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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園 羅臼

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2011年09月06日第1回 のぞいてみよう!羅臼のみなと

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

この時期の羅臼には珍しいくらい、
照りつけるような日差しと、雲一つない青空。
8月も最後の週末、
羅臼の漁港で、子ども達がゴミ拾いを行いました。

今年度、知床国立公園で行われる環境省事業の中で、
「地域住民による地域住民を対象とした講座」という企画があります。
これは、保全活動や調査を実際に体験したり、自然とのふれあい活動を、
その地域に暮らし活動を行っている人が講師になって、
その地域に住む人にむけて行う、というものです。

知床国立公園ウトロ側で2回、羅臼側で4回行われるこの講座、
今回は羅臼側で行われた第1回目を報告します。

第1回目となった講座は
「のぞいてみよう!羅臼のみなと」と題して、
羅臼の海の魚と環境のお話し、海底観察とゴミ拾いを行いました。
講師は、日々船に乗り漁師として働く葛西良浩氏。
多様性に富んだ羅臼の海を職場とし、漁協青年部部長を努められた際には、
世界遺産地域の海と陸の生態系保全活動を呼びかけ、
青年部で海岸線ゴミ拾いを行いました。

講座の対象は、次世代の羅臼を担う子ども達。
小さなお子様には保護者の方もご参加いただき、19名の方々が集まりました。


まずはじめは、ビジターセンターの室内でスライドと葛西氏によるお話し。
「めじか・ときしらず・サケ・シャケ・あきあじ・けいじ、
 これみーんな“シロザケ”のことなんだよ。」
「サケって、赤身魚だと思う?白身魚だと思う?
 実は白身魚なんだよ。
 オキアミなどの甲殻類を食べているから赤い身をしているんだ。」
「サケは何年もかけて遠い海で成長して、再び生まれた川に帰ってくる。
 それをクマやキツネ、ワシなどが食べて森で糞をする、
 その糞や死んだサケの体を栄養に木が育つ、
 その落ち葉を栄養に川虫が育つ、
 それをサケの稚魚が食べて大きくなり海に降りていく。
 サケは、森と川とそこに棲む生きもの達をつなげているんだよ。
 みーんなつながって命はめぐっているんだよ。」
「じゃあ、人間は何の役割があるのかな。
 人間も自然からの恵みをもらって生活しているよね。
 それなのに人間はその自然を壊そうともしている。
 これじゃダメだよね。」
「自分たちが恵みをもらう海は自分たちで守ろうって、
 漁師みんなで海岸線のゴミ拾いをしているんだ。」
「ゴミ拾いも大事だけど、捨てないことがもっと大切なんだよ。」

分かりやすく丁寧に説明する葛西さんのお話しに、子ども達は
熱心に聞き入っていました。


さぁ、では実際に見てみましょう。
海はどうなっているのでしょうか。

羅臼漁港に移動した子ども達は、まずライフジャケットを装着。
快く協力していただいた羅臼漁協さんが出してくれた小型船に乗り、
箱メガネを使って漁港の底をのぞきます。
残念ながら前日の時化で濁ってしまっていて、
あまり海底の観察はできませんでしたが、タモ網を使って、
岩壁の隅に溜まったゴミや、漁港内に浮いているゴミを回収。

斜路(船を陸に上げる場所)や漁港周辺にもゴミはたくさん落ちていました。
普段生活していて、道ばたに落ちているゴミってあまり目につかないのかも。
でも、こうして見ると、実はけっこう落ちていることが分かります。
炎天下の中、みんなで拾ったゴミ。その量は全部で約30㎏にもなりました。


「漁港にこんなにゴミが落ちていると思わなかった」
「空き缶やたばこ、ビニール袋などが多かった」
「拾っても拾っても、拾いきれないくらいある」
など、子ども達は実際にゴミ拾いをしてみて、
私たち人間が出してしまったゴミが、とても多いことが分かったようです。

「またゴミ拾いをしたい」
「これからもゴミは捨てないようにしたい」
など、素直な子ども達の言葉を聞くと、
私たち大人の身の振りを恥ずかしく思うと同時に、
こうした活動に参加して自分達の目で見たことを心に留め、
生まれた羅臼の自然を大切にしていける大人に育って欲しい、と心から願い、
素晴らしい羅臼の自然を守り伝えることは、
子ども達の未来につながっているんだ、と改めて感じた講座でした。

(写真:知床財団提供)

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2011年07月26日知床岬でゴミ拾い

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

羅臼町で開催される、ふるさと体験教室(知床Kids)に運営スタッフとして参加しました。

知床Kidsは「らうすの自然を楽しみながら学習し、郷土・文化を愛する心を育てる」ことを目的に、年間10回ほど催される小学校高学年を対象としたイベントです。
運営には主体となる公民館を始め、環境省や知床財団などが交代で講師役を担当してきました。
今回は集まった子供14人と、スタッフとして参加した大人と供に、知床岬で海岸漂着ゴミを拾いをしました。

知床岬には道路などの施設もなく、世界遺産の中でも核心となる地域となっていますが、
毎年沢山の漂着ゴミが流れ着くことから、石浜には様々なゴミが・・。

始めに知床財団の職員からヒグマ対策の青空学習を受けて、いざ出発!


足場は大きな石がゴロゴロ。
羅臼の子供達は小さい頃から昆布干しの手伝いをしているせいか、石浜の海岸には慣れっこの子供が多かったです。運動不足の大人よりはよっぽど達者!?


ゴミ拾いの様子。海外から漂着したゴミから、漁業関係のゴミまで中身はさまざま。
普段あまり見ないゴミに子供達も興味津々!ハングル文字やロシア文字の書かれたゴミもありました。




回収したゴミの一部と知床岬の台地で記念撮影。
今回の清掃活動で163kgものゴミを回収することが出来ました。天気も良く、子供達も頑張ってゴミを拾ってくれました。
しかも、ラッキーなことに帰りの船ではマッコウクジラを3回も見ることができました。

知床という素晴らしいフィールドの元、このような活動に触れる機会がある羅臼の子供達を本当に羨ましく思います。しかし、将来にわたって知床の自然を守るのも子供達の役目。
こうしたイベントを通して、知床の自然を知り、地元の自然を大切にする気持ちを育んで欲しいと思います。


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知床岬は関係行政機関の申し合わせにより、一般観光客などのレクリエーション目的の上陸を認めていません。そのため、知床岬へは相泊から徒歩(シーカヤックも可)で到達する必要があります。なお、観光船に乗って海上から眺めることは可能です。
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2011年06月15日「知床半島先端部地区利用の心得」が分かり易くなりました!!

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

原始性の高い自然景観と、海と山の多様な生態系に特徴付けられる知床半島。
その中でも半島の先端付近は、ありのままの自然が残された素晴らしいフィールドが今なお残されており、登山や海岸トレッキング、サーモンフィッシング、シーカヤックなど、様々なアウトドアスポーツを楽しむことが出来ます。
ただし、自然が残されているが故に、厳しい自然に自らの力で立ち向かわなければ行けないのも事実。

そこで、半島先端部地区に向かう人向けに、自然保護やリスクマネジメントの観点でから、2008年に利用の際のルールブックが作成されました。
それが、タイトルにある「知床半島先端部地区利用の心得」です。

ただ、この“心得”は細かくに作り込まれているものの、文字数が多く分かりにくいとの意見もありました。先端部に行く方全体にルール(自然保護の視点から見ると常識的な内容)を周知するためにも、分かり易い“心得”をWEBページで手軽に確認できるようにしました。

そして出来上がったのが・・・

名付けて「シレココ」です。


ちょっと不思議な響きですが、知床の“シレ”、心得の“ココ”
から名付けたページです。

目的別にページが分かれているので、分かり易いのは勿論のこと
ポップでお洒落なイラストも一見の価値有りです。




ヒグマ対策、あなたは万全ですか??


初めて先端部に行く人だけでなく、これまで何度も行っているエキスパートな方にも是非見て頂きたい内容に仕上がっています。是非ご覧になってください。

「シレココ」はこちら↓↓
http://www.env.go.jp/park/shiretoko/guide/sirecoco/index.html

「知床半島先端部地区利用の心得」の原文はこちら(詳しく知りたい方向け)↓
http://dc.shiretoko-whc.com/data/management/rules/sentan_rules_2010.pdf

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2011年06月13日春紅葉

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

木々の芽吹きが美しい季節になりました。
今年の春は遅く、山間部に生えるチシマザクラは今でもお花見が楽しめそうです。

さて、タイトルを「春紅葉」と書きましたが「はるもみじ」と読みます。
カエデの仲間で、若葉の間だけに見ることが出来る現象です。
秋の紅葉と違って春は葉が開き、花が咲く時期に見られるため、木々の芽吹きの勢いを肌で感じることが出来ます。色は少し地味ですが、この時期ならではの楽しみと言えますね。


熊越の滝歩道のイタヤカエデ。
ダケカンバなどの樹木は青々とした葉を付けていますが、この木の葉は赤茶色をしているのがわかりますか?


雪融け水により、いつもより水量が多い熊越の滝
新緑の緑の他にも、赤や黄色が混ざっているのが確認できると思います。写真だと綺麗さが伝わりにくいですが、実際晴れた日に見みると秋の紅葉にも負けない魅力がありますよ。

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2011年06月02日可愛いコにさせること

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

可愛いコにさせること、それは「旅」。
可愛い子には旅をさせよ、とは
子どもが可愛いと思うなら、手元において甘やかすのではなく、
世間の厳しさを教えた方がしっかりとした子どもに育つ、
ということわざですが

現在、羅臼の河川には可愛いコがたくさんいます。
そして、今まさに大きな「旅」に出ようとしています。

可愛いコたちとは、シロザケの稚魚。
そしてその「旅」とは、海での3~6年の回遊。



冬、卵からふ化した稚魚は、5~6㎝くらいになるまで川で過ごし、
春、海へと降りていきます。
小さな体で大海原に飛び出していく稚魚たち。
旅に危険はつきもの、とは言え
新しい環境で出会う全てが、稚魚たちを危険にさらすものとなるでしょう。


第一関門?河口では海鳥が待ちかまえています。

数々の危険をかいくぐって大きく成長したシロザケが、
自分の生まれた川に帰ってくるとき、
そのたくましい彼らの子孫が、卵として産み落とされます。



今、何万匹、何十万匹の稚魚たちが旅立とうとしています。
そのうち無事に帰ってこられるのは、果たして何匹でしょうか。


「可愛い子には旅をさせよ」というよりは、
どちらかというと「獅子の子落とし」だったかなー。
ともかく
無事、帰っておいでね~。

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2011年05月19日合い言葉は「ホイホイ」!?

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

今年も利用者カウンターを設置しました。
海岸線はまだ地面が見えたままですが、あと半月もすれば花が咲き乱れる美しい場所に変化します。


新任の三宅レンジャーとカウンター一式(15kgくらい?)を持って海岸線を進む。



景色はまだ地味なままですが、ヒグマは活発に動き回っています。
海岸の石浜には、数日前の物と思われるクマの落とし物がありました。

いよいよグリーンシーズンに突入します。
知床の山に入る人は、くれぐれもヒグマに人間の存在を伝えるための挨拶をお忘れなく。
“ホイホイ”が合い言葉です。(*クマ鈴でもOK!)

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2011年05月06日羅臼湖の様子

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

 羅臼湖はウトロと羅臼をつなぐ国道334号線(知床横断道路)の、やや羅臼側に位置しています。町中の雪は融けてしまいましたが、知床横断道路で最も標高が高い知床峠付近には雪が沢山残っているため、シーズンの締めくくりとして羅臼湖や羅臼岳を目指すスキーヤーが多く訪れます。
 今年のオホーツク沿岸の積雪はかなり少なめで、例年よりも2週間くらいは雪融けが早い印象を受けますが、もうしばらくは遊べそうです。


羅臼湖と知西別岳。雪融けが早い羅臼湖のデッキはもう出ています(4/30)。

 5月に入ったとは言え、山は冬と何ら変わらない状況ですので、普段から山登りしている人以外にはお勧めは出来ませんが、今の短い期間にしか見られない景色は絶景ですよ!


歩道入り口から羅臼湖にいたる道(まだ雪の下)には5つの沼があります。
この沼は羅臼湖の一番近くにある5の沼。
水面は既に融けていました。雪景色は空の青さが一層栄えますね!(4/30撮影)





 
と・・上の写真のように、いつも晴れていれば最高なのですが、やはりそうもいきません。
天気が崩れてくるとすぐに霧が出て、突風が吹き、雪が降ることも・・・。


羅臼湖は平坦な場所が多いので、土地勘のない人が迷子になると遭難になりかねません
(上の写真はマシな方です(5/2撮影))し、ホワイトアウトになってしまえばさらに危険な状態に・・。

 厳しくも美しい春の羅臼湖。とってもオススメな場所ではありますが、行く人を選ぶのも事実。どうしても行きたい人は登山ガイドを付けた方が良いかもしれません。勿論山に慣れた人も油断は禁物!万全の対策でリスクを最小限に留めるよう心懸けましょう!

*=============*
今年の知床横断道路は、開通後も降雪や路面凍結により、度々通行止めになっています。
知床に遊びに来る人や横断道路を通過する方は、事前にビジターセンターや、道路を管理している北海道開発局のHPなどから情報を得ておきましょう。
http://info-road.hdb.hkd.mlit.go.jp/index.htm(北海道開発局の道路情報)
せっかく来たのに、閉鎖じゃ残念ですからね。
皆さまのお越しを心よりお待ちしております。
*=============*

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2011年04月21日その男、空腹につき

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

おてんとさんの光があったかいなー。
川の音にいきおいがでてきたぞ。山の雪が融けてるな。
ミソサザイも鳴いてるし、フキノトウも顔出してる。
ようやく春が来たか。
腹も減ったし、そろそろ起きるか。

どーも、おはようさん。


いや~、
それにしても腹へったなぁ。
冬の間何も食べてないからなー。

ミズバショウは、ちと早いか。
浜に魚介や海獣の死体が打ち上がってるかもしれない。
冬を越せなかったエゾシカもごちそうなんだが…。

あぁ、腹へったぁ~。



*******************
海岸を巡視中、冬眠明けのヒグマ♂に出会いました。
4ヶ月以上にもおよぶ冬眠を経たヒグマは、さぞ空腹でしょう。
漁具のようなものをひっくり返したり、波打ち際をクンクンしながら
歩いていました。

これからの時期、山では山菜採りのシーズンをむかえます。
雪解けの早い沢筋や日当たりのよい斜面など、
私たち人間にとっても良さそうな山菜採りポイントは、
春、お腹をすかせたヒグマの重要な餌場になることを、
絶対に忘れてはいけません!
出会わないようにすることが一番ですが、
出会ってしまったときはどうすればいいのか、とってはいけない行動は
何かなど、よく確認しておきましょう。

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2011年02月16日造形美

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

ローマの哲学者セネカは「すべての芸術は自然の模倣である」と言った。
自然が創り出すもの、そしてその美しさに、人は感動を覚える。
ひとつとして同じものはなく、また、一切の無駄がない。

そこに生きる動物も、自然を生き抜くため、必要なもの以外は持たない。
足跡でさえ、無駄がない。
そして、それはとても美しく、ぴったりと自然に融合する。

…そんな思いを馳せながら歩いていたとき、
ふと、来た道を振り返り、がっかりした。

なんとまぁ、汚いことか。
自然と動物の織り成す芸術作品を、土足で踏み荒らしてしまった感覚に
陥った。

前足跡と後足跡が重なるキツネは、静かに一筋のラインを描く。
スノーシューを装着した私の足跡は、金具がたてる「ガチャガチャ」という音までも聞こえてきそうだ。
あ~ぁ。

がっかりと落とした目線の先に映ったもの。

あれ?これって…。だれかに似てない?!

芸術作品につけた傷跡が、垂れ目と厚い唇のかわいい顔に見えて、
なんだかちょっとだけ救われた気になった。

まぁ、これはこれである意味「芸術作品」・・・かな。

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2011年02月10日クリオネ展示はじめました!

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

流氷の海・・といえば、アザラシやオオワシなど、大きな生き物がすぐに思い浮かびますが、海の中にいる小さなクリオネもかなりの人気者です。特にバッカルコーン(触手)を出す捕食シーンは、天使のような姿からは想像がつきにくいらしく、そのギャップも魅力の一つとなっているようです。

実はそのクリオネ、羅臼ビジターセンターでも見られるようになりました。観光で来た方を始め、地元の方にも気軽に足を運んでいただけると嬉しいです。




ビジターセンターのカウンターに展示しました。クリオネを飼育する時は、水温を5℃くらいまで下げる必要があるため、窓付きの冷蔵庫を使っています。



クリオネ
(和名はハダカカメガイ。学名がクリオネ・リマキナ←こっちの方がカッコイイ!?)

ちなみに、体の2ヶ所に赤い部分が見えますが、上がバッカルコーンで、エサとなるミジンウキマイマイを食べるときには、触手を6本出すそうです。
下の赤い部分は内蔵です。

寿命は2~3年で、北極海などから流氷とともにやってくるそうですが、夏頃でも普通に見られるとの話もあり、詳しいことはよく分かりません。
ただ、今の時期は波打ち際の流氷の下などに沢山いて、バケツですくうだけでも簡単に観察できるそうです。

今回の展示には羅臼在住のNさんからクリオネを戴くなど、色々とお手伝いしていただきました。本当にありがとうございました!

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