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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園 羅臼

188件の記事があります。

2011年01月31日流氷がびっしり

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

朝起きて海に目を向けると、流氷が海全体を埋め尽くしていました。
流氷に覆われた海は急に穏やかに。静寂な時間に包まれます。

流氷がやって来ると景色が変わるのは勿論のこと、気温も変わります。通常、北海道といえども海沿いの地域では、内陸のように極端に冷え込むことは珍しく(海が気温よりもずっと暖かいため)、羅臼では0℃~-10℃くらいの場合がほとんどです。
しかし流氷が来て海にフタをしてしまうと、途端に寒くなり、1/31の朝は-14℃まで冷え込みました。


夕方4時頃の羅臼川河口 流氷の奥には国後島の泊山(ほぼ中央)が見えます。

今の時期は流氷だけでなく、オオワシやオジロワシ、アザラシ類など色々な生き物を観察することが出来ます。寒さはとても厳しいですが、北海道の厳しいところも綺麗なところも同時に楽しめるのは、冬ならではの楽しみ方かもしれません。
今年は流氷当たり年ですから、この機会にご覧になってはいかが!?

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2011年01月17日水鳥がいなくなった!?

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

雪はほとんど降りませんが、冷え込む毎日が続いています。
野付湾内は全面が結氷し、見渡す限りの氷原が広がっていました。
真っ白になった湾内に水鳥の姿はほとんど無く、オオハクチョウやカモ達でにぎわっていた湾内は静まりかえっていました。



水鳥に代わってたくさん見かけたのは、オオワシやオジロワシ。
彼らはこの時期行われる「氷下待ち網漁」のおこぼれを求めてやってきます。多分100羽以上いたでしょう。

野付半島側には、まとまった数の水鳥はいませんでしたが、対岸の尾岱沼(おだいとう)まで行くと、ようやく沢山の水鳥を確認することが出来ました。


ここには比較的水量の多い川があり、半島側よりも結氷する時期が遅いことから、水鳥が餌や休憩場所を求めて集まってくるようです。


ここもそろそろ凍りそう!?氷の上をペタペタ歩くマガモは一見愛らしいですが、生きていくために、彼らも必死です。厳しい環境で生きていくことは本当に大変ですね。


***お願い***
各地で鳥インフルエンザの発生が確認されたことに伴い、野鳥の監視体制を通常よりも強化しています。これは鳥インフルエンザに感染した個体を早期に発見することで、野鳥はもとより、家きん(ニワトリなど)への感染を未然に防ぐことを目的にしています。

野付半島では、尾岱沼側の河口に沢山の水鳥が見られますが、過度な接近やエサやりなどは控えて下さい。人間の食べ物は鳥の消化器官には適していませんし、接近により鳥インフルエンザウィルスを人間が他の地域へ持ち込んでしまう可能性もあります。

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2011年01月12日羅臼発!旬な自然情報をお届けします。

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

昨年春、
羅臼ビジターセンターのホームページに、
「羅臼ビジターセンターがお届けする知床の自然情報」を
新たに開設しました。


【TOPページにある「自然情報」のボタンをクリック!!】

この自然情報発信ページでは、
私たち羅臼のアクティブレンジャーと、羅臼ビジターセンターを運営している知床財団から、巡視や調査、日々の生活の中で発見・注目した自然情報などをみなさんにお届けしよう、というものです。

たとえば・・・
今、毎週行っているオオワシ・オジロワシ飛来状況調査。
先日の調査からは、調査中に出会ったクマタカの写真、鳥観察のポイント、調査中に見られた動物、調査結果を紹介しています。



また別の日に発信した情報は、
羅臼の海岸に漂着したシャチのこと。

なぜ死んでしまったのかは分かりません。
死んでしまったのは残念ですが、このシャチを解体・サンプリングして得られた情報は、シャチの生態を知る貴重なデータとなります。



今回のようなことは、根室海峡の豊かさを改めて感じさせてくれます。
オキアミなどの動物プランクトンが、イカ・イワシなどの小魚、サケマスなどの餌となり、また、それらはシャチやクジラやトドなど大型の海獣類をも支えているのです。

そして、その海と相互関係にある原始性の高い陸域の自然もまた、
豊かな生態系によって命が循環しています。

そんな知床羅臼の情報を少しずつお届けする
「羅臼ビジターセンターがお届けする知床の自然情報」。
ぜひ、チェックして羅臼の情報をゲットしてくださいね。

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2010年12月09日毎週更新します。

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

冬になると、知床にはたくさんのオオワシ・オジロワシが飛来してきます。

11月18日の日記で、
ウトロ自然保護官事務所の高橋ARから紹介がありましたが、
知床に飛来するオオワシ・オジロワシの飛来状況を把握する調査を、
ウトロ・羅臼事務所合同で行っています。

今回、この調査をみなさんにお伝えしようと、こんなものを作成しました。


そもそも、このオオワシ・オジロワシ飛来状況調査でどんなことをやっているのか、また、過去の調査結果などもあわせて紹介しています。

また、これは、今年度も週1回計20回程度行われる調査で得た結果を、
その都度報告できるように作成した展示物です。

ウトロと羅臼の調査結果を積み重ねていけるシステムで、
毎週更新していきます。
また、調査の時に撮影できた写真も、一緒にご紹介していく予定ですので、
お楽しみに。

これらの展示物は、羅臼ビジターセンターのアクティブレンジャーコーナーに展示してあります。
お近くの方や知床にお寄りの際は、ぜひお立ち寄り下さい。



越冬するオオワシ・オジロワシを、知床の豊かな自然環境が支えています。
と同時に、彼らも知床の生態系を支える大きな存在です。

今年もまた、たくさんのオオワシ・オジロワシが知床に飛んでくることでしょう。

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2010年11月29日アライグマの捕獲を目指して

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

 全国的に分布域を広げているアライグマ。元々は北米原産の動物ですが、ペットとして日本にやってきました。旺盛な繁殖力や、何でも食べてしまう習性が、農作物被害や希少な在来生物の捕食問題を引き起こし、現在は特定外来生物に指定されています。
 アライグマの侵入は知床半島においても例外ではなく、交通事故による死亡個体や、自動撮影のカメラによって存在が確認されています。
 知床には、日本に130羽程しか生息していないシマフクロウを始め、希少生物が多数生息しています。特に、木登りが得意なアライグマによる、シマフクロウのヒナの捕食が心配されているのです。

 環境省では、地元自治体や研究者と協力して、アライグマの捕獲ワナや赤外線センサーを利用した自動撮影カメラを設置しています。現在までのところ、捕獲には至っていませんが、設置していたカメラには昨年も今年もアライグマの姿が映り込んでいました。


 今年の10月に撮影したアライグマ。シッポに縞々があるのが、タヌキとの簡単な区別ポイントです。カメラの前にはクモの巣が・・。

 日々カメラや捕獲ワナの点検をしていると、様々な森の住人が記録されていることにも驚きます。人間の目の前には中々現れないエゾクロテン(右下)や大きなヒグマも写っていました。

 
 捕獲作業は今後も継続する予定です。知床の豊かな自然がいつまでも保たれるには、こうした地道な活動も続けていかなくてはならないのです。

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2010年11月12日この季節になると行うこと。

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子


それは、冬に向けての準備です。

長い冬が一年の半分ほどを占める知床は、短い春と夏と秋がのこり半分で過ぎ去ります。
その間行う国立公園の管理業務の一つとして、利用者カウンターの管理があります。

知床国立公園内には、全部で11基の利用者カウンターが設置され、
そのうち羅臼自然保護官事務所では、5基の管理を行っています。
夏の間は、定期的にバッテリーの交換や蓄積されたデータ収集など行いますが、冬は殆ど利用がないため、羅臼側のカウンターは全て撤去しています。

先日最後となる「観音岩・ウナキベツ」という、海岸線に設置してあるカウンターの撤去を終えました。



利用者カウンターは、国立公園に訪れるたくさんの人々の利用状況を把握し、収集したデータは、適正に利用するための検討やルール作りの基礎的な資料になります。


このほかにも、国立公園内の登山道の管理も行います。
下の写真は、先月行った登山道上の迷い込み防止ロープの撤去をしているところです。シーズン中、遅くまで雪渓が残る「屏風岩」という場所に設置しているものですが、毎年積雪に埋まる前に撤去しています。



こうして冬支度が済むと、一気に冬が近づいてくるようです。
来シーズンも多くの方がこの知床を訪れるでしょう。
これからもずっと適正な利用のもと、感動的な体験を提供できる場であり続けてほしい、そう願っています。

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2010年10月27日野付半島の姿

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

 野付半島。これまでにも日記の題材として何度か取り上げたことがありますが、実際にどんな形をしているか見たことはあるでしょうか?
 野付半島は知床半島のように地面が隆起して出来上がったのではなく、海流によって運ばれた砂や礫(れき)の堆積によって出来上がった半島で、一般的な半島のイメージとは少々異なります。
 
 地図を開くと、エビの背中のように湾曲した特殊な形状であることが分かると思いますが、この形は単に道路を走行するだけでは、なかなか実感することができません。
 そこで今回は、皆さんに野付半島の形状が分かる写真をお見せしましょう!


 いかがでしょうか。左側が半島先端部で、右側が基部側です。
 複数の写真を合成しているため、実際よりも湾曲(左右が中心に向かって曲がっています)していますが、道路からは決して伺い知ることができない半島の形が見て取れます。観光パンフレットに丁度よさそうですね。

 でもこの写真、本当は観光パンフレットのために撮影したわけではありません。
 近年、野付半島でも他の地域と同じようにエゾシカの目撃数が増え、エゾカンゾウなどの植物の被害が目立つようになりました。
 そこで今回、エゾシカの被害がどの程度進行しているのかを把握するため、上空からの撮影を試みました。撮影にはヘリウムガスを注入したバルーンに、コンパクトカメラをつり下げた機材(バルーンカメラ)を使用しました。


 野付崎灯台付近の様子
 白線はエゾシカの踏み分け道になっています。ここでシカがエゾカンゾウを食べる様子も確認されるようになりました。

 野付半島にはシカが好む植物が沢山生えていますが、草原の中を直接確認できる場所は、道路脇などのごく一部に限られています。このため半島全体でのシカの増減に関しては比較する材料がほとんどありませんでした。
 しかし、今回の撮影で踏み分け道を記録することで、今後の変化を正確に捉えることができるようになります。今後も空中からのデータを収集していけば、野付半島で本当にエゾシカが増えているのかどうかや、将来的にはシカの頭数管理などにも活用することができるかもしれませんので、是非今後も撮影を継続していきたいと思います。

**** バルーンカメラを通して初めて見えたモノ *****



 ナラワラ付近から半島基部方面を撮影した写真
 今まで何度となくこの道路沿いで巡視を行ってきましたが、野付半島がここまで細いとは思いませんでした。この写真だけ見ると、いったいどんな地形になっているんだろうと、ワクワクしてしまいます。

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2010年10月26日落とし主はだれ?

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

ある日の午前中のこと。
ビジターセンターの方から思わぬ言葉を耳にしました。
「センターの芝生にシロザケが落ちているんだけど・・・何か知ってる?」

いったい何のことだろうと不思議に思いましたが、見に行ってみると、確かにシロザケが落ちていました。何者かに食べられたのか既に頭は無くなっています。






ビジターセンターの近くには川が流れており、サケも遡上しますが、川から数十メートルは離れています。いくらたくましいシロザケでも陸上までは登らないので、きっと動物が運んだのでしょう。
にしても、シロザケと言えば少なくとも3キロはあるし、犯人はもしやヒグマ・・・・!?
胴体部分はそのまま残されているから、満腹になったのか、はたまた面倒になって放棄したのか、真偽の程は不明です。
このまま放っておくと本当にヒグマが寄りつく可能性もあったため、綺麗さっぱり回収しておきました。

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2010年10月15日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで1日前】

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

お魚から見えた生物多様性

 今月18日からいよいよCOP10が始まります。
会場となる名古屋から知床まではかなり離れているため、北海道の端に住んでいる私は、恥ずかしながらあまり身近な事柄としては感じられずにいたのですが、羅臼のとある居酒屋で「生物多様性」の有り難みについて改めて考えさせられる出来事がありました。以下AR日記らしからぬ内容ですがご容赦下さい。

とある居酒屋での出来事・・・
客(自分):「マスター今日は何か良い魚入ってる?」

店主:「今日はマグロとブリが入ってるよ!!」と威勢の良い一言。

 一見どこの店でも交わされそうな会話ですが、マグロとブリって羅臼で獲れる魚・・・?
 実はどちらも普通は羅臼で獲れる魚ではありません。本当はもう少し暖かい海で獲れる魚のはずなのに、どうやら最近の海水温の高さが影響しているそうなのです。
(※近年少しずつ水揚げされるようになったとか・・)

 美味しい食べ物が新鮮なまま口に入るということ自体は、悪いことではありません。しかし、これが一時的な出来事ではなく、長期間に且つ大規模に続くとしたらどうなるでしょうか?
 マグロやブリが獲れるようになった北海道は良くても、本州では獲れなくなってしまうかもしれません。また北海道に元々いた魚は、さらに北の海に消えてしまうことだって考えられます。さらに言えば、元々もっと北にいた魚は、どこに逃げればよいのでしょうか…。
 それでも魚は、環境の変化に合わせて移動できるだけマシです。貝や海藻など、あまり移動できない生き物はどうでしょうか。
 環境が変化して、各地の環境に適応した多種多様な魚介類が生息地を移したり、変化に耐えられずに死んでしまったりすると、生態系が崩壊し、私たちの食卓にも大きな影響が及ぶのは間違いありません。
 
 普段、生物多様性という小難しい言葉を考える人はほとんど居ないと思いますが、ある日突然、普段口にする食べ物が、自然界の環が崩れたことによって手の届かない物になってしまったら・・・・・想像するだけでもゾッとします。
 でもこうやって「食」に置き換えて考えることで、「生物多様性」って言葉も案外身近なものに感じられないでしょうか?皆さんもCOP10の開催期間中は「食」の目線でご覧になってはいかがでしょうか?せっかく日本で開催されるのだし、知っておいて損は無いと思います。


*******おまけ********
10月に入って今年もイカ釣り漁船が見られるようになってきました。
町の明かりよりも一層眩しいイカ釣り船。半島の反対側にあるウトロの町からも、山越しにボンヤリと明るさが確認出来るほどです。


根室海峡に現れたイカ釣り船(左側)2008/11撮影

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2010年10月08日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで10日前】

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子


*セイヨウオオマルハナバチを追いかけて(ミツバチ科マルハナバチ属)*

山の紅葉が麓まで降りてきて、木々が鮮やかな秋の装いを見せています。
もうすっかり秋ですね。
山頂に積もる薄雪が、冬がすぐそこまでやってきていることを教えてくれます。

これから訪れる冬にむけて、動物や植物が様々な準備をしています。
葉を落とすもの、サナギで越えるもの、
冬毛で迎えるもの、眠りに入るもの…。

マルハナバチは、夏終わりから秋に生まれる新女王バチが、同じ時期に生まれたオスと交尾をして、卵を産む春まで、土や葉の下などで冬眠をして冬を越します。
秋も終わりに近づく現在、終わりかけの花に冬眠前の新女王バチが、蜜を吸いにやってきています。
冬眠前最後の食事をして、体力を蓄えようというのでしょう。

そんな中に、セイヨウオオマルハナバチという外来種のマルハナバチがいます。
私たちは、これ以上セイヨウが増えないように普段から防除活動をしていますが、特にこの時期のセイヨウ捕獲には力をいれています。

それは、セイヨウオオマルハナバチの特性の一つでもある、「高い繁殖力」があるからです。
一つの巣から約25頭の新女王バチが生まれる日本在来のマルハナバチに対して、セイヨウは約100頭も生まれます。そしてその新女王バチが、次の年の春から夏にかけて生む働きバチは、多いときには数千頭にも及ぶのです。
まさに脅威。

寒くなってきて、葉や花も枯れ、周りでは虫たちの動きがあまり見られなくなっているかもしれません。
けれど、1頭を捕獲すれば、来年の数千頭の働きバチと100頭の女王バチの出現をおさえることができる今はまさに、捕獲の「追い込み」時期。

みなさんの周りにも、冬眠前のセイヨウはいませんか?


白いおしりが特徴の「セイヨウオオマルハナバチ」*外来種

オレンジ色のおしり「エゾオオマルハナバチ」*在来種

花の蜜を吸う「エゾナガマルハナバチ」*在来種

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