガイごと鳥に食べられ、体内に入ったロイコクロリディウム(属)は成長して新たな卵を産む、というなんとも奇妙な一生を送るわけです。
知床を訪れると、ヒグマやオオワシといった大型の生きものに目が行きがちですが、小さな生きものの世界にも魅力が沢山あります。知床に訪れた際には是非、様々な目線で自然を観察していただけたらと思います。