ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2021年12月

14件の記事があります。

2021年12月27日オオワシの剥製

苫小牧 大久保 智子

こんにちは、野生生物課の大久保です。

各地で雪の便りが届いていますが、札幌も一面銀世界となり、景色が変わりました。

冬の楽しみの一つは冬鳥に会えること。

楽しみにしている冬鳥の1種、オオワシは、極東沿岸、カムチャッカ半島、サハリン北部で繁殖し、北海道で越冬します。種としての総個体数は約4,6005,100羽と推定され、国内では道東を中心に8001,500羽が初冬を迎える頃に飛来してきます。

総個体数は減少傾向にあり、餌資源の減少、ねぐらの減少、鉛中毒、衝突死などが生息を脅かす原因とされています。

環境省では平成17年に保護増殖事業計画を策定し、越冬調査や餌資源調査などを実施しているほか、日ロ渡り鳥条約に基づくオオワシ協同調査を実施しています。また傷病個体の保護、死体の回収をして、剖検データを積み重ねること原因究明を行い、将来的な事故対策等に活用しています。

魚を主食としているので海やサケの遡上する河川などでみることができ、私もたまにウトナイ湖上空を飛んでいる姿を目にします。ただ、とても空の高いところを飛んでいるので、じっくり観察することは非常に難しいです。

そんなオオワシの剥製を環境省に寄付していただけるという話が、舞い込みました。なんとも躍動感のあふれる立派な剥製です。


昭和43年に厚岸の海で拾ったオオワシの死体を剥製にしたものとのこと。保管状態もよいので、すぐにウトナイ湖野生鳥獣保護センターで展示する方向で必要な法的手続きを終えたところ、たまたま釧路方面に出張することになっていたので、搬送の命をうけました。

剥製のサイズは、剥製が高さ93cm×両翼端長141cm×頭尾長105cm、土台が高さ130cm×110cm×奥行76cmと大きく、とてもデリケートなため、羽根や嘴を傷つけないよう慎重に荷台に詰め込み、バランスを崩さないよう安全運転を心がけました。

 

翼と嘴が傷つかないように固定。流木も動かないよう固定。

運転席から振り返って見る後部座席がシュール。

そして4時間にも及ぶオオワシとのドライブを無事に終え、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターへ搬入することができました。

 

【仮設置】剥製と土台をセットすると人の背を超える大きさです。センター職員と安全確認中。

生きている個体を近くで見ることはなかなかできませんが、剥製だとじっくり観察することができます。大きい体、太い嘴、鋭い爪、深みのある羽、長い足など、色々と気が付くことが多いです。

年明けに正式にウトナイ湖で展示しますので、見に来てください。

12月21日のウトナイ湖の様子。

湖が凍り始め、凍っていない部分でハクチョウが寛いでいました。

遠くにいるオジロワシも見つけました。肉眼サイズだと豆粒のようですが大きさでワシ類だと気が付きます。

ウトナイ湖へお越しの際には双眼鏡を持っていると、より楽しめます。

年の瀬も迫って参りました。

今年もお世話になりました。良いお年をお迎え下さい。

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2021年12月24日赤潮の海

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは。

えりも自然保護官事務所の熊谷です。

当事務所ではおなじみ。

今年も、秋サケ定置網漁に同行してのゼニガタアザラシによる漁業被害調査を実施しました。

9月頭から11月20日の最終日まで、途中天候不良や時化に見舞われながらも無事に終えることが出来ました。

漁獲については、数年前から記録的不漁が続いていますが今年も低迷しています。日高管内では統計が残る1989年以降最低の漁獲量を記録し、漁業関係者は肩を落とす事態となりました。

そんな中、9月下旬に道東で大規模な「赤潮」が発生したことで多くの魚が死亡するなどしたため、少ない漁獲にさらに追い打ちをかける大打撃となりました。

「赤潮」とは、プランクトンが大量発生している状況をいい、大量に浮遊していることで海が茶褐色となり、普段より赤く見えるものです。赤潮の状況が一番深刻な時、定置網で沖に出てみると海水がまるでコーヒーのような色をしており、"いつもとは違う、海中で色んな影響が出ているに違いない" そう感じたことをよく覚えています。

 

港の中までプランクトンが大量に入ってきているため、海水が茶色く見えています。

特に右の写真は船から出ている水の勢いで周りの海水が動き、濁り具合が分かり易いです。

いざ外海へ船を出してみると...

 

 

茶色い海が続くばかり...

私が乗船しているのはサケの定置網漁船。この場所へ回遊してやってくるサケにも影響を及ぼしました。

エラ呼吸をしているサケのそのエラに付着し、多くを窒息死させてしまいました。通常、活きのよいサケのエラは血が通っていて濃い赤色ですが、窒息死したサケのエラは白くなります。


▲活きの良いサケ。ハリがあり、エラをめくるのも硬くて大変です

▲赤潮被害で死亡したサケ。

隣の船でも。その隣の船でも...同様の被害が見られました。

 

無傷であっても死亡していれば出荷することは出来ず、売ることが出来ないサケを回収する手間ばかりが増えていく状況です。

この「赤潮」はサケ以外にも、えりも町ではウニが全滅、ツブもほとんどが死亡しているなど多くの生物に影響を及ぼしました。

現場は初めての状況に戸惑い、この影響がいつまで続くのか懸念しています。

しかし!本日、12月24日のニュースや新聞では、今月15日までに赤潮は収束を迎えたようだと発表されていました。約3ヵ月間と長く続いた状況が解消されたことは、良いことです。

 9月下旬、赤潮の海

 11月20日、赤潮が治収まってきている海

ただ、ウニは漁獲できる大きさに育つまで4~5年、ツブに至っては6~7年かかるとされているため、赤潮が引いたこれから先も影響が長引くこと必須。少しずつ快方に向かうことを願います。

このように、赤潮は北海道の広い範囲で影響を及ぼしました。

赤潮が発生した地域を生活圏とするゼニガタアザラシ。アザラシへはどんな影響が考えられるのか、そのことに注視しています。

■海上から

・赤潮の海を泳いでいるアザラシ、サケのようにプランクトンが直接影響し死亡した個体は確認していない

・乗船調査中、普段なら定置網に入る魚を追い侵入してくるアザラシが今年はほとんど見かけない

...どこで過ごしているのでしょうか。

■上空から

・日常的にドローンを用いた個体数調査を実施していますが、映像を見ていても個体が減った様子がない

・見えている限り、変わった動きがない

これらから、今のところアザラシが赤潮の状況下でも生活できていることは確認できました。

しかし、アザラシのエサとなる生物がほとんど死亡してしまっています。今後アザラシはどういった動きをみせるのか、引き続き注視していこうと思っています。

(おまけ)

えりもは1年を通じて気温差の少ない地域と言われていますが、猛烈な風が吹くことで体感温度は一気に下がり、寒さ厳しい地域でもあります。乗船中は早朝という時間帯もあって特に寒いですが...とにかく美しい日の出・朝焼けが見られます。3ヵ月に及ぶ調査期間中、私の活力になりました〇 

 

 

 

 

お疲れさまでした!

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2021年12月23日海ワシ調査の世界へようこそ!

知床国立公園 ウトロ 佐野加奈子

初めまして。11月からウトロ自然保護官事務所にアクティブレンジャー(以下「AR」)として着任しました、佐野と申します。知床国立公園がある斜里町は私の地元で、大学卒業後、慣れ親しんだ自然が恋しくなって、このたび戻って参りました!

どうぞよろしくお願い致します。

 さて、知床国立公園ではARの業務の一つとして、11月から4月にかけて、定期的に海ワシ類の羽数を数えるカウント調査を行っています。

 着任して早速、この調査を行ってきたので、今回はどのように調査が行われているのかと、私が実際に調査を行う上で感じたことをお伝えできればと思います。

 そもそも、「海ワシとはなんぞや?」とお思いの方!(私もその一人でした)

ここで海ワシとは、オオワシとオジロワシのことを指します!(※)

空を飛ぶ姿はとてもかっこいいですよね。

※海ワシは、餌の多くを海に依存し海岸付近でよく見られるワシの仲間(sea-eagles)で、海外も含めるとウミワシ属(Haliaeetus)に分類されるものは8種います。知床ではこの内、越冬のために渡ってくるオオワシと、国内でも一部繁殖しているオジロワシの2種をよく見ることができます。

 次に「なぜワシの数を数えているの?」と思われた方、これには理由が2つあります!

1つ目は、オオワシとオジロワシは、どちらも生息地が減少したり生息数が減っている等の理由から絶滅のおそれがある種(絶滅危惧種)であり、「主にどこに集まっているのか」(餌環境など)、「羽数に大きな変化はないか」(特に急激な減少)を把握するため。

2つ目は、世界自然遺産に登録されている知床には、豊かな自然環境が維持されていることを把握するミッションが与えられています。その一環として、知床の生態系の上位にいる海ワシ類を対象に長期的にモニタリングを行うことで、渡来数や種・成幼の別など構成の変化も参考に環境の変化を把握するため。

 そんなわけで私たちは、冬になると毎週、海ワシ類の調査を行っているのです。

 では、どのように調査を行っているか手順・方法をご紹介します。

知床国立公園では、斜里町(ウトロ)側と羅臼町側で、それぞれ調査を行っています。

私の担当するウトロ側の調査コースは、()(っぷ)(どまり)漁港からスタートして、途中何カ所か止まりながらゴールの岩尾別川を目指します。

 およそ25kmの道のりを、車を運転する人、調査する人の2名以上で、低速(20~40km/h)で移動しながら、目視で(つまり目で見て)海ワシがいないか探します。車酔いのひどい私にとって最初のころはなかなかの苦行でしたが、今ではそれを乗り越え長距離運転もなんのその...!?

 海ワシを発見したら、以下の項目を記録簿に記入していきます。

・発見時間

・オオワシか、オジロワシか

・成鳥か、幼鳥か

・それぞれの個体数

・飛んでいるか、どこに止まっているか(どんな行動をしているかも)

海ワシ調査風景  調査用紙  

 記入している間にも、次から次へと海ワシたちがやってきて手が大忙しになることも。

飛んでいた場合、移動方向も矢印で記入するのですが、地図が苦手な私にはこれまた大変難しい。先輩ARの手もお借りしながら、ただいま修行中です。

苦労することもありますが、調査中に思わぬ発見もあったりします!

河口に座るオジロワシ

遠目だと「タヌキかな?」と思い、双眼鏡をのぞくとオジロワシでした!

海岸の砂地にちょこんと居る姿に癒やされました。

エサを貪るオジロワシ

エサを貪るオジロワシ。

目の前で見るとかなりの大きさで、図鑑で見るのとは迫力が違う!

生で見る良さを知りました。

 海ワシ調査はまだまだ始まったばかり。流氷がやってきてからが本番だそうで、例年だと一日に100羽以上を数える日もあるそうです。

それまでに先輩の手を煩わせない調査スキルを身につけたいと思う、今日この頃です。

 今回は簡単ではありますが、海ワシ調査についてご紹介しました。今後もARがどんな仕事をしているのかや知床の情報をお届けしたいと思いますので、次回もお楽しみに!

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2021年12月21日層雲峡の冬シーズン到来

大雪山国立公園 忠鉢伸一

こんにちは大雪山国立公園管理事務所の忠鉢です。

12月に入ってからも気温が高かったり、季節外れの雨が降ったり、今年は冬になるのが遅く感じる北海道です。

黒岳スキー場は今年は11月28日に営業を開始しました。例年よりも少し遅めのシーズンインとなりました。

12月8日に状況確認に行った時の黒岳スキー場の様子をご紹介します。

<ロープウェイ山麓駅舎内>

<黒岳5合目展望台より黒岳山頂>

この日は珍しく風もそれほど強くもなく、青い空に白い雪の山稜が眩しい日でした。

スキー場の積雪は130cm。まだ若干少なめですが、この時期のスキー場のコンディションとしては北海道でも最高と言える場所だと思います。

<7合目付近スキー場コース内>

4ヶ月ほど前は高山植物でいっぱいの黒岳でしたが今は雪の下です。

黒岳では5合目~7合目リフト周辺がスキーコースとなっています。

ゲレンデとして整備されているコース以外での滑走は、完全に自己責任です。

冬の山はとても魅力がありますが、雪崩や滑落などリスクに遭遇する可能性が潜んでいます。特に悪天候に見舞われた時には、万全の準備で挑んだとしても事故に遭わないとは言い切れません。

初めての山であれば、ガイドツアーに参加することをおすすめします。

リスクを最大限に減らして、雪山を楽しんでください。

道のない雪の上を自分の足で上り、冬山の美しさや、斜面を滑り降りる楽しさを体験して欲しいです。

<黒岳から見える北大雪の山々>

黒岳ロープウェイでは、スキーやスノーボード以外のアクティビティとして、

スノーシューツアーも行っています。興味のある方はチェックしてみてください。

層雲峡黒岳ロープウェイ 

<エゾユキウサギの足跡>

雪が降ると野生動物の足跡がいろんな場所で見られるようになります。

グリーンシーズンには気づけなかった世界が広がっています。

スノーシーズンはまだ始まったばかり。冬ならではの景色やアクティビティが盛りだくさんの大雪山です。

怪我や遭難など、事故の無いよう冬を楽しんでいきましょう。

黒岳ロープウェイ内には「Columbia Field Store」が今夏OPENしています。

山で遊んだ後は、カフェスペース「Black Mountain Coffee」で一息入れる事ができます。黒岳ロープウェイに来た際は是非立ち寄ってみてください。

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2021年12月20日冬将軍、到来

大雪山国立公園 渡邉 あゆみ

お久しぶりです。東川管理官事務所の渡邉です。

待ち焦がれた冬将軍がやって来ました。

今年は寒波の到来がとても遅く、早くしないと冬が終わってしまう・・・とヤキモキする毎日でしたが、遅れてきた分、恵みのドカ雪。長靴の上から雪が入り込んでくるほど積もり、歓喜の朝となりました。

さて、現在アクティブ・レンジャー日記でも「アクティブ・レンジャー写真展2021-2022~北の自然の舞台裏~」を公開していますが、巡回展としてモンベル大雪ひがしかわ店2階でも写真とパネルを12月26日(日)まで展示させていただいています。

私たちアクティブ・レンジャーが業務中に撮影した、選りすぐりの写真を見に来ていただけたら嬉しいです。

アンケートにご記入いただいた方には「しおり」をプレゼントしています。

【十勝岳温泉登山口、満車の駐車場】

11月後半~12月初旬、安政火口周辺では冬山へ登るためのアイゼン・ピッケル歩行や雪崩埋没レスキュー、ロープワークなどの技術習得・動作確認、また体を冬山に慣らすために、北海道の山岳会の人々がたくさんの訪れ、夏のハイシーズンのようなにぎわいを見せます。

このとき、久しぶりの冬山の凍てついた風や荘厳な雰囲気に気が引き締まり、この季節を待っていたと奮い立つような興奮を覚え、全身の細胞が活気づいてくるのがわかりました。

生きている中で、こんなにも充実し、楽しいことは他にはない、と思えます。

先日、プライベートで十勝岳に登ってきました。

十勝岳の頂上付近はカリカリのアイスバーン、10本刃以上のアイゼンが必須です。

冬山の天気は変わりやすく、濃霧に巻かれると歩いてきたトレースを戻ろうとしても、アイゼンの小さな爪の跡は風ですぐに消されてしまいます。空も地面も360℃真っ白なので方向・平行感覚を失い、次の一歩の起伏さえわからないような状況に陥ります。

大雪山の冬は本当に厳しいです。いざという時、どう対処できますか?

冬山シーズンを待っていた岳人の皆様、短いこのときを目一杯満喫しましょう。

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2021年12月20日羅臼岳登山道を近自然工法で整備!!

知床国立公園 ウトロ 小泉尚也

山には雪が積もり、冬へまっしぐらの知床から

今回は今年の夏に羅臼岳登山道(岩尾別コース)で実施した、「羅臼岳登山道整備イベント2021」の様子をお届けします。

このイベントは202010月の大雨により、登山道のあちこちで確認されるようになった土壌侵食について、関係行政機関や地元山岳会が中心となって「登山道を直せないか?」と企画したものです。

登山道崩壊写真

↑石組み崩壊の様子。大雨により石が流れ、土壌が侵食されてしまっています。

今回の登山道整備は「近自然工法」で行いました。

「近自然工法」とは、できる限り自然界にある構造に近い方法で施工することで、自然環境を復元させるという考え方に基づく工法です。この方法で整備することによって、人が歩きやすくなるだけでなく、土壌流出を防いでくれる植物も回復。さらに、再生した植物が根をはることによって強度も増すという良いことづくめの工法です。

今回の講師として、地元で山岳ガイドも行っている知床山考舎の滝澤氏をお招きしました。

「さあ整備だ!」とすぐ山に行きたくなるところですが、まずは滝澤さんと一緒に近自然工法のことや羅臼岳登山道の自然環境のことをしっかり勉強です!

勉強会の様子① 勉強会の様子2

近自然工法では、まず、登山道が崩壊してしまう要因を考えます。登山利用者の足を運ぶ位置、周囲の自然環境の状況、降雨の際に登山道を流れる水の動きなど、色々なことを考慮する必要があり、とても想像力が求められる方法だということが分かりました。

さて、待ちに待った現場での作業です(僕は体を動かすのが好きです)。

登山道の整備を行うためには、まず、作業に使う資材や工具を目的の場所まで荷上げする必要があります。土のう袋で岩を運ぶ人、木材を担ぐ人、整備道具を持つ人、個人の体力を踏まえながら役割分担をします。

皆で汗だくになりながら資材を運びました。

荷上げ作業① 荷上げ作業2

荷上げ作業3

目的の場所へ到着して「さあ、道を直すぞ!」と意気込んでも、まだ始められません。

現場の状況をあらためて確認しながら、どのように登山道を直すと良いか、吟味に吟味を重ねます。ここで勢いで作業を始めてしまうと、後戻りできなくなるからです。

なぜ登山道が崩壊してしまうのか(侵食要因)、人はどのように歩くのか(登山利用者の動き)、周囲はどのような環境なのか(自然環境の把握)。事前の勉強会を思い出しつつ、参加者同士で色々と話しながら、頭をフル回転させて、整備後の仕上がり像を想像します。

考えている様子 考えている様子2

イメージが定まり、みんなの認識が共有されてから、いよいよ作業開始です。今度は、石を組んだり、木を差し込んだり、現地で足りない資材を調達したり、肉体をフル稼動させて大忙しでした。

石組をする様子 木を差し込む様子

木柵を作る様子 木を切る様子

資材を運ぶ様子

ですが、山のために汗をかいていると自然と笑顔になってしまいます。

完成です!

石組工作業前写真 石組工作業後

↑近自然工法(石組工)の施工前(左写真)と施工後(右写真)の登山道

木柵階段工の施工前写真 木柵階段工の施工後写真

↑同じく木柵階段工の施工前(左写真)と施工後(右写真)の登山道

7月と8月の計4日間(勉強会を含む)で延べ51名が参加して、合計8カ所の登山道を直すことができました。

一見すると登山道が崩れていたと分からないくらい自然に溶け込み、とても歩きやすい道になりました。

お披露目会

完成後は、それぞれが施工した登山道のお披露目会です。(作業はいくつかのチームに分かれて行いました。)

作業中、大変だったところ、工夫したところのPRをしたり、互いに良い点を褒めあったり、想いやこだわりを共有し合いました。愛着がわく登山道になりました。

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登山道整備のイベントは終わりましたが、整備して終わりではなく、その後、登山道は維持されているのかを確認することも大事なことです。今年は、その後も何度か大雨が降り、整備した資材が流されていないか心配でしたが、巡視の際に確認したところ大きな侵食はありませんでした。一安心です。

すでに羅臼岳は雪に被われ、冬ごもりしてしまいました。

春、山肌が垣間見え、雪解けの時期を迎えても、ちゃんとこのまま残っていて欲しいと心から願うばかりです。

普段、山からたくさんの恩恵を受けている私たちですが、少しでも山のために行動できたのではないかと嬉しくなるのでした。

今回ご協力いただいた皆さま、重い資材を担ぎ上げ、現地での作業、本当にお疲れ様でした。

雪化粧した羅臼岳

↑雪化粧された羅臼岳         (2021.11.8 撮影)

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2021年12月20日マリモ、救出作戦

阿寒摩周国立公園 阿寒湖 鉾之原頌吾

 みなさまはじめまして。12月から阿寒湖管理官事務所に着任しました、鉾之原(ほこのはら)と申します。

生まれも育ちも鹿児島県。春までは奄美群島の徳之島で、特別天然記念物アマミノクロウサギや1トン近い牛同士が戦う「闘牛」を見て過ごしていました。今まで雪国に住んだことがない、"北国初心者"です。

 少しでも早く北海道の自然を理解していけたらと思います。よろしくお願いします。

さて、みなさまは各種報道でご存じかもしれませんが、先日、阿寒湖のチュウルイ湾に打ち上げられたマリモの移動作業があり、環境省も地域の方と協力して作業を実施しました。

【経緯】

 12月1日に起きた強風により、チュウルイ湾の東側から中央にかけて約150メートルにマリモが打ち上げられているのを、釧路市教育委員会のマリモ研究室が2日に確認しました。地元関係者に報告し、7日に関係者で現場を見て検討会を実施した結果、「すぐに対応すべき」という結論に至り、9日に救出作業の実施が決定しました。   

              

    強風で打ち上げられたマリモ            打ち上げの様子を確認する地元関係者

【なぜやるの?】

 マリモ研究室の尾山洋一氏によると、「本来、マリモの打ち上げは、大きなマリモが湖岸で砕けてばらばらになることで再び湖に戻るプロセスの一つ」で、マリモが増える上で必要な現象なのだそう。しかし、今回の強風では、高波により普段は波が届く距離を超えた位置まで打ち上がってしまいました。そのため、湖に戻ることができない高さまで打ち上がったマリモを湖に返すための作業が必要になります。

 「自然の摂理なのだから放っておけば?」という疑問もあるかもしれませんが、元々球形のマリモが減少しているのは私たち人間の生活が原因の一つともされており、マリモの数をこれ以上減少させない観点からも、人の手で保護しようと救出作戦を決行するに至ったそうです。

【決行日】

 当日は地元有志の呼びかけで約50人が参加しました。

 マリモ研究室の指導のもと、地元漁協などから借りたポンプを使い、水流で湖岸のマリモを湖へ。水の中へ戻ったマリモがより効率的に沖に運ばれるよう、スコップやレーキなどを使ってかき出していきました。

 当日の最高気温は5度。吐く息も白い中、皆さま胴長を着込んで水と泥にまみれながら作業に没頭し、約6時間かけて無事作業を終えました。

              

    ポンプでマリモを押し流す作業              流したマリモを沖にかき出す作業

                   

          作業前                          作業後

【マリモ漂着の裏で・・・】

 ちなみに、マリモ漂着と同時に大量の水草(マツモ)も漂着していて、漁船1隻を使って回収作業も行いました。近年、球形のマリモの確認面積は減少傾向となっている一方、水草の繁殖範囲が増加してきています。水草が増えることでマリモが回転する波の動きが制限されるなどの影響もあるようで、水草がなくなることで、マリモの生育環境の改善が期待されているようです。

 今回の強風が阿寒湖のマリモにとってどのような結果をもたらすのか、注目です。

   

                   漂着した水草の回収作業

【作業を終えて・・・】

 アクティブレンジャーとして、初めて地域の方々と合同での保全作業となりました。現状確認から1週間。地元関係者に報告してからわずか2日間という迅速な対応となりました。湖面凍結前で急いでいたとはいえ、即座に対応した住民の方々のフットワークの軽さには頭が下がるばかりです。

 作業後には、阿寒湖観光協会の松岡尚幸理事長が「特別天然記念物のマリモは、地元にとっては"国宝"に近い。みなさんは"国宝"を守ったと思って胸を張ってほしい」と一言。

私も皆さんの"地元の宝"を守る手伝いができたでしょうか。全身に筋肉痛を感じつつ、少しだけ胸を張って帰途につきました。

今後も、このページを読まれる方々に喜ばれるようなアクティブレンジャー日記を投稿できるよう頑張りますので、引き続きよろしくお願いします。

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2021年12月17日「令和3年度サロベツ・エコモーDay ~これまでの歩み展示会~」開催中!!

利尻礼文サロベツ国立公園 福井翔太

サロベツ担当アクティブレンジャーの福井です。

サロベツもいよいよ一面真っ白な雪原になる季節がやってきました。

現在、サロベツ湿原センターでは「令和3年サロベツ・エコモーDay ~これまでの歩み展示会~」と題した展示を実施しています。

●はじめに

サロベツでは「湿原の自然再生」「農業の振興」「地域づくり」を中心に様々な自然再生事業が行われており、湿原と農業が共生するプロジェクトとして平成20年に「サロベツ・エコモー・プロジェクト」が誕生しました。

「サロベツを好きな人を増やす」こと、「サロベツを次世代に伝える」ことを目標とし、地域の方や様々な団体と協力をして、湿原の保全と農業といった地域活性化に関わる取り組みを実施しています。

このような活動を多くの人に知ってもらうことを目的として、サロベツ湿原センターで年に一度、多くの方々が集まるイベントとして「サロベツ・エコモーDay」が毎年開かれていました。

今年度は、昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染予防の観点から、代替え企画「令和3年 サロベツ・エコモーDay ~これまでの歩み展示会~」としてポスターを中心とした活動紹介をしています。


各団体の今年度の活動から過去の「エコモー・プロジェクト」の活動まで幅広く展示を行っているため、サロベツ地域について深く知ることが可能です。

今回はサロベツ湿原センターと豊富町定住支援センター「ふらっと★きた」の2箇所の会場で展示を行っています。

お近くへ足を運んだ際に、ぜひともお立ち寄りださい。

●サロベツ湿原センター

期間:12/1(水)~12/28(火)

時間:10:00~16:00

※毎週月曜日 休館

●豊富町定住支援センター「ふらっと★きた」

期間:12/10(金)~12/26(日)

時間:9:00~21:00

※日曜日は午後6時まで

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2021年12月16日シマフクロウのための魚道改良

釧路湿原国立公園 佐野 綾音

 皆様こんにちは。

 2021年もそろそろ暮れようとする12月11日、道東のとある河川で、希少種の生息環境を確保するため、環境省事業として、シマフクロウの餌となる魚類を保全するため魚道の改良を行いました。

 今回のターゲットはズバリ、底生魚類(※)の一種、カジカ(エゾハナカジカ)の遡上促進です!地味っ!ですが、シマフクロウ研究者の竹中さんによると、カジカが豊富に生息する地域ではシマフクロウの餌の大半がこの魚だったこともあるとのことで、シマフクロウの餌としてカジカはとても大事なのです。カジカは川底の石の隙間を生活空間や産卵場所とする魚類ですが、孵化直後の仔魚はいったん浮遊して海に流れ下り、そこで数週間成長した後、再び川に上るというライフサイクルを持っています。このように海と川を回遊する魚類にとって、川を遡るのに障害となる人工工作物は大敵です。

(※)底生魚とは、海や河川・湖沼の底部をおもな生活の場とする魚類の総称 。

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<写真左>エゾハナカジカ <写真右>エゾハナカジカを食べるシマフクロウ(竹中氏提供)

 今回の取組を行う現場には、川の中に高さ1.5mほどの段差(落差工)があります。落差工には既に3段の階段魚道が設置されており、サクラマスなど、泳ぎの得意な魚は魚道を使い上流へ遡上できます。しかし、カジカにとってはこの魚道内の段差すらハードルとなり、ここから上流に上れないため、この落差工の上流側にはカジカは生息していないのです...。

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<写真>今回の魚道改良現場(段差(落差工)に設置された魚道(左端)が作業対象)

 そのため、今回は既存の魚道に丸石や木材を使ってスロープを作り、カジカが上れるようにして、さらに落差工の前後にカジカの隠れ家となる石倉作りを行うことになりました。でももう12月ですよ...。川の中の作業を本当にするんでしょうか...?

 当日は、幸いにも季節外れの暖かさで雪もなく、魚道の設計を手掛けて下さった研究者の岩瀬さん、竹中さんの他、EnVision環境保全事務所(エンビジョン)さん、そして口コミで集まってくださった周辺地域の市民の方々にご参加頂きました。もちろん環境省職員も一緒です。

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<写真>作業開始前の全体打ち合わせの様子

 まず作業は総重量5トン(5,000kg)の丸石の運搬から始まりました。実はこの丸石、1つ5kgから時には20kg?にもなる重い石でした。丸石運搬チームがその大量の丸石を、一列に並びバトンリレーならぬ石リレーで作業場所へ移動させました。

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<写真左右>息の合ったバトンリレーならぬ石リレー。圧巻です

 石倉製作チームは、ハンマーを振りかぶり、川底に木の杭を60㎝も打ち込み、袋状の網を固定した中に丸石を積み上げます。あっという間に3つの石倉が出来上がりました!

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<写真左右>石倉制作のため木杭を打ち込み袋状の網を固定している石倉制作チーム

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<写真>完成した石倉(水の中では、カジカが好む石の隙間ができていました)

 環境省チームは、魚道に流れ込む川の水をせき止める重要任務を任されました。川底の砂利を入れた土嚢を作り(その数約50袋)、流木や倒木を組んでブルーシートを被せ、その上に土嚢を乗せて水の流れを止めようと奮闘しました!しかし、予想以上に水の力は強く、なかなか水が止まらず悪戦苦闘。1時間半かけてようやく完全に止めることに成功しました...。あー腰が痛い...。

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<写真左>一心不乱に土嚢袋へ砂利を詰め込むウトロ・羅臼自然保護官事務所のARさん

<写真右>ビーバーのように倒木や流木も利用して、水のせき止めに挑戦中

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<写真左>魚道への水のせき止めに奮闘する様子

<写真右>ようやく水のせき止めに成功し流れがとまりました


 水が止まったところで、ついにスロープ製作チームの登場です!魚道に溜まった水を汲み出して、岩瀬さんの指導のもと、魚道本体に木材をボルトで固定し、その隙間に大量の丸石を詰め込みました。それを魚道3段分作りました。作り上げる頃にはそろそろ日が傾き、寒くなり始めていました。

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<写真左右>木材を固定し、隙間に石を詰め込んでいる様子

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<写真左右>完成したスロープ

 無事にスロープが完成し、いよいよ通水です!環境省チームが苦労して作ったせき止めを崩すと、水が魚道に一気に流れ込み、丸石や木材はすべて水の下になりました。予想通り、スロープを流れる水はかなりスピードが遅くなっています。これでカジカがスロープを伝って上流へ上り、たくさん増えてくれるはず~!

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<写真左右>通水後スロープは水の下へ...カジカが上れそうです

 なんとか一日で作業が終わりました。すべて手作業だったので大変でしたが、個人的にはとても楽しくて、参加者の皆さんとの一体感や達成感は格別なものでした!

 この川にはまだまだ同じような落差工(魚道)があるので、今後はさらに上流部に向かって次々と魚道を改良していこうと計画しています。来年度以降は、市民の方々へ広く参加を募り、皆さんと共に自然と触れ合い、小さな自然保護を行っていきたいと強く思いました!

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<写真>完成したスロープを体感

(お昼休みには、エンビジョンの方がシカ汁やシカ焼き肉を振る舞ってくださり、寒空の下、身に染みる美味しさに参加者全員がほんわかしました。どうもありがとうございました)

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2021年12月14日アウトドアはコロナに負けないか。

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 東大雪地域には、十勝岳新得コース、トムラウシ山短縮コース、トムラウシ山温泉コース、石狩岳シュナイダーコース、ユニ石狩岳十勝三股コース、ニペソツ山幌加温泉コース、ウペペサンケ山糠平コース、白雲山士幌高原コース、白雲山然別湖畔コース、東ヌプカウシヌプリ、南ペトウトル山などの登山道があります。上士幌管理官事務所では、主な登山口に登山者カウンターを設置し、そのほかの登山口については森林管理署から入林簿をお借りして、利用者数を集計しています。

 登山者カウンターの計数値には誤差があり、入林簿は全ての方に記入いただけてはいないでしょうが、おおまかな利用者数やその推移を推し量ることはできるでしょう。

 新型コロナウィルスの感染拡大が始まったのは2020年の冬、2月28日に北海道が独自の緊急事態を宣言。4月16日、緊急事態措置は全国に拡大、5月25日全国で解除。大雪山が登山シーズンを迎える頃には緊急事態宣言こそ解除されていましたが、咳エチケットや手指衛生を心がけ、人々が密集、密接し、密閉された空間を避けることが求められていました。新しい習慣が登山という活動にどう影響するのか予想が付きませんでした。大雪山国立公園では、避難小屋の利用を避けたり、人との距離を取ったりするよう呼びかけましたが、それが万全の策なのか、手探りが続きました。

 2021年も北海道には5月16日から緊急事態宣言が出され、6月20日にまん延防止等重点措置へ移行、7月11日に解除など、感染拡大と収縮が繰り返されました。

 各登山口の年間入山者数を、新型コロナウィルス感染拡大前の一昨年(2019年)から並べてみると、ほとんどの登山口で、一昨年より昨年、昨年より今年の方が入山者数が増えています(下図参照)。東大雪地域の山々は、表大雪の旭岳や黒岳に比べれば登山者が少なく、ロープウェイや路線バスなど登山口にアクセスする公共交通機関が少ないことから、密を避けて登山できることが好まれたのかもしれません。

 登山に関連して新型コロナウィルスの集団感染が発生した話は聞きませんが、できうる対策は取りながら山を楽しみましょう。

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