アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
The World Wetlands Day 2013.Feb.2
2013年02月09日
支笏湖
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2月2日は、ラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(The world wetlands day)」に定められています。そのため世界各地では、2月2日の前後に湿地にちなんだ様々なイベントが開催されています。
そこで、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・サロベツ原野など、日本の代表的な湿地を含む国立公園等を所管する北海道地方環境事務所では、平成24年9月24日に北海道の新たなラムサール条約登録湿地に函館の大沼が登録されたことを記念して、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・利尻礼文サロベツのアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行うことにしました。
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さてAR日記支笏湖編2回目は、支笏湖の自然、
特に普段あまり見ることのない水生植物、つまり水のなかで生きる『水草』の様子を少しご紹介します。
8月 山線鉄橋より 水草が繁茂する千歳川
―支笏湖の水のなかで生きる草たち
カルデラ湖であり、水深が急に深くなる支笏湖。深いところには生育できない種類の水草が多い支笏湖では、水草が繁茂するエリア(水深)は限られています。水草が生い茂った場所は、貝や小さな魚のすみかになります。また冬に飛来するキンクロハジロはその貝などを食べ、水草自体も水鳥の餌にもなります。水草は支笏湖の生きものにとって、お布団になったり、ご飯になったりする、大切な支笏湖の住人なのですね。
今年度行われた水草の調査では、12種の水草が確認されました。その一例がこちら。展示のために作成された、支笏湖の水草の標本です。
【上段】左から リュウノヒゲモ、ホザキノフサモ、エビモ、ヒロハノエビモ
【下段】左から チトセバイカモ、センニンモ、マツバイ、シャジクモの一種
こんなにたくさんの種類の水草が、支笏湖でそっと生活しています。このなかでも、チトセバイカモ Ranunculus yesoensis は北海道固有種であり、7月~8月には水面で白い小さな花(写真の黒い四角の中に花が!)を咲かせる、かわいい水草です。しかしチトセバイカモは生育する数が非常に少なく、環境省レッドリストにおいて絶滅危惧ⅠB類に指定されている種でもあり、その生育環境を守っていくことがとても大切です。
そんなチトセバイカモを筆頭に様々な稀少な水草が生育している支笏湖も色々な問題を抱えています。
―支笏湖の抱える問題(水中編)
○外来生物
その場所にはもともといなかったけれども人間の手によって移植された生物を『外来生物』と呼びます。外来生物の中には、全国的に問題となっている魚、ブラウントラウト、ニジマス(ともにサケ科)、そして甲殻類ではウチダザリガニなどが挙げられ、支笏湖でも広く生息しています。かれらは他の魚を食べたり、生活する場所を取り合って競争し攻撃したりすることから、もともとそこに住んでいた種(在来種)は追いやられます。またウチダザリガニが増殖すれば、貴重な水草の群落は食べ尽くされてしまいます。このように、外来生物が増えるとこれまで維持されてきた生態系はバランスを崩してしまいます。支笏湖では外来生物の駆除作業が継続的に行われています。
○動力船規制
支笏湖では、2005年から水上バイクやプレジャーボートの乗り入れが禁止となりました。これらの動力船の使用による水質の悪化・水草の生育環境の悪化・騒音問題などを受け、住民や地元市の協力のもと環境省が自然公園法による規制を行ったもので、現在では静かな湖、また野生生物にとって暮らしやすい環境が維持されています。
11月末 支笏湖温泉街より 恵庭岳
―さいごに
と、長々と主に水中で起きている問題について今回はご紹介しましたが、この他にも様々な取り組みを、支笏湖の自然を守っていくために地元の方や関係機関の皆さんと協力しながら行っています。
この大きな湿地を取り巻く『都市近郊でありながら現存する原始的な自然』を守りながら、活用しながら、将来ずーっと引き継いでいけるといいですね。
○参考文献:
『支笏湖の人と自然』支笏湖の人と自然 編集委員会(2007)
『千歳川』千歳の自然保護協会(1993)
○湿地の日AR日記リレー企画 これまでの記事
1) 平成25年1月25日 山上AR(利尻礼文サロベツ国立公園・稚内)(リンク)
2) 平成25年1月30日 大塚AR(支笏洞爺国立公園・洞爺湖)(リンク)
3-1) 平成25年2月7日 福家(支笏洞爺国立公園・支笏湖)(リンク)
湿地の日AR日記リレー企画、次回は利尻礼文サロベツ国立公園・稚内
の中野さん、よろしくお願いします!
2月2日は、ラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(The world wetlands day)」に定められています。そのため世界各地では、2月2日の前後に湿地にちなんだ様々なイベントが開催されています。
そこで、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・サロベツ原野など、日本の代表的な湿地を含む国立公園等を所管する北海道地方環境事務所では、平成24年9月24日に北海道の新たなラムサール条約登録湿地に函館の大沼が登録されたことを記念して、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・利尻礼文サロベツのアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行うことにしました。
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さてAR日記支笏湖編2回目は、支笏湖の自然、
特に普段あまり見ることのない水生植物、つまり水のなかで生きる『水草』の様子を少しご紹介します。
8月 山線鉄橋より 水草が繁茂する千歳川
―支笏湖の水のなかで生きる草たち
カルデラ湖であり、水深が急に深くなる支笏湖。深いところには生育できない種類の水草が多い支笏湖では、水草が繁茂するエリア(水深)は限られています。水草が生い茂った場所は、貝や小さな魚のすみかになります。また冬に飛来するキンクロハジロはその貝などを食べ、水草自体も水鳥の餌にもなります。水草は支笏湖の生きものにとって、お布団になったり、ご飯になったりする、大切な支笏湖の住人なのですね。
今年度行われた水草の調査では、12種の水草が確認されました。その一例がこちら。展示のために作成された、支笏湖の水草の標本です。
【上段】左から リュウノヒゲモ、ホザキノフサモ、エビモ、ヒロハノエビモ
【下段】左から チトセバイカモ、センニンモ、マツバイ、シャジクモの一種
こんなにたくさんの種類の水草が、支笏湖でそっと生活しています。このなかでも、チトセバイカモ Ranunculus yesoensis は北海道固有種であり、7月~8月には水面で白い小さな花(写真の黒い四角の中に花が!)を咲かせる、かわいい水草です。しかしチトセバイカモは生育する数が非常に少なく、環境省レッドリストにおいて絶滅危惧ⅠB類に指定されている種でもあり、その生育環境を守っていくことがとても大切です。
そんなチトセバイカモを筆頭に様々な稀少な水草が生育している支笏湖も色々な問題を抱えています。
―支笏湖の抱える問題(水中編)
○外来生物
その場所にはもともといなかったけれども人間の手によって移植された生物を『外来生物』と呼びます。外来生物の中には、全国的に問題となっている魚、ブラウントラウト、ニジマス(ともにサケ科)、そして甲殻類ではウチダザリガニなどが挙げられ、支笏湖でも広く生息しています。かれらは他の魚を食べたり、生活する場所を取り合って競争し攻撃したりすることから、もともとそこに住んでいた種(在来種)は追いやられます。またウチダザリガニが増殖すれば、貴重な水草の群落は食べ尽くされてしまいます。このように、外来生物が増えるとこれまで維持されてきた生態系はバランスを崩してしまいます。支笏湖では外来生物の駆除作業が継続的に行われています。
○動力船規制
支笏湖では、2005年から水上バイクやプレジャーボートの乗り入れが禁止となりました。これらの動力船の使用による水質の悪化・水草の生育環境の悪化・騒音問題などを受け、住民や地元市の協力のもと環境省が自然公園法による規制を行ったもので、現在では静かな湖、また野生生物にとって暮らしやすい環境が維持されています。
11月末 支笏湖温泉街より 恵庭岳
―さいごに
と、長々と主に水中で起きている問題について今回はご紹介しましたが、この他にも様々な取り組みを、支笏湖の自然を守っていくために地元の方や関係機関の皆さんと協力しながら行っています。
この大きな湿地を取り巻く『都市近郊でありながら現存する原始的な自然』を守りながら、活用しながら、将来ずーっと引き継いでいけるといいですね。
○参考文献:
『支笏湖の人と自然』支笏湖の人と自然 編集委員会(2007)
『千歳川』千歳の自然保護協会(1993)
○湿地の日AR日記リレー企画 これまでの記事
1) 平成25年1月25日 山上AR(利尻礼文サロベツ国立公園・稚内)(リンク)
2) 平成25年1月30日 大塚AR(支笏洞爺国立公園・洞爺湖)(リンク)
3-1) 平成25年2月7日 福家(支笏洞爺国立公園・支笏湖)(リンク)
湿地の日AR日記リレー企画、次回は利尻礼文サロベツ国立公園・稚内
の中野さん、よろしくお願いします!