ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

RSS

知床国立公園 羅臼

188件の記事があります。

2010年09月28日羅臼岳でも初冠雪

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

 大雪山や利尻山などで初冠雪の知らせが届いていますが、羅臼岳でも冠雪を確認しました。私が確認している限りでは9/24には山頂が白くなっていました。今年は全国的に厳しい暑さが続いたので、実感が湧きにくいかもしれませんが、山頂付近は冬になりつつあります。夏山装備での登山は非常に危険ですのでご注意ください。
 
 今年は紅葉が遅いと言われているようですが、知床の紅葉の見頃は、知床峠であと一週間程先になるかと思います。うまくいけば冠雪と紅葉が同時に見られるかもしれませんね。



羅臼湖の三の沼から写した羅臼岳。山頂付近にうっすらと雪が積もる。(9/27撮影)

ページ先頭へ↑

2010年09月08日実りの季節につき

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

 異常に暑かった今年の夏。本州だけでなく北海道も例外ではありませんでした。いつもなら肌寒い季節になっているのに、今年はまだしばらく半袖が活躍しそうです。
 とは言うものの、秋の気配は日に日に色濃くなっています。山では高山植物の果実が赤や黒に熟し、川ではカラフトマスと一部シロザケの遡上も見られるようになりました。



 「秋」といえばサケ・マス釣りという人も多いのではないでしょうか?
 今年はカラフトマス(地元の人は単に「マス」と呼びます)の遡上数があまり多くないようですが、マスロマンに魅せられた釣り人達が、夢を求めて釣り竿を振る姿は例年と変わりありません。私も3年目になって初めて“マス”釣りに挑戦しましたが、力強い引きや大きさに興奮してしまい、すっかり熱中してしまいました。毎年多くの釣り人がマスやシロザケ釣りを楽しんでいるのにも納得です。

 これから、マス、シロザケと釣りのシーズンは徐々に移行していくので、当分の間は楽しむことが出来ます。ただし知床でサケ・マスを釣る場合は、ヒグマとの問題にも配慮しなければいけません。
 楽しいはずの釣りが恐ろしい事態にならないように、以下についてはくれぐれも注意してください。

◆釣った魚のイクラ(すじこ)だけを抜き取り身を捨てるのは絶対にやめて下さい。
←残された魚の身を求めてヒグマが引き寄せられてしまいます。捨てた本人だけでなく、次に来る人々まで危険にさらします。竿先だけでなく、後ろにも注意を配ることをお忘れ無く。


腹を割かれたカラフトマスのメス

◆ゴミ(臭いの出る物全般)を置き去りにしないよう完全に対処してください。
←同じくヒグマを引き寄せます。知床ではどこにいてもヒグマと出会う可能性があり、山や海岸だけでなく、民家の裏にも出没します。例えキャンプ場であっても決して油断はできないのです。

※知床半島先端部(相泊以北)で釣りをする方は、他にも守らなくてはいけないルールがあります。詳しくは「知床半島先端部利用の心得」の14ページをご覧ください。以下のサイトでダウンロードすることが出来ます。
http://shiretoko-whc.com/management/rule.html

*********************************
知床は、沢山のアクティビティが楽しめる素晴らしいフィールドですが、どこに行ってもヒグマの問題を切り離すことは出来ません。知床の主は人間ではなく「ヒグマ」という謙虚な気持ちでいることが大切です。
*********************************

ページ先頭へ↑

2010年08月26日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで50日前】

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

知床に育つコマクサから(ケマンソウ科コマクサ属)

 高山植物の女王と呼ばれるコマクサ。
 「女王」と呼ばれるだけあって、どこでも見られるわけではなく、本州と北海道の限られた高山帯の砂礫(されき)地でしか見ることが出来ません。それ故か、登山者からは「憧れの花」、「高山植物の象徴」と見られることが多いようです。

 知床半島にもコマクサは分布していますが、有名なシレトコスミレの名前に隠れてしまうのか、あまり認知されていないように感じます。


コマクサはシレトコスミレと同じ砂礫地に生育する。(知円別岳付近 7月上旬)


 少し話が移りますが、コマクサなどの高山植物が、本州や北海道、時には国を超えて見られることに対して疑問を感じたことはありませんか?

 「綿毛が飛んで移動した」、「動物が実を食べて運んだ」と言う方もいるかもしれませんが、これでは遠く彼方の山までは種が届かないのではないでしょうか。
 正解はもっと壮大です。
 植物たちは、氷河期時代に海面が下がったことにより、島や大陸を伝って分布を広げたのです。氷河期が終わって暖かくなると、当時の環境に適応していた植物たちは麓では生きていけなくなり、高山帯へ逃げ延びたのでした。このような地球規模の気候変動によって、高山植物は各地の高山地帯に分断され、現在まで互いに交わることも無くひっそりと、しかし確実にいのちを繋いできたのです。

 分断されて長い年月が経った現在では、同じコマクサでも他の地域のコマクサとは遺伝子レベルではタイプが異なる(他の植物も同様)と言われています。同種の植物一つをとっても、それぞれの場所で少しずつ変化を続けているのです。
 そう考えると、「あの花はもう見たからいいや」と飽きることもありませんし、細かいところまで観察してみたりするものです。実際に花の色や茎の長さ、葉っぱの形等々、本州産の植物と比べると結構違いがあり、知床のコマクサは小さい株が多いなぁ・・という印象を受けます。自然の多様さには本当に驚かされます。


白花のコマクサ

本州や大雪山でコマクサを見た人は知床の山にも登ってみませんか?
氷河期時代に離ればなれになった別なコマクサ達との出会いが待っていますよ!?

ページ先頭へ↑

2010年08月20日羅臼湖歩道でササ刈りをしました

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

静寂な雰囲気と、知床の原生的な自然を手軽に楽しむことが出来る羅臼湖。
普段は人通りの少ない道なのですが、お盆や紅葉の時期になると多くの方々が訪れます。このため、訪れる方が歩きやすいように毎年恒例のササ刈りを行いました。
作業には歩道を管理している北海道を始め、林野庁、羅臼町、羅臼山岳会、地元のガイドさん、環境省の総勢11名が参加しました。


作業に参加した皆さん。写真の奥に写っているのは知床で一番高い羅臼岳。
快晴の空の下、皆で大汗をかきながらの作業となり大変でしたが、ササで覆われていた木道は見違えるほどキレイになりました。
皆さんの奮闘の甲斐もあって、2日かかる予定の作業は一日で終えることが出来ました。


特にササが伸びていた場所。(左:作業前 右:作業後)




作業終了後、三の沼に写る羅臼岳を激写。
この日は風がほとんど吹かなかったため、作業をするには暑すぎたのですが、鏡のように静まった水面には羅臼岳が綺麗に映り込んでいました。


*********************************
羅臼湖の木道は老朽化が進み、破損した木道があちこちにあります。また、足下がぬかるむ場所もあるため、必ず長靴を用意して、周囲に充分注意しながら歩いてください。
*********************************


ページ先頭へ↑

2010年07月23日水面に現れた白い花

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

「夏といえば暑くて当たり前」大抵の皆さんはこう思われるでしょう。
でも羅臼の夏は違います。夏といえば霧が立ち込めるし、気温もなんだか肌寒い。同じ知床でもウトロはカラッと晴れて暑い日が多いのです。大して大きくもない半島の中なのに気候の違いは歴然です。
ただし、本州から来て「もう暑いのはうんざり」という方には羅臼がオススメです。きっと避暑地気分を満喫できることでしょう!

そんな避暑地羅臼ですが、本日(7/23)は晴天。青空も見えています。
久々の好天、嬉々として熊越の滝に向かいます。
熊越の滝歩道は途中から二股に分かれており、滝を上から展望するコースと、下から回り込むコースがあります。それぞれに魅力があり、行程も短い(往復1時間程度)ことから訪れる方の多くは両方のコースを歩かれるようです。

私には以前からこの場所で見たい花があり、そろそろ咲いているだろうと思い、目を皿のようにして周囲を見回していました。するとなにやら水面に浮かぶ白いものを発見。近寄って確認すると、ビンゴ!



私が見たかった花は「バイカモ」といい、花期が短いのか見に来る時期が悪いのか、今まで見ることが出来ませんでした。バイカモは通常は水流にたなびいているだけの水草のように見えますが、その花は何とも可憐で神秘的です。名前も「バイカ」=「梅花」に由来していているだけあり、ウメの花によく似ています。



熊越の滝は訪れる人も多くないので、静寂な雰囲気を独り占めにしながら、花や野鳥を観察することが出来ます。晴れた日ならのんびりと散策するのも良いでしょう。
ただし、くれぐれもヒグマにお気を付けて。知床ではどこで遭遇してもおかしくありません。ビジターセンターなどで情報を収集してから歩くことをお勧めします。

ページ先頭へ↑

2010年07月12日羅臼岳登山道の整備をしています。

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

7月4日(日)に山開きをむかえた羅臼岳。
短い夏の間に、たくさんの登山者が羅臼岳に訪れます。

羅臼岳には羅臼側[羅臼温泉登山口]から登る登山道と、ウトロ側[岩尾別
温泉登山口]から登る登山道の2本があり、羅臼側登山道にある『屏風岩』と『お花畑』の付近は、特に遅くまで雪渓が残り、道に迷いやすい場所となっています。

そこで先日、林野庁の根釧東部森林管理署、羅臼山岳会の方々ご協力のもと、迷い込み対策を行ってきました。

山頂から下山する際、『屏風岩』の雪渓を道なりに下ると、登山道とは違う沢に降りてしまうという危険性があります。そこで、迷い込み防止のためロープを設置しました。とても迷いやすい場所のため、このロープ設置は毎年行っています。
また、遅くまで残る『お花畑分岐』付近の雪渓にも、コースを示す雪渓杭の
設置もあわせて行いました。


屏風岩を下るときは右方向へ

関係者のみなさんと協力して、雪渓にコースの目印となる杭を打ちました。


暖かい陽気に、日に日に雪解けは進み、雪渓の状況も刻一刻と変化している
ようです。でも、大きな雪渓が残る箇所もありますので、道迷いや、雪渓での滑落には十分注意してください。
また、雪渓上に限らず、悪天候時にはルートを見失いやすいこともあります。正確な地図読みや雪上技術、十分な装備が必要です。
事前に十分な計画と情報収集をして、安全な山行で知床の自然を楽しみましょう。
ぜひ羅臼岳にいらしてくださいね。


羅臼岳から連なる知床連山のひとつ【三ッ峰】

ページ先頭へ↑

2010年06月09日まだ間にあいます!

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

以前、このアクティブレンジャー日記で
「知床世界自然遺産登録5周年記念シンポジウム」の
開催をお知らせしました。
開催日は今週末、6月12日(土)と13日(日)に迫っています。

12日(土)は「知床世界自然遺産 登録から5年間の歩みと未来」、
13日(日)は「知床から小笠原へ 世界自然遺産地域の順応的な保全管理」と題し、それぞれパネルディスカッションが行われます。
また、12日(土)には水中写真家関氏による基調講演も行われます。

現在、たくさんの方々から参加の申込みをいただいています。
が、まだ申込みには間に合います!
みなさんのご参加をお待ちしています!

5月26日AR日記「5年の歩み」

知床観光物産展、パネル展も開催されます。

知床を見て、味わって、知って、考えてみませんか?


※申込み締め切りは6月11日(金)正午まで

ページ先頭へ↑

2010年05月26日5年の歩み

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

日本に世界自然遺産登録場所は何カ所あるでしょうか。
その中に知床が含まれているのはもちろんご存じ…ですよね?!

平成22年7月17日、知床は世界自然遺産に登録されて5年になります。
そこで、登録5周年を記念して6月12日・13日の2日間、横浜市で
「知床世界自然遺産登録5周年記念シンポジウム」が開催されます。

このシンポジウムでは、5年間の様々な取り組みやこれからの知床の姿について、知床に深く関わってきた方々と一緒に考えます。
また、平成5年に世界自然遺産登録された屋久島と白神山地、そして現在世界自然遺産の候補地となっている小笠原諸島に関係する方々と、自然遺産の保全管理について話し合います。
1日目には、知床の海を撮り続けている水中写真家関氏による基調講演も行われます。流氷漂う海の中はどんな世界が広がっているのでしょう。また、そこからはどんなメッセージが受け取れるのでしょう。素晴らしい写真とともに貴重なお話しを聞くことができます。

また、当日はパネル展、観光物産展も同時開催されます。
パネル展では、知床他4地域それぞれで行っている取り組みや、迫力満点の写真で自然の魅力を紹介します。物産展では、現地直送の知床の美味しい恵や、知床ならではの物産が直売されます。お近くの方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。

みなさんのお越しをお待ちしています。

※シンポジウムは事前申込みが必要です。詳しくは↓コチラ↓をご覧下さい。
http://c-hokkaido.env.go.jp/kushiro/pre_2010/0518a.html



流氷が育む豊かな海洋生態系は、遺産登録にあたって評価されている点です。


原始性の高い陸の生態系は、海の生態系と深い相互関係でつながっています。


知床の豊かな自然の恵みをうけて、命は循環しています。

ページ先頭へ↑

2010年04月07日春に向かって (※生々しい写真が苦手な方は注意してください)

知床国立公園 羅臼 木村 慈延

半年近くも続いた北海道の冬も、季節は春へと変わりつつあります。
少しずつ気温が高くなり、日当たりの良い場所では、雪に覆われていた笹やフキノトウが顔を出しています。

春はいつも以上に「命の循環」を目にする季節です。木々や草花は芽吹き、厳しい冬に耐えた動物には子が生まれ、また、一方で冬を越えられずに死んでゆく命も数多くあります。

目まぐるしい変化を迎える春・・・には少し時期が早いのですが、先日まさに命の循環を目の当たりにしました。発見したのはエゾシカの死体(※)に集まるキツネやカラスの姿でした。
(※エゾシカは積雪の多い場所では餌が採りにくくなり、体力の少ない若い個体や、繁殖期の秋にケンカに明け暮れたオス達は、新たな春を迎えられないことがあります。)



すぐ近くにいた私の姿を気にする事もなく、食事を続けるキタキツネ。
久しぶりのごちそうに、舌鼓を打っているのでしょうか!?
しかもその後満腹になったのか、シカの体の上で暖かそうに眠ってしまいました。




キツネが食事を終えると、今度はカラスたちが集まってきました。一団の中には、「カポンカポン」と独特の鳴き声を出すことで知られる、ワタリガラス(越冬個体・写真左)も混ざっていました。


********************************
このような光景は一見残酷なようにも見えますが、厳しい冬を耐え抜く野生動物達にとって、エゾシカの死体は重要な食料となり、食べる側の動物の命を支えています。こうした現場を目の当たりにすると、自然の中での「命の循環」は、「食う」、「食われる」の関係によって成り立っているということを、改めて強く実感させられます。

野生動物大国の知床にいれば、こうした光景も特に珍しいわけではないのですが、人間などには頼らずに、厳しい自然環境を生き抜く野生動物の姿には凄みがあり、知床という場所の特異さを改めて感じてしまいました。
********************************

◆知床に来る皆様へ
季節は春にまっしぐら・・・と言いたいところですが、まだまだ雪が降る可能性があります。道路が滑ることは十分に考えられますので、くれぐれもお気を付けてお越し下さい。

ページ先頭へ↑

2010年03月11日風の道ルサ 【自然観察会開催のご案内】

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

羅臼町市街地から約16㎞。北浜にルサという地があります。
そこは知床半島の山々がもっとも低いところ。
標高270mの最低鞍部から羅臼側にルサ川、斜里側のルシャ川が流れています。両方の川を結ぶ線は知床半島を横断するには最短の距離で、その昔アイヌの人々が半島を越える道として使っていました。

山から谷に風が吹き下ろされ、出口付近では強い風となります。
半島最低鞍部であるルサは、半島にぶつかる風が集約し、強風となって
河口へとおりてくるのです。

そんな風の道ルサ川には、強風に耐えながらも懸命に命をつなぐ生き物たちがたくさんいます。
水の多い土地を好むハンノキ類からミズナラ、ハリギリ、カエデ類、ダケカンバやトドマツなど、河川から山野にかけて樹木の移り変わりをみることもできます。枯れて水面に落ちるミズナラの葉は水生昆虫の大好物。そして、それらを食べて成長したサケは、海に降りて数年後、大きなお腹に卵を抱えて戻ってくるのです。それらはヒグマやキタキツネたちの重要な栄養源となり、命はつながっていきます。

春から秋にかけてたくさんの生き物たちの活気にあふれていたルサ。
真っ白な雪の世界に覆われている現在、生き物たちの気配すら感じとれないように見えます。
しかし、まったくいなくなってしまったわけではありません。
葉を落として寒さに耐えている樹木たちは、芽をふくらませ春を待ちわびているのです。雪上にはエゾモモンガの食痕や、恋の季節をむかえたキタキツネの忙しそうに歩き回る足跡、谷に身を寄せるオオワシやオジロワシの姿など、今だからこそ見られる景色があります。

来る3月20日(土)
ルサ川河口で、スノーシューで歩く自然観察会を行います。

昨年6月にオープンしたルサフィールドハウスで、ルサ周辺の地形の特性や歴史を簡単にレクチャーしてから野外に出発です。

さあ、どんな出会いがあるでしょう。


奧にルサのっこし(知床半島最低鞍部)がみえるルサ川河口


ダケカンバ林を歩きます。


この穴を使っている動物はだれかな?

ページ先頭へ↑

ページ先頭へ