知床国立公園 ウトロ
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2011年11月11日オオワシ・オジロワシ調査
知床国立公園 ウトロ 山本 雄
斜里町・知布泊~岩尾別の間でワシの飛来状況の調査です。長期に渡って状況を調査することで、渡来数の変動などを分析することが目的です。
調査対象のオオワシ・オジロワシは、天然記念物に指定されており、また絶滅危惧II種(絶滅の危険が増大している種)にも指定されています。
調査は、二人一組で行います。一人は運転手、一人は調査者です。
知府泊から岩尾別まで車を徐行させながら、空を飛んでいるワシ、木に留まっているワシ、そして今後は流氷上にいるワシも探します。
ワシかな、という鳥を発見したら、車を止めて双眼鏡などで確認をします。
確認をした時間、場所、オオワシかオジロワシか、成長か幼鳥か、何をしていたか、を記録します。
そのようにしてワシを探しながら、海岸を約30kmに渡って調査していくのです。
今期一回目の調査では、2羽のオジロワシ(成長と幼鳥)を確認しましたが、今週は10羽ほどのオオワシ・オジロワシを確認しました。

(調査の様子 幌別川)
過去にはちょうど渡りの日にでくわし、50羽近い数のワシを確認したこともあったようです。
(過去のAR日記 http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2010/11/652.html もご覧になってみてください)
夏をロシア(サハリンやカムチャッカ)で過ごしたワシたちが、冬になると渡ってきます。北海道の中でも、知床では多くのオオワシ・オジロワシを見ることができます。流氷と並んで、冬の目玉の一つとなっています。
現在、知床世界遺産センターでオオワシ・オジロワシに関する展示を行っています。
展示パネルにて、調査データを公開・更新していきますので、知床にいらっしゃる方は是非ご来館ください。
2011年10月27日道路閉鎖のまとめ
知床国立公園 ウトロ 山本 雄
まず、カムイワッカ湯の滝へと続く、道道39号線の知床公園線。
知床五湖の手前を右に折れていく道ですが、ここが11月2日(午前11時)に閉鎖となります。カムイワッカ湯の滝へは11月2日から行くことができなくなります。
次に、知床峠。
ウトロと羅臼をつなぐ国道334号線は、すでに夜間閉鎖は始まっており(10月24日からは17時~翌朝9時まで閉鎖、11月1日からは15時~翌朝10時が閉鎖です)、完全閉鎖は11月7日~となっています。(その前に雪が降るなど、天候によっては閉鎖の日が早まることもあります)

そして、知床五湖と岩尾別登山口。
知床五湖へ通じる道道39号線が、11月25日(午前11時)から閉鎖されます。知床五湖と羅臼岳に登る岩尾別の登山口へ行くことはできなくなり、行くことができるのは岩尾別までになります。
これから旅行を予定している皆様、ご注意ください。
多くの観光客で賑わっていた知床も、すっかり落ち着いています。今なら夏とは違う静かな知床を楽しむことができるのではないでしょうか。
これからはワシの渡りも見られるようになるでしょう。(私たちも11月からワシの調査をおこないます)
2011年10月17日第三回 しれとこ科学教室
知床国立公園 ウトロ 伊藤典子
題は「海と森のつながりを取り戻せ」
世界遺産として認められた知床の自然の特徴・価値の一つは、「サケ類がのぼる川が結ぶ海と陸とのつながり」。つながりを取り戻すことが、世界遺産登録の約束でした。
さて、この「つながり」ですが、結ぶ役目をしているのは、この川を遡上するサケ類です。しかし、このイワウベツ川には六基のダムがありました。ダムがあるとそれより上流にサケは上がることが困難、または、できなくなってしまいます。そこで、5年前から改良を始め、昨年の秋に六基全ての工事が完了しました。今回の科学教室では、その改良したダムを、現地で実際にみながら説明をききました。始めに座学を行い、河川の本来のあるべき姿や、遺産地域内にあるダムの改良前と改良後の変化等を確認しました。そしてダムを改良することによって、サケがより上流にいき、産卵をしていることが確認できたと報告を受けました。
座学の後は実際に改良したダムの確認です。写真のダムは、真ん中の部分を空けることにより、サケの遡上が可能になりました。また、実際に上流まで遡上しているサケの姿も確認し、取り戻したつながりを実際に目で見ることができました。
さて、ダムとは関係ないのですが、面白かったのが、イワウベツ川の上流部にある支流である赤イ川・白イ川という川。その名の通り、赤い色と白い色をしています。赤イ川の方にはその成分のためか、サケは遡上しないようです。白イ川へは力強く遡上するサケの姿がありました。
2011年09月29日「知床岬漂着ゴミ展示」 その2
知床国立公園 ウトロ 山本 雄
その一画に、「漂着ゴミを持った感想 / 知床へのメッセージ」という、掲示板を作っています。
最初は果たして書き込んでくれる人がいるだろうか、と不安でしたが、9月の連休で多くの方が来館し、掲示板に思いを書き込んでくださいました。
来館してくださった方からの反応があるというのは、とてもうれしいことです。
その感想の一部を紹介したいと思います。
「仕事が廃棄物関係なので、興味深く拝見しました。漂着ゴミの問題は周辺国との絡みもあり、解決は難しいかもしれませんが、解決に向けて一歩ずつ努力していかなければなりませんね」
「ゴミのない知床 私はゴミをホテルまで持って帰った」
「きれいな町だからたいせつにしたほうがいい」
「ごみを持って、重たいごみがいっぱいあった。いろんなこわれた物があったから、知床をきれいにしたい」
「ごみがたくさんあるのは、「ある」んじゃなくて「捨てる」から。観光で来る人も地元の人も、みんなが協力すればもっと減るはず。みんなでゴミのない地域を目指したいです」
遺産センターを訪れる予定の方には、ゴミの展示だけでなく書き込んだ方々のメッセージもぜひ読んでもらいたいと思っています。
漂着ゴミの問題は多くの地域にあると思います。また、ある地域の漂着ゴミの問題は、その地域だけの問題ではありません。
海に囲まれた日本は、どこの場所も海によってつながっているのです。
解決をするためには、一地域の取り組みだけではなく「つながり」が必要となってくるでしょう。
この展示や掲示板で漂着ゴミの解決方法が見つかるなどと思ってはいませんが、解決に向けた気持ちのつながりを広げることができたらいいなと思っています。
「知床岬漂着ゴミ展示」は、10月20日までの予定となっています。
ぜひご来館ください。
2011年09月16日「知床岬漂着ゴミ展示」
知床国立公園 ウトロ 山本 雄
ただいま、知床世界遺産センターで、「知床岬漂着ゴミ展示」を行っています。
世界自然遺産・知床でも、海岸に多くのゴミが漂着しています。
ウトロ側では、地元のボランティア・知床の海岸をきれいにし隊(赤沢歩代表)が取りまとめを行い、何年にも渡って海岸のゴミ清掃(全て手作業!)を行っています。岬地区までの船も地元ボランティアの方です。
そうした活動や、知床の漂着ゴミの現状を多くの方に知っていただきたいと思い、この展示を企画しました。
展示を考えるにあたっては、漂着ゴミを実際に設置することにし、せっかくならボランティアの方々が運んだのと同じ状態で、持つこと・担ぐことができる展示にしようと話し合いました。
また、掲示板を設置し、漂着ゴミを持った感想や、展示を見て「もっとこんな知床になったらいい」などのメッセージを書き込めるようにしました。
来館した皆様の考えや感想を、分かち合うことができたらいいなと思っています。
「知床岬漂着ゴミ展示」の開催期間などの詳細は以下の通りです。
開催場所 : 知床世界遺産センター
(道の駅「うとろシリエトク」となり)
開催期間 : 平成23年9月9日(金) ~ 10月20日(木)
開催時間 : 8:30~17:30
お問い合わせ : 知床世界遺産センター 0152-24-3255
お時間のある方はぜひ、知床世界遺産センターにご来館ください。
知床世界遺産センターでは、知床に住む動物の実物大の写真や、痕跡の模型、また利用にあたっての守るべきルール・マナーもお伝えしています。
知床の生き物のつながり、利用の心得をまとめた無料上映(約15分間)も行っておりますので、ご覧になっていただきたいと思います。
2011年08月26日アメリカオニアザミとの攻防戦
知床国立公園 ウトロ 伊藤典子
しかし、皆慣れたもので、探し出すポイントが分かるようになってきたためか、確実に数が少なくなっている「気がする」と話しています。
さらに、今年はこの強敵に対抗して、例年より、2週間ほど早い6月27日に作業を行いました。大きく成長すると、とげが鋭く、また、体積が大きくなるため、抜いた後の運搬が非常に大変です。また、間を空けずに第2回も素早く行ってしまおうと考え、計画を立てていたのですが、天候や、日程調整の関係で、8月5日になってしまいました。この頃になるとたくましくなり、草原部にひょっこり頭を出していて、ピンクの花が際だち、見つけるのが容易です。
6月27日、第一回アザミ駆除。まだアザミが小さいので、ワラビの海をかき分けて探し出しました。
さて、炎天下の中、張り切って作業をおこないましたが、後ろを振り返ってみれば、まだまだ、鮮やかなピンクの花が目立ちます。遊歩道からほど近い道路沿いには多くのアメリカオニアザミがあるため、種子が供給されれば、また来春には根を張ってしまうのでしょうか。
フレペの滝遊歩道の巡視は週に1回行っているので、せめて歩道脇のピンクの花だけでもと細々と回収を行っています。現在は既に綿毛も飛ばし始めており、この種子が定着した事を考えるとうんざりした気持ちになってしまいます。
先日行われたしれとこ科学ゼミの際に、アザミの効果的な駆除の時期は、栄養が一番使われる花の咲いている時期だと伺いました。
ほんとですか?! ではこれからが勝負の時となるのでしょうか。
現在のフレペ。ガイド付きのツアーが行われているとアザミを駆除している姿は見せ物になります。
2011年08月19日しれとこ科学教室 第2回
知床国立公園 ウトロ 山本 雄
世界自然遺産である知床では、専門家による「科学委員会」が設置されています。
知床の自然を保護・管理し、未来へと引き継いでいくためには、多くの解決しなければならない課題があります。それぞれの分野の専門家が調査研究をしながら、科学的な立場から課題に対して助言をしています。それが、「知床世界自然遺産地域科学委員会」なのです。
・・・そう聞いても、実際は何をしているのか分からないよ、という人がほとんどです。
そこで、地元住民を対象として、この知床の地でどんな調査が行われているのか、何が分かってきているのかを科学委員会のメンバーが解説して、地元と科学委員会をもっと近づけよう、そんな思いで企画されたのが、しれとこ「科学教室」です。
今回はフレペの滝遊歩道を散策しながら、エゾシカによる植生への影響について解説をしていただきました。
科学委員会のメンバーである、石川 幸男 氏が講師です(弘前大学白神自然環境研究所 教授)。
最初は、座学から始まりました。
知床の植生のこと、エゾシカの越冬地などがスライドで紹介されました。また、エゾシカの食害により、植生が変化してしまった知床岬地区の現状の説明を受けました。昔と今の写真では、岬の草原の様子が様変わりしています。
座学を受けた後は、実際にフレペの滝遊歩道を歩きながらの解説です。
知床岬と同じようなことが、フレペの草原でも起きているようです。
だた、昔のフレペの草原の様子を知る資料が少ないので、どのように変化をしているのかを判断することは難しいといいます。
「昔はこんなにワラビもハンゴンソウもなかったはず・・」
しかし、それは「記憶」でしかなく、科学的な判断のためには「記録」(写真など)として残すことが大切、そう石川先生はおっしゃっていました。
フレペの草原で、どのように植生調査やっているのか、実際に見せていただきました。
まず、約2m四方の位置(プロット)を定め(可能ならば、今後も全く同じ箇所を調べられるように杭を打ち込みます)、
そのプロットの中に、どの植物がどれぐらいの割合を占めているか(「被度」といいます)を目分量で調べます。
「ワラビは5(75~100%)だな」
「う~ん、この植物は2か3かな」
「こっちは4」
こんな具合に調べていき、被度とあわせて高さも調べます。
今後、この「被度」と「高さ」がどのように変化していくのかを見ていくのです。
私は、そういった調査を目にするのが初めてでしたので、「へぇ、そんな風にやるんだ」と素直な驚きでした。調査というと難しいことをしている印象ですが、やっていること自体は非常にシンプルでした。
ただ、そのシンプルなことをするための知識や労力、時間が必要であり、その結果を分析するには、それだけの知識・労力・時間がまた必要です。
知床岬では柵を作り、エゾシカの影響を受けない場所を設けたことによる、植物の回復状況の調査を続けています。石川先生によると、植生の回復が見られているとのことです。
また、この3年間でエゾシカの駆除を行い、岬地区での頭数を半数近くにまで減らした結果(半数にまで減らしても、植生の回復にはほど遠いのではないか、と当初予想していましたが)、植生の回復の兆しが少し見えているそうです。
フレペの草原を石川先生とよく調べてみると、エゾシカの食害を受けながらも、小さく生き延びている植物を見ることもできました。
直に見たり触れたりすることは、単に話を聞いたり写真を見たりするよりも印象に残ります。
20年後、30年後でも、「直に」その植物を見ることができればいいな、と思います。
( 参加者との記念撮影 )
科学委員会の会議は、基本的に誰でも会議を聞くことができるようオープンなものになっています。
また、会議資料なども知床データセンター( http://dc.shiretoko-whc.com/index.html )から入手可能です。
知床でどんなことが行われているのか、興味がある方はぜひご覧ください。
皆様の興味・関心が、知床の自然を未来へと引き継いでいくことに繋がります。
2011年08月10日心はアライグマ
知床国立公園 ウトロ 伊藤典子
そのため、ウトロ自然保護官事務所では目撃情報の収集を行っています。というのも、アライグマは天然記念物であるシマフクロウの巣を襲う可能性があり、また、農作物に甚大な被害をもたらす可能性があります。
自動撮影装置、設置中。「もう少し、下かなー。ちょっと、角度を変えようか・・・」
アライグマの進入状況を確認するために、自動撮影装置を設置しました。カメラの前を何者かが通った際に、撮影が行われる装置です。
設置する際には、自分がアライグマだったら、どこを歩くかということを考えつつ、ウロウロして設置適地をみつけました。やはり水場の近くに現れるだろうとか、人目につきにくい場所を通るだろうとか等々考え、心はアライグマです。
昨年はウトロの市街地に1基のみ設置していましたが、昨年の6月に国立公園内において、目撃情報がはいりましたので、その場所付近にもう1基設置することになり、本年は、計2基を設置することとしました。
これから、データ回収と電池交換をし、写真のチェックです。さて、何が写るでしょうか。
2011年08月02日インターバルカメラ その2
知床国立公園 ウトロ 山本 雄
(7月13日 19:03)
ちょっとぶれていますが、ヒグマです。
知床五湖へと向かう道路にでてきていました。
インターバルカメラは5分間隔での撮影となっていますので、この次の画像には写っていませんでしたが、きっとこのヒグマは道路を横断したのでしょう。
ヒグマが道路にでてくるなんて、と半信半疑だった方もいるかもしれませんが、ヒグマの生息地域に道路が走っているというだけなので、ヒグマが道路上にでてくることもあります。
もし、道路上で見かけても、車からは決して降りないようにしてください。
積極的に襲ってくることないと言われていますが、ヒグマは足も速く、次にどんな行動にでるか分かりません。
車の中であれば安全です。
車の外に出て夢中になって写真撮影などをしていると、周りが見えなくなりがちです。もしかしたら、すぐ後ろに別のヒグマが出没するかもしれません。
車を運転している人も、人が外でカメラを構えていると「何かいるのか」と周りを見てしまい、前方への注意が散漫になります。 せっかくの旅行で交通事故とならぬよう、気をつけましょう。
人が車の外にいる、近くにいる、という状況に慣れてしまったヒグマは、どこでも同じような行動をします。もし、町中でそういった状況になれば、人との接触事故が起こる可能性もありますし、ひいては「駆除」という選択をせざるを得ない場合もあります。
ヒグマに人慣れをさせないようにしたいものです。
もし、知床国立公園(ウトロ地区)でヒグマを目撃しましたら、知床財団までご連絡をいただければと思います。自然センター、世界遺産センターには、「ヒグマ目撃アンケート」がありますので、お時間のある方はそちらにも記入をお願いいたします。
※ 知床財団ホームページ http://www.shiretoko.or.jp/
もちろん、「冬」は先週の空から降る雪を見ても感じたのですが、この迫力ある大粒の舞は冬の訪れを告げる一つの指標となっています。
斜里からウトロの間は道路が海岸線にあり、時に波は道路にまで押し寄せ、路面を濡らします。この寒い季節、濡れた道路は凍り、タイヤを滑り易くする恐れがあります。また、これからは海岸線、峠に限らず、市街地においても運転には気を配らなければならない季節です。特に観光で来る方は冬道にはなれていないと思いますので、お気をつけください。
波が高いので、鳥たちは港内に避難中。