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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園 ウトロ

220件の記事があります。

2016年12月19日今だ、発動せよ、知床半島ヒグマ管理計画

知床国立公園 ウトロ 桑原 靖則

 今年の道内はまとまった雪が降るのが早く、人間に限らず動物たちも冬支度に追われているのでしょうか。ヒグマなどはもう冬眠しているかもしれません。

ヒグマらしきが見えるヒグマがいた

してなかった

 川の河口などは雪も少なく、サケのホッチャレ(産卵を終えて瀕死のサケ)が泳いでいます。こういった食べ物がある限りヒグマは冬眠せず、寒さに耐え、ギリギリまで餌をとり続けると聞きます。

 この忘年会シーズン、私もギリギリまで料理を食べ続け食品ロスを減らしていきたい知床国立公園・ウトロの高橋です。(30・10運動に賛同しています

 さてヒグマと言いますと、去る12月4・5・6日の3日間にわたり、知床半島にある3つの自治体、標津町・羅臼町・斜里町で「知床半島ヒグマ管理計画」についての住民説明会が開催されました。最終日の斜里町民向け説明会は、ウトロにある知床世界遺産センターが会場です。

ヒグマ管理計画住民説明会を開催しました

斜里町外からも含め、約30名の方がご参加くださいました

 「知床半島ヒグマ管理計画」......物々しい響きですが、かいつまんで言いますと「知床半島の住民が、この先5年間、ヒグマとどう折り合いをつけていくか」、その方法を具体的にまとめたもので、2012年に策定された「知床半島ヒグマ保護管理方針」の改訂版にあたります。

 ヒグマ管理計画の目的は2つあります。

1. 住民の生活・産業を守り、来訪者の安全・自然体験の場を確保する

2. ヒグマの生態・個体群を将来にわたって持続的に維持する

 と、このように人の利益だけではなく、ヒグマにとっての利益も目的に掲げています。人とヒグマの間の軋轢を減らし、より良い関係を築くことを目指しています。

 住民説明会では最新のヒグマ出没状況やこれまでの課題、そしてヒグマ管理計画の概要が説明されました。

管理計画の概要を説明する前田自然保護官

管理計画の概要を説明する前田自然保護官

 過去5年間を振り返ると、未曾有のヒグマ大量出没&大量捕獲、激やせヒグマが全国ニュースで報道、食品ゴミやサケの不法投棄、観光客やカメラマンがヒグマを取り囲んで写真撮影、釣り人がヒグマに物を奪われる、等々......他にも色々なことがありました。これらを通じて2016年現在、最も問題視されているのが「繰り返し人前に出てくるヒグマの出現」です。こういったタイプのヒグマの存在が、追い払いや捕獲件数のわりに、危険事例の発生や出没件数が減らない大きな原因になっています。

 今回のヒグマ管理計画では、この繰り返し出てくるヒグマに関連した対策が盛り込まれており、今後5年間のキーポイントになっています。具体的には次の3つになります。

1. 人間に対する働きかけの強化

2. 繰り返し出没するクマへの働きかけ

3. 目標の再設定、モニタリング体制の強化

 クマへの働きかけ以上に、人間に対する働きかけに力を入れた内容になっています。これは、過去5年間のヒグマとの軋轢の中でうまれた「クマを変えようとしても簡単ではない。人が変わる方が早いし効果的だ」という考えからです。そして何より「繰り返し人前に出てくるヒグマ」の出現の陰には、人間側にも不適切な行動があったためです。そういった過去の事例に学び、知床半島というエリアならではの「人間側の問題行動・人間側に求められる行動」をとりまとめ、具体的に明文化したのが本計画最大の特徴です。

不適切な行動・求められる行動

管理計画では、具体的な人間側の問題行動を挙げ、立場によって求められる行動を定めている

 今回の住民説明会でいただいた意見を踏まえ、来年3月までに「知床半島ヒグマ管理計画」を正式に決定します。その後は同計画に基づき、2017年から2022年までの5年間、知床半島のヒグマ対策に関連した諸活動が進められていきます。我々同様この知床半島に暮らし、時に恐ろしく、時に憎らしく、時に愛らしい隣人もとい隣獣ヒグマ。5年後、彼らとより良い近所づきあいができていることを望んでいます。

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2016年11月29日初冬の知床

知床国立公園 笠井 憲子

 知床連山は雪化粧を施し、冬の装いとなっています。知床国立公園です。

 雪が降り始め、知床峠やカムイワッカ湯の滝への道路は冬季閉鎖となりました。

 観光客の姿も減っていき、閑散としています。

 こんな時期だからこそ、万が一に備えて訓練をしました。

 知床五湖園地内で地元ガイドさん達や知床五湖フィールドハウスのスタッフとで、救急搬送の訓練です。

 ザックを使用しての背負い搬送

 担架を使用しての搬送

 搬送される前田R

 様々な場面を想定しながらの搬送訓練でした。

 背負い搬送は体格差がある場合は厳しいなど反省点もありましたが、色々な搬送用具を使用しての訓練は大変勉強になりました!

 知床五湖フィールドハウスに常備している救急用具の確認にもなり、ガイドさん達からも有意義であったと感想がありました。

 知床五湖園地は112515:00に閉園いたしました。

 しばし静かな知床となりますが、1月末頃の流氷の訪れと共に賑やかになって来るでしょう。

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2016年09月30日「ちょっと川の様子を見に行ってくる」

知床国立公園 ウトロ 桑原 靖則

 まさかもう、9月が......終わる......!?

 今年は台風に次ぐ台風で、雨に降りこめられているうちに夏が終わってしまった感のある知床国立公園・ウトロの高橋です。冬の爆弾低気圧による暴風雪には慣れましたが、夏にこんなに台風が直撃するのは初めてです。北海道は台風来ないんじゃなかったのかー!!!

 

 さて、嵐の日の決まり文句と言えば「ちょっと川の様子を見に行ってくる」ですが、我々も8月から10月にかけ、近隣の河川へ巡視に行きます。何を見に行くかというと......。

 

ウトロの町と知床国立公園の境界を流れる幌別川

ウトロの町と知床国立公園の境界を流れる幌別川

 

 ウトロの町外れにあり、知床国立公園との境界線となる幌別川。その河口では8月中旬頃からカラフトマスが遡上を始めており、マス釣りの人々で連日大盛況です。しかしマスを狙うのは釣り人だけではなく......そうです、ヒグマです。今まで蟻などを舐めてギリギリ口を糊していたヒグマ達ゆえ、マスの遡上は待ちかねた瞬間なのでしょう。人がいようが爆竹を鳴らされようが、退かず、媚びず、省みない、覚悟が完了している個体が居着いて、釣り人とヒグマの接近遭遇トラブル(釣り人が自転車のサドルを壊される、ザックを奪われる、釣ったマスを奪われる等々)が連日発生していました。

 

 環境省や林野庁、北海道、斜里町、知床財団ら行政関係者で構成され、知床におけるヒグマ関連の諸問題に連携して対応にあたっている「知床ヒグマ対策連絡会議」では、今回の事態を重く受け止め、このままエスカレートしていけば人身事故発生待ったなしであるとして遂に「幌別川河口への立ち入りを当面禁止する」という緊急措置を決定したのでした。

 

立入禁止の看板とロープが設置された幌別川河口

立入禁止の看板とロープが設置された幌別川河口

 

 巡視をしていて感じるのは、ベテランから初心者の方まで、知識や意識にだいぶ差があるということです。声をかけると「知ってる知ってる、全部ちゃんと持って帰るから」と魚の残滓が入ったゴミ袋を見せてくれる方がいる一方で、川辺に血のついたエラや内臓が散らばっていたり......。シーズン中は毎日入れ替わり立ち替わり大勢の釣り人が昼夜問わず訪れるわけで(良い釣り場所をとるために深夜1時~2時から河口に向かう方も!)、人によって知識・意識がまちまちなのもしょうがないのかもしれません。

 

釣り人でにぎわう日中の幌別川河口。朝夕のマズメ時には人が倍増する(らしい)

釣り客でにぎわう日中の幌別川河口。朝夕のマズメ時には人が倍増する(らしい)

 

 とはいえ「これぐらい、大丈夫だろう」という行動が積もり積もった結果、ヒグマが人と食べ物を結びつけて学習してしまうと、もはや釣り人だけに限った話ではなくなり、まったく関係のない人々までヒグマに襲われかねません。よって緊急措置として今回の立入禁止になったのですが......。大多数の良識ある釣り人、これまでルールを守って釣りをしてきた皆さんの立場になってみれば、ごく一部の心ない方のためにバッサリ全面立入禁止とは納得いかん!という気持ちは想像に難くありませんし、正直、個人的にも共感してしまうところです。

 

 この立入禁止措置を受けて、地元の方を含む幌別川常連の釣り人達から「今回の立入禁止に関して説明を受け、話をする場を設けてほしい」という声が上がり、去る9月8日、釣り人達との意見交換会が開かれました。

 

地元釣り人と行政関係者間でおこなわれた意見交換会

 

 長年、幌別川で釣りに親しんできた地元釣り人達の思い、現場でヒグマ対応に追われる職員らの葛藤等々、活発かつ建設的な意見が交わされ、最終的に次の3つをおこなうことで幌別川の立入禁止解除を検討する方向で結着したのでした。その3つとは......

 

1. 釣り人らで団体を立ち上げ、ルールの周知・違反者への注意をおこなうこと
釣り人ら有志による団体「幌別の釣りを守る会」を立ち上げ、上記2点を含む幌別川の安全な釣り利用のルールについて、釣り人同士で周知しあう。ルールに違反している場合は注意し、改善を促す。

 

2. サケマスの残滓は投棄せず、回収ボックスに入れること
幌別川河口にサケマス残滓回収ボックスを設置し、さばいた内臓等はすべて臭いが出ないようビニール袋等に入れた上で、このボックス内に保管するなど管理を徹底し、ヒグマを誘引しないようにする。

 

3. 荷物の管理を徹底する
荷物を肌身から離さず管理して、ヒグマに奪われないようにする。

 

 

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 9月16日、幌別川の立入禁止が解除される日が来ました。河口の手前には、ヒグマでも破壊不可能な鋼鉄のサケマス残渣回収ボックス「とれんベア」が設置されています。その隣に新たな幌別川利用ルールを示した大看板が、「幌別川の釣りを守る会」会員らと行政関係者らによって打ち立てられ、立入禁止の立札とロープが回収され、晴れて再び幌別川の釣り利用が解禁となったのでした。

 

幌別川河口に設置された大看板

関係者らによって幌別川河口に設置された大看板と「とれんベア」

 

 「釣り人とヒグマの問題」は、毎年サケマス遡上の時期になると繰り返されてきました。知床では人とヒグマに関わる課題がいくつもあります。あちらを立てればこちらが立たないような難題ばかりの中、今回の一件のように行政だけではなく、利用者も含めたすべての関係者が話し合い、協力しあって建設的な方向に前進したのは、とても素晴らしいことだと感じています。もちろん今回設置された残滓回収ボックス等々も正しく使用されなければ元の木阿弥......ですが今後「ちょっと川の様子を見に行ってくる」のが楽しみになりました。

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2016年07月13日海鳥WEEK2016!7/16(土)~7/31(日)

知床国立公園 ウトロ 笠井 憲子

 夏です!海鳥です!ウトロの夏イベント海鳥WEEKです!

 今年も海鳥WEEKの季節がきました。

 絶滅危惧種のケイマフリをはじめとした海鳥を通して、知床の海の環境保全と適正利用を考えていく海鳥WEEK2016が開催されます。

 海鳥WEEKは、知床ウトロ海域環境保全協議会が実施しており、当ウトロ自然保護官事務所も参画しているイベントです。

 海鳥WEEKの期間は、7/16(土)~7/31(日)。イベントが盛りだくさんです。

 ・海鳥サンセットクルーズ(夕暮れ時に出航する海鳥WEEK限定ツアー)

 【日時】7/30(土)17:40出航~18:40帰港

 【参加費】3,000円(要予約)

 【申込先】知床小型船協議会 事務局TEL:0152-24-3231

 【特典】海鳥ハンドブックプレゼント!双眼鏡レンタル無料。

     海鳥の観察がゆっくりできます。

 ・うみどりトーク(海鳥の専門家による解説トーク)

 ≪大型観光船おーろら号船内にて≫」

 【日時】7/22(金)・7/27(水)硫黄山航路8:15出航~9:45帰港(乗船料3,100円)

     7/24(日)・7/26(火)知床岬航路10:00出航~13:45帰港(乗船料6,500円)

 ※観光船おーろら号に乗船した方が対象となります。

 ≪ウトロのホテルにて≫

 【日時】7/21(木)20:00~21:00 知床グランドホテル 北こぶし

     7/23(土)20:30~21:30 知床第一ホテル

     7/25(月)20:00~21:00 知床プリンスホテル

     7/26(火)20:00~21:00 ホテル知床

 【入場料】無料

  ※宿泊者以外の方も、自由に参加できます。

 ・企画展「知られざる海の鳥たち」

 【日時】4/20(水)~9月末 8:00~17:30

 【場所】知床自然センター

 【入場料】無料

 ・知床海の写真展

 【日時】7/16(土)~8/10(水) 8:30~17:30

 【場所】知床世界遺産センター

 【入場料】無料

 http://dc.shiretoko-whc.com/keimafuri/panf/index.html

 知床で海の環境について考えてみませんか?

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 https://www.facebook.com/shiretoko.keimafuri

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2016年06月13日2016年6月、あなたの携帯トイレブースが目を覚ます

知床国立公園 ウトロ 高橋 優太

 知床半島の中央を走る知床連山、その主峰・羅臼岳の山開きが、今年も7月の第一日曜日に執り行われます......さすればいよいよ夏山!!!夏山シーズン到来です!!!知床国立公園・ウトロの高橋です!!!!(山の話題なので興奮しています)

 

銀冷水から羅臼岳を望む

今のところまだかなり冬山です(6/6時点)

 

 これに先立ち、羅臼岳登山道の巡視をおこないました。「登山道の巡視」......アクティブレンジャーの仕事の中で最も血湧き肉躍るのがこの登山道巡視と言っても過言ではありません。(※個人差があります)ウトロ自然保護官事務所では、登山道の巡視を夏季6月から10月にかけ月1・2回程度実施しているのですが、6月上旬の今回がシーズン最初の登山道巡視になります。

 

大沢を羅臼平に向かう

血湧き肉躍らせた益荒男達が突き進む

 

 さて山中で具体的に何をするのかというと、

 

        •  ・ 登山道への倒木や、道標といった設備に破損がないか点検する
        •  ・ 雪渓の残り具合や、道迷い多発エリアの現状を把握する
        •  ・ 自然景観や動植物、利用状況等の情報・資料を収集する
        •  ・ 高山植物の盗掘など、違反事例がないか確認する
      •  

等々ありますが今回の巡視中、最も大きな作業といえばやはり「携帯トイレブースの開放準備」でしょう!

 

携帯トイレブース(冬囲い中)

携帯トイレブース(冬囲い中)

 

 羅臼岳の岩尾別登山口から3時間ほど登ったところに銀冷水という水場があります。そこに携帯トイレを使用するためのブース、木造の小屋が常設されているのですが、冬前には知床の厳しい氷雪に耐えられるよう冬囲いをしています。これを元に戻して、使用可能な状態にするのが今回の作業です。

 

携帯トイレブース(開放中)

携帯トイレブース(開放後)

 

 一見、「ブルーシートをとっただけでは?」と思われるかもしれませんがこのトイレブース、利用者が快適に用便できるようにするためのギミックを仕込む作業もおこないます。画像だと今ひとつ伝わらないのが哀しい......。

 

トイレの床面を網状にする工夫

ギミック(1): 通気を確保し、「万が一こぼした」際の被害を軽減する網状の床

 

プライバシーを確保する仕切り

ギミック(2): 仕切りでプライバシーを確保する、男性用の携帯トイレ朝顔

 

 ちなみに携帯トイレをセットすると下のような感じになります。

 

携帯トイレを便器にセットする

 

 「携帯トイレのパッケージを開けて、便器にセットする」というワンアクションが必要になりますので、我慢の限界が近い場合はご注意ください。

 

 この夏、羅臼岳への登山をご予定の方は、是非とも携帯トイレを装備に加えたうえで朝食をモリモリ食べて入山し、携帯トイレブースのギミックを体感してください!!!

 

 

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 ※ 携帯トイレは岩尾別登山口の最寄りで販売(木下小屋)、回収(ホテル地の涯駐車場)している  他、下記の場所でも販売・回収しています。

 

● 羅臼岳近辺の携帯トイレ販売場所

 【斜里町内】

 ・木下小屋 ・ホテル地の涯 ・岩尾別ユースホステル

 ・知床自然センター ・知床五湖パークサービスセンター

 ・知床世界遺産センター ・道の駅うとろ・シリエトク

 ・セブンイレブン(ウトロ)

 

 【羅臼町内】

 ・羅臼ビジターセンター ・むらたスポーツ

 

● 携帯トイレの回収BOX設置場所

 【斜里町側】

 ・岩尾別登山口(ホテル地の涯駐車場)

 ・硫黄山登山口(道道沿い)

  ※ 無料回収(協力金箱を設置しています。ご協力をお願いします。)

  

 【羅臼町側】

 ・羅臼温泉野営場

  ※無料回収

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2016年05月16日白樺、青空、南風

知床国立公園 ウトロ 高橋 優太


満開のエゾヤマザクラ

 灰褐色だった山肌に新緑が芽吹き、枯野が青々と草花で覆われ、これはまぎれもなく......春到来!!!!と思ったらゴールデンウィークは大雪でした。車の冬タイヤはGW明けまで換えない知床国立公園・ウトロの高橋です。

 

 4月20日の知床五湖開園を皮切りに、今年も知床の観光シーズンがスタートした感があります。

 

知床五湖・地上遊歩道の除雪

知床五湖の一年は除雪から始まる

 

 毎年知床五湖の開園日に先だって実施しているのが、遊歩道の除雪作業です。地元のネイチャーガイドの皆さんや、園内の運営を担う知床財団の皆さん、斜里町役場・北海道庁・環境省といった各行政機関関係者らが総出で、冬の眠りについている知床五湖を叩き起こすが如く除雪をおこなうのが慣例になっています。

 

 この冬は降雪が少なかったため、「今年は除雪が楽でいいね」などと言っていたのですが、帳尻を合わせるように連休初日から季節外れの大雪が降り、道路が閉鎖され、これに伴って五湖も連休前半は生憎の閉園続きでした。

 

白銀の知床連山

大雪のおかげで白銀の輝きを回復した知床連山

 

 知床五湖に続いて開くのが「知床横断道路」です。その名の通り、知床峠を越えて半島を横断しウトロと羅臼を繋ぐこの道路。冬の間、車で2時間半かかっていたウトロ~羅臼間をその5分の1、30分の距離に短縮してくれます。

 

知床横断道路開通式

今年も無事開通を記念して開通式がおこなわれました

 

残雪の羅臼岳

知床横断道路から知床峠に登り、残雪の羅臼岳を望む

 

 知床峠は暖かい日差しにウグイスの鳴き声が響き、なんとものどかな雰囲気。ですが残雪の上を吹き渡ってくる風は冷え冷えとして、冬の名残を感じさせます。峠から見える羅臼岳・南西ルンゼの広大な雪渓には、春のザラメ雪を楽しむバックカントリースキーヤー/ボーダー達の姿が......(うらやましい)。

 

海に向かって続くオープンバーン

山腹から海に向かってオープンバーンが続く

 

 日一日と暖かさを増していく知床はこの後、6月にカムイワッカ湯の滝への道路が開通、7月に羅臼岳の山開き、と続いていよいよ夏のハイシーズンに突入します!知床の夏はとても短いものですが、動物も植物も長い冬を堪え忍んだ分一気に燃え上がるかのような、濃密な夏......それはまるで、儚い一夏の恋にも似た――今年の夏休みは是非、知床でアバンチュールを体験してみませんか!!!!

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2016年03月07日May the ice be with you.

知床国立公園 ウトロ 高橋 優太

 今年は暖冬と聞いていますがここ知床ウトロも然り。例年に比べて降雪が少なく、晴天の日が続いています。昨年のドカ雪(ウトロの観測史上最高となる積雪200cmを記録)を思えば、生活しやすさの点では暖冬はありがたいのですが、重大な問題が一つ―流氷が来ないッ!!!来ないと困る知床国立公園・ウトロの高橋です。

 

沖合に見える流氷

来そうで来ない流氷(画像中央)

 

 網走地方気象台が発表した今年の「流氷接岸初日」は2月22日と、1959年の統計開始以来最も遅いものとなりました。例年ならば1月下旬には接岸している印象があるのですが、今年はウトロの海が流氷に覆われたのは2月に入ってからでした。

 

流氷に覆われたウトロ近海

流氷にガッツリ覆われたウトロ近海

 

 なかなか来ない流氷に対し、来なくていいのにきっちり来るのがそう、暴風雪です。今年も2月29日・3月1日と道東沿岸を大型の低気圧が通過して、最大瞬間風速30mの吹雪&1m先すら見えないホワイトアウト、追突事故多発、道路閉鎖、そして陸の孤島――。

 

閉鎖された道路

閉鎖されたウトロ唯一の出入口

 

 とは言うものの、もはや冬の低気圧で道東が大変なことになるのは毎年恒例なので、良いのか悪いのかすっかり慣れてしまいました。

 そんな暴風雪で外に出られない時に何をしているのかというと......

 

スタイロフォームを削る高橋

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!」

 

遠目から見たスタイロフォームを削る高橋

(スタイロフォームを削っています)

 

スタイロフォームを削る笠井AR

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

遠目から見たスタイロフォームを削る笠井AR

(スタイロフォームを削っています)

 

と、主にスタイロフォーム(※発泡スチロールに似た建築資材)を削っています。

 

 削るとどうなるのか?上の私、高橋が削っているものは海鳥ケイマフリの巣の模型に、下の笠井ARが削っているものは知床半島のジオラマになります。これは当ウトロ自然保護官事務所も参加する「知床ウトロ海域環境保全協議会」の活動の一環で、ウトロの海についての展示物を制作しているところなのです!4月20日、新装オープンする知床自然センターで公開されますので、乞うご期待!

 

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 ここ数日で異様に気温が上がったところに雨まで降り、もの凄い勢いで雪解けが進みました。折角やってきた流氷も、早々に海の藻屑となってしまうのでは......と一抹の寂しさを覚えますがしかし、流氷が解け、海中に植物プランクトンが解き放たれることは、知床の豊かな生態系を育む最初のステップでもあります。流氷は消えてなくなるのではなく、姿形を変え、知床に生きる動植物達の胸の中に......May the ice be with you.

 

 知床の新たな一年がまた、始まろうとしています。

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2016年01月29日海ワシ展開催中!

知床国立公園 笠井 憲子

 冬です。知床への流氷の接岸はもう少しですが、ワシたちは来ましたよ。

 ワシたちが来たことに併せて、知床世界遺産センターでは『海ワシ展』を開催中です。

 入口をくぐると、オオワシのハンズオン(触れる展示)がお出迎えしてくれます。

 オオワシとオジロワシの見分け方が学習できるコーナー。

 尾の形や滑空する翼の見え方で見分けて下さい。

 昨年に引き続き『あなたはどっちが好き?オオワシ対オジロワシ』も行っております。

 皆さんの投票により、人気のワシがわかる参加型の企画。どんなとこが好きなのか。ワシ愛を語っちゃって下さい。投票は始まったばかり、スペースはまだまだあります。1月29日現在、10対11でオジロワシが僅差で優勢となっております。

 生息状況調査の結果も速報が掲示されています。私たち、アクティブレンジャーが調査しているデータの公開です。

 これから2月に向かって、ワシたちの数はどんどん増えてくるはずです。

 今年の新しい企画『ワシをさがせ!』は、アクティブレンジャーが行っている調査を疑似体験できます。

 写真のどこかにワシがいます。探してみて下さい。難しい問題もありますよ。ぜひ、挑戦してみて下さい。

 開催期間:平成28年1月16日(土)~平成28年4月上旬ごろまで

 開館時間:9時00分~16時30分(毎週火曜日休館)

 知床にお越しの際は、知床世界遺産センターにもお立ち寄り下さい。

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2015年11月11日一つ積んでは道のため、二つ積んでは穴のため

知床国立公園 ウトロ 高橋 優太

 三寒四温ならぬ三寒一温ぐらいのペースで冬に向かって一足飛びな感があります、知床国立公園・ウトロの高橋です。知床の山々も稜線に白く雪がつき、スキー板へワックスをかける手に力がこもる季節になって参りました。

 

 そんなわけで先日、夏山納めも兼ねまして、羅臼岳・銀冷水に設置されている携帯トイレブースの冬じまいに行ってきたのですが......


登山道に開いた穴

 

 おお、なんということか、登山道に大きな穴が!!!!!深いところでは大人の腹から胸の高さほどもあります。10月上旬に歩いた時はこんな穴は無かったので、中旬に襲った暴風雨の影響でしょうか。穴の底は大きな岩が転がりまるでポットホール、穴の周りは砂混じりの軟弱な土壌で触れただけでボロボロと崩れる有様。これでは春先に大量の雪解け水が流れたらどこまで大穴が広がることか......。

 

補修作業参加者

  

登山口に十傑が集う

 

 ということで急遽、登山道の補修をおこなうことに決定!

 地元の山岳関係者の方々に協力をお願いすると、林野庁や山岳ガイドの皆さんが快諾してくださり、その数総勢10名!雪が積もり始め、日も短くなってきた中で作業期間は1日のみ。

 厳しい条件ではありますが、「背負子」を背負うと気合いが入ります。

 

 「背負子」――それは歩荷(ボッカ)の代名詞。今回の登山道補修は、「石を運んで穴に詰める」という単純にして明快なソリューションです。オレ達の夏山はまだまだ納まらんぞ―――ッッ!!!!!

 

土嚢袋に石材を詰める

 

夏山を納めたくなる寒々しさ

 

 

 作業はまず土嚢袋に石を詰めるところから始まります。登山道上には雨で流されてきた浮石がゴロゴロしているため、これらを集めて再利用します。雪を被って濡れた土石は冷え冷えとして、薄い作業手袋一枚しか持ってこなかったことが悔やまれます。

 

背負子で石を運搬する

 

背負子が火を噴く

 

 次に袋詰めの石を背負い、埋める穴まで運びます。欲張って沢山背負おうとしたら、重すぎてまったく立ち上がれません。うーんなるほど、さすが石だ!!!雄叫びをあげても気合いを入れても3袋背負うのが限界です。

 

土嚢袋を穴に敷き詰めていく

 

石の土嚢で埋めていく

 

 さて穴まで石を運んだら、いざ施工!穴の中に石入り土嚢を積み、固め、間に石や砂利を入れて水平にならして、さらに積みます。本格的な石組み工ができれば一番良いのですが、技術と経験と時間が必要になってしまう......よって今回はあくまで春先の雪解け水対策に絞った応急補修、とにかく水に負けないよう物量作戦で穴を塞ぎます。

 

施工前 / 施工後の比較

 

か、完成した......(施工前→施工後)

 

 さらに雨水を登山道外へ逃がす排水路も掘り直して、よし!これだけやれば雪解け水がザブザブ流れても大丈夫!かどうかは約7ヶ月後、来年の春に分かります。果たして登山道、穴、土嚢の運命や如何に!!!

 

参加者みんなで記念写真

 

冠雪した羅臼岳をバックにお疲れ様でした

 

 今月11月4日にはカムイワッカへのゲートが閉鎖となり、続く9日には知床峠へ続く知床横断道路が、そして25日には知床五湖が冬期閉園になります。秋が深まり冬の足音が近づくにつれ一抹の寂しさを感じつつ......厳冬期・白銀の知床がすぐそこまでやって来ていると思うと、つい顔がニヤけてしまう今日この頃です。

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2015年09月18日知床連山は秋色?

知床国立公園 ウトロ 笠井 憲子

 1泊2日の行程で硫黄山から羅臼岳へと知床連山の巡視に行ってきました。

 知床連山の縦走路は秋色に色づいています。

 ハイマツの緑の中に赤や黄色、オレンジの秋色。

特に二ツ池周辺の紅葉が見頃を迎えておりました。

 日差しが出ていれば、ぽかぽかと暖かいのですが、吹く風はひんやりと秋のもの。

 動いていないと、肌寒く感じるときもありました。

 秋らしく色づいている高山植物たち。

 秋の実りも感じられました。

 

 左上:ウラシマツツジ(手前)とチングルマ(奥)  右上:コケモモ(実)

 左下:エゾオヤマリンドウ  右下:ハイオトギリ

 一転して、羅臼岳方面から下山途中の大沢付近は季節が逆戻っているようでした。

 左上:エゾツツジ 左上:ジムカデ

 左下:チングルマとエゾノツガザクラ 右下:ミネズオウ

 初夏に見られる花たちが、まだ咲いています。

 大沢付近は、秋ではなく初夏?

 今年の大沢は最近まで雪渓があったため、雪渓の雪解けを待ち構えていた花たちが大急ぎで、咲いているようでした。

「早くしないと、雪が降っちゃうよ。」と言いたくなります。

 今回の巡視では、ヒグマとの遭遇はありませんでしたが、あちらこちらに熊糞がモリモリと落ちており、「俺はここにいるゾ」というヒグマの主張が感じられました。

 知床で登山をする際には、事前に情報収集を行うと共に、ヒグマに出会わないために声を出したり、音の出るもの(クマ鈴など)を身に付けたりしてヒグマに人の存在を知らせながら歩きましょう。

 ヒグマ対策情報

 知床半島先端部地区でのヒグマ対策-環境省

 https://www.env.go.jp/park/shiretoko/guide/sirecoco/bear02/

 ヒグマ対処法 公益財団法人 知床財団 自然センター

 http://www.shiretoko.or.jp/library/bear/

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