知床国立公園 羅臼
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2015年06月18日遠い羅臼岳
知床国立公園 羅臼 高橋法人
アクティブレンジャー 高橋です。
7月の上旬に山開きを控えた羅臼岳ですが、まだまだ残雪が多く危険も多いことから
月に数回、主に残雪状況と登山道の確認のため巡視を行っています。
6月16日現在、羅臼岳登山口周辺はスミレやサクラなど春の花々が咲き終わり初夏の訪れを
感じることができますが、ここから歩いて4時間ほどの泊場周辺では
ダケカンバやハンノキが芽吹いているものの、厚さ1m以上の雪に覆われています。
ここは通さないとばかりに急傾斜の雪渓もあり、急な所では50度以上の傾斜がありました。
さらに歩くこと2時間、目の前に羅臼岳は見えるものの残雪が多くなり
距離は近いのですが、なかなか前に進みません。
結局この日は時間切れでリターン。頂上まではもう少し季節を待たないといけないようでした。
帰路はほうほうの体でした。
2015年04月20日アクティブレンジャーはじめました!
知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎
はじめまして!
4月より羅臼自然保護官環境事務所に着任しました、アクティブレンジャーの宮奈 光一郎です。東京からやって参りまして、4月に雪があることだけでも驚いております。これから沢山の初めてに出会えることを楽しみに、精一杯、自然と人を結ぶお手伝いをしていきます。よろしくお願いします!!
4月7日に、アライグマの侵入がないか確認するために設置されたセンサーカメラを、確認しに行きました。アライグマとは、皆さんもご存じのように、北アメリカからペットとして移入された外来生物です。雑食性で気性が荒く、北海道では日本固有のニホンザリガニやエゾサンショウウオ、絶滅危惧種であるシマフクロウといった希少な生物が捕食されたり、エゾタヌキやキタキツネの住処が奪われたり、作物などが食べられるなどの影響がでています。そのため、生態系等に被害を及ぼし、または及ぼすおそれのある外来種である「特定外来生物」に指定されています。知床でアライグマを見かけることがありましたら、下記の連絡先にご報告ください。アライグマの姿かたちもここから確認することができます。
知床アライグマ調査グループ
(北海道大学大学院文学研究科 地域システム科学講座 池田研究室内)
http://www.rausu-town.jp/machi/H260410%E3%80%80%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%9E%E6%83%85%E5%A0%B1.pdf
厚い雪の上を、スノーシューを履いてセンサーカメラの設置場所へ向かい、電池や記憶媒体の交換、設置場所の調整などを行いました。
まだまだ厚い雪が知床には残っています。※写真は熊の湯付近の写真です。
センサーカメラとは名前の通りカメラにセンサーが付属したものであり、生きものなどがセンサーを通ると自動的に写真を撮ってくれる優れものです。夜間の撮影も可能で、普段見ることのできない生物の生態を確かめるためや防犯用など、様々なかたちで用いられています。
センサーカメラは木などに巻き付けて固定します。
全てのセンサーカメラを確認しましたが、今回、アライグマは確認できませんでした。食べ物の少ない冬季では数が減ってきているのでしょうか。減少しているのは望ましいこと(もちろん、生きものが亡くなるのは嬉しいことではありませんが)ですが、これから暖かくなると活動も活発になるので、今後、確認数が増えるのかを注意して見ていきたいと思います。
日本には素晴らしい自然が残っています。その自然をこれからも大切にしていくためにも、アライグマのようなことが起こらないように、責任をもって生きものを飼いましょう。
※注意
アライグマは気性が荒いので近寄るのは危険です。また、狂犬病をもっている、アライグマ回虫(感染症を引き起こす)が寄生している可能性もあるので、見付けても近くに寄らないように、特に食べ物を与えないように注意してください。
(おまけ)センサーカメラに映った生きものたち
キタキツネ
2015年01月09日羅臼の冬、静けさのなかに
知床国立公園 高橋法人
みなさんこんにちは
現在、ここ羅臼町は冬を迎えております。
あたりは雪に覆われ、木々も葉を落とし、凍てつく風が吹きぬけています。
しかし、白と青で彩られた自然は、厳しく肌を突き刺す一方で例えようのない美しさを見せてくれています。
一見すると、雪と風が支配する静かなところに感じられますが...
こちらはエゾシカの雄。夏とはうって変わって、立派な角をつけています。
この2匹の雄は3分ほどこの状態で押し引きをしていました。
オオワシ、オジロワシは天地舞いながら餌の取り合いをしています。
写真の左下に細長く黄色いものがありますが、このシロサケの死体を取り合っています。
左のオジロワシはまだ成鳥ではなく体格も小さいためか、結局オオワシに餌をとられてしまいました。
静かな自然と対照的に、厳しい寒さの中でもたくましく生きる動物の姿をここ羅臼ではみることができます。
2014年10月28日外来種(オオアワダチソウ)を駆除して草木染めをしよう。
知床国立公園 羅臼 上村 文望
去る9月28日、羅臼町農林漁業体験実習館で「秋祭り」が開催されました。
このお祭りは、羅臼町女性団体連絡協議会、羅臼漁業協同組合女性部、羅臼町商工会女性部が立ち上げた「知床スミレ・エコプロジェクト」が開催するものであり、今年度で第6回目の開催となります。
同プロジェクトは、環境問題や地産地消への取り組みをはじめ、環境保全活動を通して町内の女性達を中心とした地域作りをすることを目標としています。
秋祭りは、地産地消として羅臼ならではの豊かな食材を使ったメニューの販売、リサイクルを目的としたフリーマーケット。環境に負担の少ない手作り石けんの作成体験などが催され、多くの町民の方が訪れる大変賑やかなお祭りです。
羅臼自然保護官事務所のアクティブ・レンジャーも、この秋祭りにブースの出展を行いました。
出展の主な内容は、「町内の皆様へ向けた自然情報の発信」、「環境保全活動の普及啓発」など、これらを「多くの方に、楽しみながら知っていただく。」ことを目的として、平成24年度よりブースの出展をしています。
過去には、ヒグマとの付き合い方をテーマにしたパネル展や、特定外来生物に指定されているセイヨウオオマルハナバチの捕獲イベント、羅臼の生き物の塗り絵・お絵かきコーナーなどを出展し、幅広い年齢層の方に来場していただいています。
そして、第3回目の出展となる今年度は、外来種の駆除と駆除した外来種を用いた「外来種で草木染め体験」を行いました。
明治時代にヨーロッパから化学染料が輸入されるまで、日本人は草花や樹木、また果実などを用いて衣類を染めてきました。
駆除後に残った外来種でも草木染めは充分可能であるため、身近な外来種のことを羅臼町の皆様に知っていただきたく、ブースの出展を行いました。
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出展準備として、まず草木染めに使う外来種を採取します。
今回は、羅臼町内に生息する外来種、ムラサキツメクサ、キヌガサギク(アラゲハンゴンソウ)、オオアワダチソウを採取しました。
↓の写真は、北アメリカ原産のオオアワダチソウです。在来種と競争し、駆逐する恐れがあるとされています。
駆除の為、根から引き抜きぬいた後は、草木染めに使用する黄色い頭状花の部分だけを摘み取ります。
採取してきた植物は、秋祭り開催までに時間があるので、腐らないように乾燥させておきます。
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次に、実際に採取してきた植物で布を染めてみます。
布に植物の成分を定着させる、草木染めには欠かせない媒染ですが、今回は環境への影響の負担が少ないミョウバンと、木酢鉄を使用しました。
写真は、オオアワダチソウで染めたものです。
木酢鉄に漬けると、渋~い緑色に。
ミョウバンに漬けると、あざやかな黄色になりました。
まるで、オオアワダチソウの葉と、花の色が、そのまま布に現れたようです。
ムラサキツメクサの花でも染めてみたのですが、花のような鮮やかな紅紫色には染まりませんでした…。
残念ですが、今回の出展では欠番です。
キヌガサギク(アラゲハンゴンソウ)は、採取した量が少なかったためにアカツメクサと同様に欠番です。(採取した量が少ないという事は、生息数が少ないという事ですので、喜ばしい事です。)
あとは、本番の出展に備えるのみです。
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秋祭り当日は、小さな子供と保護者の方、知床スミレ・エコプロジェクトの奥様方、ご年配の方など、多くの方にオオアワダチソウでの草木染めを体験して頂きました。
参加者の皆様からは、
「一体どんな植物で染めているの?」
「オオアワダチソウは一体どんな植物?」
「羅臼のどこに生えているの?」といった質問が多く寄せられました。
今回の出展では、駆除の対象である外来種を用いましたが、参加者の方々に、植物や自然に対する興味を引きつけることができたと実感しました。
外来種は、自ら日本国内へ侵入したのではなく、意図的・非意図的に人間によって運び込まれました。そして、外来種はただ生きているだけで在来種と競争して駆逐する恐れがあります。
普及啓発を行う際は、新たに日本に持ち込まれて駆除の対象となる生物が増えないように、駆除と外来種侵入防除を兼ねての、レクチャーを心がけて、行っていきたいと考えています。
また、小学校に上がる前の子供~低学年の児童などは、「外来種」という言葉の意味が理解できないかもしれません。ましてや、楽しいお祭りの場で、難しい単語がでてくると一気に興味を失ってしまいます。(興味津々で色々な質問をしてくる生き物が大好きな子供も時折います。)
そのような子供たちに対しては、大きくなった時に環境問題をすんなりと理解する下地になると信じ、草木染めを通じて植物に興味をもってもらうことに重きをおきました。
今回の草木染めに限らず、普及啓発活動は結果がすぐにはわかるものではありませんが、とりあえずは皆様の笑顔を見れて、何よりです。
今後も、多くの年齢層の方に対して、環境保全の普及啓発を実施していきたいです。
--※ご注意ください※外来種で草木染めをしたくなった皆様へ。--
○オオハンゴンソウなどの特定外来種生物を生きたまま他の場所に運ぶことは規制されています。詳しくは環境省の外来生物法のホームページをご覧ください。
○特定外来生物に限らず、外来種の安易な運搬は生息域の拡大に繋がる恐れがあります。外来生物を採取する場合は、取り扱いに充分ご注意ください。
○ご近所で、特定外来生物に指定された植物を発見した場合は、最寄りの自然保護官事務所か、地域のビジターセンターなどにご連絡いただきますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2014年08月01日夏の知床連山
知床国立公園 羅臼 高橋法人
登山道の危険なところや支障となっている樹木はないか、またゴミなどが投棄されていないか、設置している携帯トイレ使用ブースやフードロッカーが適正に利用されているかなどをチェック・修正しながら巡視していきます。
トイレットペーパーが発見されることも…環境の保全のためには利用者のマナーが求められます。
大沢~羅臼平、知円別分岐~硫黄山登山口のルートには雪渓が残っているところがいくつかありました。安全に通過するためにはアイゼン・ピッケルが必要なところもあります。また雪渓が崩れやすくなっている、急に崖になっている箇所もありますので十分な確認が必要です。
そうした危険を回避し、硫黄山の照り返しに焼かれつつ下山です。ようやく出口まで到着と思ったら、笹やぶがガサガサ音をたてています。緊張が走りました。「ホイッ!ホイッ!」と大きな声を出してこちらの存在を知らせると、ヒグマがヌッと顔を出しました。そばで別の音がすることからどうやら親子熊のようです。こちらがさらに声を出すと藪の中に逃げていきました。巡視時にはクマスプレーを携帯していますが、それを持っている安心感から余裕をもって対応できたかもしれません…
こちらはカムイワッカ湯の滝を過ぎたところの林道です。前述の熊を回避し、巡視も終わって車に乗り込んだ矢先の出来事でした。親子熊が悠々と道路を闊歩しています…
知床世界遺産センター・羅臼ビジターセンター・ルサフィールドハウスではこうしたヒグマや登山道についての情報発信、またクマスプレー・フードコンテナのレンタル、携帯トイレの販売を行っております。登山道利用の際はこれらの施設も併せて、十分な準備と計画のもとでお願いします。
2014年07月16日知床岬、行ってきました!!
知床国立公園 羅臼 高橋法人
アクティブレンジャー(以下AR)の高橋です。
6月25、26、27日の3日間、知床岬巡視を行って参りました。
巡視の内容は上村ARから説明いたしましたが、ここでは巡視を行って印象に残ったことを皆様にお伝えしたいと思います。
①とにかくキツい
知床岬巡視は、羅臼町の相泊から知床先端部の岬までを徒歩で往復します。相泊は道路の終点でここから先は人工の道がなく、岬までは大きな石がゴロゴロ転がっている石浜を通らなくてはいけません。石は大きさ・形がバラバラで、アップダウンを繰り返しているとじわじわと足裏にダメージが蓄積されます。
また、石浜が終わったかと思うと岩礁地帯が出現します。かろうじて岩礁にへつったり、浅瀬を通れればよいのですが、それができない場合は山側の傾斜地を高巻かなくてはなりません。こうした難所は岬までに4ヶ所あり、ロープが残されているところもあるのでそれを使ってよじ登ることが可能ですが、設置の不安定さ、時間経過を考えると安全性は確かなものではありません。そのため、クライミングロープ等を持参し、設置及び回収を自ら行う必要があります。
高巻きを通過し、喜びの上村AR。 しかしすぐに巨石地帯が…
②ヒグマが多い
巡視中何度も熊の糞が目撃されました。また2日目、3日目の巡視中には離れた距離から熊が確認され、注意しながら通過しました(その他にも、草をかきわける音やうめき声、生臭いにおいなど彼らの存在を感じさせる兆候もいくつか…)。
このようにヒグマが多く生息していますので、クマスプレー・フードコンテナの携帯、見通しの悪いところでの声だしは非常に重要だと感じました。
③貴重な植物がたくさん
ヒオウギアヤメ、ネムロシオガマ、ミヤマオダマキなど野生で見ることが難しい植物がそこかしこで見ることができました。こうした貴重な植生を後世まで残していけるよう、特定外来生物の駆除等の取組を続けたいとより一層思いました。
④大きな感動
今回の巡視では2回、大きな感動を味わうことができました。
1つ目は知床岬に到着したときです。灯台のある岬の台地は草原が広がり、今まで通ってきた石浜から場面が変化します。また灯台に登り海をながめると、羅臼側とウトロ側で海流がはっきりと分かれています。その自然がつくりだす光景がすばらしく、しばらく眺めておりました。
知床岬灯台。ようやく到着です。
もう1つ目は無事相泊に帰着できたときです。岬に到着したのもつかの間、残り1日半をかけて相泊まで石浜と高巻きを越えなくてはなりません。疲れがピークに達しているせいか足の運びもたどたどしく、石に足をとられながらも相泊が近づくにつれ見えてくる家屋や電線がうれしく最後は走って到着しました。
巡視中の3日間は天候に恵まれ、足の裏の痛みを含めて非常に貴重な経験となりました。
※なお、知床先端部地区について環境省はロープや歩道、トイレなどの施設は一切設置しておりません。また動力船を使ってのレクリエーション目的の上陸も規制されており、一般利用者は徒歩で利用するほかはありません。そのため必然的に重い荷物を背負いかつヒグマの高密度生息地に足を踏み入れることになりますので、利用を考えられる場合は前回の上村ARの日記や以下のリンク先を参考に慎重に検討した上でお願いします。
ルサフィールドハウス
http://shiretoko-whc.jp/rfh/
知床半島先端部地区利用の心得「シレココ」
http://www.env.go.jp/park/shiretoko/guide/sirecoco/index.html
2014年07月10日知床岬巡視、出発の前に!
知床国立公園 羅臼 上村 文望
羅臼自然保護官事務所では、羅臼町相泊から知床半島の先端部「知床岬」までの区間を徒歩で巡視してきたので、その様子をお知らせします。
□知床岬巡視とは…
巡視の主な目的は「生態系の保全の確認」と「国立公園内における利用者のマナーが守られているか」確認を行いながら、海岸沿いを東へ進み、知床岬を目指します。
また、知床岬を目指す利用者の安全と情報提供の為に、高巻きや"へつり"などの難所の状況を確認することも巡視の目的です。
ヒグマとの遭遇の可能性が高く、高度な登攀技術が要される為、滅多に行く事のできない場所なんです。
知床岬からの帰りも徒歩で、全行程で2泊3日の巡視となります。
今回の日記では、まず知床岬巡視に向けての準備をご紹介いたします。
まずは、巡視の日程調整からはじめます。
知床岬への途中、「剣岩」と「トッカリ瀬」の地点では満潮時になると岩礁が水没して通過ができなくなります。泳いで渡る事も不可能ではありませんが、波にのまれる危険性があり、また夏でも水温が低いため体力を奪われる恐れがあります。
事前の満潮・干潮時刻のチェックを必ず行い、行きと帰りで干潮時に両地点を通過できるように計画を立てます。
日程が決まったら、荷物の準備を始めます。
一般的な登山装備であるテント、シュラフ、シュラフマットなどに加え、難所を越えるための装備も必要となります。50mザイル、ヘルメット、ハーネス、エイト環などがその装備です。
そして、体力を激しく消耗する巡視でなにより大切な2泊3日分の食料品と行動食と飲料水も必要となります。
知床半島先端部はヒグマの生息地であるため、においのする食べ物はフードコンテナに入れて持ち歩き、保管しなければなりません。一度人の食べ物の味を覚えたヒグマは、人や食べ物に執着するようになると言われています。
自分の安全と、次に知床半島先端部へ訪れる人の安全の為に、多少重くてもフードコンテナを利用しなくてはなりません。クマスプレーも万が一のために携帯しましょう。
なお、岬までの道のりの途中では沢などから水を汲むことができます。エキノコックスに感染する恐れがありますので、浄水器や煮沸による浄化を行える準備も大切です。
これらの道具を次々に60リットルザックへ詰め込みます。クマスプレーは直ぐに使えるようしっかり腰に装着しましょう。
これで、ザックなど装備は概ね20kgとなります。
一通り荷物が準備できたら、防水対策を行います。
岬までの道のりの途中には、必ず"へつり"をして通過しなければならない箇所があります。"へつり"に失敗したら、海へまっさかさまです。
海へまっさかさまに落ちると、怪我をしないまでも衣類やザックはびしょぬれになってしまいますね。
万が一、"へつり"に失敗した時の浸水防止のため、シュラフや着替えや電気機器はすべてビニール袋などで包みます。
最後に行動食、地図、コンパスなど、忘れ物がないかしっかりチェックします。
すべての準備が整ったら…、
知床半島先端部地区利用の心得「シレココ」
http://www.env.go.jp/park/shiretoko/guide/sirecoco/index.html
を事前に確認し、利用の際に必要な心構えや、先端部の実際の状況を把握し、理解しておきましょう。
そして、出発前にルサフィールドハウスhttp://shiretoko-whc.jp/rfh/
に必ず立ち寄り、ルールやマナーを覚え、リアルタイム情報を得ます。
知床岬を目指す方以外にも、先端部の利用や知床沼を目指す方は、是非ご利用前にお立ち寄りください。
準備も情報収集も終了したら、出発に備えて体調を整えておきます。
それでは、知床岬巡視の様子は高橋ARがお伝えします。
●6/25 AM4:00相泊出発
2014年06月18日はじめまして、みなさん、知床、羅臼、動物たち
知床国立公園 羅臼 高橋法人
6月から羅臼自然保護官事務所(以下羅臼RO)にアクティブレンジャーとして着任しました、
高橋 法人(たかはし のりひと)です。
自然が好きで、生物の調査や森林整備にこれまで携わってきました。
ここ羅臼においても、日々楽しく、勉強しながら業務を行って参りますので
どうぞよろしくお願いいたします。
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さて、場面はかわりましてここは羅臼ビジターセンターの駐車場です。
みなさんこれが何かわかるでしょうか?(手を伸ばしているのは私です)
実はこれ、「ネズミイルカ」というイルカの仲間なのだそうです。
う~ん、イルカですね。
このイルカ、混獲されたものでこの後は検体として研究機関へ送られるようです(よく見ると眼の後ろに網にかかった痕跡が確認できますね)。
知床にはこの他に、マッコウクジラやシャチなどクジラ目の仲間や、日本における陸上最大のほ乳類であるヒグマ、オオワシやオジロワシ…etc など本州では見ることが難しい野生生物が多く生息しています。
着任して1週間ほどですが、エゾシカやキツネと道路でたびたび鉢合わせします。
さすが知床!さすが北海道!といったところですが、ここは彼らの世界でもあります。
人間と自然、この両者が共存できる環境について改めて考えさせられました。
あと、みなさんも運転には気をつけてくださいね。
※なお、海岸に打ち上げられたクジラの死骸に複数のヒグマが寄りつくことが過去に確認されています(海生生物に限らずシカの死体にもですが)。屋外でこのような死体を発見した場合は、大変危険なので近寄らず、羅臼ROまでご連絡ください。
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そんな野生動物が多く暮らす知床・羅臼ですが、他所の例にもれず外来生物の拡大が懸念されています。
こちらはアメリカオニアザミ。
見た目のとおり棘があり、鹿も食べないことと生来の繁殖力の強さが相まって、広範囲に勢力圏を拡大しています。
このほか、アライグマ、セイヨウオオハナマルバチなど本来生息していない生物が国立公園内でも確認され、在来種の生存圏を脅かしています。
これらの外来生物の情報があれば、ぜひ羅臼地方環境事務所までお寄せください。
まだまだ分からないことだらけですが、羅臼の自然を守るため一所懸命に取り組んでいきたいと思います。
2014年04月30日春の流氷
知床国立公園 羅臼 上村 文望
日本最東端の近く、知床・羅臼にも春がやってきました。
エゾエンゴサクが地面を彩り、港には黒い顔をした渡りのユリカモメが。毎年変わらずやってくる、穏やかな春です。
しかし!
なんと今年の羅臼の海には、まだ流氷が残っています。
地元の方によると、4月下旬まで流氷が残っているのは、非常に珍しいそうです。
春の陽射しに輝く、季節外れの流氷。
実に美しい景観ではありますが…、
流氷があると漁に出る事ができない為、漁業者にとっては非常に厄介な存在なのです。
おいしい海の幸を私たちに届けてくれる漁師さんの苦労を考えると、
手放しでは喜べない春の流氷なのでした。
○国後展望台から望む日の出。国後と羅臼漁港。
□---------□お知らせ□---------□
羅臼ビジターセンター開館情報
5月から開館時間が9:00~17:00となります。
是非、知床・らうすへお越しください!
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みなさん、こんにちは!
羅臼自然保護官事務所 アクティブレンジャーの宮奈です。
登山シーズン真っ盛りの8月。百名山羅臼岳にも多くの登山者が訪れています。
しかし、ウトロ側の利用者数に比べ、利用者が少ない羅臼側では、登山シーズンとは思えないような静けさが漂っています。
そんな中で巡視をしていると、知床の自然を一人占めしているような気持になります。(巡視は2人以上で実施しています。)
自然に包まれる羅臼側登山道(奥に見えるのが屏風岩)
8月も半ばを迎え、本州では暑さに耐え忍びながら登山をされている方が多い時期と思われますが、羅臼岳ではまだまだ大きな雪渓が行く手を阻んできます。霧がかかると道標のロープ(羅臼山岳会、林野庁、環境省の3者で毎年設置している。)がなければ先行きが全く分からなくなってしまうため注意が必要ですし、雪渓は長く続くためかなりの体力を消耗します。
屏風岩奥に見られる雪渓
そんな難易度の高い雪渓ですが、雪渓を吹き降りてくる風は、暑さで汗が噴き出している体になんとも言えない心地よさを運んできます。夏山のオアシスと言えるでしょう。このオアシスによく下の写真のようなものを見かけます。
そう、ヒグマの糞と足跡です。
ヒグマは汗腺(汗が出るところ)が少なく、体温が38度ほどと高いため、暑さが苦手です。そんなヒグマにとって雪渓はまさに夏のオアシス。出会った登山者さんからのお話では、ヒグマが雪渓の上にのんびりと座り込んでいたこともあったそうです。
このことから雪渓は夏の時期、ヒグマに出会いやすい場所と言えるかもしれません。
実際、8月中旬に行った羅臼岳巡視では、屏風岩前の雪渓の近くでヒグマに遭遇しました。雪渓の左上に見える黒い点がヒグマです。
写真だと伝わりにくいのですが、はっきりとヒグマの動きが読み取れる近さでした。拡大してみると人の背丈を越える岩に匹敵するほどの大きさであることが分かります。
今回、ヒグマがあまりこちらを気にしていなかったために、通り過ぎることができました。非常に緊張した瞬間でした。ヒグマに遭遇した場合、まず慌てないことです。走り出したりしてしまうと、ヒグマを無暗に刺激して危険な状況に陥ります。遭遇すると30分、長い時では1時間以上その場で待たなければいけないこともあります。登山計画はゆとりのあるものを作成し、慌てずに対処できる心のゆとりを確保しましょう。もちろん、ヒグマに出会わないことが1番ですから、登山中は声を出したりすることで、自分の位置をヒグマに伝え、突然の接触を避けるなど、ヒグマ対応を心得た上で、登山に臨んでください。
知床は生き生きとした自然に触れ合うことのできるかけがえのない場所です。だからこそ、危険が隣合わせであることを忘れずに、笑顔で楽しんでいただけるよう、ヒグマをはじめとする知床の自然との付き合い方を知っていただけたらと思います。
ヒグマ対策情報
知床半島先端部地区でのヒグマ対策-環境省
https://www.env.go.jp/park/shiretoko/guide/sirecoco/bear02/
ヒグマ対処法 公益財団法人 知床財団-知床自然センター
www.shiretoko.or.jp/library/bear/