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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園 羅臼

188件の記事があります。

2012年02月23日ワシウォッチングのススメ ~上級編~

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

オオワシとオジロワシの見分け方をとおして、バーチャルワシ観察をお届けしています。
初級では「留まり姿」と「飛翔姿」、中級では「顔」と「足」のそれぞれを見分けました。もうすっかりオオワシとオジロワシの区別がつくようになったのではないでしょうか。

けれど…さまざまな動物がそうであるように、
鳥も、成長とともにその姿に変化が見られます。
そこで上級編では、成鳥とは違う幼鳥や亜成鳥の特徴から、オオワシとオジロワシを見分けてみましょう。

今回は一度に見てみます。
ポイントは「羽の色」と「くちばしの色」です。

白と黒のはっきりとした配色だったオオワシですが、若い個体はまだら色をしています。成鳥は真っ白だった尾羽の淵にも、黒い色がありますね。
また、見えづらいですが、くちばしの先端に黒い色が見えます。
オジロワシも、全体的にまだら色をしていますし、真っ白だった尾羽の淵が黒く、くちばしの先端が黒いですね。

違う角度から見てみましょう。


オオワシもオジロワシも、6年から8年かけて成鳥になります。
少しずつ羽が生え変わり、羽やくちばしの色は成長とともに変化していきます。それらを見ることで今何歳なのか、が分かるのです。

それでは、上級編でもワシをカウントしてみましょう。
今回は上級編なので、オオワシとオジロワシだけではなく、成鳥と若鳥にも分けてカウントしてみましょう。



正解は…
オオワシ成鳥9羽、オオワシ若鳥2羽、
オジロワシ成鳥4羽、オジロワシ若鳥4羽
でした。
見えづらく、ちょっと難しかったかもしれません。


いかがでしたか?
3回にわたってお届けしたバーチャルワシウォッチング。
一度もオオワシを見たことがないという方も、もう今ではオジロワシとの区別も、成鳥と若鳥の違いも分かるワシウォッチャーですね。

とはいえ、やはりバーチャルです。
ワシたちの、悠々と空いっぱい旋回する姿も、ごつい足で蹴りあいながら争って魚を食べる姿も、キンと冷えた空気にこだまする鳴きあいも…、
すべては本物を生で見ていただきたい。
ちょうど今、知床半島には数多くのオオワシ・オジロワシが飛来し、上の写真のように、ワシのなる木が住宅のすぐ裏で見ることができます。
ぜひ、この機会に本当のワシウォッチャーに。
私からの、ワシウォッチングのススメ、でした。

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2012年02月21日ワシウォッチングのススメ ~中級編~

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

オオワシとオジロワシの見分け方をとおして、バーチャルワシ観察をお届けしています。
前回の初級編では、オオワシとオジロワシの「留まり姿」と「飛翔姿」の違いを比べてみました。
今回の中級編では、もう少しワシたちに近づいて見てみましょう。


まずは「顔」から。

オオワシは、鮮やかな黄色をした大きなくちばしが目立ちます。
成鳥になると額が白くなります。
オジロワシは、オオワシに比べると薄い黄色の少々小ぶりなくちばしです。
年を重ねるに従い、頭部全体が白っぽくなっていきます。

どちらもかっこいい顔ですね。好みのタイプはどっち??

続いては、「足」を見てみましょう。

オオワシの羽が生えている足の部分(※)は白い羽で覆われ、足指はくちばし同様鮮やかな黄色をしています。
オジロワシの足の羽は体と同じ茶褐色で、足指はやはりくちばしのように薄い黄色ですね。
※専門用語で「跗蹠(ふしょ)」。私は「もんぺ」と呼んでいます。


では、中級編でもワシカウントをしてみましょう。
下の写真の中に、それぞれ何羽ずついるでしょうか。



正解は…
オオワシ9羽、オジロワシ3羽でした。
ちなみに、カラス9羽でした。

イレギュラーな個体も混じっていたので少し分かりづらかったかもしれません。
次回は、いよいよ最終回となる、上級編をお届けします。

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2012年02月17日ワシウォッチングのススメ ~初級編~

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

冬の渡り鳥として飛来するオオワシ・オジロワシ。
特にここ知床半島は、多くのワシたちがやってきます。
そして今の時期、もっとも多く集まっているのです。

とはいっても、オオワシやオジロワシを見る機会なんてそう多くはないのではないのでしょうか。
そこで、今回から3回にわたり、“ワシウォッチングのススメ”と題して
オオワシとオジロワシの見分け方を紹介しながら、バーチャルワシ観察を
お届けします。
シリーズ終了後には、もれなくワシウォッチャーになれる…ハズ。

まずは簡単に、紹介から。
【オオワシ】
全長:♂88㎝、♀102㎝
翼開長:220~250㎝      ※翼開長…翼を広げた長さ
体重:約5~8㎏
繁殖地域:ロシア東部(カムチャッカ半島、サハリン北部など)
  
【オジロワシ】
全長:♂83㎝、♀92㎝
翼開長:199~228㎝
体重:約4~7㎏
繁殖地域:ユーラシア大陸全域

数字をみても分かるように、どちらもとても大きい鳥です。
どちらも主に魚食ですが、カモなどの水鳥や、エゾシカ・クジラ類などの死体も食べています。


それでは、ワシウォッチングのススメ、初回となる~初級編~。
まずは、「留まっている姿」から。

白い肩が目立つオオワシは、全体的に黒っぽい印象。
オジロワシは、全体的に茶色っぽい色をしています。
どちらも白い尾が見えていますね。

次は、「飛んでいる姿」です。

オオワシは、羽の下に丸みがあり、尾羽は深いくさび形をしています。
オジロワシの羽の下はそんなにふくらみはありませんね。わりと直線的。尾羽もくさび形ですがオオワシよりは浅めです。

いきなりですが、最後に実践!
今回の初級編をふまえて、ワシカウントに挑戦してみましょう。
下の写真の中には、それぞれ何羽ずついるでしょうか。



正解は…
オオワシ5羽、オジロワシ1羽でした。

次回は、中級編をお届けします。
お楽しみに☆

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2012年02月08日第4回 シカのワナって知ってる?

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

この日記でご報告している、「地域住民による地域住民を対象とした講座」。
 過去の講座はコチラから
 ・第1回目
 http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2011/09/801.html
 ・第2回目
 http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2011/10/813.html
 ・第3回目
 http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2011/11/820.html


今回は、この講座最終回となる、
「シカのワナって知ってる? ~見てみよう!作ってみよう!~」
をご報告します。

エゾシカが増えすぎてしまっている…という話は、よく耳にするところでしょう。
エゾシカの個体数増加は、産業や自然環境にさまざまな影響を与えています。
ここ知床のエゾシカも、さまざまな問題を引き起こし、それらは深刻な状況にあります。

今回の講座では、そんなエゾシカの個体数を管理する手法のひとつ、囲いワナをとおして、エゾシカ増加の原因、引き起こされる問題、個体数管理の取り組みについて、などを学びます。
しかし、今回のテーマはあまり明るい話でもないし、“個体数管理”なんて、ちょっと難しい内容…。
そこで、羅臼町でモノづくりを行っている稲葉可奈氏を講師にお迎えし、
ワナのミニチュア制作をとおして、楽しく学んじゃおう!という講座に。
稲葉氏は、知床をもっとおもしろく、をテーマに、「知床のてぬぐい」をはじめ、日々、知床に関わるイラストを描いたりモノづくりを行っています。


まずは、室内でのレクチャー。
実際に羅臼でエゾシカ対策を行う、知床財団職員の石名坂氏から
お話を聞きます。
昆布干し場や牧草地を荒らすなど漁業・酪農被害、交通事故、花壇荒らし防止の網に絡まる問題、希少な高山植物を食べて減少させてしまったり、逆にエゾシカが好まない植物が増えすぎてしまったり、樹皮を剥されてしまった樹木が枯れるなど、自然環境への被害…。
知床でのエゾシカ増加は、知床の植物の構成を変えてしまうくらい
とても深刻な問題となっています。
そこで、今回学ぶ囲いワナなど、個体数管理の対策が行われていることで、
増加は抑えられてはいるものの、今後も継続して個体数の減少に取り組んでいかなければならないこと、などを聞きました。



続いては、ワナ見学。
寒風吹きすさぶ中、バッチリ防寒してルサフィールドハウスより上流に設置されている囲いワナの見学に向かいます。
冬はエゾシカにとってほとんど食べ物がない上に、頼みのササも積雪で埋まってしまいます。そんなとき、栄養たっぷりな牧草があったら…。
ワナの中には、エゾシカを呼ぶ美味しそうな牧草が置かれています。
シカの気分になってワナの中へ。
すると、中に設置されていたカメラが映すモニターを建物内で見ていた作業員によって遠隔操作で扉が下ろされる、という仕組みを知ります。
その後エゾシカは作業員によって仕切り部屋へと追われ、一頭ずつ捕獲され、食品加工されるため隣町の養鹿場へと運ばれていく、という説明を聞きながら仕切り部屋に入ってみたり…。
ワナの仕組みだけでなく、エゾシカの目線も同時に体感しました。


冷えた手先を十分に温めたあとは、メインのミニチュア制作です。
あらかじめ稲葉氏によって下準備された制作物に、色塗りを行います。



なごやかな制作時間はあっという間に終わりに近づき、組み立てられたエゾシカミニチュア囲いワナは完成を迎えます。そこには、参加者思い思いのエゾシカが、囲いワナを取り囲んでいました。
そして、「高山植物も食べる」「庭のお花が食べられちゃいます」「交通事故に注意!車も人もあぶない」などなど、今回のレクチャーで知ったことや、
町内ならではエゾシカエピソードなど、町民目線のコメントも入れてもらい、
ステキなミニチュア囲いワナが完成しました!



こうしてできた囲いワナのミニチュアは、今回の講座の開催場所でもある、
ルサフィールドハウスの展示物になります。

普段なかなか機会のないモノづくりをとおして、これもまた普段あまり見る機会のない囲いワナの体験は、みなさん楽しんでいただけたようです。

山間部が住宅街のすぐ裏から成る羅臼町内では、市街地に出没するエゾシカが増え、町民との間にさまざまなトラブルを招いています。
“エゾシカ=やっかいもの”というイメージが定着、
生活上、あまりに身近になりすぎているエゾシカ、
でも、だからこそ上手に付き合っていく方法を考えていかなければいけないこと、そしてそのための取り組みが行われていることを、今回の講座やミニチュア囲いワナ展示をとおして、少しでも知ってもらうきっかけになれたら…と思います。

(写真:知床財団提供)

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2011年12月26日I’m a オオワシ.

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

私はオオワシ。
夏はロシアにいるけれど、冬は越冬するために南下してくる。
知床は人気エリアで、たくさんの仲間が知床に渡るんだ。

どんな姿かって?

そりゃー、
水面に映る姿も美しい白と黒のコントラストに、鮮やかな黄色のクチバシ。

どのくらいの大きさかって?

翼を広げて2.2~2.5メートルだから・・・
ほら、大人が両手広げても足りないくらい。
大きいでしょ。

こんなに大きいならさぞ重いんだろうね、って?

約5~9㎏はあるから・・・
両手で抱えたって、ずっしり。
けっこう重いでしょ。

私たちオオワシのこと、少しだけ知ってもらえたかな。

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*
オオワシ実物大のぬいぐるみは、知床世界遺産センターに、
オオワシ実物重のぬいぐるみは、羅臼ビジターセンターに、
展示してあります。

野外でオオワシの飛ぶ姿を観察したあとは、
室内でそんなオオワシの重さや大きさを体感してみませんか?

*年末年始休館日*
知床世界遺産センターは、12月29日~1月3日まで
羅臼ビジターセンターは、12月26日~1月3日まで
それぞれ、お休みします。

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2011年12月13日予防は大事

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

だいぶ寒くなってきましたね。
空気も乾燥してきましたね。
風邪などはひいていませんか?
特に、インフルエンザにはかかりたくないですね。
予防には、“手洗い・うがい”は大切ですよね。


「ガラガラガラ~」
こちらでもインフルエンザにかかりたくないオオワシが、
うがいをしています。
・・・ではありません。
(豪快にクワッ!クワッ!と鳴いているだけです。)


“高病原性鳥インフルエンザ”
特に昨年は、TVや新聞などで目や耳にする機会が多かったのではないでしょうか。
高病原性鳥インフルエンザの影響で問題とされるのは、大きくみて3つ。
1つは、養鶏産業・経済活動への影響。
2つに、ヒトへの感染。新型インフルエンザウィルス変異の可能性。
3つに、希少種を含めた野鳥への伝染。

その中で、私たち環境省は野鳥への対応を主として行っています。

野生種の中にはシマフクロウやヤンバルクイナなど、世界的にみても
とても希少な種が生息する他、昨年大量感染が心配されたナベヅルなど、
越冬のため日本に飛来する希少種がたくさん生息しています。
また、彼ら希少種だけでなく、数多くの鳥類に鳥インフルエンザが
蔓延しないよう、様々な対応をしています。

野鳥への対応、とひとことで言ってもいろいろありますが、
その中で、「水鳥類の糞便調査」があります。
秋冬に飛来してくるガン・カモ類の糞便を採取し、ウィルスを持った鳥が
いないかどうかモニタリングしています。
この調査を行うことで、感染の早期発見や感染状況の把握につながるのです。


ハクチョウやカモの糞を回収し、研究機関に送るのが現場の仕事、
なんですが・・・。

鳥の糞ってみたことあります?よね。
想像されるのはたいてい、白っぽいのが混ざってるビチャっとした感じの
アレだと思います。車の窓やベランダに落とされたり、ね…。
では、ハクチョウの糞は?

この調査を初めて経験したとき、初めてハクチョウの糞にお目にかかり、
びっくり仰天でした。
なんとまぁ、ご立派なこと。

大型犬並みのサイズ。
これは鳥の糞ですよ、と言っても信じない人もいるかもしれません。

ハクチョウはこの大きな体で植物食なので、
このように大きな糞になってしまうようです。

この時期、湖沼や河川、牧草地などにハクチョウやカモが飛来してきています。
冬場しか見られないハクチョウ・カモの姿を、観察に出かけるのもいいですよね。
でも、糞や鳥への近づきすぎには十分に注意して、野鳥観察をしましょう。

そして、外から帰ってきたら必ず、“手洗い・うがい”など、
予防をきちんとしましょうね。

*********************************
高病原性鳥インフルエンザについての詳細や、調査結果など掲載しています↓
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/

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2011年11月24日第3回 のんびり楽しむ秋の道

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

この日記でご報告している、「地域住民による地域住民を対象とした講座」。
 過去の講座はコチラから
 ・第1回目
 http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2011/09/801.html
 ・第2回目
 http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2011/10/813.html

今回は第3回目となる
「のんびり楽しむ秋の道 ~紅葉の遊歩道散策と見どころマップづくり~」
を、ご報告します。

講師は、知床の自然ガイドブック制作や、自然情報を記録・公開している
“知床サイト”の運営者、浅沼孝夫氏。
羅臼岳を含む知床連山や羅臼湖から海岸まで、知床のあらゆる植物・昆虫・
哺乳類などを記録・研究しており、日々、知床の自然を見つめ
発信し続けています。
また、研究者の立場から知床の植生保全管理のための調査もされています。

今回の講座は、羅臼温泉園地遊歩道で木や鳥・自然を観察しながら歩き、
散策ルートの見どころや魅力を参加者みんなで発見し、
“見どころ散策路マップ”を作成しよう、というもの。
みんなで作成したマップは、羅臼を訪れる観光客の方々にお配りするものに
なります。

予定していた開催日を秋雨に譲り、一日延期しての開催となりました。

羅臼ビジターセンターから少し歩いたところにある、熊の湯という
無料露天風呂近くに、歩道の入口はあります。
石畳の歩道を歩き始めるとすぐ、「リーン リーン」という小さな声が
岩陰から聞こえることに気付きます。
「ここにはコオロギがいるんです。
 温泉地帯の地熱があるので、寒くなってもしばらく鳴いていますよ。
 温泉の地熱にコオロギだけでなく、カナヘビやニホントカゲなども好んで
 集まります。あまり会いたくないですが、マムシもいるので観察には
 気をつけたいですね。」
と、浅沼氏の解説。
岩陰に姿を隠すコオロギの声に耳を澄ましたり、
赤や黄に色づいた森の中、メモを片手にのんびり歩きます。
「この木は、野球のバットに使われる木です。アオダモ、といいます。
 固いだけではなく“しなり”がいい材質をしています。」
「この木は、樹齢200年くらいになりますね。
 カツラ、という木で、黄葉した葉は甘い香りがするんですよ。
 渓流脇に生えています。割と湿った場所が好きな木です。」

少しずつ形の違うカエデ類や、亀の甲羅のような葉が真っ赤に色づいた
オオカメノキなどなど…歩道上では、たくさんの種類の木を観察できました。



「あまり注目されないですが、シダ植物というのがあります。
 実は、羅臼はシダの宝庫とも言えます。
 日本人は身近すぎてあまりピンとこないかもしれないけれど、イギリスなど
 ガーデニングが盛んなところの人が、この道を歩いたら
 “これもほしい、これもほしい”となるかもしれません。
 それくらい実はとても多くの種類のシダが一度に見られる場所なんです。」

「冬は、アカゲラやシジュウカラなどのカラ類が混群になっているのが
 見られます。夏はキビタキやオオルリなど、とてもきれいな鳥が割と近くで
 見られる場所でもあり、鳥好きの方にはけっこう穴場かもしれません。」

その他にも、
光る川面で揺れるヒレは、魚道スリットが入った砂防ダムを越えて遡上する
サケ・マスの姿。その卵を、何度も水中にもぐって狙うカワガラス。
青空に映える色鮮やかな山肌、そこから頭を出す羅臼岳。
遊歩道の、色々な表情を垣間見ることができました。



時折立ち止まり、大きな木から小さな虫まで、そして土の中のことから
森全体に至るまで、様々な視点でお話をしてくださった浅沼氏。
ほがらかな笑顔と優しい語りかけ、
そして、心地よい秋の風にそよぐ色づいた森。
参加者もスタッフものんびりほっこりとても雰囲気よく、約2キロの遊歩道、あっという間に出口に到着しました。

みんなで集めた見どころネタを整理し、マップを完成させます。
初めてこの歩道を訪れる人にも、来たことがある人にも、
歩道の魅力が伝わるよう話し合いながらまとめ、
情報満載の見どころマップの完成です。



完成したマップは、2月に予定されている羅臼ビジターセンターでの
活動報告展で展示されるほか、来春以降、来館者にお配りします。

町民の方も
「こんなところにこんなステキな道があったなんて。」
と、実はあまり知られていなかった、羅臼温泉園地遊歩道。
歩道の魅力をみんなで再発見・発掘できた講座でした。
見どころマップを片手に、散策してみませんか?

(写真:知床財団提供)

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2011年11月02日冬眠します。

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

冬眠といっても…
ヒグマでもなく、シマリスでもありません。
知床世界遺産ルサフィールドハウスです。

ルサフィールドハウスは、11月1日から1月31日まで冬期閉館となります。


今年も多くの方が、このルサフィールドハウスに来館してくださいました。
大きなザックを背負った知床岬や知床岳への登山者、

サケ・マスロマンに魅せられた釣り人、
知床半島一周を目指すシーカヤッカーの方、
知床観光に訪れたご家族や団体のみなさん、

羅臼に帰省した親戚を連れた町民の方、などなど…。
知床での滞在目的は違えど、知床半島先端部のアウトドア利用や
山と海のつながりやその素晴らしさなど、
このルサフィールドハウスを通じて知っていただけたのではないかと
思います。


冬期閉館を経て、ルサフィールドハウスはまた2月より開館いたします。
厳冬期のルサでは、
特有の地形が生み出す“だし風”と呼ばれる強風や、
その風が吹き下ろす海岸に寄せる流氷、
運ばれる自然の恵みを求めてやってくるアザラシやクジラ、
オオワシやオジロワシなど、
冬ならではの景色と、たくさんの動物との出会いが待っています。


みなさんのお越しをお待ちしております。

2月1日の開館まで、
しばし、おやすみなさい。

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2011年10月27日第2回 みんなで調査!らうすの磯の生き物たち

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

地球の表面の約70%を占める海。
そんな海にはいろんな生き物がいる、ということは知っていますよね。
クジラやシャチなど大きなほ乳類から、細菌やプランクトンなどの微生物まで
そしてそれらは珊瑚礁や深海まで多様な環境に、
それはそれはたくさんの生き物が生息しています。

では、磯にいる生き物、というと何を思い浮かべますか?
貝?カニ?
陸と海の境目にある磯。
そんな磯場は、海中をなかなか伺い知ることのできない私たち人間にとって、
最も海に近い場所です。
けれど、その実態は、実はあまり知られていない場所でもあります。

先月この日記でご報告した、「地域住民による地域住民を対象とした講座」。
(第1回目の様子はコチラから
http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2011/09/801.html
2回目は「みんなで調査!らうすの磯の生き物たち」と題して、
磯場にはどんな生き物が生息するのか、磯場はどんな役目があるのか、
などを調べ、海の生態系や生き物、それらを守る活動のお話しを聞きました。
講師は、日々羅臼の海に潜り羅臼の海を見守り続ける、川原綾子氏。
知床ダイビング企画で水中ガイドを努めながら、海中ゴミ拾いなど
保全活動も行われています。

今回参加いただいたのは、10代から70代まで幅広い世代の7名。

集まった参加者は、早速磯場に降り、生き物の調査をします。
「こんな石の裏にはカニなどが隠れていることが多いですよ。」
「海藻は小さな魚が身を隠していたりするので、網ですくってみると…
 ほらね。」
どんな場所にどんな生き物がいるのか、ポイントを川原氏に教わりながら
実際に、網や箱メガネを使って生き物探しを行いました。



1時間程の調査で、シモフリカジカやハコダテギンポ、
イソガニやコモチイソギンチャクなど、
計17種類の生き物を発見することができました。
見つけた生き物は写真に収めます。



調査を終えたあとは、羅臼ビジターセンターに戻ってまとめを行います。

川原氏から、磯場の生き物や磯場の役割、またそれらを守る海洋生態系保全の取り組みなどの話を聞きました。
「パッと見ただけでは分からないけど、
 磯場には、実はたくさんの生き物がいるんです。」
「浅い水位の磯場は水温が高く、また隠れる場所がたくさんあるため、
 多くの生き物の子育ての場や稚魚たちの隠れ場でもあります。
 今日見た魚たちも稚魚でしたよね。
 彼らにとって、磯場はとっても重要な場所です。」
「たとえば、
 この写真は“ごっこ”と呼ばれる“ホテイウオ”という名前の魚です。
 大きくなると20センチくらいになる魚ですが、小さいときは5ミリほど。
 この小さな体を浅瀬の海藻に隠して、外敵から身を守っています。」
「この写真の魚の後ろに写っているもの、わかります?人工物ですね。
 これは土俵といって、魚場で網を固定するもので、ひとつの土俵に200キロ
 の砂利が入っています。
 この土俵ですが、切り落とされ海底に沈んだままに なっているものがあり
 ます。これの、袋を破いて中の砂利を出し、還らない袋を回収する作業を、
 私たちは行っています。そうしないと、海藻も生えない人工物が溜まるだけ
 の場所になってしまいます。そんなのって悲しいですよね。」

その後は、調査で見つけた生き物を記録票にまとめます。
なんという名前の生き物が、どんな場所で見つかったか。
そうすることで、その生き物がどんな環境を好んでいるかなど、
生き物の生態なども分かります。
そしてその記録票のもと、模造紙に描かれた磯の図に、撮影してきた写真を
貼って、みんなで調査をまとめます。



こうしてまとめてみると、
実にたくさんの生き物を観察できたことが分かります。
みんなで作った調査のまとめは、羅臼ビジターセンターで
展示される予定です。

身近だけど、実は知らないことがたくさんあった磯場。
ゴツゴツの岩場は、小さな生き物のゆりかごでもあったんですね。
またひとつ、海の魅力を知ることができた講座でした。

(写真:知床財団提供)

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2011年10月12日「1頭Get!」は「100頭Get!!」

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

ある日のこと。
「家の庭先にセイヨウオオマルハナバチの巣があるみたいなんだけど…。」
とある羅臼町民の方から、ご連絡をいただきました。

「セイヨウオオマルハナバチつかまえたよ!」と、
何度も羅臼ビジターセンターに、つかまえたセイヨウオオマルハナバチを
持ってきてくれた小学生のご親戚のお宅でした。


特定外来生物に指定されているセイヨウオオマルハナバチ。
羅臼町では2007年に初めて確認されました。
以来、駆除作業を行ったり、より多くの方に知ってもらうため
小学校で授業をしたり、講習会を開いたりと、活動を重ねてきました。
その成果か、セイヨウオオマルハナバチという外来種のハチがいる、という
認知が少しずつ浸透している、と感じる機会が増えてきました。

そんな折にいただいたご連絡。
このお宅では、ほとんど毎日庭先で観察と捕獲を続けてくれ、
どうやら出入りしている場所が近くにあるようだ、とまで
つきとめてくださいました。

飛来する姿は確認できても、巣の場所の特定はなかなかできません。
また、巣ごと駆除できる機会もそうあるものではありません。
そこで、連絡をくださったお宅のご協力のもと、巣の駆除作業を
行うことになりました。

マルハナバチの巣は、地中のノネズミの古巣や建物の床下などに作られます。
今回の巣は地中にあり、おそらくネズミの古巣を利用したもののようでした。

さほど攻撃性が高くないマルハナバチ類、とはいえ、針はありますし、
巣を攻撃されれば襲う可能性もあります。
殺虫スプレーを片手に、スコップで掘り進めることおよそ2時間。
2時間…。掘りました。

次々とワーカーやオスバチが出てくる中、
掘り進める土に枯れ草が混じり、やがてそれは柔らかい感触に変わりました。
巣に近づいた証拠です。
その時、新女王が姿を現しました。
新女王は、秋にオスバチと交尾しこの冬を越し、
来春新しいコロニーを作ります。
女王1頭から新女王が100頭以上生まれるセイヨウオオマルハナバチ。
この駆除作業中、計7頭の新女王が捕獲されました。
ということは…
来年生まれるかもしれなかった女王バチ700頭を捕獲したことになります!

さらに少しずつ掘り進めると…
小さなお団子を積み重ねたような、ぶどうの粒の塊のような、
いくつもの卵室と蜜壺がでてきました。
これがセイヨウオオマルハナバチの巣です。



今回駆除した巣や捕獲したハチは、今後の普及啓発用に教材となり、
また羅臼ビジターセンターでも展示される予定です。

今回の駆除作業には、近くの小学校の4年生が理科の時間を使って
見学に来ていました。
駆除作業を一緒に行ってくださった先生から、
セイヨウオオマルハナバチを駆除する理由などの説明を受けながら、
巣の近くで飛び回るハチを捕まえてくれました。
ワーカーからオスバチ、新女王、女王、そして巣まで観察した子ども達。
きっとセイヨウオオマルハナバチのことを、覚えてくれたことでしょう。


さいごに…
春、たった一頭でこの巣を作り、コロニーを大きく成長させた女王。
この秋でその命を終えようとしているその体は、
すでにボロボロの状態でした。
彼女は、最後の最後まで巣にしがみついていました。
命をかけ、最後まで子どもや巣を守りきろうとするその姿は、
まさに母親そのものでした。

セイヨウオオマルハナバチは
在来種との軋轢や、交雑による在来種の繁殖の妨害、
花とハチの送粉関係の妨害、外来寄生生物の拡大など…
在来生態系への影響を懸念され、問題となっています。

しかし、本当に悪いのはセイヨウオオマルハナバチでしょうか。
外来生物はだれが、なぜ生み出してしまったのでしょうか。

セイヨウオオマルハナバチの母の背に、
人間の都合を感じずにいられませんでした。

(写真提供:教育委員会,知床財団)

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