知床国立公園 ウトロ
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2010年06月17日知床五湖におじゃまする方法
知床国立公園 ウトロ 伊藤典子
地上歩道の散策ルールが変わります。以下の様に三つの時期分け、時期によって利用するにあたっての条件があります。
① ヒグマ活動期(5/10~7/31)※「登録引率者」の同行と立ち入り認定手続き(手数料の支払いとレクチャー受講)が必要
② 植生保護期(8/1~10/20)※立ち入り認定手続き(手数料の支払いとレクチャー受講)が必要
③ 自由利用期(10/21~閉園)
今年は従来通りの利用できますが、来年度の新ルールの導入に向けた実験を行います!
ヒグマ出没で閉鎖されていることが多かった2湖から5湖の地上遊歩道は、ヒグマ対処法を身につけた引率者と同伴でのガイドツアーなら入れるようになるのです。今年、6月19日~7月19日の一ヶ月間にモニターツアー(有料)を行います。ちなみに、金額は3,500円から5,000円ほど。事業者によって金額が異なりますので、問い合わせてみてください。所要時間は約2時間45分でゆっくりと見て回ることができます。
実験概要は、以下のようになっています。
・5湖から2湖までの遊歩道は、モニターツアー参加者のみの限定利用です。
・ヒグマ遭遇時の危機回避を行うために、無線等によるバックアップ体制をとっています。
・実験期間中、高架木道および1-2湖遊歩道は一般利用可能です。(1-2湖遊歩道はヒグマ出没時には閉鎖されます)。
※ヒグマの出没等により、ツアーを中止する場合もあります。
ヒグマの活動が盛んな時期に五湖に入りますが、けしてヒグマを見るためのツアーではありません。多くの野生動物の棲む森にヒトもおじゃまさせてもらうという気持ちで五湖を利用して下さい。
モニターツアーの参加申し込みは下記のHPからできます。
知床エコツーリズム推進協議会: http://shiretoko-eco.net/goko-rsv/user/
知識豊富な引率者と共に、静寂の森の中を歩きませんか。
2010年06月16日知床世界自然遺産登録5周年イベントが行われました
知床国立公園 ウトロ 高橋 知里
横浜ランドマークプラザと言えば、多くの買い物客で賑わうショッピングモール。「知床」なんて聞いたことも無いような人々も多く集まります。そんな方にはまず、クイズをふまえた観光案内や知床の新鮮な野菜や海産物で知床を知ってもらおう!と会場の入口近くで観光PRや物産展が開かれました。
知床産のじゃがいもや海産物が大人気!
会場では、知床を管理している各団体の取組を紹介したパネル展が開かれました。
私は環境省のブースの案内役として、環境省の取組や知床の自然の紹介をさせていただきました。一番人気だったのは、ヒグマやアザラシの毛皮など実物の展示。アザラシの皮がスキー板の裏に貼られていたことなどを話すと、みなさん驚いていました。
エゾシカの角、重さはどのくらいかな?
以外だったのは、実物大のオオワシのぬいぐるみを見て「本物ですか?」と聞く人が多かったこと。都会に暮らす人々は野生動物を実際に見る機会がとても少ないのでしょうか?ぜひ知床に来ていただきたいものです。
記念シンポジウムでは、羅臼の海水中写真家関勝則氏の講演や、知床世界自然遺産の5年間の歩みや未来、世界遺産登録を目指す小笠原を含む各遺産地域の専門家によるパネルディスカッションが開かれました。
基調講演「流氷の海からのメッセージ」
知床を全く知らない人から、自然にとても興味がある人まで楽しめる内容が盛りだくさんだった今回のイベント。首都圏の方にも知床で活躍する人たちの熱い思いが伝わったのではないかと思います。
知床世界自然遺産登録5周年記念イベントはまだまだ続き、次回は7月14日に網走、7月17日に知床世界遺産センターで基調講演やパネル討論が開催される予定です。どうぞお越し下さい!
2010年05月26日キタキツネの多様な食性
知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

そっとこちらの様子をうかがうキタキツネ
先日、巡視中にキタキツネに餌をあげる行為を見つけました。そのときはすぐ注意をしたので、餌は食べませんでしたが、キツネは近づく車に次々と近づき、餌をねだっていました。

餌をねだるキタキツネ
先に書いたようにキツネは得やすい餌を求める習性があり、人間に近づいて「おねだり」をすると簡単に餌をもらえることを学んでしまうのかもしれません。
人間から餌を貰うということはキツネ本来の野生の姿を失わせるだけではなく、交通事故を招いたり、直接キツネに触ることでキツネが持つエキノコックスという寄生虫に人が感染する危険性もあります。

羅臼平でくつろぐ(09年8月)
海から山まで様々な環境がある知床。ここで暮らすキタキツネは魚、ネズミ、木の実、鳥、昆虫など他地域よりも多くの種類の食べ物を巧みに食べ分けて暮らしています。
私たちが適度な距離を持って接すれば、キタキツネは人間に近づくことなく生き生きとした野生の姿を見せてくれるでしょう。
2010年05月12日羅臼岳 登山道情報
知床国立公園 ウトロ 高橋 知里
掲示板には知床連山の登山を行うにあたっての注意事項と、登山道やヒグマ情報の最新情報を掲載していきますので、登山の前にはぜひご覧ください。
岩尾別登山口掲示板設置の様子
さて、羅臼岳登山道の状況(5月11日時点)ですが、まず登山口からオホーツク展望間の登山道沿いに冬の間に折れてしまったトドマツの木が数本ありますので、通行の際は十分注意して下さい。また、標高650m付近より上は積雪のため、夏道が出ていません。積雪のある急傾斜では滑落の恐れがありますので、アイゼン(前爪のついた10~12本タイプを推奨)やピッケルの携行をおすすめします。羅臼平~山頂では岩に張り付いていた氷が融け、剥がれ落ちる危険がありますので、上部の確認は十分に行って下さい。
登山道の状況は日々刻々と変わっていきます。ヒグマ対策や携帯トイレの準備など事前準備もしっかりと行い安全に登山を楽しんでください。
登山道沿いの倒木に注意!
※知床での登山の情報は知床世界遺産センター等の施設へお問い合わせください。
※※知床での登山に関する注意事項については中央部地区利用の心得をご覧下さい。
http://dc.shiretoko-whc.com/management/rule.html
雪が残る羅臼岳
2010年05月10日知床岬クリーン事業
知床国立公園 ウトロ 伊藤典子
目的は「知床国立公園内の良好な自然環境の保全を図るため、美化・清掃等のクリーン活動を関係行政機関等と地元ボランティア組織の協働により実施する」というもの。岬まで向かう船(牛若と美咲丸)もボランティアで出していただきました。
ゴミ拾い中の様子
集まったゴミ
当日は、天候がすぐれませんでしたが、無事出港。ただ、さらに天候が崩れるとのことで、作業時間を2時間繰り上げました。しかし、集まったゴミは例年と同程度の量が集まったとのこと、短い時間でみんながんばりました。ゴミは、漁業関係のものが多かったのですが、靴やペットボトル等の日用品も多く目に付きました。
拾ってきたゴミの一部は、知床世界遺産センターで展示する予定です。クリーン事業の様子と知床岬のゴミの実態を分かりやすくお伝えできる展示をつくりたいと考えています。
斜里町の話では、目に見えてゴミは減っているとのこと。地元住民のボランティアでこつこつと続けられてきた事業。これからも続いてほしいものです。
※岬地区はレクリエーション利用の立入を抑制している箇所であり、通常船での上陸はできません。
2010年04月28日高架木道完成! ☆800m☆
知床国立公園 ウトロ 伊藤典子
開通式の後行った探勝会の様子。ガイドさんに説明をしてもらいながら、高架木道を歩きました。
知床五湖は11月まで開園していますが、ここは特別な場所。色々とルールがあります。例年目に付くのは、食べ物を食べながら木道を歩く方。これは野生動物、特にヒグマの誘引を引き起こすので、ご遠慮下さい!また、ペットを連れて歩く方。これもヒグマが出たときに興奮させてしまう可能性があるのでご遠慮していただきたいです。年間50万人が訪れる、人気の観光スポット。皆が気持ちよく過ごせる知床五湖にしていきましょう。
天気が良ければ、「湖畔展望台」(最終展望台)から、湖に映る知床連山が見えます!GWには、知床五湖へいらっしゃいませんか。
2010年04月19日4月29日に新宿御苑みどりフェスタが開催されます
知床国立公園 ウトロ 高橋 知里
4月29日に東京の新宿御苑で「自然とふれあう」をテーマにみどりフェスタが行われますが、その中で日本の各国立公園を紹介する国立公園フェアが開催されます。
知床国立公園からの出展もあり、知床へ行ってみたいけれど、なかなか行く機会がない!知床について知りたい!という方にとっておきのイベントです。
知床の魅力を楽しく知ってもらうために、見るだけではなく実際に手にとって楽しめるようなものをと思い、アザラシの毛皮や鯨の骨、ヒグマ調査のために使われた発信機つきの首輪やヒグマ対策グッズ、知床を紹介するパンフレットやパネルなどを揃えました。展示品は知床博物館や知床自然センターにアイテムを貸していただくなど、地域の自然系施設にも協力をしていただきました。
実物大・重のオオワシとオジロワシのぬいぐるみ。どれくらい大きいかな?
今年は知床世界自然遺産登録5周年にもあたり、国立公園ブース以外にも世界遺産ブースが設けられます。
↓イベントについて詳しい情報はこちらをご覧ください↓
http://www.env.go.jp/press/12311.html
実物大・重のケイマフリ
皆様のお越しをお待ちしてます。
2010年03月30日春を感じる知床の森
知床国立公園 ウトロ 高橋 知里
森の生き物たちは刻々と変わる季節の変化をいち早く感じ取っているようです。

エゾノバッコヤナギの花芽
冬の寒さを耐え忍んできた堅い冬芽の中から銀色の花芽が飛び出していました。日の光を浴びて「どんどんと大きくなりたい!」と言っているようです。

クマゲラ
雪解けが進み、積雪量が少なくなった林の中でトントントンと木を叩く音を立てていました。枯れ木の中の虫を探していたようです。クマゲラにとって春先は繁殖の季節。求愛を示すドゥルルル・・・と木を叩くドラミングの音が聞こえてくることがあります。

エゾモモンガ
ハルニレの木の冬芽を次々と前足を伸ばして食べていました。
本来は夜行性のエゾモモンガですが、繁殖期は昼間でも行動します。
しばらく木の芽を食べた後、前足と後ろ足の間にある皮膜を広げて、ぴゅーんと飛んで行きました。
まだまだ寒い日も続きますが、知床にも春は確実に近づいてきています。
植物や鳥、動物たちの変化を捜すのも楽しい季節の変わり目。
その様子をこれからも伝えていきたいです。皆さんも知床で春を探してみませんか?
2010年02月25日真冬の知床五湖
知床国立公園 ウトロ 高橋 知里
知床五湖方面の道路は冬期間通行止めで一般の方は立入禁止となっていますが、ガイド付き限定で冬の知床五湖散策ツアーが実施されています。夏は車で行ける道も歩くスキーやスノーシューを履いての移動になるため、一日がかり。巡視中遭遇したガイドツアーの方は一生懸命歩きながらも、笑顔で楽しまれている様子でした。
冬の知床五湖は5つの湖すべてが凍結し、一面雪で真っ白。夏とは違う知床五湖を味わうことができます(ガイドツアーについて詳しい情報は知床斜里町観光協会のホームページをご覧下さい。)。
凍結した知床五湖(3湖)
そして、冬の知床五湖でご紹介したいのは、高架式木道の工事の様子です。延長路の工事は着々と進み、1湖の湖岸にできる最終展望台の工事が行われていました。延長された木道からは今までよりも海が間近に広がり、見応えのある景色が楽しめました。
4月には延長した高架木道がオープン予定です。どうぞお楽しみに!
工事の様子 エゾシカがいるところは凍った1湖です。
知床にはその名もシレトコスミレという名のスミレが生育しています。どんな植物か簡単に説明すると、択捉島と知床に生育しており、知床の中でも数カ所でしか見ることのできない希少な種。中央部だけ黄色の残る白花は、日本のスミレ属の中で他に例を見ないらしい・・・。6月中旬から7月中旬頃開花。ハイマツ帯の砂礫に生育しています。
そんなシレトコスミレの調査を7月の始めに、行いました。というのも、2008年に何者かが、スミレを食べてしまったのを確認したためです。何者か・・・。真っ先に浮かんだのは、どんなところでもよく見る、エゾシカ。
本来ならば、スミレには毒があるもの。まわりにはシカが好んで食べそうな、セリ科やイネ科が生えているのに。なぜかそちらには口をつけず、スミレを食べているようです。しかし、食べ方からみて、一頭がちょっとつまんでみただけというような模様。大挙して高山帯に押し寄せ、モリモリとスミレを食べることはなさそうです。変な嗜好があるシカがたまにいるのですね。
シカは、上唇で引き千切るように草を食べます。食べた跡は繊維が残っているのが確認できるので、特定できるのです。しかし、怪しい陰(跡?)が・・・。スパッと切れた様な切り口のシレトコスミレ。そして傍にはウサギ糞が。犯人は・・・誰?
犯人を突きとめる必要もありますが、この調査の目的は、食べられてしまったシレトコスミレのその後を追うことです。枯れて無くなってしまうのか、それとも数ヶ月後には回復出来るのか定期的に観察を続けます。現段階では、早急な対処は必要ないと思いますが、急激に個体数を減らし始めた時に、素早い対処が出来るよう、データをとりながら見守っていく必要があります。
調査地の様子。風がよく通り、石がガラガラしている。
食べられてしまったスミレ。これからどのように変化していくのだろう。
過酷な環境で可憐に咲くシレトコスミレ